ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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今回は援軍としてパークへ向かう米露の駆逐艦のお話です。日本の新造戦艦の話題も出ます。

※政治的な要素は最低限に抑えています。


しゅうけつ

日本から南東へ300km 日米露3ヶ国艦隊

 

 

天の大海原を航空機が駆ける。その眼下では巨大船の大艦隊が陣形を組み、威風堂々と海を走り続ける。

ある時には護衛艦や駆逐艦の速射砲が旋回し、電子上の敵に向けて破壊のメロディを奏でる。またある時には打ち出された標的機に向け、艦対空ミサイルが飛翔する。潜水艦が水中で息を潜め、水上艦のソナーマンがそれを見つけ出そうと神経を研ぎ澄ませる。

転移後初となる地球国家合同軍事演習は、晴天下に恵まれた中で順調に進行していく。

 

「…Excellent」

 

眼前で繰り広げられる大演習を眺めながら、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦『マスティン』の艦長、『チャールズ・アルダーソン』大佐は、ぽつりと感嘆の声を漏らす。

 

本演習に参加中の艦艇は以下の通り。

 

 

・原子力空母×1

・ヘリ搭載型護衛艦×2

・ミサイル巡洋艦×2

・ミサイル駆逐艦×7

・ミサイル護衛艦×4

・汎用護衛艦×9   

・多機能護衛艦×6

・フリゲート×2

・コルベット×1

・哨戒艦×3     

・原子力潜水艦×1

・通常動力型潜水艦×4

・揚陸指揮艦×1

・強襲揚陸艦×1

・ドック型揚陸艦×1

・輸送艦×2

・補給艦×7

・機雷掃海母艦×1

・機雷掃海艦×4

・潜水艦救難艦×1

  

 

その数は総勢60隻、航空機は150機以上。

地球の高度な科学力を駆使して造られた大艦隊は、正しく”壮大”の一言。異世界でこれに対抗出来るとしたら魔帝ぐらいしか居ないだろう。

 

「我ら第7艦隊がこうして大海に出るのは数年ぶりだ。一刻も早く下がってしまった練度を取り戻さないとな」

 

「そうですね。しかし艦長、あまり心配には及ばないようですよ?」

 

副長は艦橋中央で仁王立ちするチャールズに頷く。数年以来の大規模訓練。在日米海軍第7艦隊の将兵たちは、久々の本格的な訓練に気合を入れてのぞむ。彼らの訓練様子を見る限りでは、数年が経過した今でも練度の低下は感じられなかった。

 

 

 

 

 

日本国は対魔帝戦の準備を進めていくにあたって、ある2つの勢力にも協力を打診していた。それは日本国内の各国大使館の多くが異世界諸国に引き渡される中、軍事力と言う明確な”力”を持つが故、未だ大使館を持つに至っているアメリカとロシアだった。

 

両勢力は日本側からこの要請を受けた時、それぞれ対価となる条件を日本に提示した。

 

本国との連絡が途絶え、動くに動けなくなった在日米軍。これまで彼らは元の世界に帰れる可能性を考慮し、日本が有事に巻き込まれても動かないスタンスを取り続けていた。本国の命令なくしては動けない為、これは当然の判断だった。

しかし、幾年経てど戻れる兆しは全くなく、最終的には帰還を諦め、新世界で生きていく事を選択する。その際彼らが日本に求めたのは…米大使館を中央政府とする新たな合衆国の建国だった。

 

また、元から地球に帰る事を諦めていた北方領土のロシア人は、アメリカと同じ新国家建国の協力に加え、物資面での様々な支援も要求してきた。彼らはその見返りとして、領土問題の最終的な決着と、有事の際の日本への協力を伝えてきた。

 

日本側は彼らの条件を受け入れ、新世界で発見した無人の土地の一部を譲り、両国の新国家建国を支援する事に決定した。その際北方領土は全島返還され、ロシアは近くにある同規模の群島へ軍民共に移住した。

 

こうして日米同盟に新たにロシアを加えた『日米露安全保障条約』は、3勢力の利害が一致した事でこの世に誕生した。そして本日、その条約に基づいて1回目の合同演習が開催され、今後も大小様々な訓練が頻繁に行われる事になる。

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

「…そう言えば艦長。この合同演習の開催理由であるマジックエンパイアと呼ばれる国家。何でも魔法を軸とした現代文明を築いているのだとか…」

 

ふと思い出したかのように話し始める副長。

 

「らしいな。魔法と聞くとそれ以外は中世のイメージだったが、ミサイルや超音速戦闘機、はてはICBMまで保有していると知った時は本当に驚いたよ」

 

この事から考えても、魔帝という国家が転移以降日本が戦ってきた連中とは訳が違う事を示していた。しかも彼の国は他種をヒトとして見ない価値観を持ち、自分たち以外を家畜や奴隷として扱っていたと言う。仮に敗北を喫すれば、そこから先の未来は絶望しかないのは明白だった。

 

(…そのような未来は決して認めない。異世界の悪の帝国に、我らステイツの誇りを見せてやろう)

 

地球において世界最強と謳われた軍隊は、共に異界へ来た合衆国国民を守る為、来たるべき魔帝との戦いに備えて練度の向上に努める。

 

「お…」

 

その時チャールズは、灰色の戦闘機がマスティンの斜め前を進む巨艦へ着艦するのを目撃する。

 

並走する護衛艦『いずも』が小ぶりに見えてしまうほどの巨艦――その名は原子力空母『ジョージ・ワシントン』。合衆国海軍が誇る、地球、そしてこの異世界において最も巨大な戦闘艦であり、多数の航空機を運用可能な洋上の要塞である。異世界の住民がこの艦を見たら、そのあまりの巨大さに圧倒される事だろう。

 

「ジョージ・ワシントン……もう何年もあの艦が動く姿を見てませんでしたね」

 

「そうだな。転移以降の財政難で無期限の係留を余儀なくされた艦だったが、自衛隊の新鋭艦載機を運用する役目を得た事で、こうして再び海に出る事が叶った訳だ」

 

此処からでは見えないが、ジョージ・ワシントンの甲板には様々な機種の航空機――米海軍のFA-18E/F『スーパー・ホーネット』を始め、早期警戒機のE-2C『ホークアイ』や、電子戦機のFA-18G、各種ヘリコプター……そして自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機である、F-3『零戦』――が所狭しと並べられている。

 

航空護衛艦より一足先に実戦配備されたこの新鋭機。そのパイロットたちは同艦の配備が完了するまでの間、ジョージ・ワシントンにおいて米軍の指導を受けながら、必要な能力を得る事を上から指示された。

 

それを実現するにあたって日本国は、この巨大空母を動かす為に必要な資金や物資を全て用意した。まさか他国の空母を使って発着艦訓練を実施するとは驚いたが、結果的に彼女は再び海を走る機会を得られた。

 

時折荒波で同艦が揺れるが、それがチャールズには彼女が久々に海へ出られて喜んでいる様に見えた。

 

「失礼します!艦長、司令からこの様な物が…」

 

その時、兵士の一人が一枚の紙を携えて艦橋に現れた。

 

「司令から?どれどれ…」

 

チャールズはその紙を受け取り、内容に目を通す。内容を理解した彼は目の色を変え、艦全体に指示を飛ばす。

 

「全艦に通達!日本政府からの支援要請だ。これより本艦は艦隊を離れ、新転移国家に滞在中の自衛隊艦隊に合流する!進路を南東へ取れ!」

 

『イエッサー!!』

 

突然の事でありながらも、マスティンの乗員たちは動揺する事無く艦長の命令を遂行する。チャールズはそんな部下たちの様子に満足そうな笑みを浮かべる。

 

艦内をガスタービンの甲高い音が響き、マスティンは艦隊を離れ艦首を南東へ向ける。

 

「艦長。日本は一体どんな支援を要請してきたのですか?」

 

副長は今回受けた要請の詳細が気になった。

 

「この前転移して来た新国家を知ってるか?何でもその国からの要請で、不法侵入した武装勢力の排除に協力して欲しいとの事だ」

 

情報によれば、その武装勢力は近代的な戦闘艦を多数保有し、陸戦隊を上陸させて港を占有してるらしい。既に新国家の住民の一部が連中から被害を受けており、このまま野放しにするのは大変危険だった。侵入に気付いても追い返せないという事は、新国家のみでの排除は到底不可能という事だろう。

 

「…それは最早武装勢力というより国家…つまり、現在新国家は敵性国家の侵略を受けている訳ですね?」

 

というより、それしか考えられない。何処の世界に、巡洋艦や駆逐艦を保有するテロリストが居るだろうか。

 

「そうだ。侵略者は予想以上の武力を持って新国家を征服しようとしている。同国に派遣された自衛隊の応援として我々合衆国、そして新生ロシア連邦が向かう事になったのだ」

 

「ロシア…?彼らにも支援要請が来たのですか?」

 

「そうだ。本艦はそのロシア艦と合流し、新国家へ向かう」

 

冷戦時代。互いに相容れない価値観を持って対立したアメリカ、そしてソ連ことロシア。犬猿の仲と言っても過言ではない両国が、こうして共通の目的を達成する為に協力し合う。地球に居る間は決して起こり得なかった事だろう。

 

やがてマスティンに続いて新生ロシア海軍の駆逐艦が1隻、艦隊から離れて彼女と小規模な艦隊を組む。前後に設置された130㎜連装砲、艦両舷に設置された『モスキート』ミサイル4連装発射機は、紛れもなくソブレメンヌイ級駆逐艦の特徴だ。

 

暫くしてそのロシア艦から通信が入った。

 

『こちら、新生ロシア海軍駆逐艦『ナストーイチヴイ』。私は艦長の『グリゴリー・ルシュコフ』大佐です。日本政府からの要請で、貴艦と共に新転移国家へ向かう事になりました。よろしくお願い致します』

 

「こちら、合衆国海軍ミサイル駆逐艦『マスティン』。艦長の『チャールズ・アルダーソン』大佐です。こちらこそよろしく、ルシュコフ大佐」

 

ロシア艦の艦長が話す言葉はロシア語だったが、チャールズには流暢な英語にしか聞こえなかった。転移という現象は、違う民族同士の言語の壁を完全に取り払い、結果訓練において連携を深めるのに大きく役立った。

 

「…さて、そろそろ行こうか。侵略者共を追い出す為に」

 

ナストーイチヴイとマスティン。祖国が異なる2隻の駆逐艦は、ジャパリパーク付近で待機中の護衛艦隊と合流する為、南東へと突き進んだ。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

新生ロシア連邦海軍 ソブレメンヌイ級駆逐艦『ナストーイチヴイ』

 

 

「米駆逐艦『マスティン』と合流。本艦はこれより同艦と共に新転移国家へ向かう!」

 

新生ロシア海軍の数少ない駆逐艦ナストーイチヴイは、マスティンの後方2000mに付き、彼女を追う様にジャパリパークへ向かう。

 

新生ロシア海軍。それは北方領土西側の群島に建国された新生ロシア連邦、そこに所属する海軍である。

 

元々彼らは北方領土の駐留軍ではなく、訓練の為に本土からやって来た遠征艦隊だった。しかし、転移の影響で北方領土と共に異世界へ来てしまい、その後に締結された安全保障条約によりそのまま新しいロシアの主力海軍となった。

 

編成は駆逐艦2隻、フリゲート4隻、コルベット3隻、他支援艦艇が複数隻と、新生ロシアの規模に比して大規模な艦隊だった。…無論これを維持する為には、有事の際の協力を引き換えに得た日本側の支援が不可欠だったが。

 

「そう言えば艦長。実は小耳に挟んだ事がありまして…」

 

「何だ?」

 

艦長『グリゴリー・ルシュコフ』大佐の隣に立つ副長が、何かを思い出したかのように話し始める。

 

「我々が合流する予定の自衛隊の艦隊、其処には”例の艦”もいるとの事ですよ」

 

例の艦。それを聞いただけでグリゴリー、そして艦橋に居る全兵士たちはその正体が分かった。

 

「…そうか。あの戦艦も居るのか」

 

海上自衛隊初の超弩級戦艦。巷では”21世紀の大和型戦艦”と呼ばれ大きな話題となり、同時に時代錯誤な巨砲を担いでいる事に活躍を疑問視された新鋭護衛艦である。

 

「しかし、ミサイル全盛のこのご時世にヤマトを造るとは…。ヤポンスキーは一体何を考えてるのでしょうね?」

 

ミサイル、航空主兵主義者の兵士が、日本人の行動に疑問符を浮かべる。グリゴリーはそんな彼に向けて日本人を庇うかのように話す。

 

「少なくとも軍事的利用価値がきちんとある筈だ。彼らだって無意味な物を造ったりはしないだろう」

 

「まぁ、そうだと良いのですけど…」

 

兵士は納得してない様子で返事する。いざ戦闘になった時、彼はその戦艦が足を引っ張ったりしないか心配だった。

 

(そう…例の戦艦は大戦期のそれとは異なる性能を持っている筈だ。現代科学の枠を凝らして造り上げた戦艦がどの様な戦いをするのか…早く見てみたいものだ)

 

およそ30年(日本にとっては80年)の時を越え復活した海の女王。表面上は平静を装っているが、グリゴリーはその活躍を間近で見れる事が楽しみで仕方がなかった。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

ジャパリパーク近海 海上自衛隊 新転移国家派遣艦隊

 

 

「『かが』より連絡。米国とロシアの駆逐艦が1隻ずつ、計2隻が援軍に来るとの事です」

 

「うむ」

 

通信員の報告を聞き、艦長と思われる男がゆっくりと頷く。彼は艦橋にある艦長席に腰掛け、自らが乗る艦が進む先を眺め続ける。

 

海上自衛隊の最新鋭戦艦――しきしま型大口径砲搭載型護衛艦――その1番艦『しきしま』は、巨大な3連装砲を前方に向けながら海を驀進する。

 

かつてグラ・バルカス帝国監査軍所属の超戦艦『グレード・アトラスター』と戦い、奮闘虚しく無念の轟沈を遂げた彼女は、己を沈めた敵と同じ巨大戦艦として生まれ変わり、こうして友軍艦と共に任務に就いている。

 

全体的にステルス性を意識した船体形状。リデル級駆逐艦のそれを思わせる、艦橋とマストが一体化した塔のような艦上構造物。かの戦艦大和にも匹敵する、全長260mもの巨大な艦体。

 

…そして彼女を戦艦足らしめる最大の特徴。前甲板の過半を占有する、2基の巨大な3連装主砲。

 

力強い。この艦に初めて乗る事になった自衛官は、誰もがそのような感想を口にした。

 

「まさか魔帝戦が初陣になると思っていたこの艦が、こうも早く実戦を経験する事になるとはな…」

 

戦艦『しきしま』の艦長『谷口 司』一等海佐は、そう遠くない未来に実施されるであろう戦闘に緊張する。何せ自分たちが乗る艦は戦艦。従来の護衛艦にはない大口径砲を主武装とする戦闘艦であり、実際の戦闘における効果はまだまだ未知数だ。

 

この艦はきちんと戦う事が出来るのか…?今日まで訓練を繰り返してきたとはいえ、いざ実戦ともなればどうしても不安になる。

 

(…おっといかんいかん。これでは部下に示しがつかないな)

 

しかし、自分は艦長だ。トップが不安な状態では全体の士気に関わる。谷口は不安を押し殺し、任務を遂行する事に集中する。

 

『『かが』より全艦隊へ。これより我々は所定のポイントに向かい、米露の援軍が到着するのを待つ。作戦は援軍到着後、パーク側の準備が整い次第開始する』

 

旗艦『かが』からの通信が『さざなみ』、『あけぼの』、そして『しきしま』に流れる。通信終了後、谷口は自らの乗艦に命令を下す。

 

「これより本艦は、随伴艦と共に所定の海域へ向かう。面舵40°!両舷前進原速!」

 

「了解!面舵40°!両舷前進原速!」

 

装甲に包まれた重厚な艦が、ゆっくりと進路を変える。他の艦も彼女と同じ方向に進路を変え、水飛沫を上げながら海を突き進む。

 

 

 

 

 

海上自衛隊派遣艦隊、在日米海軍駆逐艦『マスティン』、そしてロシア海軍駆逐艦『ナストーイチヴイ』。合計6隻の鋼鉄の乙女たちは、ジャパリパークに不法侵入したアニュンリールからフレンズを守る為、”集結”を開始した。

 




ジェーン「次回、ばすてきトリオ」








おまけ


ジョージ・ワシントン「わーい!久々の海だー!うーれしー!!」

マスティン「ワシントンさん落ち着いて下さい。…気持ちは分かりますが」

しきしま「今度こそ…守ってみせる」

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