ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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じゃんぐるちほー②

 

ジャパリパーク じゃんぐるちほー

 

 

キャンプ場跡で一夜を明かしたサーバル一行。朝田が目を覚ました時には、百田たち自衛官は既に起きて朝食の準備を行っていた。

 

「……」

 

朝日に照らされながら、朝田は昨日の夜に遭遇した案内ロボットの『ラッキービースト』と正面から向かい合う。

 

『君の名前は『アサダ タイジ』で良いカナ?』

 

「…あ、あぁ」

 

朝田は戸惑いながらも返事をし、ラッキービーストをまじまじと観察する。

 

(やはり…素人目にもこのロボットは高性能だ。正確に相手を認識し、相手の言葉に合った返答を即座に返している…。これほどのロボット…おそらく日本でも造るのは簡単ではないかもしれない…)

 

日本にも自ら学習し、相手との受け答えを得意とするロボットは存在するが、目の前にいるラッキービーストと比べたらどうしても劣ってしまう。この島のロボット製造技術は、ロボット大国の日本よりも10年以上は進んでいる様に思われた。…実際には10年どころか半世紀近い差があったが。

 

朝田は何とも新鮮な気分になる。何せこの世界では日本より技術レベルが高い国家や地域は存在しないのだから。今回は転移以来、自分たちよりも高い文明を持つ勢力との初の接触であった。

 

(…ではコイツは一体”誰”が造ったんだ?)

 

この島に来て様々なフレンズと接触してきたが、少なくとも彼女たちがこのロボットを造ったわけではないだろう。…おそらく、この島の何処かにいるであろう人間だと考えられる。

 

だが、朝田たち日本国使節団が接触したのはフレンズが大半であり、記憶喪失のかばん以外の人間は姿すら確認できなかった。

 

(おそらくサーバルさんが言っていた博士なる人物が造ったんだろうが…)

 

『…どうしたんだイ?アサダ』

 

ずっとだんまりな朝田に、ラッキービーストは体を傾けて質問する。

 

「いや、何でもない。これから朝食だから、それが終わったら図書館までの案内を頼むよ」

 

『任セテ』

 

コクリと頷くラッキービースト。…何故だろう。いまいちその言葉が信用できない。

 

「うわあぁぁー!!食べないでくださーい!!」

 

「もー!食べないってー!!」

 

かばんを起こしにテントに入ったサーバルが、お決まりの叫び声を上げる彼女にツッコミを入れたのは丁度その時だった。

 

 

 

 

 

『――じゃあ、図書館までのルートを検索するネ』

 

朝食後、ラッキービーストはサーバルたちの為に目的地までの最適なルートを検索する。ラッキービーストの首元(?)にある円形の画面に、地図が表示される。

 

『ジャパリ図書館は、しんりんちほーにあるヨ。途中、3つのちほーを通るね』

 

「3つか…。どれくらい歩けば着くんだ?」

 

百田が図書館までの距離と到着までの時間を尋ねる。

 

『とっても距離があるから、歩いて行くのはオススメできないヨ。ジャパリバスに乗って移動しよウ』

 

「ほっ。バスがあるのか…」

 

少なくとも長い距離を歩かずに済む事に安堵する日本勢。

 

『ここから一番近いのは、アンイン橋の側だネ』

 

「バス…?」

 

「バスって何?」

 

サーバルとかばんは初めて聞く単語の意味が分からず、互いの顔を見合わせる。

 

『バスは、乗り物の一種だヨ』

 

「…それに乗れば歩くよりもずっと早く図書館まで移動できるぞ」

 

「「へぇ~!」」

 

ラッキービーストと岡が説明すると、2人は同時に納得の声を上げる。

 

『バスの近くまでは、ジャングルを歩く見学ルートがオススメだヨ。それで良いかナ?』

 

「「はいっ!」」

 

(息ピッタリだな~、この2人)

 

またも同時に返事をするサーバルとかばんを、柚崎は隣で微笑ましそうに眺める。

 

『それじゃあ、ガイドを開始するヨ。案内時間は、2時間ほどだヨ』

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

百田たちもそのルートで行く事に賛成する。一行は早速ジャングルの中に入って行った。

 

 

 

 

 

木製の板が敷かれた道の上を進む一行。

 

柚崎は額の汗を拭って口を開く。

 

「…昨日歩いたさばんなちほーからそう遠くないのに、明らかに気候が大きく異なっている…。…どうしてこうなっているのラッキーさん?」

 

『これは、サンドスターの影響だヨ。この島で最も高い山から噴出したサンドスターは、この島の元の気候は勿論、植生さえも大きく変えてしまったんダ』

 

先頭を歩くラッキービーストが柚崎の質問に答える。柚崎は続けて質問する。

 

「…サンドスターって一体何なの?」

 

『さっき言った気候や植生に影響を与えたり、動物をヒトに近い姿…『フレンズ』に変える性質を持っているヨ。長い事研究が続けられてきたけど、未だに謎が多い物質なんダ』

 

「研究…」

 

ラッキービーストの言う”研究”という言葉に反応する朝田。今度は彼が質問する。

 

「研究は…誰がどんな目的で行っていたんだ?」

 

『……』

 

しかし、この質問を受けたラッキービーストは急に黙り込んでしまう。

 

「…流石にこれは機密にあたる部分だったかな?」

 

この島の秘密に関する事は答えないようにプログラムされているのだろう。案内ロボットであるラッキービーストに聞けば色々分かると思って期待していたが、やはりそう甘くはないようだ。朝田は諦めて地道に情報収集を行う事にする。

 

「サーバルちゃん。このじゃんぐるちほーにはどんなフレンズさんがいるの?」

 

『色々いるよ!この近くにもたくさんフレンズがいるみたいだし、今日もいっぱい会えるかもしれないね!』

 

サーバルはかばんの質問に腕を振って歩きながら答える。ふと彼女は何かに気付き、上を指さす。

 

「あっ!みんな見て!あそこっ!ほら木の上!」

 

「サーバルちゃんと似ているね」

 

『あれはオセロットだネ。サーバルキャットと同じ、ネコ科なんダ。夜行性だから、日中は木の上や茂みで休むんダ。木登りも上手なんだヨ』

 

「オセロットという名前は、メキシコの言葉で『野生のトラ』を意味する『トラロセロトル』から来ています。ジャングルだけでなく、サバンナにも生息しているんですよ」

 

ラッキービースト、柚崎の順に木の上で寝ているフレンズについて説明する。

 

「なるほど…」

 

「いいなー!私もお昼寝したいなー!」

 

「…じゃあ、あっちの子は?」

 

伊藤は木々の向こうで何かを咥えて歩いているフレンズを見つける。

 

「あの白黒の模様…。もしかして…マレーバクかな?」

 

柚崎は特徴的な模様だけで、そのフレンズがマレーバクだと判断する。

 

『そうだヨ。夜は白い所が目立って、輪郭が曖昧になるから、見つかりにくくなるんだっテ』

 

「本当に不思議な模様だね」

 

「色んなフレンズがいるんだね」

 

さばんなコンビは木々の影に隠れるまでマレーバクを眺め続ける。

 

その時、一行のすぐ傍にフレンズが一人降り立つ。

 

「うおっ!?」

 

「びっくりした。フレンズか…」

 

それに驚く一行。

 

「ん?見かけない顔ね…」

 

一行に気付いたそのフレンズは一瞬だけ警戒するが、その中に知っているフレンズを確認して表情を緩める。

 

「…あらっ!君はもしかして…サーバルキャットのサーバル?」

 

「私の事知ってるの!?」

 

「ふふっ。だって~、有名だもん!あれでしょ?”さばんなちほーのトラブルメーカー”!」

 

「んにゃー!そんな事ないよ!」

 

少しからかう様に喋るそのフレンズに、サーバルは鳴き声を上げて怒る。フレンズはそれをスルーしてかばんたちを見る。

 

「ところでその子たちは?」

 

「この子たちは…」

 

サーバルはかばんたちの紹介と行き先を話す。

 

「…もしかして…あなたはフォッサのフレンズ?」

 

大きな尻尾に気付いた柚崎が確認を取るように尋ねる。フレンズは驚きの表情を浮かべる。

 

「そうだけど…何故私の事を…?」

 

「ユザキちゃんはとっても物知りなんだ!私たちが何のフレンズか分かるんだって!」

 

まるで褒めるように説明するサーバル。

 

「へぇ~、そうなんだ」

 

フォッサは納得するかの様に感嘆の声を上げる。

 

「気を付けて行きなよー!」

 

「ありがとー!」

 

「ありがとうございますー」

 

しばらく会話した後、一行はフォッサに見送られて再び歩き出した。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。踊ってたら、ぶつかっちゃったわ~」

 

「此処の土、なめると体に良いんだって!お前らもどう?」

 

「キングコブラだ。なんだ?何か頼み事か?」

 

「な、何だよ!あっち行ってよー!!」

 

「クジャクです」

 

「タスマニアデビルだぞー!!」

 

「うわあぁぁ!!ビックリしたー!」

 

「オカピだぞー!!」

 

その後も7人は見学ルートの途中で様々なフレンズたちと遭遇する。どのフレンズも一人々々が全く異なる特徴を持ち、全員が例外なく女性だった。一行は柚崎やラッキービーストの説明に耳を傾けながら目的の橋へと向かう。

 

「此処は本当にたくさんのフレンズがいるんだね~」

 

「柚崎、お前すごい嬉しそうだな…」

 

「だって動物好きだもん!」

 

様々な動物たちと巡り合えてご満悦な様子の柚崎。

 

「ユザキちゃんって本当に何でも知ってるんだね!今まで会ったフレンズの子たちの事、みんな詳しいんだもん!」

 

「本当だね。すごいですよ!」

 

「えへへ~。そんなに褒めないでよ~」

 

柚崎はサーバルとかばんから褒められて照れ顔になる。

 

「…ところでラッキービースト。次第に道がなくなってきているんだが、本当にこのルートで合っているのか?」

 

百田は先頭を歩くラッキービーストに話し掛ける。いつの間にか整備されていた道は、蔓が行く手を阻む獣道と化していた。…よく見ると、かつては道だった板が地面に散乱した状態で埋もれていた。

 

『任セテ。僕の頭には、パークの全地形が入ってるんダ』

 

(…その”任セテ”に不安しか覚えられないのは何故だ…?)

 

百田には嫌な予感しかしなかった。

 

「うわー!!?」

 

「「「サーバルちゃん!?」」」

 

「!?」

 

突如後ろから聞こえてきた叫び声。振り返るとサーバルが蔓に絡まって宙吊り状態になっていた。慌ててかばんがその蔓を器用に取り除く。

 

「サーバルちゃん、大丈夫?」

 

「うん、ありがとう。かばんちゃん、器用だねー」

 

サーバルはかばんに礼を述べる。残る5人も心配して彼女の元に集まる。

 

「大丈夫?怪我とかない?」

 

「大丈夫だよ、ユザキちゃん!ほらっ、こんなに元気!」

 

安堵する一同。その時前方から奇妙な電子音が聞こえてくる。

 

「ラッキーさん!?」

 

「ボス!?」

 

『ウゥゥ、マッ!』

 

今度はラッキービーストが宙吊りになっていた。彼(?)は即座に岡によって救出された。

 

 

 

 

 

 

『さぁ、この茂みを越えれば、後は楽な道だよ』

 

「よーし、行こう!」

 

サーバルが最初にジャングルを抜け、6人も後に続く。

 

(((((……………楽な道?)))))

 

その先にある光景を見て顔を引き攣らせる日本勢。7人の目の前には道がなく、代わりに巨大な川が存在していた。楽とか言う以前に道そのものがない。

 

「あの…ラッキーさん。道は…?」

 

かばんがラッキービーストに尋ねる。だが肝心のラッキービーストは…。

 

『マ…マママ…マ…カセ…マッ』

 

バグってた。

 

「ボス!ねぇ道は!?ねぇっ!」

 

サーバルがラッキービーストを持ち上げて尋ねてもバグったままである。どうやら想定外の状況らしく、この状況の打開策を検索中のようだ。

 

「…これは別ルートから行くしかないですね。ですが…」

 

朝田は視線を変えて溜息を吐く。ラッキービーストは彼の言葉に一切反応せず、ただ震えるだけだった。

 

じゃんぐるちほーの地理を知る者がいない以上、唯一パークの全地形を知るラッキービーストの回復を待つしかなかった。

 

 

 

 

 

「わーーーい!!」

 

その時、川の方から楽しそうな声が聞こえてきた。7人は一斉に川に注目する。

 

「たーのしーー!!」

 

川の真ん中から顔を出すかつては道だったもの。其処に上って斜面を楽しそうに滑るフレンズがいた。

 

「…彼女もフレンズみたいですね」

 

「おーーい!!」

 

「ん?」

 

サーバルが手を振ってそのフレンズを呼ぶ。それに気付いたフレンズが川から上がってきた。

 

「私、コツメカワウソ!どうしたの?遊びに来たの!?」

 

「いや、遊んでるわけではないんだが…」

 

百田は戸惑いながら喋る。

 

「だってこんな所誰も来ないんだもん!だから遊ぶために来たのかなって思って」

 

「僕たち、アンイン橋に行きたいんです。ですが道がなくなってて…何かご存じないですか?」

 

かばんは自分たちの行き先を伝える。

 

「アンイン橋?それならジャガーちゃんが此処通るから、乗せてもらって川を伝って行くのが一番だよ!」

 

「「「え?乗る?」」」

 

サーバル、かばん、そして柚崎が同時に首を傾げる。

 

「うん。ジャガーちゃんが筏に乗せて運んでくれるの。あれもサイッコーにたのしーんだよ!私なんて自分で泳げるのに、つーい乗っちゃうもんねー!」

 

「そのジャガーさんは…何処にいるのですか?」

 

伊藤はカワウソにジャガーの居場所を尋ねる。

 

「さぁねぇ…。ここを1日2回くらいは通るから、日向ぼっこでもして待ってれば良いよー」

 

「なるほど、分かりました。ありがとうございます」

 

礼を述べる朝田。カワウソの話ではもうじき来るだろうとの事。一行は彼女の言う通り、ジャガーが来るまで待つ事に決めた。

 

「よっ…。ほっ…。よっと…」

 

休憩がてらジャガーを待つ一行の横で、カワウソは小石を自分の掌に向けて交互に投げていた。

 

「ねぇ、カワウソ!何それ!?楽しそー!」

 

その行為に興味を示したサーバルが喰い付く。柚崎がカワウソに変わって詳しく説明する。

 

「石遊びだね。カワウソは手先が器用だから、石を落とす事なく交互に投げ続ける事が得意なんだよ」

 

「そうなんだ!すっごーい!!」

 

サーバルは目を輝かせる。

 

「あなたもやってみる?」

 

そう言ってカワウソは小石をサーバルに渡す。サーバルは早速彼女と同じ事をしてみるが、なかなか上手くいかない。

 

「うにゃ~、上手くいかないよ~」

 

「サーバルちゃん。此処はこうして…」

 

見かねたかばんが手を貸す。

 

「えっと…こ、こうかな?」

 

「そうそう」

 

「そのちょうしそのちょうしー!」

 

かばんに教えられて、何回かは連続で石を落とさず交互に投げられるようになったサーバル。いつの間にか伊藤と柚崎も加わり、誰が一番長く石を投げ続けられるか競争する事になった。

 

「おや?あれは…」

 

楽しそうに遊ぶ女性陣の横目に、男性陣は川の向こうから近づいて来るフレンズを確認した。

 

「…隊長。ジャガーってどんな動物でしたっけ?」

 

「俺には分からんから…そこは柚崎に聞く事にしよう」

 

サーバルによく似たそのフレンズを見ながら会話する岡と百田。2人が柚崎に聞こうとした時点で、彼女は既に一行を通り過ぎてしまった。

 

「あぁっ!あの子ですよ!あの子がジャガーで間違いありません!」

 

「待って待って!乗せてー!!」

 

一行は慌ててジャガーを呼び止めるのだった。

 


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