FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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やっと出せた……。

最後の後書きまで読んでくれると嬉しいです。




第六二刀  謎の女 始まる戦い

 

ギルドフェアリーテイルから出て来たリュウマは走って行くよりも、文字通り飛んで行った方が確実に早いと決断して自身に掛けている例外的封印を解放した。

本来多過ぎ強すぎる己の純黒なる魔力を周囲に撒き散らし、要らぬ被害を生まないようにと掛けておいている封印なのだが、封印の中に例外的封印を施しているのがある。

 

大魔闘演武を優勝してから、ルーシィ奪還に向かったナツ達の元へと合流したリュウマが、未来から来たルーシィを自分がいない間に殺されかけ、剰え腕の中で死なせてしまった時の怒りと悲しみから外さないようにとしていた封印を外してしまった。

 

 

「封印解放──────出でよ…我が翼」

 

 

背中から生えてきたのは…ドラゴン達と戦っている時に仕方なくも使っていた3対6枚の白と黒に別れた美しき翼。

光り輝いているわけでもないのに、つい目を細めてしまうような奇跡的造形美を持つその翼は…リュウマの元から持っていた翼人の翼だ。

魔法による飛翔でも十分速度が出るのだが、いかせん機動力が疎かになってしまう面がある。

少しとはいえ存在するデメリットを少しでも無くして急ごうということだ。

 

 

「ヤジマが経営している店がある街…だったな。此所からならば出せるだけの速度で…10分といったところか」

 

 

準備運動の要領で一度羽ばたかせると1メートル程空中へと浮き上がり、二度目の羽ばたきで遥か上空へと急上昇していった。

初速からの今日加速によって大気を震わせる程の衝撃が走るが、幸いなことに空中での衝撃なため周囲の物を破壊するということはなかった。

 

人が米粒に見える程まで上空へと上昇したリュウマは、魔力の大放出による推進力を得ながら街へと飛翔していった。

体の中に内包する膨大な魔力を、推進力という面にだけ使ったことで速度は音速を超えた。

超音速飛行によって轟音が鳴り響きながら衝撃波が発生し、通り過ぎた雲を消し去り快晴の空へと変化させていった。

 

脳内で計算していた到着時間に近い9分程経った頃、遥か上空にいるが故に見える、街を呑み込み民間人を今も尚苦しめ続けている黒い霧…魔障粒子によるアンチエーテルナノ領域が見えてきた。

 

人にはとびきりの有害さを持つ魔障粒子に生身で近付くのは愚の骨頂…故に民間人を守るために派遣されてきたフィオーレ王国の軍が先に到着し、ゴテゴテの防寒着のような物を着ながらガスマスクを嵌めて民間人を魔障粒子内から救い出していた。

 

しかし、範囲が民間人の大凡2000人が住むというそれなりに大きい街での被害であるからこそ、魔障粒子の霧の中にいる民間人を全て救うということはまだ出来ていなかった。

二時間しても救い出せない程に危険…だということだ。

今は魔法を使って風を起こし、救い出した者達に降り掛からないように進行方向を変えさせているが、耐えきれなくなるのは時間の問題である。

 

入り口だと思われる場所で数多くの兵士達が治療とは言わずとも、魔障粒子による体内汚染を遅らせようと魔法を使って民間人を看ている塊を発見したリュウマは、下へと急降下しながら落ちていった。

 

あと少しで地面に衝突するといったところまで来たところで、一度ふわりと翼を羽ばたかせ推進力を緩和し、危なげなく着地した。

何か落ちてくると騒いでいた兵士達は相手が大魔闘演武で活躍し、他にもドラゴンを倒す手助けをしてくれた密かに英雄扱いされているリュウマだと知ると安堵した。

 

地べたに布のような物を敷いて患者を寝かせ、一人につき一人の魔法を使える兵士がついて魔法を施している。

足りないところには派遣されて来たのであろう、白衣などを着ている医者が必至に声をかけたりなどをして安否を確認している。

被害が甚大であるということが分かる光景を目の端で捉えながら、リュウマは街へと向かっていく。

 

 

「───リュウマ殿!」

 

「…ん?アルカディオスか?」

 

 

後数十メートルで街へと辿り着く…といったところで話しかけてきたのはアルカディオスであった。

国の内部にある街が汚染され人々が苦しんでいるということを報告されたフィオーレ王国の王は嘆き悲しみ、アルカディオスその他大半の兵士をこの街に向かわせ、人々を救い出す手助けをさせていたのだ。

 

到着してから1時間程しかまだ経っておらず、救い出せた人々は少ないが、派遣されずにいて今救い出されている者達がまだ霧の中にいるよりはまだ良い方だ。

突如のリュウマの出現に驚いていたアルカディオスであるが、助けに来てくれた増援だと分かると安心したような顔付きになった。

 

 

「リュウマ殿が入れば千人力です。して…あなたにはこれから───」

 

「俺はこの邪魔な霧を消してくる。その為に来たのだからな」

 

「な、なんと…!そんなことが出来るのですか!?」

 

「でなければ来ないだろう。今はこっちも色々あって忙しいんだ」

 

 

内容がいまいち分からない話に首を傾げるのだが、取り敢えずはリュウマが来てくれた事に感謝した。

ましてや、現状どうすることも出来ないでいた魔障粒子の霧を除去してくれるときた。

これ以上うまい話というのは無いだろう。

 

 

「それで…どうすればこれは消えるのですか?」

 

「俺が中に入って霧を全て一箇所に集める」

 

「───む、無茶だ!!!!」

 

 

作戦内容を聞いたアルカディオスは顔を青くしながらも険しい表情でリュウマへと詰め寄った。

前に来てまるで通せんぼするように進行を妨げるアルカディオスに、苛つきを覚えながらもリュウマは横を抜けて街へと近付いていく。

 

折角来てくれた最高戦力をここで失うわけにはいかないと考えているアルカディオスは、どうにか考え直して貰えるよう説得する為に腕を引いて止まらせて足止めした。

腕を引かれたことで邪魔をされたリュウマはアルカディオスに冷たい目を向けながら振り向いた。

 

 

「今ここであなたまでも動けなくなるのは我々にとっても大打撃となる!ここは焦る気持ちを抑えて我々の指示に───」

 

「───おい」

 

「がはっ!?」

 

 

何時までもペラペラと喋って邪魔をしてくるアルカディオスに頭にきたリュウマは、掴まれている腕を振り払いながら胸倉を掴み上げた。

足がつかない程にまで持ち上げられたアルカディオスは、胸倉を掴んでいるリュウマの手を握って藻掻く。

ドラゴンとの戦闘である程度成長したかと思えば成長しておらず、口喧しいだけのアルカディオスを睨み付けた。

 

 

「俺は今なんと言った?霧を消しに来たと言ったんだぞ。そんな俺が何の対抗策も無しにノコノコここまで来たと思うたか?笑わせるな小僧。貴様にとって不可能の事を可能にする事が出来る俺を止める暇があるならば───魔障粒子に侵されている民間人を一箇所に集めさせておけッ!!」

 

「ガッ!?ゲホッゲホッ…!」

 

「チッ…要らぬ時間を食ったわ」

 

 

街に向かって進むリュウマの背に何かを叫んでいるアルカディオスを残し、リュウマは…()()()()()()()()()()()

街を呑み込んで蔓延る黒き霧の全ては魔障粒子で形成されており、魔導士が今中に入れば体内に侵入した魔障粒子が体を蝕み、事と次第によっては死に至らしめる猛毒の中をリュウマは何事も無いように歩み進んで行った。

 

 

「魔障粒子とは、本来空気中に含まれるエーテルナノに干渉し破壊する病原菌とも言えるアンチエーテルナノ物質…。それが人間を侵す場合…最初に干渉するのはエーテルナノの塊である魔力そのもの…魔障粒子に魔力を急速に喰われ破壊された魔導士は急激な魔力損失により魔力欠乏症を患う。次いで魔力欠乏症による免疫力低下と魔力を無くした事による無意識下での身体的自動防衛システムが機能しなくなり、吸い込んだ魔障粒子は肺から広がり体の隅々まで細胞の破壊を繰り返す」

 

 

まるで子供相手に言い聞かせるように言葉を溢していくリュウマの全身を…魔障粒子が包み込んで今すぐ侵さんと活動しているにも拘わらず進み続ける彼は、苦しそうどころかいつも通りにしか見えなかった。

言うなれば、霧が黒いせいで前が見辛いということで眉間に皺を寄せている程度だ。

 

 

「治療方法が確立していない魔障粒子による身体的破壊は魔力を無くすか或いは魔力を持っていない者が掛かってしまう。では、治療とはいかずとも───()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

体中を魔障粒子に侵され、訪れる痛みと苦しさに耐えきれなくなったのか民家から暴れるように扉を開けて出て来た中年程の男性を見たリュウマは、一瞥してから少し考えるような素振りをしてから近付いていき転げ回る男性の肩に手を置いた。

 

触れながら発動させた黒いドームのような物で覆われた男性は、先程までの悶え苦しむ様は何だったのかと言いたくなるような変わりようで落ち着きを取り戻し眠りについた。

吸い込んでいる魔障粒子を阻む魔力壁を創り上げたリュウマは少ししてからまた歩み始めた。

 

 

「例えば……魔力を破壊される以前に魔力を()()()()()()()()()()()存在が居たとしたら?魔力を破壊し尽くされる速度よりも魔力を生成する速度が上回ればまず前提から外れ身体的破壊を起こすことも、魔力を急速に失うことで発病する魔力欠乏症にもならない。つまり───()()()()()()()()()()

 

 

増えていき濃度を増していく魔障粒子に眉を顰めたリュウマは辺りを見渡すと、直ぐそこに破壊された跡のある店のようなものを見つけた。

離れたところに転がっている看板に8アイランドと描かれているのを確認したところで、ここがこの事態を発生させた元凶が居た所かと理解した。

 

発現場所はやはり1番濃度が高いらしく、運が悪いことにこの周辺を散歩していたのであろう一匹の犬が地面に力無く倒れていた。

白目を剥き口を広げ、開いた口からは白い泡を吐いている犬はもう助かる助からないの域にはおらず…既に息絶えていた。

このままではいくら犬であろうと報われないと考えたリュウマは、死した犬に向かって手を翳し魔力を練り上げた。

放たれた黒炎は犬の死体に直撃し、ものの数秒で灰すら残さず燃やし尽くした。

 

 

「始めよう───この場に蔓延る全ての魔障粒子よ…『集え』『集え』『集え』『集え』」

 

 

繰り返すことに4度…其処らを蔓延り無差別に人々を苦しめていた魔障粒子に動きが見られた。

いや、動かしているのは他でもないリュウマである。

言霊を使用し上に向けるように翳した手の平の上に全ての魔障粒子を集めさせていく。

 

 

「『我が元に集いて凝縮せよ』」

 

 

勢いを増していき渦を巻く一方で、中心に居るリュウマはただ集まってくる魔障粒子の全てを手の上で球状に濃縮し凝縮させていくことでビー玉程度の大きさの魔障粒子の玉を作り出していく。

消え始めた魔障粒子を見た兵士とアルカディオスは、入り口で信じられないという顔をしながら見ていたが、ハッとしたアルカディオスの指示により民間人を一箇所に集める作業に戻った。

 

 

「こんなものに…こんなものに…ッ!俺を友と言ったラクサスが死にかけていたと思うだけで腸が煮えくり返りそうだッ!」

 

 

出来上がった禍々しいビー玉大の大きさをした魔障粒子の塊を…純黒なる魔力を纏った手で握り潰した。

磨り潰すように握ると中で硝子が割れるような音が響いてくるが中から出てくることはなく、やがて握っていた手を開けば中には何も無かった。

エーテルナノを破壊する特性を持つアンチエーテルナノ物質を…エーテルナノの塊であるはずの魔力が呑み込んだ。

 

後ろから黒い霧が消えたことで街の中に入ることが出来、救い出されていないままでいる民間人を救い出し始めた兵士達の声を聞きながら、リュウマはその場から踵を返して一箇所に集められた重症患者の元まで向かった。

 

 

 

 

こうして…タルタロスのテンペスターが起こした…過去最高にして最悪な大災害は幕を下ろされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで全員か?」

 

「そうだ。リュウマ殿が言った通り、この場に魔障粒子に侵されて重症の民間人を集めた」

 

「数は…1800…といったところか」

 

 

霧を消したことで街の中へと足を踏み入れることが出来るようになると、兵士は直ぐに駆け出して救い出せていなかった人々を救い出しこの場に集めた。

この場に来る前に死者数は既に100を超えていて、今では残念ながら亡くなってしまった人々の数は200にもなる。

悲しい話しではあるが、救えなかった者は仕方ない。

 

何時までも()()()()()()悔やんでる暇など今は残されていない。

早く治療を施してやらないと、折角この場に救い出してきた人々が意味の無い死を遂げてしまう。

ラクサスがあと少しで出来なかった救うということを代わりにやりに来たリュウマは、それだけは許さなかった。

 

 

「封印…第一から第三門まで解」

 

 

封印を解放したことで、リュウマの体から8倍の量となった純黒なる魔力が溢れ出した。

元が聖十大魔道で上位に位置する魔力だったのだが、今から治療するのは1800人弱…いくらなんでも魔力が足りないし一人一人見ていったら終わらないと結論づけた。

街の中で中年の男性に施したドームのようにやればいいと思われるかもしれないが、あれは進行を遅らせるだけで治している訳ではない。

 

そもそも、魔障粒子は人の体の中で無差別に内蔵を破壊していくが、何も全部の人の体を同じように順番で侵していく訳ではない。

規則性の無い侵食を治してやるには、一人一人の体を見て悪いところから順番に治していく他ないのだ。

 

 

「───『私と貴方は同一人物(ドッペルゲンガー)』」

 

 

唱え終わるとその場に夥しい人数のリュウマが現れた。

瞬きをした一瞬の間に現れたリュウマと、その数に兵士達が目を見開いているのを興味無いとばかりに無視して所定の位置についていく。

本体(オリジナル)から生み出されたリュウマの数は…1800弱…この場にいる重症患者と同じ数であった。

 

一人につき一人付くと早速治療を開始した。

生み出されたリュウマが全員が全員本体(オリジナル)と同じだけの戦闘力と魔力を持っているのかと言われれば…それは否である。

一人一人を操っていると本当に脳が焼き切れてしまうため、一つの命令を与えて自動で動かしている。

なのでロボットのように淡々と作業するだけで喋ることは出来ず、命令を遂行したと判断した個体は勝手に消えて本体(オリジナル)の元へ還元される。

 

元々ドッペルゲンガーとは、自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種であって、「自己像幻視」とも呼ばれる現象の一つである。

自分とそっくりの姿をした分身、 第2の自我、生霊の類。

同じ人物が同時に別の場所や、一度に複数の場所に現れることもあるが、もう一人の自分とも言える自分が姿を現す現象を指すこともある。

諸説の中には自分のドッペルゲンガーに会ったら最後、確実な死を遂げるとも言われたり、混ぜ合わさりこの世から消えるとも言われていたりする。

 

この魔法の特徴は、自在性を切り捨てる代わりに一つだけの命令権と魔力が持つだけの量を瞬時に用意出来るという点だ。

メリットは中々良さそうに思えるかもしれないが、最大のデメリットは───魔力量がドッペルゲンガー達の分だけ分割されるということだ。

つまり…いくら魔力が8倍になっても、本体(オリジナル)の魔力は今1800分の1しかないのだ。

 

分割されるのは魔力だけで身体能力その他の能力は分割されないが、魔力が1800分の1になるのはリュウマと言えども大打撃である。

 

 

「こんなに沢山の分身を…大丈夫なのですか…?」

 

「…気にする…ことではない…お前達は…俺の分身達の…補佐をしろ…」

 

「……分かりました。御協力…心から感謝します」

 

 

リュウマが大丈夫だと言う以上は大丈夫なのだろうと考えたアルカディオスは、その場を離れて手の足りない治療中の患者の元へと向かっていった。

その背を見ていたリュウマは少しキツそうな溜め息を吐きながら、懐から通信用ラクリマを取り出して同じ物を持っているマカロフへと繋いだ。

 

ちょうどこの時にナツはタルタロス九鬼門で評議院を破壊し評議会の議員を殺した犯人であるジャッカルと戦い、苦しくもあったが見事撃破することが出来ていた。

現議員を狙って殺し、元評議員であったヤジマを狙ったことから元であろうと狙っていると考えた。

 

そこでマカロフはナツやガジルなどといったメンバー別けて膨大な資料の中から元議員達の住所を割り出して護衛に向かわせた。

しかし、手が早いのかナツが向かったミケロ元議員のところ以外の議員は既に殺されていたのだった。

今は緊急事態ということで矢鱈とタルタロスが狙う物に対する閉口が見られたが、マカロフが問い詰めることで情報を吐いた。

 

 

魔導パルス爆弾───フェイス

 

 

起動すれば世界中にある魔力の元であるエーテルナノを残らず全て消し去るという評議会最終兵器の一つである。

タルタロスはそれを起動させることでこの世から魔法そのものを無くし、呪力という魔法とは違う力を持つタルタロスの悪魔達が世界を征するという計画だった。

発動には解除キーが必要なのだが、解除キーは評議員の誰か3人で、それは本人達にも知らされていない。

知らない……それこそが最大の秘匿方法なのだ。

 

 

『おぉ!リュウマか!黒い霧はどうじゃ!?消すことに成功したのか!?』

 

「あぁ…ふぅ…大丈夫だ。全て消し去ることが出来た。今は魔障粒子に侵されている民間人の治療に当たっている。…そっちはどうだ?」

 

『………………。』

 

「…?マカロフ?」

 

 

黙ってしまったマカロフに訝しげな表情をするともう一度如何したのかと聞いた。

少しの間顔を俯かせていたマカロフであったが、今どういう事態に陥っているのかを喋り出した。

ナツとルーシィとウェンディ、ハッピーとシャルルがジャッカルを倒したが、他の議員が死んでおり、今エルフマンがリサーナを連れ去られて意気消沈しながら帰ってきたということ。

 

 

「エルフマンが…リサーナを…置いて帰ってきた?」

 

『そうじゃ。リサーナに関しては直ぐに救い出す』

 

「……外傷は?」

 

『む?外傷は特には無かったな…』

 

───外傷が無い?…溺愛するリサーナを連れ去られるというのに戦闘にならなかった?何時ものエルフマンであれば全力で攻撃してリサーナを救いだそうとするはず…。

 

 

どこか引っかかるところに首を捻るも、マカロフが話しの続きを話し始めたので先にそっちを聞いてから考えることにした。

先程漸く元議長の住んでいる場所を特定出来たということでエルザとミラを向かわせたのだそうだ。

少しの間連絡が無かったが、それは議長を襲ってきた雑魚兵が来て撃退していたからだとのことだ。

 

そこまで聞いてリュウマは合点がいった。

何故…悪魔であるタルタロスが元を含めた議員達の場所を特定して早期抹殺を行うことが出来たのか。

狙うならば元議長を早く狙った方がいい。

他の議員よりも元議長の方が知っていることは多いはずであるからだ。

 

だというのに他の議員を最初に狙って議長を最後…それも雑魚兵を向かわせるという始末…。

そこから導き出される答えは───

 

 

「今すぐエルザとミラが向かった元議長の元へ誰か向かわせろッ!!」

 

『な、なんじゃ!?どうしたのじゃリュウマ!』

 

「それは罠だッ!議員の場所は調べたのではない!何者からか情報を横流しさせたのだ!!それも───()()()()()()()()()()()だッ!!」

 

『なんじゃと!?…むっ!?今ナツが向かったそうじゃ!』

 

───いや、もう手遅れだ。罠ならば速やかに行動するはず…いや、元議長がタルタロスと繋がっているのは確実…ならば油断したところを狙ってエルザとミラを何らかの方法で眠らせるか気絶させるはず…チッ…!一度ギルドに戻って戦力を一箇所に集めるか。

 

 

これ以上は通信用ラクリマで会話していても無駄だと考えて、翼をはためかせて空へと上がりフェアリーテイルのギルドに向かって飛んで行った。

行きの時は魔力を使っていたが、今治療するために1800分の1の魔力しかないため無駄な魔力を使うわけにはいかない。

封印を解放してもいいが、今解放しても殆ど上がらないため今は翼の力だけで向かうしかない。

それでも数百キロは出ているため20分強あればギルドには着くという計算だった。

 

遥か上空で障害物も何も無いところで今出せる全速力で向かっているリュウマであるが、心の中では荒れるに荒れていた。

まさかの元議長による裏切り行為で仲間が捕まってしまい、自分は今のところ何も出来ないどころかその場にすら居なかった始末。

霧を消しさるという誰もが褒め讃えることをしていた間のことなので仕方ないことであるのだが、リュウマ自身が納得しなかった。

 

速く…もっと速く…更に速くッ!と念じながら更に6枚の翼をはためかせて飛翔していくリュウマであったが…

 

 

突如右手に大剣を召喚して振り向き様に薙ぎ払った。

 

 

「────…ッ…ぐあァ…ッ!?」

 

 

飛んで来ていたのは一本の()()()色をした美しい剣…。

斬りつけて弾こうと思ったのだが、リュウマの手にしていた大剣は純白の剣と当たった途端に砕け散った。

 

武器は砕けてしまったが、砕かれながらも衝撃を使って軌道を反らせることに成功したリュウマであるが、違うところに弾いた、有り得ない威力で飛んできた剣を見て目を見開き、次の武器を召喚───

 

 

「ごぼ…っ…!?」

 

 

───しようとしたのだが…間に合わず…リュウマの腹にもう1本の最初とは少し違う形状をした純白の剣が深々と刺さり、下にあった山に向かって落ちていき中腹辺りに叩きつけられて山を半分ほど破壊した。

 

爆発音が響きながら消失した山の削れ口のところでリュウマは、腹に刺さった見覚えのある剣を見てから険しい表情をし、手にして腹から剣を無雑作に引き抜いた。

背中まで貫通していた剣を抜いたことで夥しい量の血が噴き出て服を赤黒く染めるも、直ぐに起動させた自己修復魔法陣によって完治し、服は魔法によって色を落として綺麗にした。

 

 

「───相も変わらず便利な魔法だな?リュウマ…いや…()()?」

 

「な…ぜ…ごほっ…貴様が…()()()()()

 

「何故?貴方の居るところ私有り…だからだ。ふふ」

 

 

降り立って近付いてきたのは美少女とも美女ともとれる女性であった。

腹を押さえて立ち上がるリュウマのことを熱の籠もった目で見て妖艶な笑みを浮かべている。

世の男を残らず魅了するような美しいその顔は、全てリュウマに向けられ、その手には最初に飛んで弾いた筈の純白の剣を持ち、引き抜いたリュウマの手にある純白の剣が震えて独りでに…オリヴィエと呼ばれた女性の元に飛んで行った。

 

戻ってきた剣を手にしたオリヴィエは左右の剣を両の腰に差してリュウマを見て、吸い付きたくなるような艶やかな唇を開けて話し始めた。

 

 

「貴方を見つけて引き上げようと思ったのだが…お喋りに興じたくなってしまった。さぁ…私とお喋りをしよう?」

 

「……何故貴様が()()()()()()()はこの際もう良い。そこを退け…俺は行かなくてはならん所がある」

 

「俺…?あぁ、ギルドに入って本当の自分を偽っているのか」

 

「偽ってなどいない!!今は…まだ話していないだけだ…」

 

「それを偽っていると言わずなんと言う?まぁ、私は貴方に群がる有象無象には興味ないが…そう邪険にしてくれるな。貴方の妻だぞ?」

 

「誰の妻だ貴様ッ!!俺は未婚だ愚か者!!」

 

 

こんな会話でも既に楽しいのか、微笑むようにクスクス笑いながらリュウマを見ていた。

何故オリヴィエが生きていて、ここにいるのか知らなくてはならないが、一刻も早くギルドに戻らなくてはならないリュウマからしてみればこの会話は不毛以外何でもなかった。

付き合ってられないと翼をはためかせて飛ぼうとしたところ……空に行きかけた所で顔を逸らした。

 

 

宙にリュウマの髪が数本散った。

 

 

やった張本人であるオリヴィエの方を向き直り睨み付ければ、件のオリヴィエは何時の間に抜いたのか右手に純白の双剣の内一本だけを抜いて手に持っていた。

飛び立とうとするリュウマの妨害として神速の速度で振り抜いて斬撃を飛ばしたのだ。

 

 

「貴様…俺を殺す気か?」

 

「ふふふ。貴方が()()()()()なのは分かっている。心配は無用だ。それに先から言っているだろう?私とお喋りをしようと」

 

「貴ッ様ァ…ッ!!ならば斬り殺してでも退かせてやるぞッ!」

 

「貴方との久しぶりの戦闘だな。では───少し動けない程度にしてからお喋りをしよう」

 

 

翼を使ってその場から飛翔して向かうのに対し、オリヴィエはもう1本の純白の剣を左手で抜いて駆け出した。

召喚した刀を左手で左腰横で構え…抜刀。

狙うは首のみであるが、来ることを分かっていたとでも言うような笑みを浮かべたオリヴィエは右手の剣で受け止め、左手の剣を突き出して刺突での攻撃に出た。

 

防がれて二の太刀を出そうにも反対側に持っている剣での攻撃…押し込めないでいる以上刀で防ぐのは不可能であると判断し、左手に持っている鞘を刺突してくる剣の切っ先に向かって振り抜いた。

衝突したら本来鞘が勝つのは必然なのだが…そんな物どうしたと言わんばかりに鞘を砕き割って尚も剣は突き進んできた。

 

駄目だったかと半ば確信していたリュウマは、右の3枚の翼を持ってきて右半身を覆って防御した。

鞘を破壊して止まることの無かった剣は翼に当たると金属音を鳴らしながら止まった。

切っ先が羽の一本にも貫通せず止まったのは、現状故のなけなしの魔力を使って硬度を強化したからだ。

 

 

「相も変わらず厄介な剣だ」

 

「そうだろう?私の大切な双剣だからな。…貴方はそれを抜かないのか?」

 

「…抜いたところで意味など無い」

 

「…!なるほど?()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

質問に答えず翼を勢い良く振り払って剣を少し弾き体勢を微妙に崩させたところで、右足に力を込めて左足で腹に向かって蹴りを入れた。

体勢を崩している状態でも体を少し捻ることで回避した後、オリヴィエは過ぎ去ったリュウマの足の膝裏に向かって膝蹴りを入れようとする。

 

関節を砕くつもりかと察知したリュウマは、その場で跳び上がって左脚を軸に半回転し後頭部に向かって踵蹴りを放った。

屈んで蹴りを回避したオリヴィエは口元で小さな笑みを浮かべると、リュウマの体に向かって小さく弾かれていた左手の剣を向けた。

 

 

「『大いなる焰(フレアブラスト)』」

 

「しまっ────」

 

 

切っ先から大熱量の炎が扇状に放たれリュウマを易々と呑み込んだ。

咄嗟に翼で全身を覆ったことで炎の熱から逃れたリュウマであるが、威力とそれに伴う衝撃から逃れられず後方に追いやられた。

爆煙を覆っていた翼を元に戻す時の風圧を使って飛ばしながら、前に居るオリヴィエに視線を向ける。

が…そこには既にオリヴィエはおらず抉られた山の削れ口と青い空と雲だけだった。

 

咄嗟に身をその場で屈めると、音を斬り裂くような音を立てながら1本の純白の剣が回転しながら過ぎ去っていった。

背後かと思って槍を召喚して振り向くと同時に投擲すると、投げた後の格好のままのオリヴィエに向かって吸い込まれるように飛んで行き腹に突き刺さる。

 

 

「残念だな。それは変化させた私の(つるぎ)だ」

 

 

と、いったところで煙を撒いてオリヴィエだったものが1本の剣になった。

身を屈めて躱した剣が変化していたオリヴィエであり、過ぎ去って目を離した瞬間に音も無く変化を解いてリュウマに向かって接近していた。

気がつかなかったリュウマこそ投擲したままの体勢だったが、振り切って下ろしている右手を握り締めて振り向きながら重心を乗せて殴りつける。

 

顔を横にずらして避けながら接近してきたオリヴィエは、空いている左手の平に()()()()()()作られた極小粒の魔力球を形成し、隙の出来たリュウマの腹に押し当てた。

避けようにも押し付けられている以上不可避であるリュウマは、せめてダメージを軽減させようと魔力で腹を覆った。

 

 

「───『純白(じゅんぱく)鎖爆(さばく)』」

 

「──────ッ!!!!」

 

 

大爆発を起こした魔力は凄まじく、軽減させるために張ったリュウマの魔力を紙屑のように引き裂いて爆発のエネルギーを直接届けた。

威力と魔法を入れられた方向から上空に投げ出されたリュウマは、爆発で抉れて血を噴出している腹を右手で押さえながらどうにか翼でバランスをとって飛翔して浮遊するのだが…思うように体が動かせなかった。

 

オリヴィエが突き付けた爆発する魔力球には、触れた者の体の自由を奪う神経系魔法を組み込んであるため、食らってしまったリュウマは数秒間だけ動きの殆どを阻害させられているのだ。

今は翼を動かすことに神経をつかっているので、他の部位が上手く動かせないでいる。

 

 

「先程の黒い霧を消しているところから空で見ていたが…その後に有象無象を救うために魔力を分割しているだろう?」

 

「…っ!」

 

「余り動けないかもしれないが…それでも動かない方がいいな?───後ろに居る有象無象に向かって飛んで行ってしまう」

 

「───な…ッ…!?」

 

 

魔法で浮遊しているオリヴィエは右手に持っている剣の切っ先に直径1メートル程の乱回転している魔力の塊を作り出していた。

正面に居て肌で感じ取れる感じから、籠められた魔力は救ってきた街を簡単に消し去る程のものだと確信したリュウマは、後ろにある街を見てから正面を向き直って苦虫を潰したような顔をした。

 

今のリュウマに今まさに放とうとしている魔力に対抗出来る魔力は持っていない。

そもそも街で未だに分身が治療を行っていて全部元に戻すわけにはいかない。

治療を終えて還元されているのはまだ100もいかない程度…心許なさ過ぎた。

 

 

「───『産み落とす母なる魔魂(エクスプロード・マカテーナ)』」

 

「封印第四門──か───」

 

 

切っ先から放たれた球は寸分違わず一直線にリュウマの元へと飛んで行き、吸い込まれるように着弾して大爆発を引き起こした。

(ひと)爆発で終わりかと思われたが、爆発した後に魔力球から小さな魔力球が複数個辺りに散らばり、空気に触れることでぶくぶくと膨れ上がった。

まばゆい光を放ちながら一つの爆弾が耐えきれなくなってその場で爆発し、それに続いて次の魔力球が連鎖されて爆発を起こしていった。

 

大きい特大の爆発から続いて最初に比べればまだ小さいが、大きい爆発が次々と弾けていくことで爆発音が鳴り響いて下に生えている多くの木を衝撃波だけで薙ぎ倒し、爆発が収まる頃には空に巨大な真っ白なキノコ雲が出来上がっていた。

 

暫く出来上がっていた雲を見ていたオリヴィエであるが、キノコ雲の中から一つの塊が飛び出して来たのを見て剣の切っ先を向けて重力系統の魔法を放った。

重さを何十倍にも上げられた塊…体中が傷だらけで見るに堪えないリュウマは放物線を描く軌道から一転…真下に向かって真っ逆さまに落ちていった。

 

落下した場所はちょうど…オリヴィエとリュウマが戦っていた抉られた山の中央だった。

 

隕石と間違う程の大きな衝撃音を轟かせながら山の麓にまで大きな亀裂を入れ、無理矢理落とされたリュウマは彼を中心に罅割れた地面にうつ伏せで倒れ、6枚の美しい翼は見るも無惨に4枚が根元からもがれ、残った二枚の内1枚は羽の大半が抜け落ち、もう1枚は折れてはならない方向に折れてしまっていた。

 

右腕は肩から吹き飛んで無くなり、左腕は無事だが肘までが真っ黒に焦げてしまっている。

他にも右脚は切り傷のようなものがあるだけだが、左脚は足首から下が無くなってしまっていた。

止血をしていないのに血が出ていないのは、爆発の時に出来た熱によって傷口が焼かれて無理矢理塞がったのだろう。

 

掠れるようにしか息をしていないリュウマだが、封印を解放する寸前で間に合わず直撃し、腹で食らうと体が爆散すると悟った彼は咄嗟に右腕を犠牲にして衝撃を和らげて今の状態に持っていったのだった。

あの場で食らうしかなかった原因の街が後ろに無ければ…もしかしたらこんな事にはならなかったのだろう。

 

 

「私も貴方もどちらも()()()()()()戦った上での勝利に価値など無いな。本来ならばこんな事にはならないだろうに…あの有象無象を守るためか?…全く…昔の貴方は見ず知らずの者にそんなことしなかったぞ?まぁ…でも───」

 

 

両手に持っている純白の双剣を再び両の腰に差し直したオリヴィエは、倒れ伏しているリュウマの近くにまで歩み寄って女の子座りをして座り込み、血が付着している頭を持ち上げて膝の上に置居て優しく頭を撫で始めた。

まるで…いや、愛しい存在を壊れ物を扱うように撫でるその手と見遣る表情は聖母のようであるが、リュウマを戦闘不能にして傷だらけにしたのは他でも無い彼女である。

 

 

 

「───どんな貴方でも…私は何時までも…常に愛しているがな」

 

 

 

意識を飛ばされたリュウマが回復をするまで、大破している周辺とは違って穏やかな表情で頭を撫で続けるオリヴィエだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───…がふっ!…ごほ…っ…!」

 

「あぁ、起きたのか?」

 

 

意識を取り戻したリュウマは激痛に耐えながら血混じりの咳をしてから体を起こそうとするが、所々部位が損失している状態では満足に起き上がることも出来ない。

再び頭が落ちて寝そべったかと思えば、後頭部にとても柔らかな感触がした。

気づくのが遅いと思いながら彼は重い瞼を開けてどうなっているのかを確認した。

 

 

「ふふふ。こうしていると、私はまさに負傷している夫を看病している良妻だな」

 

「オリ…ヴィエ…貴様…」

 

「あまり喋らない方が良いぞ?死なないだろうが痛みはあるのだろう?」

 

「ぐっ…!」

 

 

豊満とは言わずとも十分大きい方であり、どちらかというと美しい形を保っているお椀方の胸の向こうから覗いてくるオリヴィエに、やったのは貴様だと考えながらもう一度起き上がろうとするが、やはり体中に痛みが走って動けなかった。

喋っても熱で焼けている肺が痛いので目でどれ程気絶していたのか睨みも付けて問うと、目を合わせるだけで理解したオリヴィエは頭を優しく撫でることを続けながら教えた。

 

 

「そうだな…ざっと十五分くらいだろうか?その位だと思うぞ?」

 

「じゅう…!ごほっごほっ…!」

 

「言わんこっちゃない。お得意の自己修復魔法陣は私が干渉して発動不可にさせているのだ。回復は出来ないぞ?本来はこんな状態は滅多に拝めないからな…堪能させてくれ」

 

『頭が可笑しいのではないか?何処に妻であると妄想した後に血塗れの男の回復も行わずそのままでいさせる者がいる』

 

「んっ…テレパシーか。いきなりで驚いた。ふふっ…ここに居るぞ?私は貴方を愛しているからこそだ。回復させたら私を殺してギルドとやらに行くのだろう」

 

『当然だ。貴様のせいで十五分も無駄な時間を食った』

 

 

十五分…されど十五分だ。

 

実際にギルドの方ではタルタロスとフェアリーテイルの全面戦争を始めようとしている。

連絡をしてから帰ってくる様子のないリュウマに、最大戦力が欲しいマカロフがラクリマに連絡を入れたのだが、光っているラクリマをリュウマが気絶している間に気がついたオリヴィエの手によって砕かれていた。

 

これ以上時間を食うと本格的にマズいと感じたリュウマは、封じられている自己修復魔法陣をやめて、残り200という程まで民間人を治療し終わったドッペルゲンガー達の還元によって戻った膨大な魔力を溜め込み…一気に肉体を活性化させて傷を回復させようと画策する。

後は活性化をさせる時のタイミングだけだ。

 

 

『貴様…()()()()()()()()?』

 

「──ッ!ふふ。流石に触れれば分かるか?私の本体(オリジナル)はここからかなり離れた国の城の中にある部屋で寛いでいる」

 

『チッ…分身如きにその剣を渡しおって…』

 

「ただの()()()()直ぐに消されてしまうだろう?それにだ…私は本体の()()()()()()()()()()()…貴方のその状態も同じようなものだろう?本体の私ですら戦慄し最強と認める…その純黒の刀に封印を施している時点で」

 

『そんなことはどうでも良い。貴様は何故生きている?あれから()()()()()()()()()()のだぞ。純粋な人間である貴様が生き長らえるとは思えん』

 

「それに関してはとある一族が奉っていた不老不死の霊薬を奪…んんっ…譲り受けたのだ」

 

『 誤 魔 化 す な 』

 

 

いけしゃあしゃあととんでもないことを言い放ったオリヴィエに、痛みが走りながらも口元をヒクつかせるリュウマであった。

釈然としないが、一応()()()()()であるオリヴィエが意味も無く嘘をつかないということを知っているため、話しは本当なのだろうと理解した。

因みに、リュウマ以外の有象無象という人などに対しては普通に意味も無く嘘をつく。

ただ単にリュウマに対してだけついていないというだけだ。

 

 

「1年だ…」

 

『何…?』

 

「私が居る国は黒魔導士ゼレフによって治められている国だ。あ、勿論ゼレフにも他にも私に指一本触れさせていないぞ?」

 

『興味ない。続きを言え』

 

「冷たいがそこもイイっ♡…んんっ…ゼレフは1年後、貴方がいるギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)の地下に隠されているという秘匿大魔法…『フェアリーハート』を奪いに国中の戦力を結集させて攻め込む。私は貴方を見つけるための情報収集の協力をしてくれたゼレフの国に、まぁ…せめてもの恩返しとして貴方と対峙する」

 

『………………。』

 

「勿論対峙する理由は貴方を私の手で下し、貴方を私のものにするためだ。恩返しといってもその延長線上のことでしか無い。だが、ゼレフはかの殲滅王を止める…或いは倒してくれるなら願っても無いと言っていた。だから1年後だ」

 

『────愚かな。()を貴様が下すだと?400年前に彼奴等と共に我の前に…完膚無きまでに敗北しておきながらこの我を下すと?思い上がりも甚だしいわッ!!』

 

 

一気に細胞を活性化させたことによって全回復させてその場から消えて数十メートル先に出現したリュウマの目は…何時もの目ではなく、瞳孔が縦に割れた目をしていた。

感じられる雰囲気も全くの別物に切り替わり、迫力だけで周りに生えていた草木が時を急激に進められたように枯れ果てていく。

 

逃げられて頭を撫でることが出来なくなったことに悲しそうにしながら、立ち上がって緊張感を感じさせない動きで、服に付いてしまった砂を払って落とした。

微笑みを浮かべながら嬉しそうな表情をして、流石に自己修復魔法陣を封じただけでは止められないか…と心の中で密かに反省をしていた。

 

 

「1年後…攻め込んで来るゼレフの兵達を残らずこの我が殲滅してくれる。無論───貴様もだ…オリヴィエ」

 

「ふむ、今度は負けないぞ。1年後に私は貴方を下して私のものにする…貴方以外の有象無象共が何をしようが興味は無いが、私と貴方は永遠に一緒だ…逃がさず…離さず…どこまでも───」

 

「貴様が何と言おうが結末は変わらぬ。我がリュウマ・ルイン・アルマデュラである限り───」

 

 

リュウマは封印を施していて今は何の力も発動しない、腰に差している純黒の刀の鞘に手を置き、親指で(つば)を持ち上げて(はばき)を覗かせた後…中にある何処までも吸い込まれてしまいそうな純黒の刃を露わにする。

体を足を大きく開きながら低くして半身になるように構え…止まる。

 

対するオリヴィエも右脚を前に出して体勢を低くし、両の腰に刺してある純白の双剣の柄…握りとも言われる場所に手を置いてから握り締め、背中側でクロスする位まで広げるように持っていきながら、純白の刃を露わになるくらいまで2本とも鞘から抜き出す。

 

 

「貴様のせいで要らぬ時間を食った…この代償は分身である貴様の命だ───」

 

「ふふふ。それだけでいいならば安いものだ───」

 

 

半分になっているとはいえ、元は高い山であるが故に冷たい風が両者の間を吹き抜けていき───

 

 

 

「────────ッ!!!!」

 

 

「────────ッ!!!!」

 

 

 

───同時にその場から消失した。

 

 

 

「────1年後…待っているが良い」

 

「────あぁ…待ち遠しいよ」

 

 

 

体を縦から半分に斬り裂かれたオリヴィエの分身体は…光の粒子となって消えていった。

 

手に持っていた純白の双剣はまたも独りでに動いて空高く跳び上がり……ある方向に向かって飛び去ってしまった。

 

 

 

 

 

「クソがっ!!……皆の者…俺が今征くぞ…ッ!何も起きていてくれるなよ!!」

 

 

 

 

 

 

翼を羽ばたかせ、リュウマはギルドに向かって音を置き去りに飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────???

 

 

「お帰り…私の(つるぎ)達」

 

 

豪華な一室にある、これまた豪華なキングサイズのベッドの上にネグリジェを身に纏う美しい女性は、開けた窓から舞い戻ってきた純白の双剣を手にして優しく表面を撫でた。

 

分身体が消える前、見聞き感じたものを全て送ってきた情報を読み取り…恍惚とした表情で手に持つ一人の男性が映っている写真を剣達と共に胸元に抱き締めた。

 

女性…オリヴィエは会いたくて会いたくて…想っているだけで身を焦がしてしまう程に愛している男のことを想いながらベッドに飛び乗った。

 

 

「嗚呼…早く…早く早く早く…っ!貴方を私の手に…っ…はぁっ…んっ…ぁ…」

 

 

剣達を横にある棚に置いてから片手に写真を持ち、空いたもう片方の手を下半身の方に持っていき…頬をほんのりと赤く染めながら熱い息を吐き出した。

 

 

「ぁ…は…やくっ…んんっ…待ち…きれん…っ…あぁ…っ…リュウマっ…貴方ぁ…!」

 

 

しばらくの間…部屋からは水のような音と艶やかな女性の声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

時は…止まること無く刻み続ける。

 

 

 

 

 

 




オリヴィエ

シャドバに出てくるダークエンジェル・オリヴィエの見た目と名前。
翼と角が無いバージョン。
持っている双剣は色だけが純白です。

強さに関してはオリジナル。
なので、名前と一部の容姿だけの全くの別人です。

私が一目惚れしたキャラ……女性です笑



───貴方

親しい男女間で相手を呼ぶ語。

特に、夫婦間で妻が夫を呼ぶ語。 「 -、ご飯ですよ」 〔相手が女性の場合「貴女」、男性の場合「貴男」とも書く〕

つまり…ねぇ?
痴女とか言った人はこの私が許しません(真顔)


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