ゴーストシティ   作:Firefly1122

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 目を覚ました明日香は受付に向かう。部屋に帰るように言われ、エレベーターに乗るが、怪奇現象に襲われる。勇人君を成仏させることに成功した晟は病院のエレベータに来たが、油断して晟もエレベーターの怪奇に襲われた。

〈登場人物紹介〉

富鹿夜空(とみしか よぞら):夕美夜高校の2年。趣味はゲーム、アニメ視聴など。ごく普通の高校生。

富鹿良志(とみしか よし):夕美夜高校の1年で夜空の妹。趣味は運動。入学早々バレー部に入部。少々男勝りな性格。

信野明日香(しなの あすか):夕美夜高校の2年で夜空、良志の幼馴染。両親を亡くし、今は夜空の家で家政婦のようなことをする代わりに夜空の父親から生活費をもらっている。

北野海心(きたの かいしん):会社員の男性。趣味は釣り。嫁と娘と3人暮らし。

黒塚厳内(くろづか げんない):美夜野市の警部。失踪事件を解決しようと動くが、いまだに解決できていない。

飛岡晟(とびおか あきら):夕美夜高校の3年。オカルト研究部の部長で2人の3年の部員の1人。オカルト研究部の部長であるが責任感など一切なく、他人との関わりもほとんど拒絶している。最近は神隠し事件について調べている。

佐藤好夏(さとう よしか):夕美夜高校の3年。オカルト研究部の副部長で2人の3年生の部員の1人。同じ部活で同じクラスの飛岡晟のお世話係になっている。



出会い

 少女は兄の手がかりを求め、警察署に来ていた。時刻はすでに8時を回っている。

 

「こんばんは。富鹿です。兄が行方不明になったと聞いてきました」

 

 入ってすぐの受付で用件を言う。受付の入り口でパソコンを打っている女性の警官が顔を向ける。

 

「富鹿さんですね。行方不明になった兄と言うことは富鹿夜空さんの妹さんでしょうか?」

「はい」

「担当の黒塚が対応します。こちらへどうぞ」

 

 席を立ちあがり、部屋から出てきた女性警官の後ろをついて歩く。廊下を右に曲がり、長い廊下の2つ目のドアを開ける。札を見ると、待合室と書いてあった。

 

「こちらでお待ちください。担当の黒塚を呼んできます」

「わかりました」

 

 2つの長机を挟むように4つのパイプいすがある。それの一つに良志は座った。しばらく待っていると、ノックの音とともに中年の男性が入ってくる。

 

「お待たせしました。黒塚と、申します」

 

 少し間延びした声の中年男性は黒塚と名乗った。良志も名乗る。

 

「行方不明になった富鹿夜空の妹の、富鹿良志と申します。兄の失踪についていろいろ聞きたくて来ました」

「なるほど。いろいろ話したいことはやまやまなんですが、正直のところ行方は愚か犯人すらもわかっていない状況なのです」

「手がかりになりそうなものは?」

「失踪者の繋がりを調べたのですが、全くわからないのです。他にもいろいろな方向から調べてみたのですが、一切共通点が見つかりませんでした」

「その資料とかありますか?」

「ちょっと待っててください」

 

 そう言って部屋を出て行く黒塚。少女はそのまま座って待っていた。きょろきょろとあたりを見渡す。特に変なところがあるわけでもなく、白い無機質な壁があるだけである。窓からは山の風景だけが映っている。そんなこんなで部屋の中をきょろきょろしていると、再びドアが開く。黒塚が帰って来たのだ。

 

「お待たせしました。これが被害者のリストです」

 

 ホッチキスで止められた紙の束を受け取り、見る。内容は被害者の名前、最後の目撃場所、周囲にあった物、家系などなど。その中には夜空の名前がある。その上に良志の学校の生徒の名前もある。

 

 良志はそれぞれの関係性を探してみた。最初の犠牲者はお寺の住職、二人目はその親戚だ。ここでピンと来て訪ねる。

 

「一人目と二人目、親族ですよね?」

「はい。そうです」

「それじゃあ……」

「あなたの考えはわかる。わたしもその件で調べた。しかし、何の関連性もなくなってきたのです」

 

 良志は再びリストに目を向ける。確かに最後の方は一切関連性があるように思えない。夜空の妹である良志もお寺の住職に知り合いなどおらず、ましてや夜空の名前の上に書いてある生徒も知らない。

 

「それじゃあ……」

 

 リストを見て思考を巡らせるも何も思いつかない。と、黒塚が口を開く。

 

「私はこう考えています。これは霊の仕業ではないかと」

 

 良志は呆れた。大の大人が霊の仕業だと言い張るのだ。その様子を見た黒塚はさらに詳しく説明する。

 

「一切の手がかり無し。引きずった跡は愚か目の前で跡形もなく消えたという証言すらも出てくる。わたしも最初はそんなバカげた話はないと思っていたが……信じてはくれませんよね」

「あたりまえでしょう?そんな話誰が信じるというのですか?」

「そうです。信じてはくれません。誰も。ただ一人を除いて」

「?」

「今から私の知り合いのところに行きます。ついてきますか?」

「兄の手がかりになるのならどこにでも行きます」

 

 二人は部屋を出た。

 

 

 夜空は走っていた。途中ですれ違う数人の人々。だが生きている人間ではない。夜空はそう確信していた。すれ違う人々はすべて顔面蒼白、俯き、声をかけても返事はない。ただひたすらに一定の速度で歩いている。その方向は、夜空の背後にそびえ立つ山だ。夜空はその山から聞こえる異様な声から逃げるように走っている。

 

「お、おい!君!」

 

 声がかけられた。夜空のものではない。足を止め、振り向く。俯いたまま走っていたため、存在に気付かなかった。

 

「生きてる……人?」

「あ、ああ。今ここがどこかわかるかい?」

 

 その顔を見ると、夜空は思い出す。登校中に忽然と消えた釣り人のおじさんだ。

 

「あなたは川で釣りをしていた……」

「ん?確かに釣りをしていて気づいたらこの薄暗い世界にいた。何か知っているのかい?」

「知りません……ただ、俺たちは失踪者だということだけはわかります」

「それは何故だ?」

「あなたは失踪した。俺たちの目の前で。そして俺は恐らくこの失踪の犯人と思われる化け物に襲われた」

「はぁ……化け物か……いや、すまん。あまりにも現実離れしていてな。ちょっと頭が混乱しているんだ」

 

 その釣り人のおじさんはキャップをかぶった頭をなでる。そしてその右手を差し出しこう言った。

 

「わたしは北野海心。良かったら一緒に行動してはもらえないだろうか。一人では心細いからな」

 

 夜空はすでに決めていた。生きている人、同じ失踪者。一緒に行動しない理由がない。差し出された右手を取り、握手した。




 夏休みも半分が過ぎた模様。仕事は相変わらず大変です。Firefly1122です。

 いよいよこの小説も半分ほどになりました。というか前振り長すぎた気がしてますw次回からさらに進展するかなと思います。

 最後に閲覧ありがとうございました。次回も見てくださる方は気長にお待ちください。

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