FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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リュウマが愛されてて嬉しいです笑

この話の所為で原作の最初の方が飛びますが、そこは補足させていただくので問題はないです。

それにしても…最終章ですか……。

()()()()()()()()()()()()()()()()()嬉しいです(ニッコリ


第六九刀  真実

 

「おいおい。そーんな物騒なモンは向けないでくれよ。()()()()()()()()()()()こっちは小心者でね」

 

 

口を開いた不審な男が吐いた言葉はそんなものだった。

どこか含みのある言い方に引っ掛かりながら、警戒を緩めないエルザは剣を光らせて、もう一度何者なのかと問うた。

 

軽い話も付き合ってくれないのかと、手を上げたままやれやれと頭を振った男は……その場から消えた。

 

 

「なっ!?何処に……!」

 

「────まぁまぁ。そう興奮しなさんなって。オレ様のこれは限りがあるんだから、余り使わせないでおくんなァ」

 

 

メンバー達が全員見ている中で、マカロフにすら捉えきれない速度でメイビスの隣に移動していた男は、何者なのか判断するために目を細めながら分析しているメイビスに頭を下げて()()()()()

 

 

「お前さんがメイビスだろ?()()()()から伝言預かってるんで、後ろで殺気立ってるお爺ちゃん止めてくんね?怖くてチビっちまうぜ」

 

「黒の…?…8代目、取り敢えず話を聞くので手は出さないように」

 

「しかし初代…!」

 

「いいのです。敵意は見られませんし、何より気になる事がありますので」

 

 

メイビスの言葉に渋々従ったマカロフは、同じく殺気立ってる他のメンバー達にも目で手出しは無用だと語り、特にナツには厳しめの目を向けた。

念を押しておかなくては一番に突っ込んで話にすら発展しないと踏んでのことだ。

 

実際拳に炎を灯しているので、不審な男が何かした途端に襲い掛かるであろう事が簡単に予測される。

だとしても、今は仕方ないのだ。

何せアルバレスとの戦争が始まろうとしている真っ只中なのだから。

 

 

「先ずは質問させて下さい。あなたは────」

 

「何でお前さんと話が出来て目を合わせられるのか…か?あと、オレ様から感じるこの()()()()()()のことだろ?言わなくても分かってるよ。顔に書いてあるし目が物語ってるぜ。へへっ」

 

「……読み合いで負けるなんて…。…それで、何故ですか?」

 

 

メイビスは賢明故に妖精軍師と呼ばれる程のもので、年月が経ってからは人との読み合いに於いても他よりも長けていた。

そんな彼女の言わんとする事を悟って詰めるこの男の異質さに警戒心を抱きながら、質問の答えを待った。

 

 

「何で感知出来るのか。元々オレ様の力じゃない。只ちょっと力を借りてるだけさ」

 

 

そう言って目を瞑ってもう一度開いたときには、黒曜石のように黒かった瞳が蛇のような縦長に裂けた目をしていた。

色も黒から金…黄金のような色合いとなって吸い込まれそうな魅力を引き立てている。

 

そんな瞳をメイビスは憶えがあった。

まるで…初めて会った時のあの人のような……。

 

と、そこまで思って、その目をこの男に貸した人物に当たりを付けて確信する。

 

 

「あなたの言っていた旦那っていうのは…もしかして…」

 

「普通この魔力感じれば分かっと思うんだけどな。そう、この魔力だって借りてるだけ。オレ様はさっきも言ったとおり伝言を預かってるだけなんだから。まぁ、本人から直接だからな。黒の旦那─────リュウマからの」

 

「────ッ!あんた!リュウマが何処に居るのか知ってんの!?」

 

 

男の口にした名前に最初に反応したのはルーシィだった。

 

探しても情報の一つも手に入れることが出来なかったルーシィは、好きな相手の事が分かるかも知れないチャンスをみすみす逃す訳にはいかない。

それはウェンディやカナやエルザやミラも同じ様で、話すまで逃がさないというような鋭い視線を向けていた。

 

見られている男は怖い怖いと言いながらニヤニヤした笑みを崩すこと無く、「だから伝言預かってるって言ってんだろ?」と言って、うんざりしたように溜め息を吐いた。

 

 

「オレ様には時間が残されてねぇから言っちまうぜ?ん゙ん゙っ…『我の使者がこの言葉を送っている頃には(いくさ)が開戦せんとする頃であろう。我からの要望は一つ…白き姉妹剣を持つ女には何があろうと手を出すな。手を出さなければ害は無いが、手を出せば冷酷無情に貴様等を淘汰するであろう。故にその女は我が始末する。残る者共は貴様等でどうにかせよ。そしてメイビス、あの時の契約を果たせ』…だってさ」

 

「我…?」

 

「白の姉妹剣?」

 

「そんな奴にやられるかーー!!!!」

 

 

皆が皆思うことあれど、男からの言葉に真剣な表情をするメイビスを見て、これがリュウマからの伝言であるということが事実であると語られたも同義であった。

聞き終えたナツが、そんな奴に会ってもオレがぶっ飛ばしてやると叫んでいるが、本人を目の前にその言葉を吐けるとは到底思えない。

 

白の姉妹剣…オリヴィエの持つ双剣のことであり、オリヴィエは興味ないフェアリーテイルに手出しはしないが、攻撃してきたならば文字通り跡形も無く国ごと消すことはしてくるので、それ故の伝言なのだが…バカなナツは本人を見たことが無いので理解していない。

 

しかし……見たことがあるマカロフとメストは…納得した。

 

 

「ワシはアルバレスでその女に会った」

 

「オレは瞬間移動する一瞬だけ見たが…化け物だ」

 

「会ったことあんのかよ!?」

 

 

情報としてマカロフは険しい表情でオリヴィエについて話し始めた。

 

 

「いいか。リュウマの伝言通り、どんなことがあろうと…絶対にその女には手を出すな」

 

「何でだよじっちゃん!オレ達が負けるとでも────」

 

「────すまんの」

 

 

呆気ない返答にナツも固まってしまう。

今先程メンバー全員で気合いを入れたところだというのに、他でも無いマカロフの口から勝てないと思っていると告げられたのだ。

納得いかないと叫んでいるナツを放って、とても真剣な表情で何故そう思ったのか教えた。

 

 

「ワシは何もされていない。ただ前に立たれただけじゃ。しかしそれだけで……魔力を解放している訳でもないその女を前にしてワシは……自分がどれだけ小さな存在なのかと思い知り、走馬灯すら見据えた」

 

「「「─────────っ!!!!」」」

 

 

マカロフにそこまで言わせるのは一体どれ程の存在なのだろうかと…皆が疑問に思ったが、真剣な表情をするマカロフの言葉に従わない訳にはいかないので、見かねたら接触しないようにしようと心に誓った。

まだそんな奴はオレがぶっ飛ばしてやる叫んでいたナツは、いい加減にしろとエルザに殴られていた。

 

オリヴィエのことを大雑把に聞いていた男からしてみれば、オレ様には関係ないから精々頑張ってくれと紡ぐだけだった。

いい加減時間が迫ってきている男は、強引にマカロフ達の話に割り込んで残る伝言を伝えた。

 

 

「最後に一つ。『アクノロギアに関しても我が始末する』だってさ」

 

「アクノロギアはオレがぶっ飛ばしてやるんだ!!」

 

「─────お前さん。さっきからソレばっかりだな。吠えてばっかりで全然強いとは思えないねぇ」

 

「ア゙?んだとテメェ!!」

 

 

男の言葉に腹を立てたナツは青筋浮かべながら大股で男の前まで迫ってくる。

話し終えた男はニヤニヤした顔のままナツのことを見ていて、男からしてみれば、あっちもオレがやるこっちもオレがやる…黒の旦那のように圧倒的力を持っていないのに強欲極まりない言動には心許ない訝しさしか感じない。

 

元々不審な男だというのに馬鹿にされたナツは、短気なだけあって早速男を殴ろうと腕を振りかぶった。

男はその光景を見ているだけで何もせず、拳が頬に突き刺さる…となった刹那……男の姿が光を纏いながら一匹の鴉となった。

 

 

『ざーんねん。オレ様は黒の旦那に助けてもらった一匹の鴉なのさ。人間の姿をしていたのは旦那の魔法…魔力が切れればこうやって元の姿に戻るのさ。言葉だってもう話せなくなる。まぁ、元々喋れないから元に戻るだけなんだけどな!』

 

「逃げんのかお前!!」

 

『……お前さん…相当なバカだろう?オレ様の話聞いてたか?オレ様は只の鴉…お前さん何の変哲もない鴉に魔法ぶつけんのか?大人気ねぇなぁ…カーカッカッカッ!』

 

「こいつ…!」

 

 

捕まえようとしたナツの腕をすり抜け、ギルドの中を旋回していた鴉は最後にカーッ!と鳴きながら扉を通って外へと飛び去っていった。

去って行った鴉は猟師の縄に掛かっていたところをリュウマに助けられ、恩に報いる為に遙か数千キロ離れたフェアリーテイルの所まで来て伝言を伝えたのだ。

 

テーブルに頭から突っ込んで破壊したナツは、そこら辺に居る者達にあの鴉何処行った!?と聞いて、もうどっか行ったと聞いて悔しそうな顔をしていた。

リサーナはそんなナツに静かにしているように注意して、ナツもリサーナの言葉に従って静かになった。

 

話を出来る状態に戻ったと判断したメイビスは、一旦周りを見渡して、では…と話を始めた。

 

 

「先ずは最初に話そうとした思っていたルーメン・イストワールについて話そうと思います。……あれは今から100年以上も昔─────」

 

 

話はメイビスが昔にマグノリアを占拠していたギルドを、ゼレフから最後に教わった古代の超魔法…ロウを使って勝利した頃に遡る。

後の妖精の三大魔法の一つ…妖精の法律(フェアリーロウ)となるロウを使用したメイビスは、完全に習得していないまま使った反動で、使った時の姿から成長しない体になってしまった。

だからメイビスは少女の姿こそしていて、実際には体が成長しないままで幽体となり、当時は20代に入っていた。

 

 

年が少し過ぎてX686年4月……妖精の尻尾(フェアリーテイル)創設。

 

 

当時は領主同士の通商権争いが絶えることなく続き、激しさを増す一方であったと同時、第二次通商戦争が始まった年でもあった。

遂には魔導士ギルドを雇っての戦いとなり、血が絶え間なく大地に注がれていく結果となった。

 

その頃にもリュウマは雇われて戦争に参加していて、時々メイビスの作戦を覆すような戦況を変える魔法を使って殲滅したりと、何かと大きなことをしていた。

因みにだが、雇われる度に莫大な資産を報酬に出してくるので、一文無しの一人旅から、懐が暑くて暑くて仕方ない…それこそ町一つ買えるほどの余裕さえあった。

一国の王であった時は、国の資金はそれの数百倍持っていたが。

 

戦争にメイビス達フェアリーテイルの創設メンバー達も加わり、四年後のX690年に第二次通商戦争は終結された。

この戦いで類い稀なる戦略眼を見せたメイビスは、戦争に参加していた者達から妖精軍師と呼ばれるようになった。

 

第一次戦争に比べて、第二次通商戦争では各地で死傷者が数十倍近く出た。

原因の一つとして、魔導士ギルドが介入したからという声も上げられたが故に、魔法界も然りと判断してギルド間抗争禁止条約が締結されたのだ。

ギルド間抗争禁止条約とは、何時如何なる時であろうとギルド間での武力抗争を禁ずるという条約だ。

 

ギルド間抗争禁止条約が締結されて、魔法界には暫しの間の平和が訪れて六年後……メイビスは黒魔導士ゼレフとの再会を果たしたのだ。

 

リュウマと一緒に魔法を教わっていた時、ゼレフの事は黒魔導士としか聞いていなかったので、話している時に自分が世に騒がれている大犯罪者の黒魔導士ゼレフだと告げられて、メイビスは大層驚いた。

 

300年も同じ若々しい姿でいたのかと驚いている内に、ゼレフはゼレフで10年前に会った時とメイビスの姿が変わらないことに不思議に思った彼は、焦った様子でロウを使ったのかと問うた。

返事をする前に額を合わせられたメイビスは紅潮していたが、ゼレフはメイビスの顔を離して酷な判決を下した。

 

 

「成長が止まっているんじゃない……()()()()不老不死になっているんだよ」

 

「……え?」

 

 

ロウを放つ時…メイビスは自分で命の選別をしてしまった…自分の裁量で…。

 

ゼレフも自分の裁量で命の選別を行い、アンクセラム神の怒りに触れて呪いを受け、不老不死にされてしまった。

だからメイビスも……。

 

 

「そんなことはありません!!…私の周りで…人は……」

 

 

叫んで否定しているメイビスに、ゼレフはただ事実と真実を語り聞かせた。

確かにメイビスの周りで人は()()死んでいない。

 

ここ最近何があっただろう?

 

 

それは……“戦争”

 

 

戦争とは罪無き者達も平等に儚くも無駄に死んでいく。

すると人の持つ人の生死に関する倫理観を鈍らせて狂わせる。

メイビスは戦争の所為で命に対する考えそのものが揺らいでいたのだ。

 

メイビスが真の意味で命の尊さを知った時……

 

 

周りの命は消えていく

 

 

信じられないメイビスは涙を流しながらその場を走って後にし、フェアリーテイルへと戻っていった。

命は大事だ…一瞬の短い間の微かな灯火であるが、だからこそ命というのは儚くも尊いものであるのだ。

 

分かっていることを何度も繰り返し、自分はアンクセラムの呪いなど掛かっていない。

そう断言しているのだが……この年…創設メンバーのユーリの子……マカロフが生まれた。

 

フェアリーテイルが好きであったユーリの妻…リタはマスターであるメイビスに子供の名付け親になって欲しいといい、ウォーロッドやプレヒトの後押しなどもあり、昔読んだ本の中に出て来た優しい王様の名で…マカロフと名付けた。

 

命の育み…生命の誕生に立ち会ったからこそ……命の尊さを知った。

 

メイビスが感激でリタの手を握り締めたその時……

 

 

 

ドクン

 

 

 

出産で体力を消耗しようと、話をすることが出来ていたリタの手から力が失われ……ベッドに落ちた。

 

 

今この瞬間……リタはメイビスの持つ死を誘う力で力尽きたのだ。

 

 

「あ…あぁ……あぁああぁぁ──────っ!!」

 

 

『真の意味で命の尊さを知らないんだよ』

 

「ち、違う……」

 

『その尊さを知った時─────』

 

「違います…!!!!」

 

 

『君の周りの命は消えていく』

 

 

メイビスはフェアリーテイルから出て行って森の中を駆けていく。

 

駆けて駆けて駆けて…森の中央で木の根に足を取られて転んでしまった。

 

だが…手を突いた所の周辺の草木が……枯れる。

 

 

矛盾の呪い…人を愛せば愛するほど周りの命を奪い、愛さなければ命を奪うことはない。

 

 

悠々と生える草木を枯らし、動物の命を絶ち、人の命さえも差別なく平等に奪っていった。

 

 

呪いがある以上は人の近くには居られない…と、フェアリーテイルに顔を出すことがなくなり、宛てなど無く彷徨い続け……彷徨いの過程で幾度も命を奪っていき…1年が経過した。

 

姿を消したメイビスを追い掛けていたゼレフは、一年後に森の中にある枯れた木の穴の中に、膝を抱えて座り込んでいるところを発見した。

半年も食事をしていないのにも拘わらず死ぬことがない現状に嫌気がさし、ゼレフに殺して欲しいというメイビスに、ゼレフでも同じ不老不死は殺せないと教えた。

それは逆も又然り……メイビスもゼレフを殺すことは出来ない。

 

たった1年で参ってしまっているメイビスに、ゼレフは無限の時間があるからこそ、出来るだけ命に関することを考えないようにしてエーテリアスという魔物…後のタルタロスの悪魔達や、国作りをしていると教えた。

尊く思えばいけない訳なので、人をただの駒と考え、国作りをシミュレーションゲームと考えて取り組んでいるのだそうだ。

 

何でも無いように語っていくゼレフはしかし…話している内に話の内容が矛盾して何を話しているのか分からなくなってしまう。

矛盾の呪いに犯され過ぎて、思考までも矛盾になってきてしまうのだ。

 

メイビスはそんなゼレフを抱き締めて受け入れ、共にアンクセラムの呪いの解く方法を探していこうと提案し、初めて同じ道を歩んでくれる存在を目の当たりにしたゼレフはメイビスを愛しく思い、メイビスもまたゼレフに惹かれていった。

 

 

魔道の深淵全ての始まり

 

 

それは一なる魔法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛は時に奇跡を起こし、時に悲しみを引き起こす。

 

 

矛盾の呪いに掛けられた二人の愛は……最後の矛盾を突き付ける。

 

 

愛すれば愛するほどに命を奪うその呪いは

 

 

 

 

 

不老不死であるメイビスの命を奪っていった。

 

 

 

 

 

ゼレフは動かなくなったメイビスの体をフェアリーテイルまで運び、丁度出て来たプレヒトに、まるで道具のように乱雑にメイビスの体を渡し、ゼレフはメイビスが妖精ならば自分は醜い妖精(スプリガン)だと名乗ることを決めた。

 

故にアルバレス帝国では、黒魔導士ゼレフのことを民達は皆がスプリガンと呼んでいるのだ。

 

メイビスの体を受け取ったプレヒトは、メイビスの体から微かな魔力が残っていることと、心臓が動いていることを知り、急いでフェアリーテイルの地下にある蘇生用のラクリマの中に封じられた。

 

幾つもの蘇生魔法が試されたが…終ぞ効果は得られなかった。

 

だが代わりに、後の天才と呼ばれたプレヒトはアンクセラムの呪いに気が付き、ユーリの妻のリタの命を奪ったのはメイビスのアンクセラムの呪いであることが分かった。

 

 

これが……メイビスが秘匿される切っ掛けだった。

 

 

X687年…プレヒトの判断によって、フェアリーテイルのメンバーにはメイビスが死んだと告げられ、骸無き墓はギルドの聖地である天狼島に建てられた。

天狼島はメイビスの故郷であり、プレヒトやユーリ、ウォーロッド達との出会いの地だったからだ。

 

同年…プレヒトがメイビスの生前の遺言に従いフェアリーテイル2代目マスターとなる。

プレヒトはマスターとしての仕事の傍ら、メイビスの蘇生にも心血を注いだ。

 

3年後には妻の死の真相を知らぬままマカロフの父…ユーリが他界。

 

更に30年、プレヒトはメイビスの蘇生を続けてはいたが、事態は予想だにしなかった方向へと進んでいってしまったのだ。

類い稀なる才能を持つプレヒトが、メイビスの不老不死がもたらす半永久的な生命の維持…それが融合して説明の付かない魔法が生まれた。

 

 

永久魔法 妖精の心臓(フェアリーハート)

 

 

「永久魔法…?」

 

「それは一体どのようなものなのですか?」

 

 

ルーシィとエルザの疑問に、メイビスは間もなく答える。

 

 

「その名の通り永久…無限。絶対に枯渇する事のない魔力です」

 

「なんだそりゃあ!?」

 

「一生使えちゃうのぉ!?」

 

 

フェアリーハートの力は凄まじものである。

 

エーテリオンという魔法…旧評議院が所持していた国を丸々一つ消滅させる超魔法。

フェアリーハートはこのエーテリオンを無限に撃つ魔力を持っている。

いや…魔力を持っているというのは誤りである。

 

 

「─────無限なのですから」

 

「「「「─────────────」」」」

 

 

フェアリーハートのことが世間に公表などされてしまえば、魔法界は根底から覆ることになる。

 

メンバーの一人が何故この魔法の為に攻めてくるのか分からないと述べた。

アルバレスは既に強大な力を持っている。

それに対してメイビスは、ゼレフはアクノロギアを倒すために手に入れようとしていると推測していると言った。

 

ハッピーがその後に質問をした。

 

「フェアリーハートでアルバレスもアクノロギアも倒すことは出来ないのか」

 

と。

 

確かに一理ある話ではある。

 

 

だが、()()()()

 

 

もし、無限に降り注ぐエーテリオンが制御不能であったのだとしたら。

 

 

それこそ世界の破滅になりかねない。

 

 

国を一つ消滅させる魔力というのは、地球規模で考えればそこまでではないかもしれないが…その照射時間が無限ともなると、地球上の生物は死に絶え、海は干上がり、大陸は跡形も無くなる程削り抉り取られるだろう。

 

他にも、魔法界がそんな危険なモノを一個ギルドが所持して良いものではないと言って明け渡すように言うだろう。

そこからフェアリーハートの力を欲する愚か者が出て、大陸間の全面戦争にだって繋がるかもしれない。

 

 

流石に全面戦争は言い過ぎ?

 

 

では、フェアリーテイルはアルバレスと()()()()()()()()()()()()()()

 

 

言い過ぎということはない。

 

 

事実フェアリーハートが明るみに出た場合、世界は大混乱になるのだ。

だから使うことはかなり渋られてしまう。

だからこそ、タルタロスとの戦いでアクノロギアが出て来た時にマカロフがフェアリーハートを使おうとしていたが、終ぞ使うことが出来なかったのだ。

 

己の罪から生まれた魔法が、フェアリーテイルを窮地に追い遣っていることに涙を浮かべているメイビスに、メンバーは全員して初代の所為ではないし気にするなと言う。

メイビスがフェアリーテイルを創らなかったら、今こうして話し合う事が出来る仲間とも出会えなかったのだからと。

 

 

「ありがとう…ございますっ。本当に…良いギルドです!……もっと感謝を述べていたいところですが、時間を掛けている時間も惜しい、次は……人々から忘れられた幻の王様の話をしたいと思います。良く聞いて下さい」

 

「来たか…」

 

「気になってた話しだ……」

 

 

そしてとうとう……あの話しになる。

 

 

「あなた方は“フォルタシア王国”というものを知っていますか?」

 

 

メイビスは早速本題に入る。

 

フォルタシア王国…彼を語るならば外せない話である。

 

問われたみんなの反応は……当然─────

 

 

「フォルタシア王国?……()()()()()

 

()()()()()()()()

 

「国の名前…()()()()()()()()()?」

 

 

と、いった…誰も知らない、語られたことの無き名前である。

やはり知る者は居なかったことに悲しげな表情をするが、悲観している訳にはいかない。

 

 

「フォルタシア王国…今から400年前に、まだ世界が四つに分かれていた頃…その四つの内の一つ、つまり世界の四分の一を手にしていた超大国のことです」

 

「世界の四分の一ィィィィ!!??」

 

「おいおい、それハンパなくねーか?」

 

「だけど…あれ?」

 

「なんでそんなとんでもねー国が歴史に記されてないんだ?オレ聞いたことも無いしよ?」

 

 

疑問は最もであるが、フォルタシア王国が世の人々の記憶から…歴史から消えてしまい、超大国と呼ばれた国が語り継がれなかったのには理由がある。

それこそが……

 

 

「竜王祭……竜と人間の戦争によって数多の竜に襲われたフォルタシア王国は、瞬く間に滅び去ってしまったのです」

 

「そう…だったのか……」

 

「そこで言っておきたかったのが、フォルタシア王国を治めていたのがどんな人物だったのかです」

 

 

どんな人物と言われて思い浮かべるのが、王としてしっかりしていそうで、髭を生やしていたり、渋い顔立ちだったり、体が大きかったりと様々ではあるが、フォルタシア王国の最後の王はもっと若々しいままである。

他にも……普通の人にはあまり見られないものが付いていた。

 

 

「フォルタシア王国の王は……翼人一族。つまり…背に羽を持っていたのです」

 

「翼人一族…」

 

「翼……?……あ」

 

「あれ…?翼って…」

 

「で、でも……え?」

 

 

所々から困惑した声が聞こえてくる。

それは一人前の大魔闘演武の際に、ドラゴンと戦うときにその者の近くに居た者達の口から。

 

だが、そんな結果な訳が無い。

 

そんな訳が無いと心に言い聞かせている内に…メイビスは決定的な言葉を口にした。

 

 

「このフェアリーテイルに所属していて翼を使った人物がその王です」

 

「う、う…そ……」

 

「そ、そんなことが…あるのか…?」

 

「まさ…か…………リュウマ?」

 

「…………………。」

 

 

エルザが名前を口にして、メイビスはそれに対して沈黙でもって答えた。

だがそうなると400年前から生きていることになる。

リュウマはどう考えても20代前半…多く見積もっても20代後半の見た目である。

 

だがそれは…不老不死のゼレフやメイビスにも言えることである。

 

 

「リュウマの正体は……フォルタシア王国第17代目国王…リュウマ・ルイン・アルマデュラ。世界の四分の一を手中に収め、大魔闘演武の際にジルコニスというドラゴンが言っていたアクノロギア以外のドラゴンを皆殺しにした人物。アクノロギアに勝てるとしたら…彼以外にいません。何せ……400年も昔に大凡数万頭のドラゴンを()()()()()()殲滅した方なのですから。国の戦争にも先陣を切っていた彼の世間からの呼び名は……殲滅王。世に恐怖と絶望を撒き散らした本人です」

 

 

メイビスの言葉に…メンバーの全員が固まっていた。

 

確かに昔から強く、挑まれようと誰にも負けること無く圧倒的力を見せてきたが…まさか大昔…それもゼレフと同じ時代の人間だとは思わなかった。

 

 

それも翼人一族…他の人達とは少し違う特殊な人間である。

 

 

「り、リュウマが昔の王様なのは…まぁ分かったよ。でも…何で姿を現さないんだ?」

 

「そうだ!別にオレ達は昔の人間で、それも王様だったとしても嫌わないぜ?」

 

「……彼は…アクノロギアを打ち倒した後、姿をくらます気だから…だから最後に会うつもりは無いのではない…かと」

 

「え?…居なくなる?」

 

「そんなの…嫌」

 

「リュウマさん…居なくなっちゃうんですか?」

 

「チッ…勝手に居なくなるとか…絶対に許さないよ、私は」

 

 

やはりのこと反応を示したのは、リュウマのことを慕い、恋心を持っている者達であった。

 

突然もうお別れだから会う気はないと言われても…と、思ったところで、1年前に届いた手紙のことを思い出した。

 

丁寧に書かれていたお別れの文と分かる事が綴られた手紙……彼女達は総じて暗い表情をした。

 

 

 

 

 

「ふ~む?どうやらリュウマは会わない間に矢鱈と女を誑かせていたらしい」

 

 

 

 

 

 

「──────え?」

 

 

全く聞き慣れない声、それが響いたのは座っていたウェンディの横から聞こえてきた。

 

勢い良く振り向いたメンバー達がウェンディの横を見て目を見開いているのを見て、ウェンディもゆっくりとだが隣に視線を向ける。

隣に座っていたのは……オリヴィエだった。

 

誰にも気付かれることなく、ウェンディとカナの間の席に足を組んで座り、何処から持ってきたのかティーセットの皿を左手に、カップを右手で持って優雅に紅茶を楽しんでいた。

 

腰に差している二振りの純白の双剣を見て、エルザはこの女がリュウマからの伝言で言っていた女だと理解した。

そして……次元が違いすぎる魔力の異質さと存在感に、あのエルザが膝を折って屈しかけていた。

 

 

「テメェ!!ウェンディから離れろ!!」

 

「コイツ…!!」

 

「ぁ…ば、バカ者!!そいつは─────」

 

 

エルザが言い終わる前にナツが駆け出して炎を灯した鉄拳を振るい、グレイは両手を添えて攻撃をしようとしたが伝言のことを寸前で思い出して踏み留まった。

 

残念ながらナツは既に手遅れで、オリヴィエの顔に拳を──────

 

 

「─────小僧。喧しいぞ」

 

 

「なッ…!?」

 

 

オリヴィエは……ナツの手加減無しの攻撃を人差し指一つで止めた。

 

 

「突如女に襲い掛かるとは。何とも野蛮な小僧だ。どれ、少し()()()()()()()()()

 

「────ッ!?ま、待ってく─────」

 

 

右手の人差し指で防いだ拳を横に少し傾けるだけで、ナツの重心を掌握し体勢を崩させる。

咄嗟に戻ろうとしたナツの行動よりも速く、オリヴィエの右手がブレた。

 

 

──────どむッ!!!!

 

 

「ごぷっ…!?」

 

「貴公のような有象無象は話が通じぬと相場が決まっている。暫しの間その場で蹲っていろ」

 

「ガッ!?」

 

 

誰の目にも捉えられない速度でナツの腹に殴打を打ち込み嘔吐かせ、蹲ったところで頭に足を振り下ろして床に叩きつけた。

そのまま足は退けられることなく、ナツが一方的にやられて足台にされてしまう。

 

ナツがやられたことに他のメンバー達が攻撃しようとしたが、エルザが手を横に振り上げて止めるように指示を出した。

そこで思い出す……手を出せば今度は自分達がやられるということを。

 

現に手を出したナツがやられ、何もしていないウェンディとカナが未だに何もされていないのだから。

 

 

「…っ…。貴様は何者だ」

 

「尋ねるならば先ずは己からではないのか?」

 

「……すまなかった。私はエルザだ。…それで貴様は何者だ」

 

「ハァ。そう急かすな。私はお前達に何かするつもりはない」

 

「既に足下に仲間が一人やられている」

 

「ほう…?貴公の(まなこ)は相当の節穴と窺える。私が何時手を上げた?これは正当な防衛手段に過ぎない。何せ私が攻撃をされた側なのだから。私を咎めるのは筋違いでは?」

 

「クッ……ナツを解放しろ」

 

 

エルザは取り敢えずナツを回収するために、オリヴィエに鋭い視線を向けるが意に返されず。

しかし肩をすくめたオリヴィエは足を上げてナツを蹴っ飛ばして寄越した。

 

軽く爪先で突くように蹴っただけだというのに、勢い良く数メートル程飛んでマカロフの大きくした手によってキャッチされた。

痛みが引かない程のダメージがナツの腹部を襲い、床に足を付けても子鹿のように脚が震えてしまう。

 

この場に居る全員がオリヴィエの存在感と魔力に当てられて震えが止まらない。

隣に居るウェンディとカナには最も影響されていて、それを知ってか知らずかウェンディの髪に触れて長い髪を優しく梳いた。

 

 

「────ッ!?ぁ…うぅ……」

 

「ふふふ。何を怖がっているんだ。私は何もせんぞ?」

 

「……おい。私の質問に答えろ。貴様は何者だ」

 

「……まぁいいだろう。私はオリヴィエ。夫が世話になっていたからな。私の名を口にすることを特に赦す」

 

 

上から目線にカチンとくるエルザだが、実際に上の者なだけあって言い返せない。

そもそも、先程から強気な口調で出ているが体の震えが止まらない。

見抜いているオリヴィエは、そんなエルザのことをクスリと笑って微笑んだ。

 

 

「エルザ。後はワシに任せておけ」

 

「…!マスター…。分かりました」

 

 

奥から意を決して出て来たマカロフにこの場を任せたエルザは数歩後ろに下がり、無意識の内に安堵から来る溜め息をしていた。

 

マカロフが目の前に立っていても特に変わること無く、オリヴィエは恐怖で震えるウェンディの頭を撫でながら、エルザの代わりに出て来たマカロフを見ていた。

 

 

「……お主が言った夫とは誰のことじゃ」

 

「なんだ。先にその話をするのか?…まぁ良いが。私の夫の名はリュウマ…リュウマ・ルイン・アルマデュラだ」

 

「……へ?」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

「…へぇ…?」

 

「…は?」

 

「「「はあぁ────────ッ!!??」」」

 

 

あっけらかんと宣うオリヴィエに、一同騒然である。

女っ気が無いとは思っていたが、まさかまさかの嫁が居たとは…と呆然とし、ルーシィを始めとした慕う少女達は顔色を悪くさせた。

 

 

「嘘をつかないで!」

 

「嘘ではない。こう見えて私も夫と同じ時代の…400年前の時代の者だ。世界の四分の一を治めたラルファダクス王国が王…オリヴィエ・カイン・アルティウスとは私のことだ」

 

「400年…前……」

 

「世界の四分の一を手中に収めてた奴の…一人…?」

 

 

到底嘘の類とは思えない程に緊迫した空間に、オリヴィエの紅茶を飲む音だけが響く。

次から次へと訪れる大きな驚愕に、メンバーは頭がこんがらがりそうになる。

フェアリーハートの無限魔力の次にリュウマが400年前の王だと明かされた、その次は謎の美女がリュウマの妻で同じく400年前の王だという。

 

夫であるという線が濃くなってしまう毎に、一部の少女は悲しそうな表情をする。

だがオリヴィエからしてみれば、所詮はリュウマ以外の存在故にどうでも良く、悲しそうな顔をしようが目の前でのたれ死のうが苦しもうが至極どうでも良かった。

 

ここに来たのはただリュウマが暫く留まっていたところを一目見ておこうと思って散歩感覚で立ち寄っただけなのだから。

 

周りが困惑しているのを余所に優雅に寛ぎ、自然体でいるが付け入る隙が全く皆無。

攻撃しようと懐に飛び込めば、飛び込もうと体を力ませた瞬間に首は胴体と離れる。

圧倒的実力差を承知で、機嫌を損ねない程度の話し方と内容でマカロフが質問していった。

 

問われたオリヴィエは何てことは無いように答えていった。

己はここに来たのは本当にリュウマが居たところを見てみたかったことと、他にもゼレフが狙っているというフェアリーハートがどんなものなのかも見ておくためだと。

本来フェアリーテイルの紋章を刻んだ者にしか見えず聞こえず気配も感じ取れないものだが、オリヴィエの前にはリュウマ同様意味を成さない。

 

立ち上がったオリヴィエはなんと、メイビスの前まで行くと目線を合わせて会話をしたのだから。

何処までも規格外であるリュウマの対を成す者…彼女にはリュウマ以外に倒すことが不可能であるのだ。

 

例え御都合主義や主人公補正や土壇場の覚醒、仲間達との絆の力の総力などを起こそうとも、オリヴィエやリュウマの前には無意味にして無価値。

絆で勝てるというならば、400年前に妻子がいる者や大切な友人のいる兵士達によってリュウマとオリヴィエは打ち倒されている。

 

だから今は……出来るだけ刺激しないようにするしか無いのだ。

因みに、先程回復したナツをがまたも殴り掛かろうとしたが、エルザの人を睨み殺すような目を見て縮こまった。

 

 

「……お主の目的はなんじゃ」

 

「離れ離れになってしまった夫の回収だ。あぁ、心配しなくていい。夫を回収しても、貴公等をどうこうするつもりは無い。夫以外の有象無象に興味は無いのでな」

 

「……リュウマはあなたのような人が居るなんて一度も口にしなかったわ」

 

「居たんだとしたらそれ相応の事は言うはず」

 

「私はあんたがリュウマの夫とは思えないね」

 

「私も…あまり信じたくないです……!」

 

「貴様の話には信憑性が無い」

 

 

リュウマに恋する者達からの言葉には、そうであって欲しいという意志も籠められている。

基本周りの有象無象はどうでも良く、本人から夫じゃないと言われるのは今更なので別に良いが……有象無象であろうと、関係の無い者達に言われるのは癪に障った。

 

手に持っていたティーセットが音を立てて粉々に砕け、オリヴィエの体から純白の魔力が高濃度故に可視化される。

ギルド…いや、最早国そのものが揺すられていると言ってもいいような震動が奔り、目の前に居るメンバー達は言葉で表現出来ないような恐怖が身を強張らせた。

 

 

「その不敬に値する発言……首を落とされなくては解らぬか」

 

「「「「──────────ッ!!」」」」

 

 

両の腰に付けた純白の双剣の柄に手を掛けた途端……少しの殺気のみで一体何度胴体ごと首を斬られただろうか。

錯覚が現実ならば既に…一人一人が20回近く殺されていると思える中で、とうとう双剣が鞘から抜け─────

 

 

「───ッ!……ふふふ。来たか。私のみに莫大な殺気を飛ばすとは……断罪は止めだ。私には用事が出来た。精々アルバレスからの侵攻に藻掻くが良い」

 

 

そう言い残してオリヴィエは消えた。

 

 

殺気と魔力から解放されたメンバー達は全員して膝に手を置いて荒い息を整えていた。

危なくアルバレスと戦う前に全滅させられるところだったとこを、何故オリヴィエは何処かに消えたのだろうかと考え、消える前の発言で夫…リュウマを向かえに来たと言っていたことを思い出す。

 

その為に来たと言って消えたのならば……リュウマがこの近くに来ているということでは?という考えに繋がり、メンバー達のアルバレスとの戦争前の希望となった。

 

しかし、現実ではリュウマはこの近くに居ない。

 

ここ、マグノリアから遙か数千キロの何も無い荒野にリュウマが居て、その数千キロという距離の先に居るオリヴィエのみに殺気をぶつけていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ。やはり闘うならばここを選ぶと思っていた」

 

「………………。」

 

 

数千キロという長距離を、僅か数秒の魔力放出のみで詰めたオリヴィエは、草木すら生えていない荒野のど真ん中に一人佇んでいるリュウマの目前に降り立った。

 

3対6枚の黒白の翼も生やし、黒い軽装の鎧が着いた戦闘装束を身に付け、王の証として代々受け継がれてきたサークレットを頭に被り、同じくリュウマの翼と並ぶ代名詞とも云える純黒の刀を左腰に差している姿は、リュウマが本気で戦闘するときに着けているフォルタシア王国国王の戦闘スタイルである。

 

魔力も陽炎の如く先の光景を歪ませる程立ち上らせ、足下の地面は魔力の影響で侵蝕されて黒く塗り潰されている。

 

並の者ならば前に立つことすら赦されない気迫と覇気、そして魔力を放出するリュウマ…否。

 

リュウマ・ルイン・アルマデュラを前に、オリヴィエは恋する乙女よろしく顔を紅潮させてうっとりとした表情を見せて熱く見つめる。

 

 

「私の愛しい貴方。これにて400年越しの闘い()に決着をつけよう」

 

「……我等はこの時代に生き存えて良い存在ではない。我等の時代はとうの昔に終わりを迎えている。今の時代を創って征くのは今を生きる者達だけだ。故に……()()()()貴様を先に下してやろう」

 

「何もこの時代で何かを起こすつもりは無い。ただ、私は貴方と共に生きていたいだけだ。その為に私はあの時(竜王祭)に雨が如く迫り来るドラゴン共を葬り、私ともあろう者が満身創痍になりながらも…とある村に伝わる不老不死となる霊薬を奪いこの体となった」

 

「…………。」

 

「人との関わり? 要らぬ。 世間との関わり? 要らぬ。 耀く栄光? 要らぬ。 人々からの名誉? 要らぬ。 人として当たり前の人生? 要らぬ。 世界をも破壊する力? 要らぬ。 神すら滅する力? 要らぬッ!! 私は貴方と永遠に共に在りたいだけだ……。大丈夫。何のことは無い。ただ、抵抗する以上は貴方を下し、手脚を斬り落としてでも共に在ろう。人が入り込めぬ前人未踏の地にでもひっそりと小さい小屋でも建てて共に住もう」

 

「…………。」

 

「私は貴方を手に入れる為だけにこの400年を過ごしてきた。無駄とも思える時間…途方も無い無限と感じる時の中を貴方だけを想い耐えた。貴方だけが私の心の拠り所だった。……私には貴方を下し共に在り続ける覚悟が…決意が…気概が…信念が…熱意が…意志があるッ!!

 

今貴方の前に立つ女は──────」

 

 

両の腰に差した純白に耀く美しき剣を引き抜き構えたオリヴィエの眼は……一切の余念無くリュウマを射貫いていた。

 

 

「─────一人の男の為に妄執が如く我が身の全てを捧げた修羅と識れッ!!」

 

 

「─────ッ!!」

 

 

ただただ…愛するリュウマの為だけに全てを捧げたオリヴィエの気魄が……()()()()()()()一歩後退させた。

 

 

「ラルファダクス王国国王…オリヴィエ・カイン・アルティウス──────」

 

 

「フォルタシア王国国王…リュウマ・ルイン・アルマデュラ──────」

 

 

抜かずに左腰に差した純黒の刀の柄に右手を添えたリュウマは半身になりながら腰を落とし、対するオリヴィエは純白の双剣を背に隠すようにしながら背後でクロスさせて前のめりに構えた。

 

互いの体から莫大な魔力を大地を砕く程放出させながら一歩踏み出し─────

 

 

 

「────全力で征くッ!!!!」

 

 

「────推して参るッ!!!!」

 

 

 

リュウマ()オリヴィエ()が……衝突した。

 

 

 

 

 

ただ、此だけは云えるだろう。

 

 

 

 

 

一人の女が手にした、それこそ永遠とも云える永き時(人生)を…文字通り全て賭けた一矢は─────

 

 

 

 

 

 

 

殲滅王(最強)の喉元に─────届き得た。

 

 

 

 

 

 

 

 




覚悟を決めているオリヴィエは、今まで相手してきた者の中で最強である。

それこそ……リュウマに迫りうる程に。


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