FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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日々少しずつお気に入りが増えていますので、目指せお気に入り1000!という事で頑張っていきます笑

感想などドシドシ待ってますので、感想初めての方でも気軽にどうぞ。

あ、それと…これから先の原作は知らない方も居るので、感想でのネタばらしはNGな方向でお願いします。




第五三刀  大魔闘演武終了 悲劇の幕開け

 

 

ミネルバを幻術世界で完膚無きまでに下し、カグラが敗北宣伝をしてフェアリーテイルに5ポイント入った。

 

それによって残った選手はセイバートゥースのスティングただ1人となり…魔法を空へと放って居場所を示したので、フェアリーテイルのメンバー達はそれぞれの場所から向かった。

 

やがて全員が揃い、スティングの前に立ちはだかって見据え、スティングはそんなメンバー達を見て眩しそうに見ていた。

 

「壮観だね。みんな…オレが7年前に憧れた魔導士ばかりだ」

 

「御託はいいんだよ。これが最後だ」

 

「一対一でやってやる。誰がいい」

 

「待て。ガジル、グレイ」

 

自信に満ち溢れているスティングに、ガジルとグレイが前に進み出て戦おうとするのを、手で静止ながらリュウマが止めた。

 

「スティング。俺が相手をしてやる。貴様が俺に勝てたのならば…俺以外の4人のポイントもくれてやる」

 

「…!」

 

『おぉー!!??リュウマは自分に勝ったら他4人のポイントもくれてやると発言したーー!!!!これだとスティングがリュウマに勝った場合…その時点でセイバートゥースの優勝となってしまう…!!果たしてそれでもいいのかーー!!!???』

 

実況が放送して事を告げることで観客は騒然としているが…フェアリーテイル応援席では全く動揺などしていなかった。

 

それは呆れかえっているわけでも、どちらにせよスティングに負けるからと諦めているからではない。

 

リュウマが誰を相手にしようが、絶対に負けることはないという信頼と確信故である。

 

それは今この場に居るエルザやラクサス、ガジルにグレイも同じ事であり、リュウマが負けたらポイントを持っていかれようが、そもそもリュウマが負けるとは思っていないので何も言わない。

 

「言ってくれるじゃんか…リュウマさん…。オレはこの時を待っていたんだ!レクターに見せてやるんだ…!オレの強さを…!!」

 

前に立つリュウマに鋭い目線を向け、そう吼えるスティングの体からは、今までよるも…ナツ達と戦ったときよりも高い魔力を感じた。

 

だが…

 

「─────ッ!!!!」

 

見てしまった…前に立つリュウマの眼を…

 

前に立つリュウマは別に、計り知れない魔力を迸らせている訳でも…何かの武術の構えをとっている訳でもなく。

 

それどころか自然体で何の構えをとっておらず、リュウマの代名詞とも言える武器を手にしている訳でもない。

 

 

なのに…勝てるイメージが…全く湧かない。

 

 

後ろに控えているエルザ達とてそうだ。

 

もう全身ボロボロで…軽く押せば倒れてしまうのではないかと思えるほどに疲労しているというのに…スティングを見る目には諦めも…敗北するかもといった感情を含んでいない。

 

あるのは勝利へと絶対的な確信。

 

リュウマを信じる心だけだ。

 

そんなフェアリーテイルのメンバー達を見て、一歩を踏み出そうとするも、嫌な脂汗をかき…手足は震える。

 

それでも、ミネルバにジエンマに消されそうになったレクターを助けてもらうも、優勝しなければレクターは渡さないと言われて未だに離れ離れの相棒の為にも…勝つしかない。

 

それなのに…膝をついてしまった…。

 

「か…勝てない…降参…だ」

 

そして…戦わずして敗北を認めたのだった。

 

今この瞬間に…万年最下位だと罵られていたフェアリーテイルは…見事大魔闘演武を優勝したのだった。

 

 

『け…決着!!!!優勝は──妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!!!』

 

 

「「「「────────ッ!!!!」」」」

 

 

闘技場内にいる人間達の大歓声が爆発した。

 

フェアリーテイル応援席にいるメンバー達は泣きながら喜び、他の者達と手を取り合って喜びを分かち合う。

 

そんな中で、リュウマは前で両膝をついて跪いているスティングの元へと向かって歩き出した。

 

そして何故最後まで立ち向かって来なかったのか?と問うてみると、スティングはレクターに会えない気がしたからだと答えた。

 

勝ちさえすればレクターに会うことが出来る…それなのに会えないという気がしたのだ。

自分にも分からないが…今の自分では会えないと感じたのだそうだ。

 

「エルちゃーーーん!!」

 

するとそこへ、ミネルバにやられた傷から回復したのかミリアーナが走ってきた。

しかし…その手には…

 

「レ…クター…?」

 

そう…眠っているレクターを持っていたのだ。

 

もう会えないと思っていたレクターが今…目の前に居る。

その事実だけがスティングを動かして走らせる。

 

直ぐさま立ち上がってレクターの元へと走りながら叫んた。

その声に眠っていたレクターにも聞こえて起き、こっちに走り寄ってくるスティングを見て、涙を流しながらミリアーナの腕から飛び降りて駆け出した。

 

やがて2人は涙を流しながら抱き締めあい、喜んだ。

 

実はレクターはミネルバの空間に囚われていた。

そこでリュウマは何と無しにミネルバの空間へと干渉し、中にある物を探ったのだ。

 

するとまさかの中からレクターが出て来た。

 

最初は何故レクターがミネルバの空間内にいるのか疑問を感じていたのだが、思い当たる節もないので取り敢えず、気絶していたミリアーナの横に寝かせておいたのだ。

 

因みに、なんで態々ミリアーナの横に置いてきたのかというと、ミリアーナは知らないがリュウマは楽園の塔の関係者を知っているので、ミリアーナが無類の猫好きだということを知っていたからである。

 

再会を喜び合うスティング達を少しの間見ていたリュウマは、エルザ達が居るところへと向かった。

 

「優勝だな」

 

「ま、余裕だったがな」

 

「ボロボロのくせに」

 

「オメーも同じだろうが!」

 

「こんな時ぐらい喧嘩はよせ…」

 

エルザ達はなんともいつも通りな感じにはなっているが、それぞれの表情には喜びが見て取れる。

やはり、優勝したことは嬉しいのだ。

 

「誰かルーシィ達が帰ってきたという報告は入ったか?」

 

「いや…まだ来ていないな」

 

ルーシィが無事であるのは、試合中に鍵を使って呼び出された時で知っているのだが…いかせんその後が分からない。

 

なのでルーシィ達が帰ってきたらテレパシーで伝えるようにウォーレンに言ってあるのだが、そんな連絡はまだ来ていなかった。

 

どこか胸騒ぎがするリュウマは、取り敢えずこの場を後にし、ナツ達が居るであろう場所へ向かってみることにした。

 

「エルザ、俺はナツ達を探しに行ってくる」

 

「そうか…ならば私も行こう」

 

「いや、お前は傷の回復をしておけ。それに、俺がすれ違う可能性もある」

 

「なるほど…分かった。ルーシィ達を頼んだ」

 

エルザの言葉に任せろと返して駆け出してその場を後にするリュウマ。

 

 

 

 

一体…城の方では何が起きているのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

──時を遡ること数分前

 

 

「みんなこっちよ!」

 

「お前よくこんな道知ってんな」

 

「せめてみんなが王国兵に捕まる未来だけは回避したかったから!」

 

餓狼騎士団を倒して扉を見つけ、その扉で会った未来のルーシィから恐るべき未来を聞いたナツ達は、今から王国兵達が押し寄せて来るという未来を教え、逃走をしていた。

 

未来のルーシィが必死に探し出したであろう逃走経路を進んでいくこと数分…こっちに向かってくる大人数の足音をナツが聞き取った。

 

「いたぞ!脱獄者だ!全員捕まえろーー!!」

 

ナツ達を見つけるや否や、直ぐさま捕まえようとしてくる兵士達に動揺を隠せない未来のルーシィ。

 

まさかこんな所にまで兵士がいるとは夢にも思わなかったのだ。

 

しかし、悲観することはない。

 

現地点は魔力を吸い上げるエクリプスから大分離れているため、ナツ達は魔法を行使することが出来る。

それに魔力も大分戻ってきていた。

 

いざ戦闘に入るといったところで、ウェンディが声を上げた。

 

「あ、あの…!アルカディオスさんとユキノさんがいません…!」

 

「何…!?」

 

「も~…!なんで勝手なことするかな~…!」

 

今そこにいた筈のアルカディオスとユキノが居ないことを教えるウェンディに、ナツ達は混乱するも、ミラがアルカディオスはともかくユキノは放っておけないということで探しに行った。

 

ミラが来た道を戻って探しに行き、ナツは前に居る兵士達を薙ぎ倒していく。

そこに戦闘フォームとなったリリーと、ルーシィが召喚したレオも合わさり、更に薙ぎ倒していく。

 

ただ一介の兵士過ぎない兵士が、魔法を使う魔導士に勝てるわけもなく、段々と押されていく。

 

やがて呼んできた兵士の中でも魔法を使う魔法部隊が到着し、ナツ達を攻撃し始める。

 

だが、やはり本職である魔導士には勝てず、押されていく。

 

するとそこへ…餓狼騎士団が到着した。

 

「餓狼騎士団をなめないでくれる?」

 

「タイターイ!」

 

「貴様等の理念はよく分かった…ここからは私の理念を通す。罪人を生かしたまま城外には出さない」

 

「しつけぇな…チクショウ…!」

 

倒しても倒しても、次から次へと現れる王国兵に加え、倒したばかりである餓狼騎士団までもが加わり、戦いは鮮烈を極めようとしていた。

 

 

別の場所では、ナツ達と密かに別れていたアルカディオスが自室に入り、己が戦の時にしか使わない真っ白な騎士の甲冑を身につけていた。

 

甲冑を付けた後は部屋を出て、堂々としているアルカディオスに困惑している兵士に無理矢理ヒスイがいる場所を聞き出して向かった。

 

思い出すのは未来のルーシィが涙を流していたところ。

 

──あれは嘘をついている者の涙ではない…嘘をついているのは…姫だ…!

 

確かめねばならない事が出来ているため、アルカディオスはヒスイがいる最上階を目指すも…そこには既に誰もいなかった。

 

ヒスイは既に…エクリプスへと向かっていたのだ。

 

エクリプス“2”改め…エクリプスキャノンを地上へと持っていくために…。

 

 

所戻りナツ達の所では。

 

また現れた餓狼騎士団の不意打ちによりウェンディが召喚された植物に絡め取られ、リリーの戦闘フォームの維持時間が過ぎて元に戻ってしまった。

 

万事休すか…と思われたその時…餓狼騎士団を含めた全兵士達の足下が真っ黒になり、ナツ達を除いた兵士達が全員沈んで行って消えてしまった。

 

「なんだこりゃ!?」

 

「兵士達が…呑み込まれていく…」

 

この時…街から離れた場所にいるジェラールは見落としていたものに気がついた。

 

ジェラールが街の中で未来のルーシィを見つけて事情を聞いていたとき、未来のルーシィは7月4日に来たと言った。

 

しかし実際には7月3日の24時だ。

 

毎年()()()()を感知していたというのに、やって来ていたのは最近…。

 

もっとも、ジェラール達が7年間もの間感知していた魔力の正体とはエクリプスで間違いなど無い。

 

だが…今年に限ってはそれが()()だった。

 

エクリプスというゼレフ書の魔法を使って未来から過去の現在へと来たために、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

未来から来たルーシィの言葉を全て信じるのであれば、未来のルーシィが来たのは3日の夜…では…7月3日の()()にジェラールが闘技場内で見たルーシィは…?

 

 

アルカディオスは急いで城の外の広大な広間に向かい、エクリプスを発動させようとしているヒスイ達を見つけた。

 

ヒスイに真実を語ってもらうため、一時の気の迷いでも主君であるヒスイの事を疑ってしまった自分に剣を突きつけさせ、ヒスイの言葉が嘘ではなかった場合、己自身で命を絶つとまで言った。

 

ヒスイはそんなアルカディオス押され…真実を語り出した。

 

「私は姫の言う未来人に会いました。エクリプス“2”計画など知らなかった…。これから起こることは知っていたが、対処法が無いと涙を流していました」

 

「いいえ…あの方ははっきりと対処法を私に示しました」

 

ナツ達が話しているところを気絶しているフリをしながら聞いていたアルカディオスは、未来のルーシィか対処法が無いと言っていたことを話した。

 

しかし、肝心のヒスイに関してははっきりと対処法を示したという。

この時点で食い違いがあるため、アルカディオスは叫んだ。

 

「ではその未来人が嘘をついていると…!?私には()()が仲間を騙して得する事が追い浮かばない!!!!」

 

これ以上ないという言葉をヒスイに言い放ったのだが…ヒスイは驚愕の表情をしながら震える声で告げた…。

 

「彼…女…?」

 

「!!」

 

「私に助言をした未来人は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ()()()()でした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェラールが夕刻に見たというのはルーシィではなかったのだ。

 

つまり…()()()()()()

 

 

 

 

ルーシィとは別に…未来から来た者が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王国兵がみんな…影の中に…」

 

「誰かいるぞ!」

 

「気をつけて!!」

 

王国兵を全員呑み込んだ真っ黒な影は消え、瘴気のようにもうもうと立ち上る霧のような影の奥から人影が出て来た。

 

その人物も同じエクリプスを使ったことで、ゼレフに似た魔力が残留していた。

 

「誰だ…お前…!」

 

「影がのびる先は…過去か未来か…はたまた人の心か…懐かしいな…ナツ・ドラグニル」

 

ではその人物は…

 

「お…お前は…」

 

「オレはここよりも少し先の時間から来た──ローグだ」

 

 

     一体何の為に来たのか…?

 

 

 

 

 

 

 

「未来人は2人いた…1人はルーシィ…仲間に未来の危険を伝えるために来た…」

 

「もう1人は姫に危険を伝えるために来た…」

 

食い違いを明らかにしたアルカディオスは呟き、それに近くにいた国防大臣のダートンが確認する。

事の成り行きは周りにいる兵士達に不信感を抱かせた。

 

「2人共目的は同じ、この国を救うために来たのです。仮に3人目4人目がいたとしても…私は驚きません」

 

「…姫?」

 

ヒスイの言葉に驚いているアルカディオスに、突きつけさせていた剣を、騎士ならば剣を向けるべき処へと言って返す。

 

「私は扉を開きます。この国を救うために…私は剣を抜くのです」

 

そう告げるヒスイの目は絶対的な決意の炎を灯しており、どれだけの想いがあるのか見て取れるほどのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「王国兵を一掃して助けてくれたのかい?」

 

「お前…雰囲気変わったな」

 

霧のような影の奥から出て来た未来のローグに、みんなは動揺を隠せない。

 

そんな未来のローグに対してなんも言えばいいのか迷っていると、シャルルが先陣切って質問することにした。

 

「未来から態々何しに来たの?」

 

質問されたローグは薄く笑いながら扉を開く為だと言った。

その言葉に現代のルーシィがエクリプスの事かと思わず叫び、未来のローグは話し始めた。

 

エクリプスには2つの使い道がある。

 

1つは未来のルーシィや自分がやったような時間移動。

 

そしてもう一つは攻撃用兵器の(エクリプス)・キャノン…。

 

これからこの街へと攻め込んでくる一万を超えるドラゴンを倒すことの出来る唯一の手段だと。

 

──一万のドラゴンを…倒せる…!?

 

未来のローグの話しを聞いていた未来のルーシィは、心の中で話の内容…エクリプスキャノンについて驚愕した。

 

「じゃあ話ははえーな!味方って事じゃねーか!」

 

「やったー!ドラゴンを倒せるんだね!」

 

「未来は救われるんですね!」

 

「──いや、話はそう単純なものではない」

 

ローグの話を聞いてドラゴンを倒せると喜んでいたナツ達に、未来のローグは話を続けた。

 

未来のローグは文字通り未来から来た。

 

そしてそんな未来のローグは今から7年後の未来から来たのだそうだ。

 

その時代では世界がドラゴンによって支配され、生き残っている人類は元の1割にも満たないらしい。

 

エクリプスも今のような力はもう残っていない。

 

「今ここでドラゴンを止めなくては世界が終わる」

 

「だから扉を開けてぶっ放すんだろ!?簡単じゃねーか!」

 

「しかし7年前…扉を開くのを邪魔する者がいた」

 

ローグが言うには、その者のせいで扉は開かれることはなく…一万を超えるドラゴンに向かってE・キャノンを放つことが出来なかった。

 

世界を破滅へと導いた者がいたと言った。

 

「オレはそいつを抹殺するためにここに居る」

 

「物騒な話ね。その人に事情を話せば邪魔なんてしないんじゃないかしら?」

 

「何も殺す必要はないだろう」

 

シャルルとリリーがそう言ってローグを見るが、ローグは首を振って否定した。

 

「例え今説得出来たとしても…そいつは必ず扉を閉める。そう決まっているのだ」

 

「…決まっている?」

 

「運命からは逃げられない。生きる者は生き、死ぬ者は死ぬ…扉を閉める者は扉を閉めるのだ。例え何があっても生きている限り…」

 

ローグの言い回しを上手く理解出来なかったナツは、ローグに結局その邪魔者は誰かと聞いた。

 

するとローグはとある人物の方へと顔を向ける。

 

「お前だ──ルーシィ・ハートフィリア!!」

 

「───え?」

 

「───ッ!?ルーシィ!!」

 

ローグは魔法で造り出した剣を…ルーシィに向かって投げた。

突然の事でナツが反応した時には遅く、ナツの横を通り過ぎていた。

 

このままルーシィへと突き刺さり──

 

「───ゴプッ…」

 

死んでしまうという前に…未来のルーシィが前に躍り出て剣を体を張って受け止めた。

 

それによって夥しい量の血を口から吐き出して倒れ込む。

 

「ちょ…ちょっとアンタ…!!」

 

「ルーシィーーーー!!!!」

 

「ルーシィが2人…だと…?」

 

庇われた現代のルーシィは未来のルーシィを慎重に抱き上げて傷口を手で押さえるも…血が全く止まらない。

 

「しっかりして…!」

 

「あ…たし…扉なんて…閉めて…ない…コフッ…」

 

「分かってる…!あたしはそんなこと絶対しない!!なんで…何で自分を庇ったの…!?」

 

未来のルーシィは目を細め、口から血を吐き出しながらも言葉を紡いでいく。

 

「あんたの方が…過去の…あたし…だか…ら…あんたが…死んじゃうと…どうせ…あたしも…消えちゃう…の…自分に…看取られて…死ぬの…って…変な…感じ…」

 

「あたしだって変な感じよ!!死なないで!!」

 

「もう…いい…の…」

 

レオがウェンディに回復出来るかと問えば、涙を流して口を手で覆いながら首を振った。

それ程深刻なダメージを負っており、回復する見込みは無いのだ。

 

「2度と…会えないと…思ってた…みんなに…もう一度…会えた…あ…たしは…それだけ…でも…幸せ…」

 

そう言った未来のルーシィは、涙を流して出来るだけの笑顔でそう言ったが…少し笑顔が曇ってしまった。

 

「でも…心残りは…リュウマに…会って…お話し…したかった…な…」

 

もう命の灯火が消えてしまう間際…その際に思い浮かんだのは…自分の大好きな人の顔だった。

 

大魔闘演武の映像にリュウマが映っていた時、会いたくて…でも会えなくて…人知れず暗い街の路地裏で声を潜めて泣いていた。

 

自分が想いを寄せる相手が今、ここに来れないのは知っている…彼は大魔闘演武最終種目に出場しており、今もギルドの為に戦い続けているのだから。

 

でも…やっぱり…会いたいな。

 

そう願わずにはいられなかった。

 

本来ならば会うことが出来ずに終わるあろう場面ではあるのだが…未来から来てまで仲間を救い出そうとする勇気ある勇ましき少女に…女神は優しく微笑んだ。

 

 

 

──斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬ッ!!!!!

 

 

 

近くの壁に線が幾度も刻まれて粉々に崩壊された。

 

刹那の内に壁を細切れにする…それ程の斬撃を生み出すことの出来る人物など…彼しかいない。

 

「ここら辺でナツ達の魔力を感知したのだが…ん?あぁ、やはりここにいたか」

 

未来のルーシィが死に際に望んだ…リュウマであった。

 

いざという時には必ず来てくれるリュウマの登場に、喜びながら未来のルーシィの元へ急ぐように声をかける。

 

「リュウマ!早くルーシィの所へ!」

 

「リュウマさん!早く!」

 

「ルーシィが2人…?…分かった!」

 

急かされたリュウマは、倒れて血を流すルーシィに気がついて急いで向かい、膝をついてルーシィを抱き上げる。

 

望んだ人物が来てくれた事に、未来のルーシィは瀕死でありながらも綺麗な笑顔を作った。

 

「わぁ…リュウ…マだ…会えて…嬉しい…なぁ…」

 

「ルーシィ!しっかりしろ!今治してやる!!」

 

傷を治そうと手を翳したリュウマに、ゆっくり首を振って答えた。

自分の体なのでもう手遅れである事はわかっているのだ。

 

「最後に…リュウマ…に…会え…て…よかっ…た…」

 

「最後なんて言うな愚か者!!な…何故こんな事に…!」

 

ルーシィに縋り付こうとしたハッピーだったが…そっと肩に手を乗せられたことに振り返ると…涙を流しているナツがおり、首を横に振った。

 

ハッピーはそんなナツに抱き付いてナツもハッピーを抱き締め、2人で一緒に涙を流しながらリュウマ達を見守った。

 

「あたしは…この時代の…この世界の…人間じゃ…ない…この世界の…()()()は…仲間と…一緒に…生きて…いく…だから…ね…悲しまない…で…?」

 

「悲しまないで…?そんなもの…無理に決まっているだろうがッ!!誰が何と言おうがお前は…お前だろうっ…仲間…なんだぞっ?悲しいに決まっているだろう…!」

 

「嬉しい…な…。ね…ギルドマーク…見せて…?」

 

未来のルーシィは現代のルーシィに向かってそう言って震える左手で現代のルーシィの手を掴んでフェアリーテイルの紋章を愛おしそうに見た。

 

「アンタ…右手…!」

 

「ルーシィ…右手が…!」

 

未来のルーシィにはもう…ギルドマークが刻んである右手が…無かったのだ。

 

「もっ…と…冒険…したかった…なぁ…」

 

「そんなものいくらでも連れて行ってやる!!そうだ…!大魔闘演武優勝したぞ!万年最下位から優勝したんだ!これから数多くの新人が入ってくる!そしてそれ以上に多くの仕事が入ってくるぞ!それらを一緒にやっていこう!…だから…逝かないで…くれっ…」

 

とうとうリュウマの目には涙が浮かび…声が震えた。

 

頭の中を流れるのは…いつも笑顔で話しかけてくれるルーシィ。

 

家賃が払えないと泣きついてくるルーシィ。

 

美味しい物を見つけたからと、他には内緒でこっそりデートに誘ってくるルーシィ。

 

人一倍怖がりなのに、いざという時は相手が誰であろうと勇ましく戦うルーシィ。

 

そして…行こうって言いながら右手を差し伸べるルーシィだった。

 

「リュウマ…未来を…守ってあげて…」

 

「やめてくれ…逝かないで…くれっ…逝くな…逝くなルーシィ…!!」

 

声だけではなく、手も…体も震える中で未来のルーシィの左手をギュッと握り締めるリュウマだが…未来のルーシィは少しずつ目を閉じていった。

 

そして最後に───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ねぇ…リュウマ?…あたしね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    あなたのこと…大好き…だったよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未来から来た勇気ある美しき少女は…想いを寄せる者の腕の中で…幸せそうな笑みを浮かべながら…この世を去った。

 

 

 

       嗚呼…またこれか…

 

 

 

「扉を閉める自覚が無かった…?」

 

「何が扉よッ!あたしは絶対そんなことしない!なのに…!」

 

「今は…な。だが…数時間後にお前は扉を閉める」

 

「あたしは扉なんて閉めない!めちゃくちゃな事言って…あんた何が目的なのよ!!」

 

「扉は閉まる。そう決まっている…お前が生きている限り…!」

 

 

 

()()…大切な者を目の前で死なせてしまった…俺は何も学ばない…気がついた時には手遅れ…遅すぎる

 

 

 

「お前の言葉に真実などない!全ては運命によって決まっている事だ!!」

 

「運命なんてオレが焼き消してやるッ!!ルーシィの未来は奪わせねぇ!!」

 

 

 

     何故…こうなるのだろうか…

 

 

 

「ルーシィ!リュウマ!ここから離れて───」

 

「「「「────────ッ!!!!」」」」

 

瞬間…身の毛もよだつような圧倒的魔力を…リュウマから感じた。

 

何時もならば圧倒的魔力で終わりなのだが…今回ばかりは…全てのものに対して攻撃的な魔力を感じた。

 

そして…リュウマがいつも腰に差している純黒な色をした刀が…カタカタと独りでに震えている。

 

やがてカタカタからガタガタへと変わり…ビキリという音がした。

 

実際に刀に罅が入ったわけでも無いのに…何かが壊れるような音…その音はまるで…

 

 

 

 

何かを封じ込めているモノが…内側から壊されかけているような音…

 

 

 

 

    『愛しているぞ…我が息子よ』

 

 

     『元気でね…リュウちゃん』

 

 

 

「───ッ!!ア″ア″ァ″ア″ア″ァ″ア″アァアアァアアアァアァアアアァアアァアアアアァアアァアァアアアアァアアァァアアァアアァアァアァアァ──ッ!!!!!」

 

「リュウマ!?」

 

「おい大丈夫か…!?」

 

余りにも常軌を逸したリュウマの反応に、その場に居たローグ以外の者達が心配そうに駆け寄る中…リュウマは背中を丸めてその場に跪く。

 

すると…リュウマの和服の背中部分…肩甲骨辺りが一気に破けて素肌を現した。

 

その素肌が突如盛り上がり…何かが皮膚を突き破って血を撒き散らし…外へと飛び出してきた。

 

「ヒッ!?」

 

「こ…これは…!」

 

「ほ…骨?」

 

そう…骨。

 

それも細い骨が6本…背中の内側から出て来たのだ。

 

6本の細い骨はそれぞれ広がっていき…やがて突き破った背中から赤い管のような物が伸びてきて骨へと巻き付いて端々へと張り巡らされていく。

 

それはまさに人間の体に張り巡らされている血管であった。

 

今度は赤い肉のような物が這い上がって血管の下に形成されていき、内側にある血管も巻き込んで包み込んでいく。

外側からだと分からないが、中では神経すらも通っていく。

 

最後に片方に真っ白な羽が生え始め…もう片方の所でも真っ黒な羽が生え始めた。

 

やがて6つの場所の羽が生え終わり、バサリと1度羽ばたいた…。

 

そのたった1度の羽ばたきで…周りに暴風を生んだ。

 

ナツ達は吹き飛ばされないようにどうにか耐えて凌ぎ、恐る恐るリュウマの方を見れば…立ち上がって骸となった未来のルーシィを見下ろしていた。

 

現代のルーシィには見覚えがある姿だった…餓狼騎士団のウオスケを倒すために呼び出した時の魔法生命体としてのリュウマそのものだったのだから。

 

 

これが…これこそが…リュウマ自身によって隠されていた()()姿()だったのだ。

 

 

ナツ達は魔力が悲しみや怒りによって魔法が暴走を引き起こし、魔法として出来た物だと思っているが…そうではない…。

 

 

 

     ()()()()()リュウマなのだ

 

 

 

「…っ…死ねッ!」

 

未来のルーシィに気を取られている内に現代のルーシィを殺そうと接近したローグであるが…

 

「──『失せろ』」

 

「ガハッ…!?」

 

リュウマのたった一言により、無理矢理距離を取らされた。

まるで見えない壁が迫って押し返してきたような感触に戸惑うローグであるが、リュウマの力によるものだと理解した。

 

後方に下がったローグを一瞥したリュウマは、倒れている未来のルーシィへまた膝をついて抱き締め、その大きな6枚の翼で自分と一緒に優しく包み込んだ。

 

包まれた翼の隙間から黒い閃光が一瞬だけ走ると、翼を広げて未来のルーシィを解放する。

 

未来のルーシィの血まみれで傷があった体は…綺麗に傷一つ無い状態へとなっていた。

服も同様で破れた部分も繋がって綺麗になっていた。

 

「…ナツ」

 

「はひぃ!?」

 

翼が生えるという事態に混乱していたナツは、突然話しかけられたことに驚いて声が裏返ってしまったが返事をした。

 

「…俺はルーシィを連れて地上に出る。その小僧はお前に任せるぞ」

 

「…おう!任されたぞ!」

 

リュウマの言葉に大きく頷いて承諾したナツはローグの元へと向かって駆け出していった。

 

「…!逃がすか!!」

 

「お前の相手は…オレだコノヤロウ!!!!」

 

向かってくるローグに炎を灯した拳が顔を捉えて殴りつける。

後方までまた引き摺られたローグは、忌々しそうにナツを見た。

 

そこから激しい戦闘が始まるのだが、未来のローグの相手はナツに任せているので、リュウマ達はルーシィを連れて地上へと避難した。

 

──…感情に左右されたしまったおかげで此奴の()()()()()()()()()しまい…それを制御するのに力を使っていれば、違う封印に綻びが出た挙げ句解けて翼が出てしまう始末…誤魔化す方法を考えておかねばならんな…

 

自分には強大すぎる力故に暴走をする…なんてことは有り得ない。

 

何故ならば、それは自分の力である以上制御するなどの話ではなく…如何に使うかという話だからだ。

 

他の世界では余りある力のせいで暴走したりする者達(主人公)がいるが…それは所詮その者達が未熟だからだ。

 

自分の力を受け入れ、如何に使うかという考えに至って鍛練を積めば…そんな強大な力なんぞ手足のように使うことが出来る。

 

リュウマが余りにも莫大な魔力に封印を施しているのはただ単純に、封印していないだけで周りに被害が出てしまうからというだけだ。

 

例え封印を全部解いたとしても勿論のこと制御…というか使うことが出来る。

 

ただ今回は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので掛け直している間に違う封印が解けてしまっただけだ。

 

だが、結局は翼が生えてくる場面もバッチリ見られてしまっているため、どういう言い訳を言おうか迷っているだけだ。

 

まぁもっとも、ナツ達は人間に翼が生えるとは思っていないので魔法だと思っているので、翼が魔法であると言って信じさせるのは簡単なのだが。

 

──フゥ…それよりも…ずっと気になっていた一万のドラゴンはどこから来るというんだ…?ドラゴンはアクノロギアを除いて()()()()()というのに…

 

この世界にはアクノロギアを除いてドラゴンはもう一匹も存在していない…だというのに一万という数多のドラゴンが攻めてくるという…意味が分からなかった。

 

地下にあった竜の屍が転がる空間で聞いたジルコニスの話でも、アクノロギアと人間によって全部殺されたと言っていた。

 

 

ならば…その一万のドラゴンは何処から来るのだろうか…?

 

 

──一万のドラゴン…何故だ…未来のルーシィが死んでしまった時と同じような胸騒ぎがする…。

 

「どうかしましたか…?リュウマさん」

 

「考え事かい?」

 

「この翼って飛べるのに使えるの?」

 

難しい表情をしながら走っているリュウマに、ウェンディやレオが気に掛けて声をかけてくれた。

ルーシィは呼び出した時と同じように飛べるのか気になっていたようだ。

 

「いや…何でも無い。取り敢えず地上まで急ぐぞ…因みに飛べる」

 

各々は地上目指して走って行った。

しかし、そんな地上では既に…ヒスイによってエクリプス計画が実行されていたのだ。

 

 

 

 

未来のルーシィの死によって…絶望の未来は回避できるのか否か…

 

 

 

 

   それはまだ…誰にも分からないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ…翼触っていい…!?」

 

「わ、私もお願いします…!」

 

「……別に良いが…(汗)」

 

 

 

「…ふわぁ…柔らかいですぅ…」

 

「…なにこれぇ…すっごいふかふか…気持ちいぃ…」

 

「んっ…おい待て…それ以上は…ひゃっ!?」

 

 

「ここかな~?ここがいいのかな~?♪」

 

「気持ちいいですか~?♪」

 

「ハァ…ハァ…ふっ…ぁ…やめ…あぁっ…!」

 

 

「…君達…僕の存在忘れてない?」

 

 

 

 

 

…神経通っているので案外弱点だったりする。

 

 

 

 

 




まぁ、大体の人が予想していた通りですね笑

強大な力を持ってる主人公が暴走したりしますが、何故に暴走するんでしょうね?
自分の力の一端だというのに…

…男の荒い息遣いとか誰得だよ(ボソッ

…ん?誰か来たよう──斬ッ!


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