Aランクの私の指導役がCランクの先輩でも良いじゃないか   作:叢雨
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大分遅れましたね。
いや、邪ンヌがさ……邪ンヌがさ。来ないんすよ。

いや、ちが、止めて!無言で殴んないでって!


では、どーぞ。


17話

「オープンスキルとクローズドスキル……でしたっけ」

「前にポロっと話しただけなのに、良く覚えてるなぁ」

 

 

 翌日、俺はレティシアと何時ものように講義をしていた。ララの方は確かクエストがあり二日、三日居ないとか。昇格戦は見に来るとか言ってたな。

 

 結局、紫乃梅との話は夜にすることにした。明日はレティシアも昇格戦出場者の特別授業の方に行くので一日フリーなのでその方が動きやすい。……何だか嫌な予感もするし。

 

 今は兎に角、他の昇格戦の参加者に比べてレティシアの戦闘経験の少ないのをどうカバーするかという事。

 そこで思い付いたのが、戦闘経験が駄目なら戦闘技術を端から吸収させてしまおうという、俺の経験とレティシアの覚えの早さだから成せる技であった。

 

 

「他の環境に左右されないものがクローズドスキル、他の環境に大きく左右されるのがオープンスキルなんだが、どんなに強力な一撃を撃つことが出来ても刻々と変わる戦況の中でその時に最大の真価を発揮することは難しい」

「どんな時でもその時最大の一撃を撃てるようにという事ですか」

 

 

 さすが優等生。理解が早くて助かる。

 さてと、正直こればっかりは理屈じゃどうにもならないので、……ふむ。早速経験の方を積ませよう。

 

 

「ま、口で言ってもしょうがないし、俺と剣の立合いをしてもらうかな」

「えぇ……先輩この間の一件で強くなったとか」

「まぁ、魔術回路の詰まりみたいなのは無くなったけど、大丈夫だって本当にただの立合いだから。魔法は無し」

 

 

 レーヴァ辺りから聞いたのだろう。

 確かに記憶を取り戻したと同時になんと言うか自分の欠けたピースがはまるような感じがした。確認してみると魔力量や何やらが強化と言うか、推測するに元に戻ったという方が正しいのだろうか。まぁ、元からそんなもの無くても平均並みには有ったから別に良いんだが。

 

 

「……さーてと」

「先輩、悪い顔してます」

 

 

 そんな顔してただろうか。バトルジャンキーだと思われたくは無いが、久し振りに対人戦をするから少し楽しみではある。

 手加減はするつもりだが、まあどんな状況下でもと言うぐらいだからちょっと強めにやるつもりではあるが。

 双方剣を構え距離をとる。このコインが地面に着いた瞬間がスタートだ。

 

 ……どれくらい動けるだろうか。自己強化(バフ)をかけないでやるのは久し振りだ。まぁ、レティシアには見切りとか色々出来るし大丈夫だろう。基礎的なところはレティシアに劣るけれど、潜り抜けてきたものが違うから問題ない。

 

 

 目を閉じる。息を吸い、吐く。目を開ける。

 

 

 ゆっくりとコインが地面に落ちていくように見える。そして地面に着いた─────

 

 ヒュン。そんな軽い風切り音と共にレティシアの細剣が眼前に現れる。

 

 縮地?!んなもんいつ覚えたんだ。プロが使うような対人戦闘スキルだぞ!

 レティシアの不敵な笑みに苦笑いを返しつつ、体を捻りながら全身のバネを使い距離をとる。……これじゃあどっちが教えられてるか分からないな。

 

 刃を潰した訓練剣を逆手に持ち、体制を低くして目を閉じる。

 風の音、呼吸、心音、匂い、気配。その全てが伝わってくる。さて、スキルを使わなくてもここまでいけるなら十分だな。

 俺の姿が掻き消える。縮地なら俺だって使えるもんね!

 

 レティシアが攻撃をする前に剣をぶつける。レティシアは体を回転させ、舞うように次の一手を仕掛けてくる。

 端から見れば常人なら何が起こっているかなどほぼ分からないだろう。

 

 剣を交えて分かったが、彼女はちゃんと見ている。俺の太刀筋、月夜のフェイント、紫乃梅の戦いの組み立て方。

 今まで見てきた沢山の人達の長所を吸収しながら、自分の長所を伸ばし、短所を補っていく。これで十四歳とか恐ろしいことこの上ないな。

 

 だが、経験の差はある。

 

 

 フェイントにフェイントを被せることで、レティシアの判断に一瞬の揺らぎが生じる。

 その隙を突き、左の肩をついと押してやる。見た目では強くなさそうだが、体重や力のかけ方で全力で殴るのと同じ程度の威力は出せる。断っておくが今回はバランスを崩させるのが目的なので押しただけだ。

 レティシアはバランスを崩すが、俺はそのタイミングで狙いやすい隙を作ると、レティシアは左肩を押された反動で右半身を捻るようにして下から切り上げる。

 

 オープンスキルは、どんな体制でもしっかり攻撃が一定の威力で打ち出せる。それは対人戦でとても有利になる。これは色んな状況下を産み出して練習しなければ出来ない。

 普段の紫乃梅のナイフの雨を避けているうちに身に付いたようだ。……やっぱり恐ろしいなアレ。

 

 俺は半身だけ避けて、体制を崩したレティシアを受け止め首元に剣先を付ける。レティシアは目を丸くした後に、負けた事実で悔しそうにする。その後ハッとしたような顔をし、落ち着いた様な顔を赤くしだした。……忙しいやつだ。

 

 

「怪我は無いか?」

「うぇ?!あっ、はい!」

 

 

 サッと飛び退いたレティシアが何だかそわそわする。あれ、何か悪いことをしたかな?

 そう思い詫びをすると「べ、別にいいんです。有難うございます」と言いながらえへへーっと笑う。うん、びしょうじょなだけあってすっごく可愛い。いやーなにさせても様になるな。眼福です。

 

 

 

 先程の戦闘を参考にふむふむと頷いているレティシアに、一枚の紙を見せる。

 

 

「これは今回の昇格戦に出ることがほぼ確実な選手達の中で有力株の奴等を集めたリストだ」

「どこでこんなものを……」

「ちょっとな」

 

 

 ルドビアに調べて戴きました。あいつ仕事が早いのなんの。後でお菓子の差し入れでもするか。

 通常選手は前日にスケジュールと共に発表されるが、ルドビアは顔も広ければその手のプロの知り合いも多い。

 

 改めてその紙を見ると、今回は異常な激戦になることが容易に予想できる。

 Aランクともなれば、一つの部隊、少なくとも三人小隊(スリーマンセル)の部隊長にはなるので、それなりの実力者が揃うが、これは幾らなんでもヤバイ。

 

 北央クルト魔導訓練学校

 リゲン・エドバーグ

 レブン・トーマス

 鬼怒川 三笠

 

 西方バルダート学園

 リミリ・ルーミル

 五月雨 みくり

 ダンテス・ベルダット

 

 東都竜峰寺魔導学校

 竜峰寺 八雲

 熊耳 しらぎ

 レークス・ニルヴァレン

 草薙 ミト

 

 王立リンド魔導学校

 物部 霞

 シルヴィア・ホワイト

 アルマ・テナー

 アクア・ミスティ

 

 帝都魔法学園

 二人居るが、情報なし

 

 公都聖テルシェ魔導学園

 ノルン・リーエ

 ヴィシェス・テナート

 アーティ・サブルテット

 カリナ・シャルロット

 

 計二十人

 

 

 毎回平均して実力者は一学園に一人か二人なのだが、今回は騎士団長の息子とかどこかの王女とか、そんな名のある奴等が多い。

 何人かこの中に見知った顔も居るからまだ対策の立てようがあるのだが、この情報無しが一番怖いかもしれない。

 

 

「多い……ですね」

「まぁこの中にも知っているやつは居るから、それと共闘するのも良いかもしれないな」

 

 

 別の用紙に、その魔導師達の特徴などが纏めてあるのでそれも一緒に渡しておく。さて、一次試験がどの様なものかは当日でないと分からないので様々な対策を練っておくとしよう。

 

 

「さて、今回の難易度の高さが分かったところで!」

「?」

「とっておきを教えようか」

 

 

 

 昇格試験まで、あと四日

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 俺が自室で書類整理をしていると、コンコンと控えめなノックがされ、入室を促すと紫乃梅が入ってきた。

 月明かりに照らされたその顔は何か覚悟を決めたようだった。

 紫乃梅を椅子に座らせお茶を出そうとしたら止められた。そう言えばこの人メイドだったわ。

 暫く何とも言えない静寂が部屋を包んだが、紅茶で口を湿らせ、意を決して口を開く。

 

 

「単刀直入に聞こう。向こうで俺と何があった」

「色々、ありましたよ」

 

 

 色々ってなんだ。そんな顔を赤くしながら言われると余計な不安に駆られる。……大丈夫だよね?間違いとか無かったよね!?

 

 

「まぁ冗談はこれぐらいにして。過去を話すのですから、あなた様の事は昔の呼び方で呼ばなければいけませんね」

「何て呼んでたんだ?」

「こう呼ぶのは久方振りですが、やはりこちらの方がしっくりと来ます」

 

 

 彼女は一呼吸置いてから親愛なる眼差しでこう呼んだ。

 

 

「我が主、マスター、と」




過去話をちょくちょく書き直してあるので、よろしかったら宜しくお願いします。







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