ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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文章力やストーリーの組み立ては全くの素人ですが、楽しんで頂けたら幸いです。


第1章:グレートジャーニー
いせかいちほー①


――――そよ風が吹く。

 

海から吹くその風は、港に立つ一人の女性の心情を表しているかの如く、何処か寂しそうだった。

 

「…」

 

風は沈黙を保ったまま立つ女性の帽子を揺らしてから、島の内陸部へと吹いていった。

 

「……」

 

まるで何者かとの別れを名残惜しむかのような視線を内陸部へ向け続ける女性。よく見ると彼女の頬に一筋の涙が流れていた。

彼女は眼鏡を取って涙を拭うと、ゆっくりと此方に体をむけて口を開いた。

 

「…”私たち”は過ちを犯しました。それも取り返しのつかない…過ちを…」

 

悲しそうな表情のまま、女性は続ける。

 

「どうか…”あなたたち”は”私たち”の様にならないでください…。…これは”あなたたち”と同じ”ヒト”である…私からのお願いです」

 

その時、海から陸に向けて突風が吹き、女性の帽子を軽々と持ち上げる。空高く舞い上がった帽子は内陸へと飛ばされていき、やがて木々の向こうへと消えていった。

 

 

 

――――

 

 

 

「はっ…!!?」

 

目が覚める。男は勢いよく起き上がり、周りを見渡す。

まだ夜が明けてないため薄暗かったが、自分のいる場所が自室のベッドの上である事を理解した。

 

「…今のは……夢?」

 

男は先ほどまで見ていた夢について考える。夢と言うにはあまりにも現実感のある夢だった。そう…まるで記録映像を見ている様な感じだ。

 

「……」

 

港に立ち涙を流していたあの女性…。彼女はまるで自分に訴えるかの様にこう言った。

 

『…”私たち”は過ちを犯しました』

 

『どうか…”あなたたち”は”私たち”の様にならないでください…』

 

「…どういう意味だ?あんたらは一体何をしたと言うのだ…?」

 

しばらく女性の言葉の意味を考えていた男だったが、繰り返し襲い来る睡魔に遂に限界を迎える。彼は布団をかぶると再び深い眠りについた。

 

『日本国総理大臣』の肩書きを持つその男が目を覚ましたのは、それから3時間後の事だった。

 

 

 

――――

 

 

 

西暦2015年1月某日。日本は異世界に転移した。

 

突如襲った不可解な現象。学者たちは科学的観点からこの現象を解明しようとしたが、転移から数年が経った現在でも進展はまるでなかった。もはや神のような次元を超越した存在の仕業、としか言いようがなかった。

 

転移から数年後は大変な日々の連続だった。転移による混乱。食糧不足に資源不足。新しい国家との接触。…そして3度にも渡る傲慢な覇権国家との戦争。

 

最初のロウリア戦役こそ仕方なく実力を行使する形だったが、パーパルディア皇国との戦争は日本が大きく変わる切っ掛けとなった。今や日本は時には戦う事も辞さない国家に姿を変えてしまった。それは平和というものが決して無条件に享受されるものではなく、時には戦わなければ掴み取れないものであるという事を、日本人の誰もが認識するようになったからだ。

 

そして3度目の戦争となるグラ・バルカス戦役。一部の民衆の間では第3次世界大戦とも呼ばれているこの戦争は、文字通り全世界を巻き込む巨大な争いとなった。世界最強の神聖ミリシアル帝国含む列強国と文明国。日本以外にもグラ・バルカス帝国に宣戦布告を受けた国々が結集し、同国と戦う事になった。

 

だが、世界連合軍の実力はグラ・バルカス軍のそれにはとても及ばなかった。唯一同レベルの技術力を持つ神聖ミリシアル帝国も、古代文明の解析に依存し過ぎて歪となった技術が祟り、満足な戦果を上げる事が出来なかった。日本とそのサポートを受けたムー国が戦列に加わっていなければ、世界の全てがグラ・バルカスの支配下に置かれていただろう。

 

何はともあれグラ・バルカス帝国との戦争は、最終的に日本の協力を得た世界連合が勝利した。戦争によって生じた混乱も時間の経過と共に収まり、日本国と日本人は数年ぶりの平和を謳歌していた。

 

だが、まだ安心は出来ない。古の魔法帝国――――ラヴァーナル帝国の脅威がまだ残っている。古代遺跡の解析から、おそらくは自分たちに近い技術力を持つであろうこの国家の復活まで、最長でも後10年程度しかない。現在日本政府はこの国の脅威に対抗するため、自衛隊戦力の増強を急ピッチで進めていた。

 

 

 

――――

 

 

 

日本国 首都東京 首相官邸

 

 

――夜。

西へと太陽が沈み、巨大な都市が電気の力で自らを光り輝かせる時間。黒塗りの乗用車に乗って首相官邸に来た男を、近くの茂みに潜む虫たちが鳴き声と共に迎える。

 

「お疲れ、みんな」

 

『お疲れ様です、総理!』

 

各省庁の大臣たちが、官邸内に入って来た首相をロビーにて迎え入れる。

 

「…そう言えば総理。昨日の夜は夢をご覧になりましたか?」

 

会議室へ向かう途中、隣を歩いていた外務副大臣が唐突に話し始める。

 

「何だ?急にどうした外務副大臣?」

 

「実は総理の到着前まで、ここにいる皆でその夢について話していたのです」

 

環境大臣の女性が補足し、周りの大臣たちも同意の意を示す。

 

「…で、その夢とやらがどうしたんだ?」

 

首相の質問に環境大臣が詳しく説明する。

 

ここにいる大臣全員が昨日の夜にある夢を見た。そのどれもが帽子と眼鏡を付けた女性が登場する夢で、自分たちに何かを語りかけてきた。夢は女性のかぶっていた帽子が飛ばされた所で終了したと言う。

 

説明を受けた首相は目を見開く。

 

「すごい偶然だな…。実は私も君らと全く同じ夢を見たのだよ」

 

「なんと…!?総理もですか…!?」

 

会議室に到着し、一同は驚愕しながら席に座る。

 

「実は我々だけではないのですよ、総理」

 

「…?」

 

大臣たちが何を言っているのか分からず、首を傾げる首相。

 

「説明するよりもテレビを見た方が早いです」

 

文部科学大臣がテレビを付け、首相を含む一同が画面に注目する。そこには大多数の人が集まり、昨日見た夢について口々に話している様子が映っていた。その様子を詳しく説明するニュースキャスターの声が聞こえる。

 

『――このように昨日の夜から本日のお昼にかけて、全く同じ夢を見たと言う人が日本中で大勢確認されています。夢には必ず帽子と眼鏡を付けた女性が登場し、”私たちの様にはならないでください”と語りかけてきたとの事です。…斯く言う私も昨日全く同じ夢を見た一人です。夢に出てきたあの女性は、私たちに何を伝えようとしているのでしょうか…?』

 

ニュースが終了する。

 

「……偶然…とはとても言えないな」

 

「総理もそう思うでしょう?ここまで来ると何か大きな出来事が起きそうな気がしますよ」

 

「よしてくれ総務大臣。本当に何かが起きてしまいそうではないか」

 

フラグを立てる総務大臣に、首相はワザとらしい笑い声を上げる。何か嫌な予感がするのか、彼の頬を冷汗が流れた。ふと時計を見ると、もうすぐ会議が始まる時間が迫っていた。秘書たちが首相たちに資料を配っていく。

 

「…さて、もうすぐ会議が始まる。この話はここで終わりにしようか」

 

首相は夢の話から会議の話へと切り替えることにした。彼の声に大臣たちも頭を切り替える。

 

そして時計の針が会議開始の時刻を指し示した時……それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うー、がおー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空が突如、まるで真昼の如く真っ白に光ったのだ。

 

『…!!!?』

 

突然発生した異常現象に、会議室にいた首相たちは思わず立ち上がる。その衝撃で一部の椅子が床に倒れる。

 

「な、何だ!何事だ…!!?」

 

全員が窓に集まり外を見る。彼らの視界に、空がまるで閃光を放ったかの様に白く染まっている景色が映っていた。

 

「空が明るい…。今は昼だったかな…?」

 

「馬鹿な!今は夜だぞ!第一昼でもこの空は異常だ!」

 

「一体何が起きたんだ!?」

 

その場にいる者たちが混乱する中、首相だけは冷静にその空を眺めていた。

 

「…この現象……あんたが関わっているのか?」

 

首相は夢の中の女性にそう質問するのだった。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

それから暫くの間、官邸はおろか、日本中、そして異世界中が大騒ぎだった。

既に空は元の暗さを取り戻していたが、先ほどの現象の影響により交通事故などが多数発生し、日本中が大混乱の渦中から抜け出せないでいた。首相たちは事態収拾で大忙しとなり、数日間は眠れない日々が続いた。

 

――数日後。ようやく日本中が落ち着きを取り戻し、首相は冷たいお茶を飲んでホッと一息ついていた。

 

「総理!」

 

だが日本で最も忙しい人間である総理大臣に休む暇などなく、すぐに次の仕事が入ってくる。

 

「どうした?」

 

お茶の入った水筒の蓋を閉め、慌てた様子でやって来た外務副大臣に何事か尋ねる。

 

「数日前の謎の現象についてですが…、クワ・トイネ公国政府からそれに関連する情報を提供してもらいました」

 

「情報?あの現象が何か分かったのか?」

 

首相はデスクから身を乗り出して尋ねる。外務副大臣は咳払いをして説明を始める。

 

「あの夜が突然昼の様に明るくなる現象…実は数年前にも同様の事が起きていたのです」

 

「何だと?それは本当かね!?」

 

「はいっ、本当です!前にその現象が起きたのは2015年1月○日…。総理、この日付が意味している事は…」

 

首相はしばらく腕を組んで考える姿勢を取っていたが、やがてその日付の意味を理解し、驚いた様子で口を開く。

 

「日本が……この異世界に転移してきた日!」

 

首相の言葉に頷く外務副大臣。

 

「はい。おそらくあの現象は国家または地域が転移して来た時に起きる現象と推測されます。つまり、この世界の何処かに別の世界から転移国家が出現したという事です」

 

国家がこの異世界に出現した。これを聞いた首相は真っ先にあの国を思い浮かべ、顔を青ざめる。

 

「ま、まさか…古の魔法帝国が遂に復活したのか!?」

 

古の魔法帝国。人間の上位種たちが建国し、その圧倒的な力で全種族を統べた者たち。高すぎる文明故に神に弓を引き、報復として受けた隕石攻撃から逃れるため、国ごと未来に転移した伝説の超大国。その性格はとても傲慢で、自分たち以外の種族を家畜として扱っていたと言う。

 

各地に点在する遺跡のレベルから、この国は日本の基準で現代国家と推測されている。日本国はやがて復活するであろうこの国に対抗するため、現在自衛隊の戦力を大幅に増強中だった。増強が完了するのにあと数年、練度上げが完了するにはさらに数年は掛かる予定だ。

 

今復活したとなれば、最悪自衛隊は中途半端な戦力で魔法帝国軍と衝突する事になる。首相は前に友好国の元首から古の魔法帝国の話を聞いて以来、この国に対し少なからず恐怖を抱いていた。

 

だが首相のその推測に外務副大臣は首を振る。

 

「いいえ、総理。これもクワ・トイネから得た情報ですが…古の魔法帝国が復活するのは”昼間が突然夜の様な暗闇になる”時です。今回のケースは全くの逆です」

 

「そ、そうか」

 

出現したと思われる国家が古の魔法帝国では無い事に安堵する首相。

 

「…ですが安心はできませんよ総理。転移してきた国家が古の魔法帝国の様な国ではないとも限りません。最悪、魔帝以上に危険な国がやって来たとしても不思議ではないのですから」

 

「!!…そうだな。すまない。安心している場合ではなかった」

 

外務副大臣にその態度を咎められ、首相は気を引き締め直す。

 

「…とりあえず衛星を使ってどのような国家が転移して来たか調べる事にしよう。まずはその転移国家の情報を少しでも集めねば」

 

そう言って首相は早速内閣衛星情報センターに指示を飛ばす。数時間後、新たに出現したと思われる群島を確認したとの報告が入った。

 

 




次回、さばんなコンビが登場します。

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