ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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オリジナルキャラが登場します。また、トキの歌声はアニメ版より凶悪になっています。


こうざん①

 

 

「ラッキービースト、あの岩山の山頂へ行く方法を教えてくれ」

 

百田は若干の不安を覚えながらラッキービーストに話し掛ける。

 

『任セテ。ピッタリのコースがあるんだ』

 

ラッキービーストはコクリと頷くと、岩山へ向かって歩き出す。

 

(…ダメだ。もう嫌な予感しかしない…)

 

先ほどの見学ルート消失の件以来、百田はこの”任セテ”という言葉が殆ど信用できなくなっていた。だが、この島の事について一番詳しいのはラッキービーストだという事も確信していた為、彼(?)に頼るしかない。

 

「じゃあ、アタシたちがバスを見といてやるから、アンタたちは山頂に行って”じゅーでん”?してきなよ」

 

「すみません。お願いします」

 

ジャガーの提案で、彼女とカワウソがバスの側に居てくれる事になった。朝田たちは礼を述べてラッキービーストを追いかける。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

ジャパリパーク こうざん 

 

 

ラッキービーストの後を追う事数分。岩山の麓にやって来た一同は、ある施設の姿を確認する。

 

「…ロープウェイか」

 

麓に建てられた建物から伸びるロープを視線で追う岡。ロープは岩山の山頂から顔を覗かせる建物へと続いていた。

 

「うおーー!何あれ!何あれ!おもしろそー!」

 

「山の天辺まで何か伸びていますね…何でしょうか?」

 

「あれは”ロープウェイ”って言ってね、山を登る時にはとても便利なんだよ。あの伸びている物が…」

 

興味深そうに見るさばんなコンビに、柚崎はロープウェイについて簡単に説明する。

 

ラッキービーストは建物内に入る。階段を上った先にある乗り場に辿り着いてから、一度7人に体を向ける。

 

『さぁ…此処からロープウェイに乗り……』

 

再度乗り場に視線を戻した途端、ラッキービーストの説明がピタリと止まる。本来ある筈のリフトが影も形もなかった為だ。

 

「あれは…」

 

百田が体を乗り出して地面を見る。彼の視線の先には、地面に横倒しになっている錆だらけのリフトがあった。おそらく経年劣化が原因だろうか…リフトを覆う様に草花が生えてる事から、落下してから結構時間が経っている様にも見られた。

 

『検索中、検索中…』

 

「ボス~、またー!?」

 

「え~…」

 

それに気付かず必死(?)にリフトを探そうとするラッキービースト。その様子に流石のさばんなコンビも呆れてしまう。

 

(やっぱりこうなったか…)

 

予想通りの結果に百田は思わず溜め息を吐く。ロープウェイが使えない以上、岩山に上る手段は無い。当然、充電も出来ない為バスも動かせられない。自分たちの今までの苦労は何だったのか…。骨折り損のくたびれ儲けである。

 

「どうしよう…ボスはこんなんだし…」

 

『検索中…検索中…』

 

サーバルは乗り場に設置されている椅子に腰かけ、呆れた様子でラッキービーストを見る。

 

「…まぁ、諦めて歩くしかないな」

 

「「「え~」」」

 

「『え~』じゃない。仕方ないだろ?諦めろ」

 

あれだけ苦労した挙句、結局は歩きになってしまう事に不満しかない岡、伊藤、柚崎の3人。そんな彼らの声を百田は一蹴する。

 

その時…。

 

 

 

 

 

ファサッ

 

 

 

 

 

軽やかな音と共に、一つの影が一行の上空を通過する。

 

「ん?」

 

それに気付いた柚崎が上を見上げる。その影はしばらく一行の上空を飛行していたが、やがて乗り場のすぐ目の前の支柱にスタッと降り立つ。

 

「あの子は…」

 

その正体はフレンズの少女だった。ただ、今まで朝田たちが出会ったフレンズとは明確に異なる特徴を持っていた。

 

「あの子は鳥のフレンズだね!ほら見て!頭に羽が生えているでしょ?鳥の子はみんな頭に羽が生えているんだ!」

 

サーバルがそのフレンズの頭を指さす。確かに頭には小さいながらも鳥の翼が生えていた。

 

「あれが翼?小っちゃくてすごく可愛い!」

 

「そうね。時折ピコピコ動いているのがまた良いわね…」

 

そのあまりにも愛くるしい容姿に、柚崎と伊藤は思わず頬を緩ませる。

 

(…ん?彼女…何故瞳に光が無いんだ?)

 

念願の鳥のフレンズに会えて内心喜んでいたのは朝田も同じだった。だが、彼はそのフレンズを見てすぐにある違和感を抱いた。

 

それは彼女の目にハイライトが無い事だ。太陽の光に照らされている筈が、まるで彼女の目元には光が届いていない様に見えた。

 

「あ、あの~。何でしょうか…?」

 

沈黙を保ったまま光の消えた目で此方を見るフレンズに、かばんは耐えきれず話し掛ける。

 

「……………むふっ」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

突然そのフレンズは嬉しそうに頬を緩ませる。まるでお目当ての物を見つけた子供のように。一行は彼女の意図が理解できず首を傾げる。

 

「……すう~…」

 

次にそのフレンズは大きく息を吸うと…。

 

《わたあぁぁぁぁぁしはあぁぁぁとおぉぉぉぉきいぃぃぃぃ!!!!》

 

凄まじい大声で歌い始めた。

 

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

突然の行動に驚愕する一同に、そのフレンズの歌声…と言うより金切り声が容赦なく襲い掛かる。続いて此処一帯の空気が激しく振動し始める。

 

《なかまあぁぁをぉぉさがしてぇぇぇるぅぅぅ!!!》

 

「ふあぁあぁ~…」

 

ものの数秒で目を回し始めるサーバル。彼女は普通の人間よりも可聴域が広い為、そのフレンズの金切声の影響を最も悪い形で受ける事になった。機械である筈のラッキービーストも速攻で倒れてしまう。

 

《どぉこぉにいるのぉぉぉ!?なーかーまぁぁたぁぁちぃ!!!》

 

「す…すごい声ですね」

 

「なんか…クラクラしてきた…」

 

「ヤバい…酔ってきた…。誰かビニールくれ…」

 

一方のヒトも次第にきつくなってきた。フレンズから発される振動が自立神経のバランスを容赦なく崩していく。岡に至っては顔がみるみる青くなり、口元を手で押さえている。

 

「「?」」

 

ただ、柚崎とかばんだけは何ともなくきょとんとしていた。

 

《わたぁぁぁしぃぃのなかーまぁぁぁ!!さぁがしぃぃぃてぇくださぁぁぁいぃぃぃ!!!》

 

「ま…待ってくれアンタ!一回待った!」

 

《あぁぁぁなかーまぁ……》

 

百田の必死の懇願に、鳥のフレンズはようやく歌を止める。

 

「こんにちは」

 

フレンズはふわりと飛び上がると、一行の元に降り立つ。

 

「初めまして、私は『トキ』。私の歌どうだった?」

 

落ち着いた様子で話す『トキ』のフレンズ。彼女は一行に先ほどの歌の感想を聞いてくる。

 

「ち…力強い歌声だね…」

 

「毛並みがふさふさしていて、とっても綺麗ですね」

 

力のない声で感想を述べるサーバルと、歌についての話題を避けようとするかばん。

 

「ありがとう。やっぱり誰かに聞いて貰うのは良いわね」

 

そう言ってトキはかばんと握手を交わす。その様子を見て笑顔になるサーバル。

 

「何だか2人とも、嬉しそうで良かった~」

 

「…アンコール、という事かしら?」

 

「えっ!?」

 

顔を引きつらせるサーバル。再度歌い始めるトキを、彼女は必死に止めるのだった。

 

「トキって…?佐渡島に生息しているあのトキか?」

 

「毛並みの色からしてトキで間違いないね。…ただ佐渡島にいるトキは全て飼育されている個体だけで、野生のトキは全部で数百羽とほんの僅か。それも中国に生息している個体が殆どで、日本における野生種は絶滅しているわ」

 

柚崎は岡からの質問を受けてトキについて簡単に説明する。

 

(絶滅…)

 

確かトキは前世界で絶滅危惧種に指定されていた筈だ。まさか絶滅種(または絶滅危惧種)のフレンズは瞳から光が消えるのではないだろうか…朝田はそう推測する。

 

(さっきの歌の歌詞も…トキが絶滅危惧種と考えるとすごく重い内容だな…。歌に自身の境遇を入れるあたり、彼女はずっと長い間仲間を探してきたんだろうな…)

 

まだ見ぬ仲間を探して広大な地域を回る…。それはきっとトキという動物にとって相当大変な話だろう。…と、朝田はそう思い込み、内心彼女に同情した。

 

「…どうしたの?」

 

トキは此方をジッと見る朝田が気になり話し掛ける。

 

「いえ…まぁ、頑張ってください」

 

「…何?アンコール?なら早速もう1回…」

 

「いえ、それはもう充分です」

 

朝田からのエールを聞いたトキはそれをアンコールと勘違いする。朝田はアルカイックスマイルできっぱりと断った。

 

「…こんな所で何をしているの?」

 

「実は僕たち…”でんち”を”じゅーでん”する為に山に登ろうとしてて…」

 

少し残念そうに聞いてくるトキに、かばんがこの場所にいる理由を説明する。

 

状況を把握したトキは一度頷くと、一同にある提案を持ち掛ける。

 

「…良かったら運ぶわよ?丁度この上を通るつもりだったし」

 

「本当!ありがとう、助かるよ!」

 

「ただ、全員は無理よ。一人くらいなら…」

 

トキは一同を順番に見ていき、やがてかばんに視線を止める。

 

「…貴女、軽そうね。貴女なら何とか運べるかもしれない」

 

「え?僕ですか?」

 

己を指さし尋ねるかばん。トキはコクリと頷く。

 

「しかし…後一人くらいは行くべきじゃないのか?」

 

百田は流石に一人で、それも一般人であるかばんを行かせるのは心配だった。ましてや何処からセルリアンが出てくるか分からないのだ。せめて保護者としてもう一人くらい大人が行くべきだと考える。

 

だが、ロープウェイが壊れている以上、百田たちに岩山を上る手段は存在しない。だからと言ってトキに往復してもう一人運んで貰うわけにもいかない。彼女にこれ以上迷惑を掛けられない。

 

 

 

 

 

「…どうしたの?」

 

その時、一同の上空に再び影が現れる。その影は一同の元に着地し、彼らにこの場所にいる理由を尋ねてきた。

 

「あっ…コウ長老」

 

その姿を確認したトキが嬉しそうな声を上げる。頭の両脇から羽が生えている事から、どうやら彼女もまた鳥のフレンズのようだ。

 

「お久しぶり、トキ。この人たちは…?」

 

「今知り合ったとこ。何でも山に登りたいのだとか…」

 

「この岩山に?何で?」

 

コウ長老と呼ばれたフレンズは視線をトキから一同に変える。

 

「僕たち、”でんち”を”じゅーでん”したくて…」

 

「…………」

 

かばんが説明する中、コウは彼女を見た途端目を見開いたまま固まっていた。…いや、かばんだけではない。サーバルにも視線を向けている様に見える。

 

「あの…どうしましたか?」

 

「はっ…!?い、いや何でもないよ!ごめんね!」

 

「???」

 

かばんが話し掛けると、コウは慌てた様子で首を振る。

 

「長老…?」

 

柚崎はコーが何故”長老”と呼ばれているのか気になった。

 

「…あぁ、ごめん。自己紹介がまだだったわね。私の名前は『コウ』。フレンズになって結構長いから、みんなからは”長老”と呼ばれているの」

 

「そうなんだ。よろしくね、コウさん」

 

「…なぁ、ラッキービースト。コウってどんな鳥だ?」

 

『………』

 

岡は初めて名前を聞く鳥について尋ねるが、何故かラッキービーストは黙り込んでしまった。今まで動物に関する質問には問題なく答えてきた筈だが、目の前の鳥のフレンズのデーダが入っていないのだろうか…?

 

「…柚崎。コウってどういう鳥なんだ?」

 

岡は諦めて柚崎に尋ねる。

 

「コウノトリの事ね。こちらもトキと同様に絶滅の危機にある鳥の一種よ。成鳥は鳴かないかわりに長い嘴を叩き合わせて音を出して仲間に合図を送ったりするの。この行為は『クラッタリング』と呼ばれているわ」

 

「コウノトリ…?あぁ、あの『赤ん坊は…』という言葉に出てくるあのコウノトリか」

 

岡は納得した様子で頷く。だが、柚崎は彼に説明しながらある違和感を抱いていた。

 

(でも…本当にコウノトリで良かったっけ…?)

 

柚崎はコウと呼ばれた鳥のフレンズを見る。服装はコウノトリの特徴にある白と黒を基調としていたが、白い頭髪の間から生える羽の様子がどうもおかしい。

 

(確かコウノトリの羽も白と黒だったはず。だけど…)

 

コウの羽は白っぽくはあったが、黒い部分は全く見受けられない。それどころかその羽には一切影が出来ていない…。と言うよりこの羽は…。

 

「どうしたの、ユザキちゃん?」

 

「ん?いや、何でもないよ。ちょっと考え事」

 

柚崎の考察はサーバルによって一時的に終了する。

 

「…事情は分かった。私も一人くらいなら運べるから、誰が山頂まで行くか決めて頂戴」

 

「じゃあ、私がかばんちゃんに付いて行きます」

 

柚崎が挙手をして名乗りを上げる。結果、彼女とかばんが充電の為に登山する事になった。

 

 

 

 

 

「…良し、これでいいな」

 

「ありがとうございます、モモタさん」

 

流石に命綱なしで行くのはリスクが大きい。そう判断した百田の提案で登山組と鳥のフレンズたちは命綱を着ける事になった。百田は持って来たロープでかばんとトキを繋ぎ、解けない様にしっかりと結ぶ。柚崎も同様に自身のロープで自分とコウを繋いだ。因みにラッキービーストはかばんの鞄の中に入って貰っている。

 

「すみません。よろしくお願いします」

 

「えぇ、任せて頂戴」

 

柚崎はコウたちに改めて挨拶すると、視線を岩山の崖に向ける。

 

「サーバルちゃん、本当にやるのですか?危ないから止めたほうが…」

 

「大丈夫だよ、イトーちゃん!私前にも何度かこうして崖を上った事あるから!」

 

実は岩山に登山する事になったのはかばんと柚崎だけではない。なんとサーバルが崖を上って山頂へ行くと言うのだ。

 

「サーバルちゃん、本当に大丈夫なの?」

 

「だから大丈夫だってユザキちゃん!私、夜行性だから!」

 

(それは関係ないよサーバルちゃん!)

 

崖上りと一切関係のない理由を言うサーバル。危険だから止めてほうが良いと説得するが…。

 

「だって、かばんちゃんとユザキちゃんが心配だから!」

 

彼女はそう言って説得に応じようとしない。最終的に柚崎たちが折れる事になった。

 

「兎に角、無茶はしないで。無理だと分かったら、すぐ降りるんだよ?」

 

「うん、ありがとう!じゃあ先に行って来るね!」

 

サーバルは崖を上り始める。そのスピードは人間の崖上りのプロよりも幾ばくか早く、彼女の姿はあっという間に小さくなっていく。

 

「…私たちも行くわよ?」

 

準備を終えたトキがかばんを抱えてふわりと浮き上がる。それにコウも柚崎を抱えて続く。

 

「…かわいい」

 

鳥のフレンズの飛ぶ姿を見た伊藤は率直な感想を述べる。頭の羽をパタパタと動かして飛ぶ姿は、彼女の言う通り確かに可愛らしい。

 

「柚崎ー!かばーん!頼むぞー!」

 

岡が2人に向かって叫ぶ。彼女らは声の代わりに手を振って答えた。やがて4人の姿も小さくなって殆ど見えなくなった。

 

「…さて、我々も移動しましょう」

 

「そうですね。此処に我々が求める情報があれば良いのですが」

 

端末の画面に映る衛星写真と見る百田と朝田。これはつい先ほど本国から送られてきた写真である。

 

彼らが注目するするのは写真のある一点。岩山の反対側に確認された小規模の村であった。此処に必要な情報、もしくは人間がいてくれる事を期待し、残ったメンバーは歩き始めた。

 


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