FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ 作:キャラメル太郎
ここで1つのことを……リュウマが使う
あれはですね……これを書いた当初から設定が決まっていて────めったくそチートです。
細かいところは……本当に最後の方で明らかにしたいと思いますので、それまで予想をしてみて下さい!笑
当たった人がいたら……とっても…すごいです…笑
誇り高き翼人一族が治める国…フォルタシア王国に新たな王となる子が生まれ……国中はお祭り騒ぎとなっていた。
生まれて間もないその日は、マリア王妃がまだ調子を取り戻していないということで、3日空けての祝祭となり飲んでは食べて騒いで騒いだ。
それはそれは大いに喜んだ。
しかし…翼人一族は皆為べからず体内に魔力を宿している。
となれば……だ。
リュウマ・ルイン・アルマデュラが魔力を持って生まれてこなかったというのも直ぐに分かるというものだ。
だがしかし…しかしだ。
国に住む民はそんなこと気にしなかった。
魔力が在るのかないのか?体が丈夫なのか貧弱なのか?それより以前に、新たな王となる者が生まれたことに喜んでいたのだ。
確かに魔力が無いとなると魔法が使えず、戦法は限られてくるかもしれない。
だが、民達に新たな王となる子を見せる伝統的な催し物……王子謁見がある。
謁見と言っても、態々王城に出向いて直接見に行くのではなく、王子を抱えた王夫婦が城下町に続く長い道のりを乗り物に乗って移動し、王子を民達に一目見せていくというものだ。
この催し物は今までも大盛況であり、自分達とこの国を背負って導いてくれる王子を一目見れるということで祝祭の中で1番盛り上がる。
中には視界に捉えた瞬間に涙を流す者も居るほどだ。
そんな催し物をして王子の姿を見た時……民達は戦慄した。
確かに魔力が無い……だが、何故だ。
そう直感してしまった。
魔力を垂れ流しにしている訳ではない…そもそも魔力が無いのだから。
此方を鋭く睨み、殺気を送っているわけでもない…まだ生まれて3日しか経っていない赤子なのだから。
なのに何故ここまで戦慄してしまったのだろうか?
理由は簡単だ。
ただただ……目に捉えた瞬間に本能的に悟ってしまったのだ……あの子は我等のような者達が到達出来ないところまで上り詰めるだろう…と。
赤子相手に恥ずかしくないのかと思われるかもしれない。
王子を拝見した者達はそんなことをほざいた者を鼻で笑い嘲笑を浮かべるだろう。
これまで圧倒的王威を放っているのに気がつかないのか…貴様は哀れであるな…と。
やがて毎度お馴染みの城下町の道を進み終わったアルヴァ王とマリア王妃は城へと帰り、王子を拝見して気分が更に高揚した者達は更に騒いだ。
因みに、余りにも騒ぎすぎて収拾かつかなくなってしまい、騒ぎ立てる夫を妻が耳を引っ張って家に連れて帰ったりした…ということが起きたり起きなかったり。
「ふぅ…いやはや、盛り上がりが凄かったな」
「当たり前よ。将来国を背負って立つ新たな王との謁見よ?それは興奮するわよ」
「……リュウマは?」
「ぐっすり眠っているわ」
城へと帰ってきたアルヴァ王とマリア王妃は、2人ですやすやと眠るリュウマの姿を見て笑みを浮かべた。
眠っているリュウマの手の中に指を差し込めば握ってくれる。
それもかなりの強さで握ってくるため、常人なら血が止まって指が青紫色になってしまうような強さだ。
しかしアルヴァ王とマリア王妃は翼人一族でも屈指…最強たり得るアルマデュラだ。
いくらリュウマの力が強くとも、翼人が普通の人間…地人よりも元から屈強のアルヴァ王とマリア王妃にとっては可愛らしい程度だ。
今いるのは王夫婦の寝室であり、これからリュウマと一緒に眠ろうとしていたのだ。
マリア王妃は眠ってリュウマの姿を見れなくなる…という何とも頭が痛くなるような事を言って既に親馬鹿を発揮し────
「将来…リュウマにも
───こっちもだった。
「うふふ。妃だなんて、まだまだ早いわよ」
「いや、子供の成長とは早いもの…あっという間にそういったものを得なくてはならなく歳にまで成長するぞ」
「………………………憂鬱ね」
───どっちもどっちである。
一応言っておくが、リュウマはまだ生まれてから3日しか経っていない。
だというのに既に未来の妃の事に関して話し合っている時点で話が早すぎるというものだ。
どんな子がいいとか、やはり教養がなっているとか、本格的な話になってきた時…眠っているリュウマが身動ぎをしたのを皮切りに話を終えた。
アルヴァ王がリュウマの頭を優しく撫で、マリア王妃がリュウマの頬を優しく撫でる。
ぐっすり眠っているリュウマは気持ち良さそうな表情をして翼をパタパタも動かし、2人を悶えさせてノックアウトした。
これ以上リュウマを見ていると可愛すぎて眠ることも忘れ、ずっと見守ってしまいそうだと悟った2人は互いに顔を合わせて頷き合い、リュウマを真ん中に川の字で眠ることにした。
いくら親馬鹿に見えてもアルヴァ王は王の執務が控え、マリア王妃はリュウマの服を手編みをしなくてはならない。
手編みに関しては、買うのは却下して意地でも自分で作るということになった。
「おやすみ…リュウマ」
「おやすみなさい…リュウちゃん」
「……zzz」
今宵───本来の息子と会うことになる。
生まれて間もなく、この世に1つの生命として根を下ろして3日しか経っていない赤子のリュウマは、人生という中で初めてであろう夢を見ていた。
周りが花に囲まれてふんわりとした優しい夢や、何かに乗って駆け回るちょっとした大冒険の夢でもない。
赤子のリュウマが見るにしては、かなり味気なくなってしまう辺り一面が真っ暗な空間に居るというものだ。
しかして不思議と嫌だとは感じない。
故に泣かぬし顔を顰めることもない。
ただ、辺りを不思議なものだと、子供故の好奇心と探究心で見回していた。
結局のところ、何も見えないと感じるレベルの真っ暗闇で楽しむ要素など皆無なので見回すのはやめたが。
「────嗚呼…ッ!会えた……我が半身ッ!」
「??」
するとそこへ1人の男の声が聞こえた。
親であるアルヴァ王やマリア王妃の声ではない誰か…しかし聞いていて安心するとも言える声。
まるで────
相手は自分と同じ赤ん坊の姿形をしているというのに、2つの足で立ち上がって腕をリュウマへと向けて宙を彷徨わせている。
顔はくしゃりとした、まさに泣いている子供のソレ。
しかして泣いているのは苦しいことがあるからではない……嬉しいからだ。
これ程の幸せがあるだろうか…?否…あるわけが無い。
幾千幾万を越え、幾兆幾京という果てしない年月…刀である己ですら何時そこに存在したのか分からないほどの永き時に在るだけで、他には何もなく何も訪れない。
だが、やっと…やっとこの時がきた。
「私が
「あー!あー!」
まだ言語が分かっていないリュウマは、もう1人の自分と同じ顔をした赤ん坊に手を伸ばし、もう1人のリュウマと同じ存在は…更に近付いて手をリュウマの手へと重ねた。
すると、もう1人の存在の体が光の粒へとなりリュウマの体の中へと吸い込まれるように流れ込んでいく。
この時、今の状況に驚いてリュウマは目を丸くしていたが、綺麗な光景なので笑いながら喜んでいた。
後に光りは全てリュウマの中へと入り終わり……一度大きな鼓動を刻んだ。
「「───────ッ!!!!」」
─────ガギャッ!!
特大の魔力反応を直ぐそこで感じたアルヴァ王とマリア王妃は、片や手に愛刀を持って音どころか光りすらも置き去りにするほどの抜刀を、片や黄金の魔力を纏わせて攻撃力と強度を限界以上に引き上げられた金色の杖を…お互いに向かって振り抜いていた。
隣から感知したということでの攻撃だったが、奇しくもアルヴァ王とマリア王妃の攻撃が打ち消し合うという状況に至った。
マリア王妃の刀は速度と威力によって並の強度以上に強化された杖を半分程まで斬り裂き、アルヴァ王の杖の頑強さは凄まじい故にマリア王妃の愛刀を刃毀れさせた。
敵襲じゃないのか…と思って武器を下げ、アルヴァ王の魔法によって刃毀れした刀と半分斬れた杖は直された。
次の疑問が、自分達が過剰に反応してしまう程の魔力は一体どこから流れてきた?ということだった。
2人は言葉を交わさずしてリュウマ見て、目を見開いた。
「う…うぅぅううぅっ…っ…」
武器をかち合わせた時の音で安眠から目を覚まして泣きそうになっているリュウマと、その隣に何時の間にか寄り添うように置かれた
本当に何時の間に…?と思った矢先────
「うぅっ……うぇぇ─────んッ!!!!」
リュウマが泣き出し……体から計り知れない膨大な純黒なる魔力が溢れ出した。
「なっ…!?」
「これは……!?」
夥しい量の魔力の大放出による爆発に、アルヴァ王とマリア王妃はその場から勢い良く吹き飛ばされて城の外に出るまで壁を破壊して追いやられた。
魔力は収まるということを知らずとでも言うように、魔力放出の範囲を更に更にと広げていき、やがて城下町の殆どを呑み込んでしまった。
夜遅くに流れ込んで肌を…神経を押し潰すように押し寄せる魔力に驚き、城下町に住む民達も何事かと飛び起きて外に出てから城の方を見た。
城では翼を広げたアルヴァ王とマリア王妃が飛んで、リュウマから流れ出てくる暴力的なまでの純黒なる魔力の圧力に耐えている。
中ではリュウマが泣いていて魔力が溢れ続け、城に住み込みで働いている侍女達が飛び起きて魔力の発源地へと向かっていた。
「こっ…れは…!なんという…!魔力…!!」
「リュウちゃんの…!魔力…!制御しきれて…!いないようね…!」
「無理も無い…!突如…!発現したのだからな…!」
「私達の…!せいでも…!あるわね…!!」
武器を合わせた音で驚かせてしまったと気がついたマリア王妃は、アルヴァ王と一緒に飛びながら魔力の奔流とも言える流れに逆らうように向かっていく。
小さな赤子で、泣いている為に無意識の内に大放出している魔力は強いことこの上ない。
アルヴァ王はこの魔力を打ち消そうと杖に魔力を溜め込み、魔法を発動させようとして驚いた。
発動自体はした…したのだが……発動した瞬間に
まるで流れの速い川の中にコップの水を溢したかのような、当然のように呑み込まれて掻き消された。
何という魔力の質と質量であろうかと戦慄していると、それを見ていたマリア王妃は魔力を纏わずして突き進み、部屋の中へと降り立って腕を顔の前に持ってきて魔力を防ぎながら歩き出した。
魔力の中を生身でいるというのは、案外厳しいもので…炎の中に入って移動しているかのように負担が掛かる。
だがマリア王妃はそんなことには構わず突き進み、どうにかリュウマの所にまで来ると、魔力の圧力で痛む体を無視して微笑んでみせてリュウマを優しく抱き上げた。
「リュウ…ちゃん?ママ…ですよ~?もう…大丈夫…だからね~?驚かせて…ごめんね?」
「うっ…うぅぅぅ…!ぐすっ…ぐすっ…っ」
「よしよし。良い子良い子♪リュウちゃんは本当に良い子ね~?ちょっと驚いちゃっただけだもんね~?大きな音立ててごめんね?」
「……っ…っ……ぐすっ…」
「うふふ。大丈夫。大丈夫よ」
優しく抱き上げられ、安心させるように背中を擦られて泣き止み、しゃくり上げていたリュウマはやがて完全に魔力が抑えられて純黒なる魔力は溢れることをやめた。
内心ホッとしたマリア王妃はニッコリとリュウマへ微笑みながら背中を撫でてあやし続け、夜遅くなだけあって眠気がきたリュウマは直ぐに眠ってしまった。
遅れてやって来たアルヴァ王は眠っているリュウマの顔を見てから安心したような表情をして、後ろにある壁に開けられた大穴や、所々真っ黒に侵蝕されている壁などを見て考察していた。
この3日でリュウマに魔力が無いことは分かっていたが、この度の魔力発現と謎の刀の存在。
どう考えても怪しいのはこの純黒の刀であると理解して手にしようとしたところで……激しい電撃のようなものが走って拒まれた。
まるで触れるなと言われているように感じたアルヴァ王は、触れることを一旦やめて寝かしつけてベッドに座り込んでいるマリア王妃の隣へと腰を下ろした。
「……リュウちゃんに魔力が出て来た。最初は持って生まれるものを持たずして生まれたと思っていたけれど…良かったわ」
「そうだな…しかし…これ程の魔力を内包していたとは…な」
「隣にあったあの刀が関係しているのでしょう?」
「うむ。それで先程触れようとしたのだが……お前ではないと言わんばかりに拒まれた。あれは何かの拍子に現れ、リュウマを主としているようだ」
「それなら…あの子に持たせてあげましょう。鞘から抜けると危ないから、触れないように紐で刀と鞘を結んで」
「の、方が良いか…」
頷き合ったアルヴァ王とマリア王妃は、更に遅れて慌ただしくやって来た侍女達に軽く状況を説明して納得させ、侍女達はリュウマに魔力が発現したことをまるで自分のことのように大層喜んだ。
壊れた壁はアルヴァ王の魔法によって音を立てないようにゆっくりと修復され、純黒の刀には侍女が持ってきた紐を刀に触れないように気をつけながら縛った。
これならばリュウマが触れても大丈夫だろうと思っていると、刀が独りでに浮き上がった。
何もしていないのにも拘わらず独りでに動き出したと思って警戒していると…刀はリュウマの元へと向かって又も寄り添うように着地した。
眠っているリュウマは小さな手を刀に触れさせると握り込み、安らかな表情をさせて更に深い眠りについた。
最早この刀がリュウマから離れることはないだろうと悟ったアルヴァ王は、今のところは刀を警戒するのをやめておく。
万が一リュウマから離したら魔力の暴走を引き起こしたりしてしまうかもしれないと危惧したからだ。
斯くしてリュウマの魔力発現事件は終わりを迎え、翌日に民へ昨夜はリュウマの魔力発現による爆発であったと伝えると、またお祭り騒ぎになってしまった。
仕事があるのに夜遅くに起こされたというのに、気にした風もなく祝ってくれる民は優しい者達ばかりだった。
「オギャーッ オギャーッ オギャーッ」
「あぁよしよしっ…どうしたのリュウちゃん?ママはここですよ~?」
「うぇぇ──────────んっ!!」
「あらあら…困ったわねぇ…」
この日、リュウマに魔力が発現してから2ヶ月経った頃…何時も眠るときは静かに眠っていて寝付きも良かったリュウマは、この日初めて真夜中に目が覚めて泣いていた。
今まで大人し過ぎた分赤ん坊然りとした夜泣きをして安心した反面、何時もはマリア王妃があやせば1発で泣き止んでいた事もあって泣き止まないリュウマに四苦八苦していたのだ。
ベッドの感触が嫌なのかと、腕に抱いてみたが見事にギャン泣き。
では抱きながら歩いてみたらどうかと考え、リュウマを抱えながら部屋の中を歩ってみても結果はギャン泣き。
マリア王妃が、相手が自分だからダメなのかと思って忙しい為にこの時間も執務をしているアルヴァ王の元へと行き、抱かせてみると更に夜泣きが悪化した。
執務をしているアルヴァ王の書類には、雨粒が垂れたかのようなシミがあったそうな。
傍で執務に付き合っていた大臣が、その現場を見て静かに涙を流したこともあったり無かったり。
お腹が空いたのかと、母乳をあげようとするが飲まないのでお腹が空いたわけではないようである。
何かの病気にかかっていてその苦しさかと、城に居る医師を文字通り叩き起こして診せれば、病気な訳ではないと言われた。
因みに、王族などによく
現在のような粉とお湯さえ有れば良質の代用乳…
そのため、皇族・王族・貴族・武家・或いは豊かな家の場合、母親に代わって乳を与える者である乳母を召し使った。
また、身分の高い人間は子育てのような雑事を自分ですべきではないという考えや、他の性格がしっかりとした女性に任せたほうが教育上も良いとの考えから、乳離れした後で母親に代わって子育てを行う人も乳母という。
つまり生みの母親ではなく、育ての親というやつでもある。
また、商家や農家などで母親が仕事で子育てが出来ない場合に、年若い女性や老女が雇われて子守をすることがあるが、この場合は「姉や」「婆や」などと呼ばれることが多かった。
健康的でありながらよく
「オギャーッ オギャーッ オギャーッ」
「う~ん…困ったわ…。夫は役に立たないし、病気でもなくお腹が空いた訳でもない……」
「オギャーッ オギャーッ オギャーッ」
「泣き疲れたら眠るかと思っていたけれど…かれこれ1時間は泣いて────っ!!」
泣いてから1時間経っていると言おうとした時…泣いているリュウマから2ヶ月前に発現した純黒なる魔力が溢れ出てきた。
それも、ただでさえ赤ん坊が内包するには危険すぎる程の膨大な魔力だったというのに…今回感じる魔力は2ヶ月前よりも更に多かった。
赤ん坊というのはとてもデリケートな状態だ。
少年と言えるまで成長していたりするならば兎も角、生後2ヶ月となるとまだまだ免疫力が低い時期である。
熱を出したり風邪を引いたりしないように常日頃からのケアが大切になってくるのだが、今回はそんなレベルでの話ではない。
魔導士というのは体内に魔力の器と言えるものがあり、その器に魔力を溜め込んで魔法を使う。
魔力の器は勿論生まれた時から大なり小なり持っているもので、それが大きすぎると魔力制御がままならない為に高い熱を出してしまったりする。
グレイの師匠であるウル…その一人娘であったウルティアもその内の1人で、生まれて間もないというのに体内で高い魔力が高まることで体調を崩し、済し崩し的に高熱を出した。
魔力が高いことで高熱が下がらないことを、当時聖十大魔道に最も近かったと言わしめたウルは考え、住んでいる雪山の山頂付近から村から出て直ぐにある街の病院に駆け込んだ。
結果このままでは死んでしまうし、この魔力自体が危険であると判断され、ウルの手元から我が子であるウルティアを奪い取られてしまう。
グレイも、グレイの兄弟子であるリオンも、2人が寝静まっているであろう夜中に、テーブルに伏せて声を押し殺しながら涙する姿を見ている。
実はウルティアを取り上げた医師は悪徳医師で、魔力が高いウルティアを実験台として良からぬ事を考えていたが、ウルティアが成長した頃に魔法を使われて死に、行く当てが無く彷徨っているところをプレヒト…後のマスターハデスにヘッドハンティングされて
今はジェラールやメルディ、1人除いた嘗てのオラシオンセイスのメンバーと
そんな彼女が昔魔力によって高熱を出していたのだが、リュウマは端的に言うと当時のウルティアの比にはならない程の魔力を持っている。
なのに高熱を出さず体調も崩さず健康体であるのは、一重に体が元から丈夫である翼人一族であることがあるのと、リュウマのまだまだ発育途中であるリュウマの体が既に強靱な肉体を作り上げられているという事があるためだ。
だが、高熱を出さない代わりに……リュウマは辺り一帯に無差別超高濃度魔力を放出してしまう。
それ故に今、マリア王妃とリュウマがいる部屋に魔力が溢れかえり物が浮いては粉々に砕けている。
普通の人間ならばこの時点で化け物と言いながら腰砕けになって、這ってでもこの場から逃げようとするだろうが、マリア王妃も規格外であるため「まぁ!とっても元気ね♪」で済ませる。
何も、害が無ければ良いという訳の話ではない。
部屋の物を残らず破壊し尽くすのは別に構わないが、これ以上魔力が城以外の民達の住む城下町にまで影響を及ぼす訳にはいかない。
早く(攻撃的な)夜泣きを鎮めて寝かせなければ…と思い、リュウマを抱き締めながら考えること3分程。
「『──♪───♪♪────♪──♪♪』」
母になるまで味わうことが当然無く、城に仕える既婚者の侍女達から聴く子供の子育て生活を今絶賛していることをリュウマの夜泣きで経験し、己が可愛い我が子の母親という想いが生まれ、溢れ出るのではと思える程に愛しさで心を満たしながら…子守歌を歌った。
この国に伝わる伝統的な子守歌や、世界的に知られる一般的な子守歌を歌うのではなく、その身にリュウマを宿した時から夜泣きの時には歌おうと、心に決めていた作詞作曲歌い手の全てがマリア王妃の子守歌。
壊れていないベッドに腰掛け、腕の中で泣くリュウマを聖母の如き美しい微笑みを向けながら聴かせてあげる。
「オギャーッ オギャーッ オギャーッ」
「『────♪───♪──♪────♪』」
「オギャーっ オギャーっ」
「『──♪────♪───♪────♪』」
「オギャーっ………っ……。」
「『────♪──♪────♪───♪』」
「────zzz」
「うふふ。おやすみなさい…リュウちゃん♡」
1時間以上も泣き続け、挙げ句の果てには魔力で周りの物を破壊していたリュウマの膨大な純黒なる魔力は……弾けるように霧散した。
魔力が霧散しても泣いていたリュウマであったが、段々その夜泣きの力強さと勢いを鎮めていき、最後の方では泣き止んで子守歌を聴いている内に瞼が下りて眠る。
あれ程の夜泣きが嘘や冗談であったかのような呆気ない幕引き…だがマリア王妃は自分で作った子守歌を聴いて眠ってくれたことに嬉しくなり、そっとベッドにリュウマを寝かせてから自分も寄り添う。
一緒の布団に入りながら、まだ生えても短い銀よりの白き髪の生えた頭を撫で、1つ
泣いて魔力が溢れ出し、部屋の中が散らかってしまっているところを執務を終えたアルヴァ王が目にして溜め息を1つ。
執務に没頭している内にリュウマの魔力を感知したので向かおうとしたが、自分には出来ない泣き止ませをマリア王妃がやってくれると思い執務を続行したが、魔力反応が消えたことで安心した。
眠る2人を尻目に、何も無いところに腕を振るうと、何も無い所から
疲れた体を休めるためにベッドに寄り、既に眠っているマリア王妃とリュウマと同じように寝っ転がった。
リュウマの頭を撫でたら目を瞑り、直ぐに眠りについた。
リュウマが自分で夜中に起きて泣き喚くという事があり、マリア王妃が歌うことで眠らせることに成功したその日の夜は、このようにして過ぎていったのであった。
後に、一週間に一度の頻度で夜中に起きて泣き、魔力を放って周囲の物を破壊するという事件があったが、その度にマリア王妃が子守歌を歌って眠らせた。
やがて時は経ち、リュウマは生まれて2ヶ月から、今では6歳の礼儀正しい少年へと成長している。
一歳になった頃には、普通とは早いが簡単な単語を話すようになって、マリア王妃のことを「まんま」と、アルヴァ王を「ぱぁぱ」と言って喋った時は2人とも狂喜乱舞させた。
リュウマの誕生日となった日には国中で恒例のお祭り騒ぎとなって騒ぎ、国中に住む民からリュウマへと沢山の誕生日プレゼントが贈られてきた。
まだ子供なので子供用の玩具だったり、自作であるという魔力の籠もったお守り、または高級な素材で織られた着物等も届いた。
喋るようにってからは成長が早く、自力で寝返りを打ったりハイハイをしたりして失踪し、お付きの侍女を大変困らせたりした。
だが、3歳となって少し経った頃からリュウマは、その異常なまでの力の頭角を現し始めていたのだ。
「おとうさんっ」
「む?どうしたのだリュウマ。態々ここまで来て」
「ん~とね……あそびに来た!」
「ハハハッ。そうかそうか。だが私は今大切な書き物をしていてな?少し待っていてくれ」
何時もと同じように執務室で大事な執務に没頭しているところに、マリア王妃と遊んでいたリュウマはアルヴァ王の元に来た。
折角来てくれたのだから遊んであげたいと、早めに区切りの良いところまで書類を片づけてしまおうと急いだ。
イソイソと頑張っているアルヴァ王の周りを、最近自分の体重を支えきれる程までになった翼を使って飛んで、邪魔にならない程度で旋回しながら見ていた。
すると何か閃いたのか、ニッコリ笑いながら近くに居た大臣に話しかけて適当な鉛筆と紙を貰う。
机は他の所にないので床に伏せて紙を置き、なんと若干3歳にして事を紙に書き始めていたのだ。
集中しているアルヴァ王は気がついていないが、ほのぼのとした気持ちで見ていた大臣は驚きに固まる。
何かを書くこと数分…何かを書き上げた達成感で溜め息を吐き出して、アルヴァ王の元へと駆け寄り書いたものを見せた。
「おとうさんっ。これ見て~!」
「…む?どうしたのだ?」
「これねぇ…ボクが書いたの!」
「ほうほう!どれど……れ……」
見せてきたのは────アルヴァ王が書類に書いていた文字の筆跡と
何かの冗談かと思って何度も瞬きをして見てみても、書かれているのは白紙の紙に自分が先程書いた内容のもの……つまり、アルヴァ王は白紙に突然王が熟す執務の内容を書いたということになる。
もちろん、そんなことをしたことも、した憶えも無いし…何よりリュウマが書いたということを後ろに控える大臣が示していた。
違いがあるとすれば、書く物が鉛筆なのか万年筆なのかという違いだけ。
アルヴァ王が癖でやってしまうような特徴までも本人ですら分からないレベルで再現してみせた。
当の本人は褒められるのか輝く瞳をアルヴァ王に向けていた。
まさかこんな事が出来ようとは…魔力に次いで更なる我が息子の持ちうる力の片鱗に触れて戦慄し、立ち上がってリュウマを抱き抱えて高い高いをしてあげた。
褒められながらの戯れにご機嫌になったリュウマは、その紙を持ってマリア王妃の元へと可愛らしく向かっていった。
その後ろ姿を見届けたアルヴァ王は…リュウマが居なくなってしまったので遊べない…と、若干凹んでいた。
だが、それ以上にリュウマのことが衝撃的過ぎた。
3歳で字を書くこと自体珍しいのに、書いたのは昔に王になる義務として習った故に達筆の方であると自身持てる程のアルヴァ王の文字だ。
しかしここで捕らえるべき事柄は───リュウマは内容を理解していない。
とどのつまり……文字をそのまま
言ってしまえば、内容はおろか文字の意味すら知らない。
だが、アルヴァ王が書いている時の万年筆の持ち方と書き方…払う止める伸ばすという部分を見て即座に覚え、3歳にして頭の中で3D映像のようなものを流して解析した。
次に自分で解析したシミュレーション通りに手を動かせば完成だ。
言っているだけでは簡単に見えるが…本当に出来るのだろうか?機械が事細かに分析して書いたならまだしも、実践して見せたのは3歳児だ。
人間は数十億人と世界には存在しているが、そのどれもが全く違う性格や姿形をし、感じることも思考することも違うのだ。
その者に合わせて全く同じく模倣すということを、たった今…初めてやって見せた。
「全く…我が子は本当に凄い。将来が楽しみだ」
アルヴァ王は誇らしげに笑い、部屋に入ってきて紙を見せられたマリア王妃は感激してリュウマを抱き締めた。
しかしそんな幸せな日常に────突如事件が起きた。
事件が起きるのですよ…えぇ。
内容は直ぐに終わってしまうかもしれませんが、リュウマからしてみれば事件ですので、お楽しみに。