FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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第五一刀  最悪の未来 始まる戦い

 

 

奈落宮で餓狼騎士団を見事打ち倒し、開いた扉の向こうからローブに包まれた謎の人物とナツ達が邂逅している時、闘技場でも展開は進んでいた。

 

リュウマがシェリアを打倒し、次の相手を探して歩いている途中…ルーシィ達に渡した()()()()()リュウマを呼び出されたため、並列思考で戦っている時…エルザはメイビスに指定されていた場所へと来ていた。

 

シェリアは驚異的な回復力を持っており、フェアリーテイルの当たったメンバーによっては苦戦を強いられるのでリュウマが足止め、又は撃破を頼んでおり…その間にエルザがミネルバと当たるという作戦だった。

 

──初代の作戦ではここに来れば…セイバーの──ッ!!

 

「フッ…!!」

 

そう…()()()のだ。

 

『カグラだーーッ!!!!エルザの元にカグラが出現したーーー!!!!』

 

そこにはミネルバが来るはずであると予想していたメイビスは、まさかの予想だにしない相手の出現に固まって驚いている。

 

───初代の読みが外れた…!?

 

エルザも出て来たのがカグラだと分かって驚くが、カグラは既に抜いてはいないが、刀を構えている。

それに対して応戦するために、エルザも刀を抜刀した。

 

接近して斬り掛かってくるカグラに、刀で応戦して剣を交えていくが…どちらも凄腕の剣士。

観客からしてみれば、どちらも残像を残す程の速度で斬り合っている。

 

だが、肝心の斬り合っているエルザの身としては…額に多少の冷や汗をかいていた。

 

それもその筈…相手はリュウマの人生において初めてにして唯一の弟子だったカグラだ。

 

それも…7年間修業を欠かさず行ってきたカグラだ。

 

──つ、強い…!

 

カグラが描く剣閃は鋭く速く重い…まさに刀のための剣技だと言える素晴らしいものだ。

それ故に攻めることはおろか、あのエルザが防戦一方と化している。

 

──噂通りの武人か確かめさせてもらおうと思ったが…()()()()()実力ならば期待外れもいいところだぞ…妖精女王(ティターニア)!!

 

「ぐはっ…!?」

 

剣戟の中でエルザは突然後方へと吹き飛ばされた。

何かをされて吹き飛ばされたエルザは勢いを殺し、構え直すが…何をされたのか見えなかった。

 

カグラが行ったのは至極簡単なこと…ただ斬り合いの中でエルザの腹に掌底を入れただけだ。

 

師匠は剣もさることながら、体術であろうと何であろうと関係なく使うリュウマだ。

 

教えてもらったのが剣だけな訳がない。

 

──この戦い方…どこかで…?

 

エルザは身に覚えのある戦い方をされたが故に、その人物は誰だったか思い出せそうだったのだが…驚異的な速度で斬り掛かって来たカグラによって頭から消しざるを得なかった。

 

又も目で追うのが困難になるような速度で斬り合っていると…突如カグラとエルザの目前で空間が歪み…腕が現れて2人の顔を掴んで双方逆方向に投げ飛ばした。

 

『なーーー!!??ミネルバが乱入ーーー!!!!』

 

「妾も混ぜてはくれまいか?」

 

ミネルバがエルザとカグラの戦いに乱入したことで、三つ巴の戦いとなった。

 

それぞれが大会に出ているギルドの中で屈指の女魔導士だ。

この状態はメイビスを以てしても、予測不可能と言わしめる程のものだ。

 

ミネルバはセイバートゥースのマスターの実の娘にして最強の魔導士…その実力は双竜をも凌ぐ。

 

エルザはフェアリーテイルにおいて、周知の事実であるほどの女魔導士最強。

 

カグラはマーメイドヒールの最強魔導士にして、あのリュウマの弟子である。

 

各々が最強の称号を持っているだけあって、その3人がいる空間は強い緊張感に包まれていた。

 

「誰が相手であろうと…押し通る」

 

──エルザ…何故ジェラールを匿う…?

 

エルザが新たに現れた敵であるミネルバを見据えているとき、カグラは心の中でエルザに対して疑問を持っていた。

 

マーメイドヒールにはミリアーナが在籍しており、楽園の塔であったことや過去の話などを聞いている。

 

それ故にエルザがジェラールにされたことは、到底許せるはずのものではないのにも拘わらず、ジェラールを匿っているという事実。

 

それに対して疑問を持っていたのだ。

そんなカグラの内心を余所に、ミネルバは話し始めた。

 

セイバートゥースの信頼は今大会で大きく落としてしまっている。

それはフェアリーテイルとマーメイドヒールのせいだと言った。

 

「セイバートゥースこそが最強であることを証明するためには…そなた等()()()はまとめて始末してみせようぞ」

 

「大した大口だな」

 

「相手の力量を測ることも出来ないとは…愚かな」

 

それぞれが見合い…一気に駆け出した。

 

ミネルバは手に魔力を纏わせ、エルザは抜き身の刀を構え、カグラは納刀したままの刀を振りかぶる。

 

そして同時に衝突。

 

その威力は凄まじく、辺り一面に破壊の衝撃波を走らせた。

 

相手が3人と奇数であるため、エルザがミネルバを攻撃すれば防がれ、カグラがどちらかを攻撃する。

 

次にカグラがエルザを攻撃すればミネルバが誰かを攻撃するという戦いをしていた。

 

相手が1人で一対一ならば直ぐに決着がついたであろうが、現状は3人…なかなか勝負がつかない。

 

すると、ミネルバが2人を魔力にものをいわせて怯ませ、一気に攻撃へと出た。

 

「『イ・ラーグド(消えろ)』」

 

怯ませたところをどこか聞いたこともない言語で詠唱したミネルバは、2人の体を空間を操って閉じ込める。

そこから間髪入れずに又も聞き慣れない言語で詠唱し始めた。

 

「ネェル・ウィルグ・ミオン…デルス…エルカンティアス…『ャグド・リゴォラ』!!」

 

ミネルバの放ったヤクマ十八闘神魔法によって魔力が天高く上り…2人を包み込んだ。

 

しかし、2人は服こそ多少破れているもののほぼ無傷で耐えきり、ミネルバを鋭く睨み付けていた。

 

まさかのあの爆発でほとんどダメージが入っていないことに、実況も観客席の人間も口を大きく開けて絶句している。

 

「なるほど…よもやここまでやるとは計算外だ」

 

自身の魔法を食らってもほとんど無傷であるエルザとカグラを見ながらそう呟くミネルバ。

しかし、その顔には未だに余裕が見て取れた。

 

このままだと戦いの勝敗に埒があかないと判断したミネルバは、空間を操り1人の人間を出した。

 

「「…!ミリアーナ!!」」

 

ミネルバに痛めつけられ、囚われていたのはミリアーナだった。

 

ミリアーナには湾曲している空間が絡みついており、中にいる者の魔力を常に吸い続けている。

 

「そうだ…その表情が見たかった」

 

どちらにとっても大切な友人であるミリアーナを、痛めつけながら目前に晒すミネルバに怒り…鋭く睨み付ける。

そんな怒気や殺気混じりの視線を受けているミネルバは妖しく笑っていた。

 

しかし…その表情も直ぐに崩れ去った。

 

 

         『斬ッ!!』

 

 

「「!!!!」」

 

「何!?妾の魔法が…!?」

 

突如ミリアーナを閉じ込めていた空間魔法が乱斬りにされて解かれた。

 

そこへ一陣の風のようなものが通り過ぎ、倒れ込みそうになっていたミリアーナを受け止めて過ぎ去った。

 

「貴様は…本当に俺の威を狩るのが得意だな?」

 

現れたのは…リュウマだった。

 

先程ミネルバが放った膨大な魔力による爆発を感知し、ここへと向かっていたのだ。

皮肉なことに、最後まで残しておこうと思っていたリュウマを呼び寄せたのは、自分の魔法であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「力を…貸して…!」

 

「あれ…?今の声…」

 

「お前は…」

 

地下ではナツ達も前に現れたローブを羽織った人物が、泣きながら力を貸して欲しいと述べていた。

 

その時の声に…どういうことだと思い警戒を解いた。

そして…被っているフードをずらして顔を見せるとその顔は…ルーシィだった。

 

もう1人いるルーシィの存在に驚く面々。

何故もう1人がいるんだと思っていたナツ達に、そのもう1人のルーシィはエクリプスを使って未来から来たのだと言った。

 

「この国は…もうすぐ…」

 

そして何かを伝えようとしたのだが、疲れが溜まっていたのか倒れてしまった。

 

とにかく未来から来たルーシィをその場で放っておくことも出来ないので、ナツが担いでその場を一旦離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リュウマ!」

 

「師匠!」

 

──マズい…よもやこの場にリュウマが来るとは計算外もいいところだ…!

 

捕らえていたミリアーナを救い出されミネルバに鋭い視線を向けているリュウマに対して笑みを浮かべているが、内心焦っていた。

 

勝てないとは思ってはいないが苦戦はすると考えている身としては、どうにか聖十のジュラと当ててどちらか一方を倒させる。

 

そこで疲労している勝った方を生き残っているセイバートゥースで袋叩きにして打倒しようと考えていたのだ。

 

それが今では叶うことはなく、エルザかカグラかリュウマの誰かを相手にするしかなくなっていた。

 

相手が絞られてしまい、迷うが直ぐに決断した。

 

「妾の相手は…そなただ──エルザァ!」

 

空間魔法を使ってエルザを自身の前に移動させる…つもりだった。

 

「残念ながら…俺はエルザではない」

 

「何ッ!?」

 

移動させる対象はエルザで、目前にはエルザが来るはずなのに…前に居るのは嗤っているリュウマだった。

 

「貴様の魔法は何度も視ている。そんな魔法を俺が模倣出来ないとでも?甘いんだよ小娘!!」

 

「ガッ!?」

 

ミネルバが魔法でエルザを転移させようとした瞬間、リュウマは魔法でミネルバの魔法の転移先を自身へと弄って跳ばさせたのだ。

 

驚いているミネルバに蹴りを食らわせてその場から離らかせ、エルザにはカグラの相手を頼んで、自分はミネルバと戦うことにする。

 

「エルザ、カグラを頼んだぞ」

 

「分かった…!ミリアーナのこと…ありがとう」

 

エルザのお礼の言葉に対して頷きながらその場から一瞬にして消えた。

 

ミネルバにやられたことによってミリアーナは気絶してはいるが、それ程外的外傷が無いことにエルザはホッとした。

 

「ミリアーナが無事で良かった…それにお前の師匠とは───」

 

そこまで言ってその場から跳び引いた。

 

ミリアーナを安全な場所に運んでおいて、顔色を見ていたエルザにカグラが後ろから斬りつけてきたからだ。

 

「貴様が…貴様がミリアーナの仲間のフリをするな!!そして…貴様が師匠のことを語るな!!」

 

そう激昂したカグラに目を見開いて驚くエルザ。

 

 

今ここに…ギルドの最強女剣士の魔導士同士の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

「クッ…!そなた…妾の魔法に何をした!」

 

「敵に教えると思うのか?」

 

蹴られたことにより、エルザ達の元から大分離れてしまった所では、ミネルバとリュウマが対峙していた。

 

「貴様のことはルーシィを痛めつけていた時から気に食わず、どうしてやろうか考えていた」

 

「ふん、良いのか?妾には過剰な攻撃は加えられないぞ」

 

ルーシィを痛めつけていたミネルバから助け出すために、リュウマは試合における違反を犯しており、選手への過剰攻撃を許されない。

 

その事を示して嫌らしく笑うミネルバに、リュウマは全く動じていなかった。

 

「そうだな。過剰攻撃は認められていない…故に──貴様には俺の世界に来てもらう」

 

「…?何を言っておるのだ?」

 

俺の世界と言われ、いまいちよく分からないミネルバは首を傾げながらリュウマのことを見た。

 

見てしまった。

 

「今…貴様は俺の眼を見たな?」

 

「…!?何だその眼は!?」

 

大体の部分が赤くなり、黒い模様が入って不気味な眼をしたリュウマに驚くが…眼を見てしまっていた。

これだけで、ミネルバは最早リュウマの手の上なのだ。

 

 

「さぁ…来い。───『月読(つくよみ)』」

 

 

ミネルバを…自身の精神世界へと引き摺り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所ではガジルとローグが対峙し、戦っていた。

 

メイビスの作戦が最早機能していないことを悟ったガジルは、誰かと当たった場合に戦えばいいと思って適当にぶらついていた。

 

それでも中々敵と会えず、なんとなく塔のような場所に上ってみると、そこへローグが現れた。

 

バトルパートでは途中でナツによる妨害から、目標であるガジルと戦うことが出来なかったローグは、このチャンスを使って勝ってみせると口にした。

 

しかし、いざ戦って見れば一方的にやられるだけだった。

 

それもその筈、ガジルをナツと同じくらいの戦闘力とするならば、スティングと2人でも圧倒的実力差でやられたというのに…ローグ1人で勝てるわけもない。

 

ついでに言うならば、1日やそこらで力の差が埋まるわけではないので尚のことだ。

 

ガジルが全くの無傷で、ローグは傷を負って息も荒げさせて膝を付く。

 

そんな状態ならばこれ以上戦う意味はもうないと言ってその場から去ろうとするガジルだが…ローグのお前はナツ・ドラグニル程ではないという発言に足を止めた。

 

ローグは語った。

 

ガジルとは対面したことがあり、ローグはそんなガジルがいる幽鬼の支配者(ファントムロード)に憧れ…大きくなったら幽鬼の支配者(ファントムロード)に入るんだと息巻いていた。

 

だが、そんな幽鬼の支配者(ファントムロード)妖精の尻尾(フェアリーテイル)に抗争の末に敗れてギルドは解散。

 

事もあろうか、憧れの存在であったガジルは…その抗争相手であった妖精の尻尾(フェアリーテイル)へと入った。

 

最初こそ全く理解出来きず、信じられなかった。

 

よりにもよって所属していたギルドを潰した相手のギルドに入ったのだから。

 

「けど、お前が妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいる意味が分かってきたんだ。…仲間…だろ?」

 

「…………。」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)にそんな仲間意識など無かった。

 

セイバートゥースに所属するメンバー達は全員がマスターの兵隊であり、駒であった。

 

命令は絶対厳守で勝利こそが絶対だった。

 

ギルドとはなんだ、仲間とはなんだ。

 

深夜に襲撃して来たナツやリュウマの言葉に考えさせられ、今までずっと考え抜いてきた。

 

だが、今なら分かった。

 

それ故にフェアリーテイルが何故こうも強いのか、セイバートゥースが何故勝てないのか。

 

「カエルは…仲間だろ」

 

「カエル?」

 

そんなことを語ったローグに、ガジルはカエルは仲間だ…と言った。

最初こそカエル?と思ったが、すぐにフロッシュのことだと分かった。

 

「フロッシュはカエルじゃない!猫だ!」

 

「正確にはエクシードだ…な?」

 

「…そうだ…フロッシュはオレの仲間だ…」

 

──かなわないな…

 

自分では何もかもガジルには勝てないと悟り、小さく笑みを溢した。

これ以上は戦う意味が無い…そう思って参ったと声を上げようとしたその時…

 

        《ローグ!》

 

「──────ッ!?」

 

どこからか声が聞こえてきた。

 

誰の声なのか探るために首を回して辺りを見渡すも、それらしき人物はおらず、そんなローグを不思議そうに首を傾げながら見ているガジルだけだった。

 

《前を見ろ。敵はまだ目の前にいる。ローグ…ガジルを殺せ…それがお前の運命だ》

 

「誰だ!何処に居る!!」

 

「おい、どうしたんだお前?」

 

《バカめ…オレはお前の影だ》

 

ふと視線を感じて自分の影を見ていると…目が合った。

 

《力を貸してやる…ガジルを……殺せ…!》

 

「あ…ああぁあぁああぁあぁあぁあぁああ…!」

 

ローグは…何者かに取り憑かれた。

 

そこからは又も戦闘へと入った。

 

しかし、そのその戦闘は今までとは違い、ローグがガジルを圧倒していた。

 

ガジルが攻撃しようとしても影となってスルリと躱し、隙を見つけては攻撃を加えていく。

 

その状態のローグから感じる魔力は、メイビスの知識の中にも存在しない未知の魔力だった。

 

やがてガジルはローグに動けなくなる程に痛めつけられ、地へ倒れた。

そんなガジルを影か少しずつ呑み込んでいく。

 

「影がお前を浸食する。そして永久に消える…眠れ。暗闇の中で」

 

「…………ギヒ…。」

 

少しずつ体が影に呑み込まれていく中で…ガジルは笑った。

 

火竜(サラマンダー)に出来てオレに出来ねぇ筈がねぇ…」

 

「!?」

 

なんとガジルは…自身を呑み込もうとしていた影を…食べて吸収したのだ。

やがて全て吸収し…体を黒い影が包み込み…纏った。

 

「誰だか知らねぇが…その体から出て行け。それと…そいつはオレの弟分だったライオスだ。お前はオレに憧れてたんじゃねぇ…あの頃のオレはそんな男じゃなかったのはオレが1番知っている」

 

傷ついてボロボロであった筈のガジルは、ゆっくりと立ち上がってニタリ悪人のような笑みを浮かべてローグ…ライオスを見た。

 

「お前はオレに恐怖していたんだ。もう一度思い出させてやる───オレの恐怖を…」

 

ガジルは至ったのだ…ナツがラクサスの雷を食べて『雷炎竜』に至ったように…『鉄影竜(てつえいりゅう)』へと…。

 

「ギヒッ!」

 

「ぐは…!?」

 

ガジルはその場で影となって瞬時に移動し、ローグの背後へと移動すると腕を混に変えて殴った。

 

殴られたローグはそのまま倒れるように影となり、溶けるように地面の中に入って影のまま移動する。

 

それを見たガジルも同じように影となってローグの後を追った。

 

やがてガジルの影がローグの影に追い付くと、影の中から腕を伸ばしてローグを引き摺り出した。

 

引き摺り出されたローグはガジルに上空へと投げられ、影になって逃げる事が出来なくなった。

 

そんなローグにニヤリと笑いかけながら大きく息を吸い込んで魔力を溜め込み…

 

「『鉄影竜の───咆哮』ォォォ!!!!!」

 

───これが…オレの知らない…ガジルの…力…

 

強力な咆哮(ブレス)を放ってローグを呑み込み…戦闘不能にした。

 

「クク…所詮今のローグにはこれが限界か」

 

「ア?」

 

そう呟いたとき、ローグから1つの影の塊のような物が出てきて、地面を泳ぐようにして消えていった。

 

ローグに取り憑いていた影が気になるが…取り敢えずはガジルの勝利となって1ポイント獲得した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に別の場所では、索敵をしていたラクサスの元に、セイバートゥースのオルガが現れ戦闘となっていた。

 

どちらも雷を使うということで言い戦いをしており、なかなか勝負がつかないでいた。

 

するとそこへ聖十のジュラが現れて戦いの輪に加わった。

 

オルガは聖十大魔道を倒すチャンスだと思って意気揚々としてジュラへと向かって行ったのだが…

 

「甘いのぅ」

 

「ガッ…!!」

 

殴られて建物を突き破り、吹き飛ばされていった。

 

それを間近で見ていたラクサスは冷や汗を流すが、逆に燃えてきたと言って立ち向かって行った。

 

「『雷竜方天戟』!!」

 

「『岩錘』!!」

 

ラクサスの放った強力な雷の槍を隆起させた岩で防いで爆発させる。

 

リュウマとの戦いを見ていたのでジュラの戦いにおいての防御力は屈指であり、とても硬い。

 

そのため雷となって雷速で移動して近接戦闘を仕掛けていく。

ジュラもそれに乗って近接戦闘をしていくが、流石はリュウマとの戦いで善戦しただけあって近接戦闘もお手の物。

 

雷速で移動しているにも拘わらず打撃を与えてきてダメージを与えられていく。

しかしラクサスも負けじとダメージを与えていき…どちらも息を荒げていた。

 

するとそこへ予想外の事が起きた。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)を…なめるなァ!!───『雷神の荷電粒子砲』!!!!」

 

吹き飛ばされてやられたはずのオルガが、瓦礫の中から強力無比の雷の砲撃を放ったのだ。

 

それには流石に防御が間に合わず、直撃を食らってジュラは倒れてしまった。

 

「む…無…念…」

 

「テメェ…!」

 

「ハァッ…!ハァッ…!オレはまだ…やられちゃいねぇんだよ…!!」

 

ラクサスとの戦いのダメージもあってかジュラはオルガによってとどめを刺されてしまい、セイバートゥースに5ポイントが入ってしまった。

 

しかし、ラクサスはそんなことよりも…折角思う存分自分よりも強いジュラとの戦闘を楽しんでいたというのに、横やりを入れられて邪魔をされたことにキレていた。

 

オルガはそんなことは承知の上だが、セイバートゥースに所属して試合に臨んでいる以上は勝利こそ絶対。

例えやり方が汚くても勝つというのがオルガのやり方だった。

 

「テメェはぜってぇ許さねぇ…!」

 

「来いよラクサス…勝つのはセイバートゥースだァ!」

 

ジュラとの戦闘によるダメージが抜けきれず、最初こそオルガに攻め込まれていたものの…そこは雷竜の意地。

 

巻き返してオルガへダメージを与えていく。

互いにボロボロになりながらも殴り合い、蹴り合い…雷竜と雷神は互いを蹴落とそうとする。

 

殴り合いが始まってから10分以上が経過し、魔力も底をつきかけてきた両者は…次の一撃で決着をつけることにした。

 

「オレはセイバートゥースだ…!負ける訳には…いかねぇんだ…!」

 

「お前等のことなんか知らねぇよ。ルーシィの為にもこっちも負けられねぇんだよ…!」

 

最後の攻撃の為に魔力を籠めていく両者。

もはや底をつきそうであるが故に最後の一発となるが…どちらもそんなことを感じさせない迫力で睨み合っている。

 

「いくぜぇ…!──『120mm黒雷砲』!!」

 

「食らえ…!滅竜奥義──『黒御雷』!!」

 

同時に放った互いの魔力は、両者のちょうど中間で当たって大爆発し…2人を呑み込んだ。

 

そんな光景をラクリマや映像を通して見ている観客や、フェアリーテイル応援席にいるメンバー達は固唾を呑み込んで見守る。

 

やがて爆発による砂塵が晴れ…立っていたのは…

 

 

「ハァ…ハァ…妖精は…神をも食うんだよ…」

 

 

ラクサスだった。

 

 

オルガは地に倒れ伏しており、一時はどうなるかと思われたラクサスの戦いは、見事勝利で終わったのだ。

これで1ポイント獲得だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を少しばかり遡り、数十分前。

 

その時城に潜入してローブを被っていたルーシィを回収したナツ達は…絶賛城の中で迷っていた。

今は取り敢えず、城の食堂だと思われる場所に来ていた。

 

未来のルーシィを連れて来たはいいが道に迷って途方に暮れていると、未来のルーシィが目を覚ました。

 

城の中にいることに気がつき、このままでは王国軍に再び捕まってしまうと告げて移動することにした。

 

しかし、その前に聞いておかなくてはならないことがある。

 

何故ルーシィが未来から遙々過去へ来たのかということだ。

 

ウェンディにどうして未来から来たのかと問われた未来のルーシィは…最悪の未来を変えるためと言った。

 

「最悪の未来だぁ?」

 

「一体…あなたの未来では何が起きたのですか…?」

 

「…あたしが居た未来は───」

 

 

 

 

 

  一万を超えるドラゴンの群れに襲われる

 

 

 

 

 

未来のルーシィは…そう述べた。

 

城は崩壊し、街は焼かれ、人々は意味もなく殺される。

立ち向かった魔導士も等しくドラゴン達の前に沈んでいったそうだ。

 

そんなとんでもない話を聞かされて、ナツ達は呆然としながら絶句した。

 

やがて正気を取り戻したナツがドラゴンを向かい討つ為に意味の分からない装備などを揃え始めたが、ルーシィのこの話を信じるの?という言葉に嘘なのか!?と驚いていた。

 

未来のルーシィは嘘ではなく、本当のことであると言った。

 

しかし、少し恐かったのだ…こんな話を誰も信じないのでは?…と。

それに対してナツは何故ルーシィの言葉を疑うんだ?と、当然のことを言うように言い放った。

 

それには今度は未来のルーシィが絶句した。

それと同時に心の底から嬉しく思った。

 

「ねぇ…ドラゴンが来た時…。同じ城にいた私達はどうなったの…?」

 

「シャルル…察してあげよう?多分私達は…」

 

「………。」

 

シャルルの疑問に未来のルーシィは答えることが出来なかった。

 

未来のルーシィはドラゴンに襲撃され、何日経ったか覚えていないが…エクリプスのことを思い出したそうだ。

 

起動方法など分かるわけも無く、我武者羅に弄って扉を開けた。

もしかしたら過去に戻れるかもしれないと思って。

 

そしたら本当に戻ることが出来た…。

 

X791年…7月4日に…。

 

しかし未来のルーシィは地下を通ってジェラールと合流してほしいと言った。

 

一足先に未来のルーシィと邂逅したジェラールに、未来のルーシィは未来について全て話してあり、対策を練ってもらっていた。

 

対策を練るという言葉に引っかかりを覚えたナツ達だが、残念ながら未来のルーシィは対策を持ってきたわけでないと謝りながら言った。

 

そんな言葉を、先程から意識を取り戻していたアルカディオスは聞いていて疑問を覚えていた。

 

ヒスイが言っていたエクリプス2計画…それは未来人から教えられたもので、エクリプスのもう一つの使い方のことだ。

 

大魔闘演武を使って7年間もの間、エクリプスに集めていた魔力はエーテリオンに匹敵する程のものとなっている。

 

それを一気にドラゴンの大群に放出し、ドラゴンを殲滅する…。

 

それは目の前にいる未来のルーシィからヒスイへと教えられたはずだと。

 

──お前が姫にエクリプス2を助言したはず…4日に来たというのもウソだ…何故仲間にウソをつく!?

 

「本当ゴメン…これじゃあたし何のために来たのか…今日までどうしていいのか分からず、街をウロウロしてた…」

 

「いや…オレ達がなんとかする…ありがとうな。オレ達の未来の為に」

 

涙ぐむルーシィに、ナツは笑顔でそう言った。

後ろに居るミラやウェンディ、ハッピーやシャルルやリリーも、ルーシィにありがとうと言っているような笑顔を向けていた。

 

そんな中、ユキノは少し顔を俯かせ…アルカディオスは未来のルーシィが流す涙を見て…何かを確信したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───クロッカスから離れた場所

 

 

そこではジェラールが、未来のルーシィから聞いた未来で襲ってくる一万のドラゴンの対策をウルティアとメルディに話し手説明していた。

 

説明し終わったジェラールは、最後にルーシィが言った事が全て真実とは限らないと言った。

 

「全てが真実とは限らない?」

 

「それって未来のルーシィがウソをついているってこと?」

 

その言葉に疑問に思ったウルティアとメルディは質問するが、ジェラールは何かを考えていた。

そして口を開く。

 

王国に攻め込んで来る一万を超えるドラゴンの群れ…エクリプス…そして自分達が追っているゼレフに似た魔力…いくつか辻褄が合わないことがあった。

 

「ルーシィの言葉が虚偽なのか…ルーシィそのものが虚構の存在なのか…」

 

真実はまだ…分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───闘技場

 

 

闘技場の開けた場所では…剣を交えている音が響いている。

 

その音の発生源は、エルザとカグラだ。

 

ミネルバをリュウマが無理矢理連れて行ってから、カグラはエルザの事を何かの目の敵にしているようで斬り掛かってきた。

 

それに対して応戦しているのだが…いかせんカグラがとても強い。

 

下から掬い上げるような斬り込みに刀の腹を使ってガードするが、あまりの力強さに押し込まれた。

 

このままではダメだと思って後ろへと後退し、天輪の鎧へと換装して両手に二本の剣を換装した。

 

「天輪…『五芒星の剣(ペンタグラムソード)』!!」

 

五芒星を描くような刹那の内の5連撃の斬り込みを…カグラは冷静に受けて防ぎきった。

 

「甘い!!」

 

「ガフッ!?」

 

斬り抜けたことによって背後に居るカグラから、納刀したままの刀の打撃を背中から食らい、天輪の鎧を粉々に砕かれながら柱へと叩きつけられた。

 

そこへ間髪入れずに接近してきたカグラに、危険を察知したエルザは金剛の鎧へと換装する。

 

金剛の鎧は完全に防御のみに能力をまわした鎧であり、エルザが所持している鎧の中で随一の防御力を誇る。

 

「私の前に防御など無意味」

 

絶対防御力を前に、カグラは一気に踏み込んで刹那で7度斬った。

 

納刀しているので斬れないと思っていた鎧が…ものの見事に斬られ…7箇所から血が噴き出てきた。

やがて7箇所の亀裂から耐えきれなくなった金剛の鎧も砕け散り、エルザは痛みから膝をつく。

 

しかし直ぐに立ち上がり、カグラへと駆けて行った。

 

「飛翔・『音速の爪(ソニッククロウ)』!!」

 

駆けている間に、自身の速度を上げる能力を持つ飛翔の鎧へと換装し、驚異的な速度で斬り掛かり、一瞬で10を超える斬りつけをしてみせた。

 

「…ごふっ…」

 

そんなエルザは駆け抜けた先で血を吐き出す。

 

なんと一瞬で10を超える斬りつけをしたにも拘わらず、カグラはその全ての斬りつけを捌ききり、尚且つ反撃として逆に10度以上斬っていた。

 

「立て。この程度では終わらせんぞ」

 

「くっ…強い…!」

 

斬られすぎて痛む体を押さえながら立ち上がるエルザ。

 

 

 

 

 

前に居て此方を見据えるカグラの目は…とても冷たいものを含んでいた。

 

 

 

 

 




ラクサス達の戦いは、得点上こうなってしまいました。

こうなることなら、違う5ポイントを倒さしておけば良かったと後悔しています。


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