FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

51 / 129
皆さんセイバーに制裁を下すところ見たすぎませんか…?笑

そんなにこの時のセイバー嫌いですか笑
まぁ、私もあまり好きではありませんが…笑

お気づきかもしれませんが、サブタイ入れました。
今まで自分でも読み辛いと思ってたので笑

三人称に改修していないところはサブタイが入っていません。
逆を言えば、サブタイが入っているところが改修済みです。

あと、この頃時間があって思うのですが…こんな小説を面白いと言っていただけるとほんっとに嬉しく思います。
心から感謝します!




第五十刀  窮地の召喚

 

 

リュウマが闘技場でシェリアを撃破した同時刻。

 

城の地下にある罪人の処刑場でもある奈落宮では、ナツ達の前に餓狼騎士団と名乗る集団に狙われていた。

 

集結した餓狼騎士団を見て、ナツが爆笑しながら髑髏などを形作る装飾品を付けている連中に騎士団てナリでないと指摘する。

 

「特にお前!」

 

「タイ?」

 

ナツが指差したのは、後頭部に髪の毛を縛って、他の部分はスキンヘッドで鉢巻きを巻いている男。

しかし…この集団は見た目に惑わされてはならない。

 

「侮るな!奴等の使う魔法は…“人を殺す為の魔法だ”」

 

餓狼騎士団の1人1人が使う魔法は、処刑人と自負するだけあって人を殺すことに特化した魔法を使う。

 

それを聞いたナツは出口が向こうから来たと気合いをいれ他のメンバー達も気合いを入れるが…仕掛けてきた餓狼騎士団の魔法に翻弄される。

 

女が紙を飛ばしてきて、それをナツが燃やそうとするが燃やすことが出来ない特殊な紙の魔法であり…。

 

そんな紙をウェンディが風で吹き飛ばせば、別の女が食人植物を地面から生やす。

 

それを破壊したり、リリーが大剣で切り払えば強力な酸を出す男が後ろから狙ってきて溶かされそうになる。

 

それらを凌げば今度は吸い込む食人植物を女が召喚する。

召喚された食人植物にみんなが呑み込まれそうになったところを、ナツの号令で一斉攻撃して爆散させた。

 

しかし、その拍子にみんなバラバラな場所へと吹き飛んで行ってしまう。

 

「───ぶはっ!…おーい!みんな無事かー!?」

 

吹き飛ばされた拍子に瓦礫の下となっていたナツは、這い出てきて叫んでみるが応答は無い。

どうやら完全にはぐれてしまったようだ。

 

「どうやら先程の衝撃で方々へと散ってしまったようだな」

 

「…!」

 

「だが、私の部下は優秀だ。誰1人として生きては帰さん」

 

「ここでルーシィとはぐれちゃ意味がねぇってのに」

 

ナツは餓狼騎士団のリーダー的存在と当たったようだ。

 

 

「みなさーん!どこですかー!」

 

「美しい…あぁ、いえ…美しいというより可憐…かしら。でも処刑よ」

 

ウェンディはみんなをはぐれさせる原因を作り、食人植物を召喚していた女と当たる。

 

 

「へへへ。ぱーん」

 

「クソッ…みんなとはぐれたか…!」

 

リリーは何かと人を溶かそうと酸を出す男と当たった。

それもリリー1人なため、戦闘フォームを維持できるかが胆だ。

 

 

「ルーシィ!ユキノ!どこー!!」

 

「よそ見してる場合じゃないわよ。アンタ」

 

ミラは色々な状態異常を付属する紙を使う女と当たった。

 

 

「うぅ…」

 

「私達もはぐれてしまったようですね…」

 

救出対象であるルーシィとユキノは、動けないでいるアルカディオスとハッピーとシャルルで固まってはぐれてしまっていた。

 

「よりによって戦力の無い者同士が一緒になっちゃうとか…」

 

「鍵も無いですしね…」

 

「とりあえずみんなを探そうよ…ッ!?あわわわわわ!?」

 

「ハッピー!?」

 

これからのことを確認していたハッピーが、突如空中に浮かび上がった。

 

ハッピーの魔法である(エーラ)を出していないことから、第三者による干渉だということが分かる。

 

「釣れたタイ!」

 

「オイラ魚じゃないよぅ…!」

 

「…………本当だ」

 

「ふべっ!?」

 

釣れたのは本当に魚だと思っていたようで、ハッピーが魚じゃないと指摘すると柱に向かって投げつけて叩きつけた。

 

相手はナツがバカにしていたウオスケという処刑人だ。

 

常に表情が変わらないウオスケに、やられたハッピーは痛む鼻を押さえながら魔法を使えなくても勝てるとバカにした。

 

「そんなこと言ったら…怒っちゃうぞー」

 

怒っちゃうぞと言いながらも…やはり表情は変わっていない。

 

「勝てるかも!…ザコっぽいし!」

 

「はい!」

 

「い、いかんぞ…!奴は──」

 

見た目だけに惑わされているルーシィ達は、倒れ込んでいるアルカディオスを見た。

城に仕える餓狼騎士団のことを知っているアルカディオスは戦慄していた。

 

「──処刑した人間の骨すら残さぬという…!」

 

 

「「…………え?」」

 

 

ルーシィ達は顔を見合わせて気の抜けた声を出し、前方ではウオスケが表情は変わらないままにプンプンと怒っていた。

 

 

 

 

 

「命は儚きもの…己の罪に鳴け」

 

「何もワリーことした記憶ねぇんだけどな」

 

名も知れぬ鎌を2つ背負う男とナツは対峙しており、ナツが絶対に有り得ないこと口走る。

 

常に何かしらを破壊しているギルド1の問題児の発言に、この場にはいないどこぞのマスター(マカロフ)の背筋に冷たいものを走らせた。

 

聞いても絶対に答えないし、相手は自分を殺しに来るので一度ぶっ飛ばしてから道を聞こうという考えにナツは至り、とりあえず前の男をボコボコにすることにした。

 

ナツが臨戦態勢を取ったのを感じ取った男は、背に背負っている鎌を2つ共引き抜き、斬り掛かった。

 

それを寸前のところで避けると、後ろにあった石造りの柱がバターのように両断された。

これだけで鎌の凄まじい切れ味が分かる。

 

そして只管に斬りつけてくる男から避けているナツは気がついた。

 

男はずっとナツの首しか狙っていない。

 

つまり、死神の如く首を狩ろうとしているのだ。

 

「我が狙うは罪人の首のみ」

 

「おっかねぇ奴だな」

 

「残念だが…貴様はここで死ぬのだ!」

 

男は真っ直ぐにナツへと向かって斬り掛かってきた。

そんな真っ直ぐな攻撃をナツが食らうわけもなく、余裕をもって回避した。

 

回避された男は、通り過ぎた鎌を切り返し…ナツの首を狙う。

しかし…

 

「何ッ…!?」

 

「そろそろぶっ飛ばしても…いいよな?」

 

ナツはそれを素手で掴み取ってみせた。

男はそれには驚き、付けている仮面の向こうで目を見開く。

 

「オラァ!」

 

「グアッ!!」

 

掴んだ鎌を握力のみで破壊し、仮面を付けた顔を思い切り殴りつけた。

その威力に男は柱を三本ほど破壊してから壁に叩きつけられた。

 

「なん…なんだ…!この男は…!」

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

下にずり落ちた男に襲いかかるのは、炎で破壊力を増したナツの拳…。

それを受けて背にしていた壁を破壊して隣の空間へと殴り飛ばされた。

 

「私にこんな事をして…貴様等王国を敵にまわすつもりか…!」

 

「敵に…まわすだァ?」

 

「…!」

 

壁を壊した事で包み込んでいた砂塵の中から、炎を拳に纏わせながら振りかぶっているナツが現れた。

 

「お前等こそ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)を敵にまわす覚悟は出来てんだろうなァ?オレ達は家族(ギルド)を守る為なら国だろうが世界だろうが敵にまわす───それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!」

 

そう宣言して男を火竜の鉄拳で殴り飛ばし…更に奥にあった壁をぶち破って打倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「胞子爆弾…『リンカ・レンカ』!」

 

「きゃあっ!?」

 

ウェンディは人間には危険な植物を召喚する女と戦い、少し押されていた。

 

「その悲鳴も可憐…。さぁ…眠る時間よ…『マクラ・カムラ』」

 

「これは…!」

 

足下に何時の間にか召喚されていた植物から噴き出てきたのは…眠気を促進させる胞子。

それをウェンディは吸い込んでしまう。

 

「この胞子の睡眠効果により眠ってしまったら…あなたは二度と目を覚まさない死の魔法…」

 

「あぅ…うっ…」

 

「さぁ眠れ…永遠に…」

 

「うぐ…ふ…」

 

睡眠効果のある胞子の力によりその瞳を瞼が覆っていき…目を…閉じてしまった。

 

これによりウェンディは二度と目を覚ますことが…

 

 

 

「───状態異常耐性付加(エンチャント)…『リレーゼ』」

 

 

 

──ない…と思われたが…目を開けた。

 

目を覚ますはずがないと思っていた女は、起きたウェンディを信じられないものを見たという目で見た。

 

「…え?なん…で!?」

 

「私に状態異常系の魔法は効きません。私はみんなのサポートがお仕事だから…!」

 

天空の滅竜魔法が得意とするのは、ありとあらゆるものに対する付加術。

 

自分に眠り耐性を付加させることにより、睡眠効果のある胞子の魔法を打ち消したのだ。

 

起きたウェンディは手に風を纏わせ、対峙する女の周りに風の結界を構築していく。

 

それを初めての見る女は慌てふためき、脱出しようと試みるが…逃げることが出来ない。

 

逃げることは風の結界が…許さない。

 

「だけど…戦わなきゃいけないときは───私は天竜となります!」

 

「待って…やめ──」

 

やめさせようとするが…もう遅い。

 

相手は…仲間の為に天竜と化した少女だ。

 

 

「いきます…!『照破・天空穿』!!」

 

 

ウェンディの放った天空の滅竜奥義は完璧に決まり…女を真っ直ぐ壁へと吹き飛ばして壁を貫通させ…打倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酸を使うとは…厄介な…!」

 

「ぱーん。溶けろ。溶けろ」

 

リリーは伸縮自在の大剣を手に持ちながら、酸を造り出す大男と対峙していた。

 

大男が出す酸は強力で、先程からその酸を避けているが…その拍子に酸に触れた壁や柱は一瞬で溶けていた。

 

「そぉら!!」

 

「クッ!」

 

前方から前へ扇状に散布した酸を、リリーは大剣を地面に突き刺して引っ剥がして盾にした。

 

しかしその場を直ぐに離れるリリー。

 

すると、盾にした引っ剥がした地面は数秒で全て溶かされてしまった。

そのままそこにいたら確実に一緒に溶かされていた。

 

「オラオラどうした?溶かしちまうぞ!ぱーんってよォ!」

 

防戦一方であるリリーに気分を良くしているのか、男はニヤニヤしながら見ていた。

 

だが、リリーに焦りなどない。

 

───ガジルと共に授業してきた日々を思い出せ!

 

「鉄の拳!奴の拳を何度も受け止めてきたこの体!その鉄の硬度が誇るは───己の精神力!!!!」

 

3ヶ月という期間の中でガジルの強力な鉄の拳を受け止めてきたのは自分だ。

 

そんな己がこの程度の敵に臆することなど有り得ない!

 

「何事にも負けぬ鉄の意志!!」

 

「なァ!?さ、酸を…斬った…!?」

 

リリーは前方から迫る酸の波を大剣を勢い良く振ることで出来た斬撃で斬った。

 

修行前は斬撃など出すことは出来なかったが…3ヶ月の修行で己のものとした。

 

「お前はここで終わりだ…ギヒッ!」

 

「ぐあぁぁあぁあぁああぁあぁぁあぁあぁ!!」

 

リリーはその斬撃で割れた酸の無い道を駆け抜け…大男を峰打ちで斬って吹き飛ばして壁へと叩きつけ、更にそこに蹴りを入れて壁をぶち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紙吹雪…『緑の舞』」

 

「…!ゲホッ…ゲホッ…!」

 

ミラが相手をしている女は、数多くの緑色のした紙を吹雪の如く吹き荒らした。

するとそこから緑の煙が噴射されて舞い上がる。

 

「緑の紙は毒の神」

 

「ゲホッゲホッ…この人…確実に命を狙って…!」

 

吸い込むと危険だと察知したので後方へとバックステップすることで毒の煙の中から出て来た。

 

それでも少しは吸い込んでしまったので苦しそうに咳き込んだ。

 

「大分苦しそうね。そろそろ死んじゃう?」

 

「…っ…。魔法は人を殺すためのものじゃない…!…だけど…大きな力が無ければ愛する人たちを守れない…」

 

「矛盾してるわよね」

 

「───何を言ってるの?」

 

的を得ているはずの言葉に何を言っているのと返された女は首を傾げた。

そんな女を余所に…ミラの魔力がみるみる上昇していく。

 

「あなたは1つ大きなミスをした」

 

上昇していく魔力によって地面の石礫が浮き上がり…粉々に砕けていく。

 

「私ね…大会の会場とか…仲間が近くにいたりとかね…誰かに見られてると思うと自分の力を抑えちゃうの…さっきの矛盾からくる私のジレンマなのかしら?…私が“1人”の時───それは私が100%の力を出せる時なの」

 

「…え?う…そ…毒を吸って…!」

 

ミラはサタンソウルを纏いながら…辺りに充満していた毒を()()()

 

「悪魔に毒?──大好物なんだけど♡」

 

残念ながら毒による殺害はミラには効かないのだ。

悪魔という因子を接収(テイクオーバー)する事の出来るミラにとって、ナツに大して炎攻撃をするようなもの。

 

逆に吸い取って己の力とすることが出来る。

 

「わ、私達に手を出していいと思ってるの!?私は王国の兵なのよ!?」

 

「ふーん…だから?」

 

「…え?」

 

自分に手を出すことはつまり…国1つを敵にまわすことだぞと暗に示しているのだが、ミラの返答はだから?

それには流石に固まった。

 

「あなた達が手を出したんでしょ?リュウマが怒ってたわよ?だ・か・ら──」

 

ミラは左手の薬指に嵌めている指輪を愛おしそうに撫でた。

 

それは女の魅力勝負となった変則試合の時にリュウマから貰った(奪った)指輪だ。

 

「こういう時に何て言ってたっけ?リュウマは…あ、そっか──」

 

こういう時にリュウマが何て言っていたのかを思い出したミラは手を合わせてニコリとしながら女を見る。

 

その時点で嫌な予感がした女は…後退して逃げようとした…が…手遅れだ。

 

「あなた達は──」

 

『貴様等は──』

 

「ヒッ!?」

 

ニコリとしたまま右腕に魔力を集中させて…振りかぶり…

 

「──殲滅対象よ♡」

 

『──殲滅対象だッ!』

 

「いやあぁあぁあぁああぁあぁぁあぁ!!!!」

 

女を殴り飛ばして壁をぶち抜いて…打倒した。

 

女は後に語った…あの(ミラ)の背後に…恐い男がいた…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地形効果・『溶岩(タイ)』!」

 

「何かくるわよ…!」

 

「はいっ!」

 

ウオスケと対峙しているルーシィ達は、何かの魔法を使ったウオスケを警戒した。

 

すると…地面が突如燃えだし、罅割れて砕け…下から溶岩が流れる地形となった。

 

ルーシィ達はその時にバランスを崩し、溶岩に落ちそうになったが…咄嗟に地面を掴んで耐える。

 

ルーシィとユキノが溶岩へ落ちそうになっているところをハッピーとシャルルが駆けつけて助けようとするが…

 

「地形効果・『重力(タイ)』」

 

「はぎゅっ!?」

 

「あうっ!?」

 

重力を操られて地面へと叩きつけられ…貼り付けにされた。

 

真下に溶岩があるルーシィ達の足をじわじわと熱が炙っていく…。

それを苦しそうに声を上げるルーシィ達だが…

 

「がん…ばれ…君達…2人は…私達の希望…なのだから…!」

 

「アルカディオス様…!」

 

「こんな時にまたその話し…?悪いけどあたしは…」

 

「君達がいなくては…エクリプスが起動しない…!」

 

アルカディオスは痛む体に鞭を打ち、立ち上がった。

 

そして…

 

「私はその為ならば…この命──惜しくはない!!!!」

 

溶岩の中へと…足を踏み入れた。

 

アルカディオスのまさかの行動に驚愕している中…痛みによる叫び声を上げながら進んでいく。

 

溶岩の中であるが故に肉が焼け…煙を放つが…アルカディオスはそんなことは気にせず只管ルーシィ達へと目指して進んでいく。

 

「…え?…えぇ…?人間って溶岩の中入れたっけ…?」

 

ウオスケがそんなアルカディオスを見ながら冷や汗を流し、呆然とするのは当然だろう。

 

溶岩とは大凡900℃から1100℃…人間が中に入って動けるなど有り得ないのだ。

 

それでも進んでルーシィ達の元へと辿り着き…盛り上がった地面へと押し上げた。

 

「ぐあぁぁあぁああぁぁ…!!!!」

 

「アルカディオス様!!」

 

「あんたも早く!!」

 

手を伸ばすルーシィ達に…首を横に振った。

もう自分がダメなことは自分がよく知っているのだ。

 

「もし…ここを無事に出られたのならば…姫様に…ヒスイ姫に会うのだ…エクリプスが正しいかどうかは…君たちが決めるといい…」

 

そう言い残して…溶岩の中へと沈んでいった…。

ルーシィとユキノの悲痛な叫び声が響き渡る。

 

「だよねだよね?フツー死ぬよね?あービックリした…」

 

アルカディオスが沈んでいってしまったところを見ていたら…なんとブクブクと泡をだして盛り上がり…中からホロロギウムが現れた。

 

「ギリギリセーフといったところですかな…いや…私の体はアウトといったところでしょう…」

 

「ホロロギウム…!?」

 

「僕は門を自由に行き来できるからね。君たちの“星”は君たちの元に」

 

「ロキ!!」

 

ホロロギウムが召喚されたのは、1人で人間界に来たロキが召喚したからだ。

ロキはルーシィの他の鍵を回収しており、もちろんのことユキノの鍵も回収してあった。

 

「ここに十二の鍵が揃った…反撃の時だ」

 

「うん!」

 

「参ります!」

 

鍵を取られて攻撃手段が無かったが…今ここに全ての黄道十二門が揃った。

 

先ずはユキノの攻撃で、大魔闘演武のバトルパート…カグラとの戦いの際に召喚したピスケスを呼び出した。

 

「開け!双魚宮の扉・『ピスケス』!!」

 

しかし、現れたのはバトルの際に見た魚の姿ではなく…人間型の女と男の2人の星霊だった。

 

「これがピスケスの真の姿…母子一体の星霊…!」

 

「この姿で呼ばれたということは…ママ」

 

「敵の殲滅よ。ボウヤ」

 

そんな女の方のピスケスを見てロキが相変わらず子持ちとは思えない美しさ…となんかほざいているが、確かに美しい星霊で、男の方は顔が整っていた。

 

「お願いします」

 

「オーケーママ!」

 

「私はママじゃありません」

 

「フフ…」

 

ピスケスはウオスケへと走り出した。

それを見ていたウオスケは地形効果・『重力帯』を使って迎え撃とうとするが…

 

「開け!天秤宮の扉・『ライブラ』!」

 

これもまたカグラとの戦いにて呼び出した星霊であり、操るのは重力。

それ故にライブラの力を使って重力帯の重力を打ち消した。

 

重力帯を打ち消されたことによって隙だらけになったところを、接近していた男のピスケスに蹴り飛ばされ、吹き飛んだところを女のピスケスに殴り飛ばされた。

 

「地形効果・『渦潮(タイ)』!!」

 

痛い攻撃を食らったウオスケは辺り一面に渦潮を呼び出してピスケスを呑み込んだ。

 

ピスケスは魚であるので水など効かない…とルーシィは思ってたのだが…。

 

なんとピスケスは魚なのに水が弱点なのだそうだ。

それには驚いたが…水があることであの星霊を呼び出せる。

 

「開け!宝瓶宮の扉・『アクエリアス』!!」

 

「タイ!?」

 

召喚条件があるが故に強力なアクエリアス。

そんなアクエリアスはウオスケが出した渦潮帯に勝るとも劣らない水量の波を造り出して放った。

 

「みんな流れちまいなァ!!!!!!」

 

「ちょっとーーー!!!!」

 

「アクエリアス様…!これは…きゃあぁぁぁ!!」

 

そして当然にして毎度の如く味方までも流していく。

ユキノはアクエリアスのやり方を初めて目の当たりし、驚いたまま流されていった。

 

「ま、負けんタイ!地形効果・『溶岩帯』!!」

 

迫り来る大波に大して溶岩帯を出現させた。

それにより一気に温められた水は爆発し…水蒸気爆発となって辺り一帯に爆発の余波を届けた。

 

水蒸気爆発の威力によってアクエリアスを始めとしたロキ、ライブラ、ピスケスは消えて星霊界へ消えてしまった。

 

「うっ…うぅ…」

 

「すごい爆発です…」

 

「タイタイターイ!一時はどうなるかと思ったけど…これならいつも通り殺せそうタイ」

 

爆発で吹き飛ばされたルーシィ達の元へと、ウオスケはゆっくりと近付いてくる。

 

敵の魔法である渦潮で無理矢理アクエリアスを呼び出したために魔力をごっそり持って行かれている。

 

ユキノはまだ魔力があるが、何と言っても先程の爆発で星霊は倒されて送り返されたのでしばらくは呼べない…。

 

2人にとって万事休す…といったところだ。

 

──どうすればいいの…!?これ以上はあたしの魔力が持たない…この状況を覆せる鍵は…

 

──私は黄道十二門を2つしか所持していませんし…先程やられたのでしばらくは呼べません…どうすれば…

 

心の中でこの戦況を打破するための策を考えるが…吹き飛ばされた衝撃で頭が上手く回らない…このまま処刑されるのか…と思った矢先…

 

 

     《魔力を…魔力を寄越せ》

 

 

「「────ッ!!」」

 

どこからともなく声が聞こえた。

それもどこかで聞いたことのあるような声で…どこか安心させるような声色だ。

 

その時…ルーシィは思い出した。

 

この戦況を大きく覆せる可能性がある鍵があるではないか…と。

 

1つの鍵が縦から両断されている3つの翼を形作っている装飾をした鍵。

しかもユキノがいるので合わせて完全の鍵が…。

 

 

《さぁ…魔力を寄越せ…さすれば汝に勝利をもたらさん》

 

 

「──ユキノ!!」

 

「はい!ルーシィ様!」

 

ルーシィの掛け声に反応したユキノは、やはり同じ事を考えていたのか…胸元…それも豊満な胸部故に出来た谷間から黒い半分の鍵を取り出した。

 

因みにルーシィも谷間に白い半分の鍵を隠していた。

バレる訳にはいかないので絶好の隠し場所に隠したのだ。

 

そして2人は鍵を──合わせた。

 

「お願い…力を貸して…!」

 

「リュウマ様…私達を助けて下さい…!」

 

 

  《さぁ…唱えよ…我を呼び出さんが為に》

 

 

「「代償召喚…来たれ…翼人の門・()()()()」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!!来たか!…『並列思考(マルチタスク)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代償召喚…触媒は合わされて1つとなった鍵と…呼び出そうとしている者の魔力。

 

魔力を注ぎ込み…勝手に口から出て来た名前…リュウマを呼び出した…。

 

辺り一面に黒い閃光が走ったかと思えば…ルーシィ達の後ろに真っ黒な門が現れた。

 

それがゆっくりと開き始め…中から手が出て来て門をこじ開ける。

 

 

出て来たのは…やはりのことリュウマだった。

 

 

「嗚呼…この状態は久方ぶりだ…もっとも、魔力で出来た仮初めの体だがな」

 

 

しかし…おかしい…というよりも有り得ない物が付いていた。

 

それは…鍵に施されていたような片方に白い羽が3枚…もう一方に黒い羽が3枚…。

 

 

       まさに…翼人だった

 

 

「えっ…リュウマ!?」

 

「リュウマ様!?」

 

現れた…というよりも呼び出した者がまさかのリュウマだと分かると驚きの声を上げる。

因みに、いつも腰に差している黒い刀は下げていない。

 

「必ず助けに行く…と言っただろう?」

 

そんな2人を見て面白そうに目を細めて笑って言った。

 

正気を取り戻したルーシィ達がそんな台詞に少し赤くなりながらも試合はどうしたのかと聞くと、これはただの魔力で出来た体だから本体は尚も試合中と答えた。

 

呼び出す対象はリュウマであるので、今ここに居るリュウマは魔法生物としてリュウマであってリュウマでない者になるはずなのだが…。

 

試合中のリュウマは一度に複数の思考をすることが出来る『並列思考(マルチタスク)』をすることで、試合中でありながらこの魔力で構成された体を動かしているのだ。

 

本来呼び出した者の魔力を合わせた分だけの魔力しか、この体には宿らないのだが…そこはリュウマ クオリティ。

 

本体からも魔力を注ぎ込むことで、そこら辺の魔導士なんぞ簡単に一捻り出来るほどの魔力を持っている。

 

「てか、その翼どうしたの…?」

 

「リュウマ様は鳥…だったのですか?」

 

「鳥…。いや…これはな?……仕様だ」

 

まさかの返答に2人ともずっこけた。

しかし、いつまでもこんな与太話をしているわけにはいかない。

 

何故なら、まだ敵は目の前にいるのだから。

 

「彼奴が敵か?」

 

「あ、そうなの!リュウマお願い!」

 

「私達にはもうリュウマ様に頼るしかないのです…」

 

そんな2人の願いを断るはずも無く、任せろと言ってウオスケと対峙した。

 

リュウマの後ろにいるルーシィとユキノは、相手が魔力で出来た魔法生物であるにも拘わらず…本物のリュウマの背を見ているかのように安心感を抱いた。

 

「どれ、俺も魔力を注ぎ込んだとはいえ…そう長く持つものでも無し。さっさと片付けてしまおうか」

 

「なんか1人…1羽…?増えたタイ。けど…結局は処刑に変わりは無いタイ!」

 

ウオスケには誰が現れようと関係ないようで、表情が変わっていないので分からないが、表情が変わっていたらきっと残忍な表情をしているだろう。

 

それに対して、リュウマは本体と同じようにニヤリと嗤った。

どんな相手であろうと関係ない。

結局は前に居る者を叩き潰せばいいだけなのだから。

 

「地形効果・『溶岩帯』!!」

 

「ほう…?」

 

先に仕掛けたのはウオスケであった。

 

ウオスケはリュウマの足下を溶岩帯に変えて焼き尽くそうとする。

 

しかし、今のリュウマは今翼を生やしている。

 

当然の如く大きな翼6枚をバサリと広げて羽ばたかせ、空中へと飛んだ。

 

「地形効果・『重力帯』!!」

 

「リュウマ!」

 

「リュウマ様!」

 

「案ずるな。俺に重力系の魔法なんぞ効かん」

 

空中に逃げたことによって重力を操って叩き落とそうとするも、直ぐに彼は重力を更に操って相殺した。

 

「クカカ…来い!空を飛ぶ手解きをしてやる!」

 

「た、ターーイ!?」

 

6枚の翼を一度大きく羽ばたかせるとその場から消え…次に出現したのはウオスケの真後ろだった。

 

背後に回ったリュウマはウオスケをガチリと抱き抱え、空へと飛んで空中旋回する。

 

そして段々旋回する速度が上がり、旋回しているので1つの円が出来上がった。

彼等の飛行する姿が目で追えなくなったところで一気に急降下し…

 

「『空円墜とし(イェンプティ・ドロップ)』!!」

 

「ターーーーイ!!!???」

 

現在の最高速度で地面へと叩きつけた。

 

その威力は凄まじく、周囲に隕石が落下したかのような衝撃が走り、ウオスケが叩きつけられた所は、1つのクレーターのようになっている。

 

翼をバサリと羽ばたかせて空を飛び、ルーシィ達の元へと戻ってくる。

これだけでも倒せたかとルーシィ達は思ったのだが…相手は王国最強の騎士団…まだ立ち上がった。

 

「た…タイ…ま、負けんタ…イ…」

 

しかし、足はガクガクと震え、痛んで動かせない右腕を左手で押さえながら立ち上がっていた。

 

どうやら頭も強打したようで意識が朦朧とするが、命令を受けた以上はやり遂げるのが部下である自分の務めである。

 

「お前達は…ここで…処刑する…タイ…!」

 

そんな自分に誇りを持っているウオスケはボロボロでありながら、前に佇むリュウマを(表情は変わっていないが)鋭く睨む。

 

そんなウオスケを見たリュウマは、またも翼を羽ばたかせて空へと飛び、今度はその場で旋回し始めた。

 

分かると思うが…旋回速度を上げて勢いを付けているのだ。

 

段々旋回する速度が上がり、先程の攻撃時と変わらない速度にまで達すると…ウオスケに向かって飛び駆けた。

 

「処刑だと?───ならば貴様が死ね」

 

「───ゴプッ…!」

 

どんなに相手が矜持を持っていたとしても、どんな大義があったとしても…やはりリュウマには全く関係ない。

 

相手がボロボロである…故に手を抜く?攻撃しない?回復させてやって説得する?

 

 

          何故?

 

 

ボロボロだからといって手を抜く理由が一体どこにあるのだろうか?何故攻撃しない?逆にチャンスの筈だ。

回復させて説得?誰だその脳内お花畑の奴は?

 

敵である以上は慈悲の心など持っていないし、そんなものは以ての外。

 

それ故にリュウマ現在の最高速度で懐へ飛び込み…腹を殴り抜き…背後にある柱を12本程破壊し、壁を3枚ぶち抜いた。

 

そこで…ちょうどウオスケの他の餓狼騎士団が壁突き破って現れ、全員が仲良く衝突した。

 

タイミングがいいことに、他のメンバー達も同じくタイミングで餓狼騎士団を倒したのだった。

 

「む、時間切れか…翼はやはり魔力を多く使うようだ」

 

そう言ったリュウマの体は光の粒となって足から少しずつ消えていっていた。

6枚の大きな翼は少し燃費が悪かった。

 

「リュウマありがとう!」

 

「私もありがとうございました。試合の方頑張って下さい」

 

「絶対優勝してね!」

 

「任せておけ。では…気をつけるんだぞ」

 

体は光の粒へとなって完全に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「鍵を使ったが故に危険だと分かって焦ったが…無事なようで良かった…」

 

闘技場にいる本体のリュウマは、今のところ無事であるルーシィ達を見れてホッとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウマの一撃で吹き飛んでいったウオスケによって開けられた穴を通ってナツ達と合流したルーシィ達は、ナツの尋問によって鎌を持っていた男から出口を教え…喋らせた。

 

鎌の男から出口の場所を聞き出した一行は、教えられた方角へと道を進んでいた。

因みに、アルカディオスはナツが背負っている。

 

「アルカディオス様…大丈夫なのでしょうか…」

 

「大丈夫と言えば大丈夫ですけど…」

 

「むしろ熔岩の中で生きてた方が不思議だよ…」

 

ホロロギウムに助けられたといえど、アルカディオスは溶岩の中に体を突っ込んでいる。

今はウェンディの回復を受けて多少マシにはなっているが、気絶しているのは変わらない。

 

リュウマが消える前に回復出来たら良かったのだが、直ぐに消えてしまったのでそんな暇無かった。

 

そもそも、溶岩の中を進んで無事で済んでいるのは…彼の身に付けている翡翠の宝石のおかげだ。

宝石が強力な護符になっているみたいだ。

 

「翡翠…あのドラゴン!」

 

「確か…姫の名前もヒスイ様だったと…」

 

「アルカディオスはここを出たら、姫に会えって言ってたわよね」

 

「エクリプスが正しいかは自分達で決めるといい…だったわね」

 

「その姫様にここに落とされたんだけどな!!」

 

ナツは未だに奈落宮に落とされたことを根に持っているようだ。

 

「…ッ!?オイ!あれを見ろ!」

 

リリーが驚きながら叫んだのに全員がその方向へ目を向けると…前方に巨大な扉があった。

 

出口だと思ったナツは、いきなり扉を破壊しようと走り出して火竜の鉄拳をかまそうとするが…扉は向こうから開かれたことによって不発に終わり、中へと滑り込んだ。

 

ゴロゴロと回りながら滑り込んだナツ。

そんなナツの滑り込みの勢いが殺され、止まった時…前に足が見えた。

 

その足を辿って上を向くと、頭から足首辺りまでフードですっぽり覆っている人物がいた。

 

扉の向こうから来たということもあり、警戒する一行だったが…

 

「誰だ…おまえ」

 

ナツが先陣切ってドストレートに問うた。

 

「…………。」

 

 

 

 

ナツに質問されたその人物は…一体何者なのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──華灯宮メルクリアス内

 

 

「姫様ー!!大変です!!」

 

姫であるヒスイの傍に兵士が走り込んで来て、派遣した餓狼騎士団が全滅した事を告げた。

 

元からヒスイの傍へと仕えていた兵士達は、餓狼騎士団全滅の報告を受けてパニックに陥っている。

 

──そうですか…やはり…

 

肝心のヒスイは、後ろで慌てふためく兵士達から見えないように安堵の笑みを浮かべながら溜め息を溢した。

 

「いけませんな姫。そのような表情をされては…考えが筒抜けですぞ」

 

「ダートン…!?」

 

国防大臣であるダートンは陛下と共に闘技場へ行ったと思っていたのだが、ダートンは妙な胸騒ぎがして戻って来ていたのだそうだ。

 

ダートンはヒスイにこの事態はどういうことだと問うて、ヒスイは何故裁判も待たずにアルカディオスを奈落宮に突き落としたのかを問うた。

 

しかし、ダートンは見抜いていた。

 

その奈落宮へと落とされたアルカディオスを救うために…妖精の尻尾(フェアリーテイル)を利用したということを。

 

そして、エクリプス計画の実権を握っているのはヒスイであること。

アルカディオスがダートンの前で憎まれ役を買って出たのは…その裏にいるヒスイを隠蔽するためであること。

 

「姫…今一度考え直して下され。あれは危険な物…世界は変えてはならないのです」

 

「いいえ…()()()()世界は変えねばならないでしょう」

 

「おそらく…?」

 

「これは誰にも言ってはならないと…()()()との約束だったのですが…あなたには話しておいた方が良さそうですね…エクリプス“(ツー)”計画のことを」

 

「2…!?」

 

「本当のエクリプス計画のことです。…この作戦が失敗すれば…明日…この国は滅びるのです」

 

ヒスイはダートンへ語り出した。

 

今まで誰にも言わず、秘密にしてきたエクリプス2計画という計画の全貌を…。

 

 

 

 

果たして…エクリプス“2”計画とはなんなのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまだ…ヒスイとダートン…それと“あの方”という者しか…知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




翼はシャドバのルシフェルみたいな形だと思って下さい。

色は片方の3枚が黒、もう片方の3枚が白

合わせて6枚の羽ですね。

うわぁ…超かっこいいやん…。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。