フロンティア スケール ファンタジア/僕等のプレイログ   作:ネイティブスロー

1 / 2
ハーメルンどころか小説の投稿自体初めてなので、誤字脱字・不自然なストーリー進行など拙い部分があると思いますが、何卒御容赦下さい。

 それでは、はっじまりはしまりぃー♪


  by.ネイティブスロー



少しのプロローグ/変態淑女にはHE☆I☆WAを

 〇プロローグ

 

 

『幻想は大衆に知覚出来ないからこそ幻想なのである。』

 

 これは、幻想=魔法・超能力・UMA等のオカルトを肯定する文章では無い。

 この文章には続きがある。

 

『故に、存在を()()()()()と述べている時点で、その存在を()()と称している時点で、存在しないと述べているに等しい。そう、存在を証明するには根拠となる明確な、それこそ大衆が知覚出来る証拠が必要なのであり、故に私はそれらの存在を()()とし、その尽くを否定する。』

 

 僕はこの文章に大いに共感したのだが、その後がいけなかった。

 

 論述が矛先へと変容し、神の存在の否定、宗教の存在意義の否定、それらに人生を捧げる宗教家の存在及び人格の否定、宗教観の否定、科学及び科学に基づく学問以外の学問の否定、その他諸々の非科学に対する批判を文庫本(講談社ノベルス、京極夏彦著)三冊分程の長文で綴られていたのだ。

 正直、文章が非科学への批判に剃り変わった時点で、僕は読む気を無くした。

 余談だが、これを書いたのはアメリカの科学者(名前も記憶から削除した)だったのたが、これを自身のブログ上にアップしてしまった為に万人が目にする事となり、自国のみならず世界各国の宗教団体及び信者から、あらゆる批判を受け、更にはパチカン教皇が直々に公式批判するに至り、所属していた研究室からは辞職を勧告された。尚、現在進行形で反社会的宗教団体から殺害予告を受けるという散々なものとなっている。

 

 うん、要するに何が言いたいかというと

 

 プッ、ざまぁーメシウマwww

 

 …じゃなくて

 

『この世には幻想は存在しない』という事。

 但し『この世には』。

 

 僕は魔法が存在する()()を知っている。

 異世界と言えばそうだろうし、そうでないと言えばそうでないと言える。

 

 一昔前まで、専用の施設でしか体感する事が出来なかった仮想現実(ヴァーチャル・リアリティー)が、筐体の超小型化により一般社会に普及した現代。

 

 今の人間なら冒頭の論述に対し、僕と同様にこう応えるだろう。

 

『確かに幻想はこの世には無い。但しこの世には。』と。

 

 これより語られるのはVRMMOを舞台とした生活の一片である。

 

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 

 今、僕はかつてない程激怒している。

 原因は目の前に正座させた二人にある。

 

「さて、訊かせて貰おうか、何故覚醒(ログイン)したばかりの僕の寝間着があられも無くはだけてて、マイルームで二人が息を荒くしてスクショしまくってたかを。」

「そんなの決まってるじゃない。イリヤちゃんが可愛い男の娘だからよ。(キリッ」

 悪びれもせず。こう宣う変態一号の名はシロン。

 栗色の髪をシニョンに纏め、純白の軍服ワンピースを纏う変態淑女(びしょうじょ)(自称)だ。

「…理由になってないからね。」

 

 カシャッ

 

「…ルビさん。今、何でスクショしたのかな?」

「…怒ってる姿が可愛かったから。」

 平常運転の無表情で応えた変態二号の名はルビ。

 漆黒のセミロングヘアーに鮮血色の瞳、深紅のゴシックドレスを纏う変態淑女(びしょうじょ)(自称)だ。

「…僕、一応男だから『可愛い』と言われても嬉しく無いんだけど。」

「…だが、身体はおんにゃのこ。」

「心は男の子、捗りますなぁ!」

「…白米が美味しい。」

 …よーし、全ての元凶たる変態幼女(愚姉)を殴ろう。

 

 この仮想体(アバター)の設定主に最高の一撃を噛ます事を心に誓いながら、僕は二人に再び問う。

 

「…睡眠(ログオフ)状態のアバターに無断で着衣を脱がす行為はレクラフ(この国)では強姦に当たるし、許可無く他人のマイルームに立ち入るのは住居不法侵入に当たる。でも二人は大切なフレンドだから憲兵に突き出す様な事はしたくない。だから…」

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとO☆HA☆NA☆SIしよ?」

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 マイルームのクローゼットからいつもの装備一式を取り出し、ベットの上に乗せる。

 白のブラウスと赤のネクタイ、髪色に合わせた蒼のブレザーと同色のプリーツスカート、膝上長の黒スパッツに黒のニーハイソックス。

 それらをソックスを最後にして下から上に、肌に近い順で着る。

 え?あの二人?

 人が入る位の黒い匣の中で超恐怖体験アンビ〇バボーして貰ってるよ?

 さっきから「…ヒッ…ひゃあぁぁ!!!…ううっ…」とか「うぅ…あぁ…コッチコナイデェぇぇぇぇ!!!」とか聴こえるのがその証拠。

 二人の前科が増える事もないし、二人に自分がした事が分かって貰える。

 きっと、こういうのをHE☆I☆WA的解決って言うのかな?

 まぁそんなこんなで時間もあるし、自己紹介をしようと思う。

 僕のユザネはイリヤ。

 由来は運命な魔法少女じゃなく、本名が『射る矢』と書いて『射矢(いりや)』だから。

 二人が言ってた通り、ゲームアバターは女性型だけどリアルでは男性。

 只、リアルでもゲームでも、周り(半数の女子と一部の男子)の扱われかたが同じというのは、正直解せぬ。

 愚姉よ、責めてアバターは輝く貌のイケメンに設定して欲しかった。

 ま、頼んでも頼まなくても結果は同じだろうし、性癖付与(幼女化)されて無いだけマシ。

 そう思えば耐えれr…あ、泣けてきた。

 

「…ふーっ、着替え完了。」

 スタンドハンガーに引っ掛けてある、ひしゃげた蒼色の三角帽を被り、同じく引っ掛けてある武装セットをリュックの要領で背負って肩掛けの間にある二本と腰周りのベルトを締める。

 因みに肩掛けの二本のベルト、胸の上と下に位置する為、嫌が応でも胸が強調される。

 イッタイダレガツクッタンデショウネー。

 ま、動きやすいからいいけど。

 

「んじゃ、行ってきますかな。」

 ログイン時恒例のブレイクファーストをする為に玄関へと向かう。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

『フロンティアスケールファンタジア』

 通称『FSF』若しくは『風呂助』

 名の通り、幻想世界を開拓する事がこのゲームの本分であり。所謂『開拓ゲー』と分類付けされるゲームである。

 しかし、このゲームには他の『開拓ゲー』とは一線を画す―いや、既存のゲームとは全く異なる要素を持っていた。

 それは『全ての物がアイテムとなり、アイテムとしての分類が存在しない』事である。

 それが何を意味するか。

 具体的な例をとってみると、通常のゲームの武器や防具等は『装備品』として、体力及び状態異常等を回復する為のアイテムは『回復アイテム』として分類され、その分類に適した効果を発動させる。

 だが、このゲームではそれぞれ個々のアイテムとして扱われるのである。

 故に分類に則した数値的特性―武器なら攻撃力の付与、防具なら防御力の付与が、素材効果や魔術付与に寄るものでない限り無い。

 在るとすればアイテムの耐久値位だろう。

 そして、金銭となるクレジットも例外では無く、このゲーム世界において共通した通貨、というよりかは『クレジット』というシステム自体が存在しない。その代わりにリアルと同じ様に金属を鋳造、若しくは紙幣を発行する事でそれを通貨として流通させ、クレジットとしているのが現状であり。

 故に経済協定を結び、共通の貨幣を流通させている国々を例外として、国別に貨幣が存在するのである。

 幻想世界にも拘らず妙にリアルと近しいのがこのゲーム。

 だからこそ…

 

「…うん、換金し忘れてた。マスター、ツケといて。」

 

 なんて事も起こりうる。

 

 …つーか、今まさに自分が体験している。

 さーて、ツケが通じるかな?

 通じなかったらケンペイ=サンのO☆HA☆NA☆SI√が発生しちゃう訳だけど…。

 っていうか、屋台でクラブハウスサンドを料理してるより、戦場で戦士を料理してそうな独眼眼帯褐色ゴリマッチョ3m級巨漢マスターが、腕組んで瞑目してる光景って何?!

 料理されちゃうの?僕が料理されちゃうの?!」

「しない。」

「…え?」

「途中から声に出ていた。客にそんな事はしない。私の料理人の誇りに掛けて誓おう。次回に纏めて払うがいい。」

 そう言って僕に狂った笑顔を向けるマスター。

 

 …怖ぇよ…訂正するまでも無く怖ぇよ…。

 どう間違えても料理人の笑顔じゃねぇよ。

「…ア、ハイ。アリガトウゴザイマス…。」

「国外に出る身ならよくある事だ。かくゆう私も食材調達の為に幾度となく国外に渡航する身でな。そのクラブハウスサンドも私自身が調達した食材で拵えてある。」

 へぇー態々現地まで仕入れに行って食材を調達してるのか…料理人の鏡だね。見た目で判断してました、ごめんなさい。

 

「バンズはドラゴンバインダーの実の粉末に酵母はクラウトルフの貯蔵菌を用いて発酵し焼き上げ」

 

 …ん?

 

「サラダはマウンテンゴーレムの肥沃な背中で栽培した新鮮なアウラウネの葉とスチームボマーの果実を使用し」

 

 …んん?

 

「ベーコンはエスキスエルウィンのモモ肉を様々なスパイスに漬け込み、神香樹の枝葉を粉砕したウットチップで燻製。」

 

 …んんん?

 

「ターキーはコカトリスの胸身を使い。」

 

 …………。

 

「味の決め手となるマヨネーズは先のエスキスエルウィンとコカトリスの混合油とコカトリスの有精卵、クラウトルフの蟻酸とソルティシェルトータスの要甲塩を使っている。」

 

『ドラゴンバインダー』

 竜種すらも絞め殺し、その死体を肥料とする最大級の殺戮植物。

『クラウトルフ』

 鉄すら砕く顎であらゆる生物を集団で襲い、巣に持ち帰った死体を餌となる菌の苗床にする最大級の菌食蟻。

『マウンテンゴーレム』

 数百年もの間、土を喰らい続けたゴーレムの成れの果て。山にも匹敵する巨体の歩みは直下型地震に相当し、その食欲は山を更地に変えるという。国防級災害指定魔法生物。別名『デイダラボッチ』

『アウラウネ』

 死の悲鳴で有名なマンドラゴラの成長体。大凡十年の歳月を掛けて養分を吸い、マンドラゴラの約7.5倍に成長。心霊級に至るまで魔力を貯蔵している所為か、姿形も成熟未全の少女へと変貌する。しかし死の呪いは健在、悲鳴は歌へと変わり、自ら次なる養分補給(眠り)の地を求め歌い歩む光景は周囲に死のみを齎す。勅令級駆逐指定魔導生物。

『スチームボマー』

 根・茎・葉・花共に危険は無い只の植物だが、果実だけは完熟後に高性能小型爆弾並の水蒸気爆発を起こす危険物となる。

『エルキスエルウィン』

 彼の『アーサー王伝説』に登場する魔猪の王を名の由来とする魔獣。その巨体はワゴン車に匹敵し、体毛と皮は並の刃で断ち切る事は出来ず。牙は鉄塊を噛み砕き、猪突猛進を言葉通り体現する強靭な筋力を持つ。都市級災害指定魔導生物。

『神香樹』

 エンシェントフォレストドラゴンの休眠形態。『杜の守護者』の異名を持つ竜が休眠を取る際、鱗が変化、休眠時の栄養を補給する為に一本の樹を形成する。休眠状態の為、樹自体には驚異は無いものの聖霊級のエネミーを薫りで引き寄せる為、周囲5kmが上位迷宮と化す。

『コカトリス』

 蛇と鶏の身体を併せ持ち、双方の闘争の中で鶏の方が身体の主導権を握った個体を指す。主導権を握った証として鶏の方の羽は紅く、蛇の鱗は白く変色する。双方の闘争において優位に立てる筈の蛇に打ち勝ち隷属させている為、蛇の方に主導権がある『バジリスク』より気性が荒く、周囲の生物に容赦無く攻撃を仕掛ける。上位迷宮深部棲息生物。

『ソルティシェルトータス』

 山脈級の巨体を持つ四足歩行の海洋性大亀。餌となる海洋生物群を海水ごと呑み込み捕食、その際に摂取した過剰塩分を甲羅として形成する生態を持つ。陸亀と同じく甲羅の升目が木の年輪の様に成長する為、捕食すればする程甲羅が成長、升目同士に高い圧力が加わり密度が増した結果、ダイヤモンド並の硬度と透明度を持つ塩の甲羅が完成する。因みに『要甲塩』とは甲羅の中でも最も圧力が加わる中央部分の升目を指す。

 

 …とまぁ、簡単にレシピ内の食材のデータを思い出してみたけど、これらって軍隊級複数討伐戦(レギオンレイド)で倒す相手だったり上級プレイヤーさえ避ける様な奴なんだよね…。

 うん、この人だけ来る世界違くね?

 料理人は料理人でも違う次元の料理人じゃね?

 食運使うタイプの料理人じゃね?

 

「…うむ…こうして食材に想いを馳せてみると、一か月前のエスキスエルウィンの体当たり(バリィ)を受け止めた腹が疼く。しかし、その場で絞めた桜肉は変え難い味わいであったな…。」

 

 …いやいやいやいやいやいやいやいや。

『食材調達』ってそういう意味!?そういう意味だったの!?

食材(エネミー)』を『調達(ぶっ殺す)』って意味だったの!?

 つか、あのエネミー達とやりあって片目潰した程度で生きてるって何!?

 普通に五体が爆発四散してもおかしくないんだけど!?

 つか、もう料理人じゃねーよ。

 ト〇コ時空の『美食屋』だよ、この人。

 

「しかし、食材への探究心が狩場(現地)へと駆り立てる…嬢ちゃんも覚えておくがいい…『探究心は未知の存在を開拓する』という事を。」

 そう言って狂乱と愉悦の笑顔を見せるマスター。

 

 …怖ぇよ。さっきより更に怖ぇよ…。

 いい言葉を聴いた筈なのに、あの笑顔と『現地』と読んで『狩場』と書いてる事で、感情がプラマイゼロ所じゃないマイナスまで落ち込んで恐怖しか残らない結果になってるよ…。

「ハイ、シカトココロニトドメテオキマス…。」

 やばい…涙が出そう…。

「うむ、いい返事だ。嬢ちゃんは良い開拓者になる。この私が保証しよう。」

 狂気と狂乱の笑顔を見せるマスター。

「アリガトウゴザイマス。ボクハコレデシツレイシマス…。」

「うむ、また来るがいい。その時は「マタキマス!ダイキンモハライマス!」…うむ、分かってるならそれでいい…。」

 

 そう言って全速力でその場を後にした僕は悪くない。

 怖いからね!怖いからね!

 ま、当のクラブハウスサンドだけど…

 

 

 

 全ての食材に対する感謝の涙が出る程美味かった。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

『ギルド』

 この世界のギルドは私営・公営、人員及び組織の大小、活動目的を問わず。この世界の政府組織、又は政治団体に属しない団体や群体を指す言葉である。

 この世界には現在、裏表合わせて万を超えるギルドが存在し、新たなギルドが一日あたり約百団体程結成され、約五百団体がギルドとしての実態を失っている。

『実態を失っている』という言い回しとなっているのは、それがギルドの解体・解散のみを意味している訳では無いからだ。

 活動休止中のギルドや本格的な活動に長い準備期間を要するギルド、活動自体が緩慢なギルド、ある期間しか活動しないギルド。

 このゲームシステム自体にギルドの登録するシステムが存在しない。

 故にプレイヤーが集まり『自分たちはギルドだ』と宣言するだけで、アッサリと『ギルド』という群体を成立出来てしまうのだ。

 

 過去に『ツインテールキャラを愛し守る戦士達』と言うギルドが存在していた。

 活動内容は、名を推して然るべくと言った所だろう。

 因みにそのギルドは『ラビットスタイル派』『レギュラースタイル派』『カントリースタイル派』それらの三つの髪型からの派生で『ホーステール派』『シュリンプ派』『バードテール派』に別れ、それに付随する『二次元派』『リアル派』『アバターキャラ派』『幼女派』『貧乳派』『巨乳派』等など様々な派閥に細分化され、それぞれの派閥が熾烈な内紛を繰り広げ、自壊と崩壊を際限無く繰り返し、最終的に自滅した。

 

 うん、安易にギルドなんて作るもんじゃ無いね。

 ま、()()はそこら辺大丈夫だと思う。

 

『ギルド オルタナイブ』

 ペット探しから家事手伝い、臨時の店員からエネミー討伐・傭兵等など、自分達が出来る事なら何でもする便利屋。

 それが僕の所属するギルド。

 メンバーは、僕と真っ赤なドレスのハイド系変態ガンマンと真っ黒なインテリメガネ系堅物双剣士と白服茶団子のバーサーカー系変態拳闘士の四人のみ。

 …うん、赤と白は言わずもがな僕のマイルームで性犯罪を起こしかけたあの二人。

 鍵を元の奴から高セキュリティの物に変えた上で、最上級の認証魔法と対術式解体用保護魔法と対物理強化魔法を玄関扉に施したにも拘らず。それを突破した高い技量を持つ赤い変態淑女(びしょうじょ)と、最終手段として僕の魔改造で要塞鉄扉と化した玄関扉を解錠開放(物理)出来るパワーパフォーマンスを誇る白い変態淑女(びしょうじょ)の二人である。

 

 ウン、シンライトアンシンノジョセイジンダナァー。

 

 そう思いつつ、天井から開きっぱなしのギルドの帳簿に視線を戻す。

「…うーん…。」

 いつ見ても利益率が悪い…。

「ギノさん。」

 呼び掛けに応じて手元の書類から僕に目線を向ける宜〇座という名の黒スーツインテリメガネ。

 一応、ここのギルドマスターである。

「…俺は宜野〇じゃない、クロエだ。」

 そう半分キレながら言い返す彼の姿をよーく見る。

 

 いやいや、黒スーツといい体格といい声質といい口調といいポニーテールといい流し目といい鬼畜インテリメガネといい、アニメ一期と劇場版を掛け合わせたギノさんじゃないですかーやだー。

 しかし、彼はそう呼ばれる事を嫌う。

 原因は白い変態さんにリアルで見せられた、ギノさんと同作品のずるかみ執行官とのイチャイチャびぃえる時空なソリットブックらしい。

 うん、その気持ちワカルワー。

 けど、こっちにもこっちの事情がある訳で…。

「…だったら小悪魔系白髪褐色美幼女の黒弓中華双剣使いにTSしたら、そう呼ぶ事も考えなくもないよ。…あ、魔力供給(意味深)は勘弁してね。リアルに基づいてのノーマルだから、僕。」

 TSなんて高度な性癖持ってないから…持ってないから!!

「…その発言、ブーメラン通り越して反射してるからな、お前。」

「…分かってる。」

 分かってるよ…全部周りが悪いんだ…僕は悪くないんだ…。

「いや、そんなアバターネームを付けたお前が悪い。」

 …ナチュラルに心読んで来るなよ~。

 そんな事、当の昔に分かりきってるよー。

「で、本題は何だ。」

「あぁそうだった。いやね、利益率が悪いなーって思って。」

「確かに。先月で受けた依頼は四件、今日現在で二件、かなり少ないな。」

「そう、しかも報酬は百万以下の安い奴。ペナントの家賃やら納税やら依頼外経費やら給与やらに大体の報酬が吸収されるからこっちの資産は減る一方…正直、来月どうやってやりくりしようか憂鬱で仕方が無い。」

「しかし不思議でならんな。レクラフの首都に事務所を構えたにも拘らず客が来ないなんて。何故だ。」

「そんな分かりきってるでしょう…」

 天を仰ぐ様に上を向く。

事務所(ここ)の立地が悪いからだよ。」

「いや何を言ってる。首都の一等地だぞ。悪い訳無いじゃないか。」

「…首都の一等地は一等地でも主要道路の路地裏の奥の奥にあるのに?三階建てなのに二階から上の階段が存在せず。非常階段を使わないと行けない欠陥ビルの三階に事務所があるのに?『立地がいい』なんて言えるのかな?クロエさんは。」

「…悪かった、俺が悪かった。」

「そうだよ、事務所設立の資金をケチった君が悪い。」

「…不毛だな。」

「…うん、同意。」

「実のある話しをしよう。」

「そうだね…と言っても資金調達はいつも通りに仲介依頼(クエスト)で稼ぐしかないけど…。」

直接依頼(ミッション)を増やす方法は無いのか?」

 因みに仲介依頼(クエスト)とは他のギルドを介して依頼を受注する方式。それとは対照的に直接依頼(ミッション)は仲介無しで自ギルドで直接、依頼を受注する方式の事を指す。好きな時に稼ぐ事は出来ないが、仲介手数料を取られない分、直接依頼(ミッション)の方が報酬を高く取れるのが利点である。

「それならとっくにやってる。」

「依頼者にチラシを渡す事か?」

「新聞に広告を出すにしたって肝心のその資金が無いし、ビラ撒くにしたって肝心の場所が分かり難いんじゃ意味が無いし、資金が無い。現状ではこれが精一杯。」

「…詰まりこのギルドが生き残る為には、少なくとも今月を含め来月の余力を残し、宣伝活動が出来る程の資金が必要な訳か。しかし、ソロやパーティーなら兎も角としてギルド運営の資金を二ヶ月分+宣伝費を稼ぐには効率が悪いぞ。」

「そうだね。でも、他に方法が無い以上そうする他無い。」

「…資金を稼ぐ為に人員を分散し、その結果分散した人員なら出来る依頼を断らなければならない。結果、固定客が付かず利益が安定せず。不安定な資金を補填する為に人員を分散させて稼がせる…見事な自転車操業…悪循環だな。てか、それ以前に事務所が機能を果たして無い。」

「全くその通り。」

 

「「…はぁ~。」」

 

 溜息が二重に溢れる。

 

「…実のある話をしたら、絶望感が増したね…。」

「あぁ…。」

「…作業の続きしy「…その前にもうすぐお客さん来るよ、イリヤ。」…え?」

 唐突に現れた気配と、鈴が鳴る様な声に後ろを振り返る。

「…何時から居たの?ルビ。」

「…『ギノくんがギノちゃんに成ったら相手してあげる(意味深)』ってイリヤが芳しいWTSびぃえる&じぃえる発言をした時から。」

「うん、そんな発言はしてない。」

「つか、俺はクロエだ。」

「いや、突っ込む所違うよね?」

「…そんなもの、あの白いド変態を彼女に持った時点で通り過ぎた過去だ。」

「うわっ、掛ける言葉も無いネ。」

「あぁ、慰めにすらならない。」

「…『でも…身体では慰められる…かもね。だから今度は…突っ込む所間違えないでよ?』

 

『あぁ、間違えるはず無いだろ?』

 

『…って、そこは違っ………アッー!!!』

 

 な展開な訳ですね分かります。」

「…これが、四六時中だ。慰めにならないだろ?」

「ホント、掛ける言葉が無いね。」

「こういう時の対応は黙ってアイアンクロー。それが正義だ。」

「僕の男友達の正義が暴力しかない件について。」

「俺の女友達の声真似が上手すぎる件について。」

「…私がイリヤのパンツを穿いてる件について。」

「…クロエ、その正義認めるよ。」

「…言っとくけど、イリヤの所為だから。」

「……あ、察した。ごめん、加減すればよかったね。」

「…ホントにそう思う。」

「うーん…個人的に頼まれて作った空間置換型の幻覚結界なんだけど…その…致しちゃうくらい怖いんじゃあ…テーマパークでの運用は少しキツイかもね…。」

「…私が致したのは、おし〇こじゃない。」

「ん?今、言葉としては適切だけど、女の子が発するに適切では無い単語が聴こえたような…。」

「…あの黒い箱は怖かった。それこそ、お〇っこ漏れそうなくらい。でもね、見方と捉え方を置き換えれば恐怖は無効化出来る。で、私達が実行したのは結界内の物語上で蔓延する『ウィルス』の症状を『ゾンビ化』から『性欲の表面化』への脳内変換。」

「うん、変態淑女(びしょうじょ)の思考が斜に行き過ぎてて怖い。てか、『達』って何?」

「…うら若き女子高生が友達の女子高生を襲い、その女子高生が脂ぎった中年男性を襲い、その中年男性が若奥様風の女性を襲い、その女性が可愛らしいショタを襲い、そのショタがイケメンサラリーマンを…うん、ムラムラする。」

「…助けてクロエ。僕じゃ処理出来ない。」

「やめろ、ネタにされる。」

「…そういう訳で、私達はパンツを変えなければならない状況になった。その結果、緊急避難的にイリヤのパンツを拝借するに至ったという訳。」

「理由は心底到底納得いかないけど、なったもんは仕様がない。」

「…ありがとう。洗わわないで返すね。」

「いや、洗って返して。」

「…え?芳しき女の子の匂い付きだよ?今のイリヤの部屋同様に。」

「…分かった。下着と部屋の掃除の代金と慰謝料をルビとシロンの給料から差し引いておくから。」

「…ごめんなさい。」

「確定事項。」

「…ちゃんと洗って返すから。」

「確定事項。」

「…私達が部屋に作った『性なる泉』も掃除するから。」

「確定事項。」

「…鬼・悪魔・イリヤ。撮り溜めてたセクシーショットをバラ撒いてやる。」

「…よし、戦争だ。表へ出ろ。」

「イリヤ、いい感じに滾ってる所悪いが、客が扉のすぐそこまで来てるぞ。」

 

 クロエの言葉に反応して出入口の方を見る。

 

 うん、確かにドアの防火ガラスに人影が見えるね。

「…ごめん、ありがとう。今、冷静になった。」

 

 ガチャリとドアノブが回る。

 そしてドアが開かれ、そこに現れたのは…

 

 

 

 

 

 白いド変態だった。

 

 腰に仕舞っている拳銃を模した短杖『シヴァ』を抜き、構えて詠唱を紡ぐ。

「〈再現するは煉獄の『終末』〉〈炎神の試練を経て『我が手に至る』〉〈『振るうは…」

「ちょっ!!それ小国程度なら塵一つ残さず消し飛ばせる奴だから!!待って!何で!?いや、すぐ側に依頼人が来てるから!私の後ろに!ほら、早く!」

 シロンの呼び掛けでピョコっと人影が現れる。

 

 流れる清流の如き嫋やかな金髪。

 コーヒーにミルクをたっぷり混ぜ入れたかの様な甘い褐色の肌。

 翠玉の瞳は大きく輝き、時折睫毛を羽ばたかせる。

 女性へと更なる成長を迎えんとする童女の身体をくるりと翻し、桜の花弁を思わせる桃色の艶やかな唇を開いて言葉を紡ぐ。

 

「やっほー、ロリロリ美幼女な貴女のお姉ちゃん、エマですよー。どお?褐色餅肌ロリボディーに欲情した?ならば同志として歓迎しよう。」

 

「…神罰の焔』〉〈『常世全てを灰燼と成す』〉」

「「詠唱再開?!」」

 

 正式四小節詠唱完了。残るは一小節(トリガースペル)のみ。

 僕は魂に誓った。

 この変態共に最高の一撃を打ち噛ますと。

 

「〈『再現するは顕現せし煉獄…(レーヴァテイン オブ パスティ…)』〉」

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

「…反省したか?」

「ハイ、シマシタ。コンゴイッサイカンジョウニマカセテ、マホウヲハナトウトハシマセン。」

 只今、詠唱を物理的に中断させられ、床正座で猛反省中です。

 確かに周辺への被害を考えず。極大顕現召喚魔法を放とうとした僕が悪い。

 でも、これだけは言わせて。

 拳骨痛すぎない?!クロエ。

 頭が見るも悍ましい肉塊になったかと思ったわ!!

「物分りがいいな、流石はギルドの参謀兼特機戦力と言った所か。では、ギルド オルタナイヴの所長として処分を言い渡す。イリヤ、ルビ・シロンの両名と共に依頼人エマの依頼を完遂せよ。尚、これは構成員イリヤの不始末の為、俺は同行しないものとする。」

「ハイ、ワカリマシタ。ジガイシマス。」

「分かってねぇ!てか、そんなに嫌なのか?!あいつらと同行する事が。」

「ギャクニキクケド、ヘンタイシュクジョ(ビショウジョ)サンニントドウコウシテ、イライヲカンスイシロッテイワレタラドウスル?」

「…除名覚悟で逃亡するな、うん。」

「ショブントイノチヲテンビンニカケテ、イノチヲサシダシタンダカラ、ボクノホウガイサギイイ。」

「…気持ちは分かる。だが逆に言えばこれ程処分に適した指令はないだろ?腹を括れ、イリヤ。」

「…分かったよ…。」

「口調が戻ったな。」

「おーい変態共、気が極限に乗らないけど馬鹿姉の依頼受けるから集まってーミーティングだよー。」

「…ちょっと待って『ロリ写メNo.1決定戦』の予選突破ロリがもう直ぐ決まるから。」

「…もうヤダ!お家帰る!!」

「帰るな、やれ。」

「…はい。」

 

 

 

 こうして、変態淑女(びしょうじょ)と共にロリコン(馬鹿姉)の依頼を完遂すべく行動を開始する僕であった。

 

 クロエ、終わったら絶対ぶん殴る。




真面目にVRMMOを舞台にしたファンタジーを書こうと思ったのに、何故こうなった…。
と思っている自分が居ます。

次回もファンタジらない予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。