ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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新年明けましておめでとうございます!今年もジャパリパーク召喚を宜しくお願い致します!

お気に入り登録者が300人を突破いたしました。登録してくださった方々、本当にありがとうございます!完結までまだまだ先ですが、頑張っていきます!

遅くなりましたが、ろっじ編最終話です。コウ長老の正体が遂に判明します(もう気付いている方も多いと思いますが)。


ろっじ⑧

――温かい日差しが降り注ぐ春の午後。オープンから間もない動物園は、多くの観客で賑わいを見せていた。

 

「――ミライ。その子が例の…?」

 

ある動物が収容された檻の近く。

紺色と深緑を混ぜた色の長髪に、中学校指定の制服を着用した少女。彼女は遅れて到着した少し年下の少女と、その隣に立つ幼い少女を交互に見る。

 

「はい。従姉妹のマコトちゃんです。――ほらマコトちゃん、ご挨拶」

「うん」

 

明るい緑のロングヘアーを一つに纏めた少女――ミライ――は、自分の裾を掴んでいる少女に優しく語り掛ける。緊張した面持ちの少女はゆっくりと頷き、黄色い髪を揺らしながら前に出る。

 

「は、はじめまして!『ゆざき まこと』、5さいです!よろしくおねがいします、カコお姉ちゃん!」

「カコよ。よろしくね、マコト」

 

カコは体を屈め、マコトと同じ目線で挨拶を返す。――驚いた。本当に菜々とそっくりだ。

 

「…貴女、動物は好き?」

「え?う、うん。大好きだよ。カコお姉ちゃんは、どーぶつ好き?」

「えぇ、勿論。こう見えて結構詳しいんだ。もし分からない事があったら、遠慮なく聞いて頂戴」

「うん、分かった!」

 

自分と同じ動物好き。それを知ったマコトから緊張感は消え失せ、彼女は太陽の様な明るい笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 

「こんにちはーー!!!」

 

挨拶を終えた3人の少女は、早速園内の動物を見て回る。

まず最初にマコトが見たのは、待ち合わせ場所に近い檻の中の動物からだ。彼女は丁度自分の前まで来たその動物に、元気よく挨拶をした。

 

「……」

 

当然ながら動物は何も答えず、ただじっとマコトを見詰めるのみだ。

 

「…ねぇ、ミライお姉ちゃん。この子…え~っと…」

「サーバル。『サーバルキャット』って動物よ。猫さんの仲間なの」

「サーバルさん、ぜんぜんおはなししてくれないよ…おこってるのかな…?」

 

マコトが動物園を訪れたのは、今回が初だ。それまでは絵本や図鑑、テレビの中だけでしか動物を見た事がなかった。動物好きになった少女にとって、最早それだけでは満足出来なかった。

実際に会ってみたい。触れ合ってみたい。――そして仲良くなって沢山お話がしたい。そう期待していた彼女は、想像とは違った反応のサーバルを見てしょんぼりする。

 

「ねぇ、カコお姉ちゃん。どーぶつさんたちって、みんなおはなししできないの?」

 

マコトは動物に詳しいカコに理由を求める。

 

「いや、出来ない訳じゃない。同じ動物――例えば犬なら同じ犬と、猫なら同じ猫同士で話す事が出来るんだ。その動物にしかない”言葉”を使ってね」

「……え?じゃあお犬さんと猫さんは?どうやっておはなししているの?」

 

再度質問すると、カコは首を振る。

 

「残念ながら違う動物同士で話す事は出来ないんだ」

「えぇっ、そんな…!」

 

マコトはショックを受けたかのように驚く。そしてポツリと、しかしミライとカコにはっきりと聞こえるように呟いた。

 

「…どうしてなんだろう?おはなしができたら…お犬さんも猫さんも、もっとたくさん仲良くできるのに…」

 

折角出会っても、相手に言いたい事を伝えられない。そんなの…あまりにも悲しすぎるではないか。

 

「みゃあおっ!」

 

マコトのそんな心情を感じ取ったのか、サーバルは彼女に向けて鳴き声を放つ。

 

「……サーバルさん?」

「サーバルさん、マコトちゃんが悲しんでいるから心配してくれてるのね」

「分かるの?ミライお姉ちゃん?」

「勿論。言葉が通じなくても、行動や状況から考えれば、意思疎通はある程度可能なの」

 

ミライはそう答えるが、まだ幼いマコトには理解出来ない。頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

「む~…お姉ちゃんのお話、難しすぎて分かんないや」

「ふふっ。簡単に言えば今のままでも動物さんたちとお友達になれるって事よ」

 

マコトは視線をミライからサーバルへ移す。相変わらずサーバルは、時々舌をペロッと出しながら此方を見詰めたままだ。

 

「…でも私、やっぱりどーぶつさん達とお喋りしたい。だってその方が、もっと楽しくなると思うもん!そうだよね、サーバルさん!」

「にゃあうん!」

「ほらっ、サーバルさんも『うん』だって!……あれ?私、サーバルさんの言いたいこと分かっちゃった!」

 

サーバルが自分と同じ考えだと知り、そして意思疎通が出来たと感じ、マコトは飛び上がるように興奮する。

そんな彼女をミライとカコは微笑ましそうに見詰める。2人もマコトの気持ちが分からなくもなかった。本当にそんな動物がいるなら、是非会ってみたい。

 

「もしかしたら私たちが知らないだけで、そんな動物もいるかもしれませんね。もしそんな動物に出会う事があったら――マコトちゃんの所へ連れて来ましょうか」

 

ミライのこの台詞に、マコトは目を輝かせる。

 

「ほんと!?ほんとに!?会わせてくれるの、ミライお姉ちゃん!?」

「ちょ、ちょっと待って!あくまで”もしも”の話よ?絶対とは言えないからね」

 

ミライは慌てて釘をさすが、興奮状態のマコトにはあまり聞こえてない。

 

「ありがとう、お姉ちゃん!私、楽しみにしているね!」

(あちゃ~…)

 

無邪気な笑顔を目の当たりにしたミライは、自分の発言を後悔して内心頭を抱えた。そんな彼女にカコは呆れを含んだ視線を向ける。

 

「…どうするのミライ?あの子、本当に話せる動物に会えると思ってるわよ?」

「うぅ、やっちゃいました…。――こうなった以上、出来る限りの事をするしかないですね…」

 

近い将来、マコトから嘘吐きと呼ばれ嫌われる自分の姿を想像し、ミライは大きく溜息を吐いた。

 

「聞いてサーバルさん!ミライお姉ちゃんがお話しできるどーぶつさんを連れて来てくれるって!」

「うみゃあっ!」

「うん!すっごくたのしみーー!」

 

そんなミライの心情など露知らず、マコトはサーバルキャットと楽しくお話するのであった。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「――……んっ、夢…?」

 

気が付くと柚崎はベッドの上で横になっていた。

 

(懐かしい夢だったなぁ…あの時のお姉ちゃん、随分困ってたなぁ)

 

幼き頃の自分を動物園に連れて行ってくれたミライ、そして動物の事を色々と教えてくれたカコ。思えばそれが彼女たちと共に過ごした最後の日だった。

あの後2人は親の都合で海外へと旅立った。でも時々テレビ電話で互いの近況を報告し合っていたから、それほど寂しくはなかった。

 

――だが日本が転移した事で、永遠の別れになって…

 

「…冷たい」

 

ふと顔に手を当てると水滴が付いていた。目から涙が流れていたようだ。

 

「おはよう!マコトちゃん!」

「!」

 

そこへサーバルが元気な声で挨拶しながら、柚崎の顔を覗き込んだ。彼女は驚く柚崎の顔を見た途端、自らも目を瞬かせた。

 

「ど、どうしたのマコトちゃん!?何で泣いてるの?どこか怪我したの!?」

 

柚崎が涙を流しているのは怪我をしたからだ。そう考えたサーバルは、彼女の体の何処かに傷は無いか確認する。

柚崎は涙を上着の袖で拭き終えると、起き上がって安心させるような笑顔を見せる。

 

「大丈夫だよ、サーバルちゃん。ちょっと早起きしただけだから」

「え?早起きすると泣いちゃうの?」

「う~ん、そういう意味じゃないんだけど…」

 

柚崎はサーバルとやり取りしながら気付く。

今まさに叶っているではないか。”動物とお話したい”という、幼き頃の願いが。

 

「…まさか本当に叶っちゃうなんてね」

「えっ、今何て言ったの?マコトちゃん?」

「ううん。何でもないよ。…ところでカオリンとかばんちゃんは?」

「先に起きて部屋から出たよ。かばんちゃん、ごはんを作るんだって」

「そっか。かばんちゃんには色々とお世話になりっぱなしだなぁ」

 

今度お返しに自分の手料理をご馳走してあげよう。そう思いながら柚崎はベッドから立つと、椅子に掛けてあった上着を羽織る。洗濯してからそれなりに時間が経つが、それでも羽織ると洗剤の香りが微かに鼻をくすぐった。

 

「じゃあ私たちも出ようか、サーバルちゃん」

「うん!」

 

準備を終えた柚崎は、サーバルと共に皆が待つ大広間へ向かおうとした。

 

その時――。

 

「うわぁっ!!!?」

 

部屋の外――廊下の奥から聞こえてきた男の叫び声。朝田の声だ。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「朝からご迷惑をお掛け致しました」

 

大広間にてかばんを中心に作った朝食を頂く一同。アリツカゲラとオオカミ、キリンの3人もご馳走して貰う事になった。

その席で朝田は謝罪する。

 

「アサダちゃん、大丈夫?」

「えぇ、何とか。しかし、まさか亡霊?に遭遇するとは思いませんでした」

 

サーバルから見た朝田の様子は、亡霊を目撃した直後にも拘らず何時も通りだった。無論、心中完全に穏やかとまではいかないが。

その隣で食事を摂るアリツカゲラは、得体の知れない存在が自分のロッジに潜んでいる事が不安で仕方がなかった。

 

「…でもこのロッジで一体何が起きてるのでしょう?昨日まであったジャパリまんも食べられてますし…」

 

アリツカゲラのこの台詞に、表情が強張るサーバル。惚けるように返答する。

 

「だ…誰だろう…?」

「あっ、それはサーバルちゃんの仕業なので、関係ないかと」

「か、かばんちゃん…!?」

「だってサーバルちゃん、口周りにジャパリまんの食べかすが付いていたから」

 

サーバルが夜中にジャパリまんを摘まみ食いした事実をさらりと暴露するかばん。サーバルは慌てたように彼女に詰め寄る。自分を見るアリツカゲラの目が、獲物を狙うそれに変わるのが見えたから。

 

「ほぉ~、サーバルさん?それはどういう意味ですか…?」

「ご、ごめんなさい!お腹すいちゃって…」

 

鋭い眼光で迫るアリツカゲラに、観念したサーバルは素直に謝った。最終的に柚崎や百田の間に入って宥めた事で、事なきを得る。

 

「しかしその亡霊とやらは、何故執拗にみんなの前に現れるんだろうね…?」

「何だか事件の匂いがしますね、先生!」

 

オオカミは神妙な面持ちで考え込み、キリンは何らかの事件性を感じて興奮する。

 

「……」

 

そんな中、かばんもオオカミ同様この怪奇事件の原因を探っていた。そしてある事が気になった彼女は、朝田とオオカミに質問した。

 

「アサダさん、オオカミさん。ちょっとお尋ねしたいのですが……おばけと遭遇した時、お二人の他に誰かいらっしゃいましたか?」

 

かばんが何故その様な質問をしたのか、当初一行には分からなかった。しかし、何か分かったのは間違いない。一行は彼女の話に耳を傾ける。

 

「そういえば…」

「ラッキービーストが居ましたね」

「…!!僕たちの時と同じですね」

 

かばんは怪奇現象に遭遇した者たちの共通点に気付いた。それはラッキービーストが共にいた事であった。

 

「マコトさん。僕たちがおばけに遭遇した場所も、オオカミさんやアサダさんの時と同じ場所でしたよね?」

「え?うん、そうだけど…もしかして、この現象の正体が分かったの?」

 

かばんは自信に満ちた表情で頷く。

 

「はいっ。鍵はラッキーさんだと思います」

 

驚く一同。彼らは一斉に、床で待機中のラッキービーストに視線を向ける。

 

 

 

 

 

朝食後。一同は怪奇現象に遭遇した、廊下のとある一角へ向かう。その最前列を、ラッキービーストが歩いて進む。

その途中で、ルッダがかばんに尋ねる。

 

「本当に…あの亡霊の正体が分かるのか?」

「はい。僕の予想通りなら、おそらくラッキーさんの機能?によるものだと思います」

「…映像って事か」

「はい」

 

やがて目的の場所に辿り着くと、かばんはラッキービーストにお願いをする。

 

「ラッキーさん。此処で僕たちに見せたかったものを見せて貰えますか?」

『分かったヨ、かばん』

 

ラッキービーストの目が一層強く光ると、彼の数歩前に人の様な形が現れた。亡霊の再出現に呆然とする一同。

 

「3Dホログラムだったのか…」

 

朝田は亡霊の正体を口に出す。高山ふもとに建てられた研究所跡。其処にあった立体映像装置と同じ技術だった。

 

「こ、これ何…?」

「こんなの初めて…」

 

徐々に鮮明になっていく映像に、キリンとアリツカゲラは息を呑む。

やがてサファリハットをかぶった、一人の女性が映し出された。彼女は難しい表情で、そして悲しそうな声で話し出した。

 

『う~ん、まずい事になりました…。救援の為、このエリアに軍の皆さんがやって来たみたいですが…まさか全滅してしまうなんて…』

「もしかして…この子がミライさん?」

「うん。きっとそうだよ!」

 

ゆきやまちほーで聞いた謎の声と全く同じそれに、かばんとサーバルは互いに顔を見合わせ。

 

「おいおい…マジかよ…」

「夢の中に出てきた…あの女の人!」

「これは…驚いたなぁ」

 

岡、伊藤、百田は日本人…いや、地球人全員が見た夢に登場し、意味深な言葉を残した謎の女性の登場に驚愕し。

 

「……」

『あの白いセルリアン。他の色の個体と違って、どうやら自己修復機能を持っているみたいです。――かつてサンドスター・ロウから生まれたという、黒セルリアンと同じ』

 

柚崎は沈黙を保ったまま、喋り続ける従姉の姿を凝視していた。

転移直前のテレビ電話に出た姉と、ラッキービーストが映す姉。それらは全く同じ姿をしていた。あの緑色の髪と眼鏡、そして緑と赤の羽が付いたサファリハット…間違いなく本物だ。

映像越しとはいえ姉との数年ぶりの再会に、彼女は思わず呟いた。顔の下半分を手で抑え、その目に涙を流して。

 

「…ミライお姉ちゃん」

 

柚崎の声は廊下によく響いた。朝田以外の全員が彼女の言葉に沈黙し、そして愕然とした。

 

『ええええええええぇっ!!!?』

 

彼らの声の大きさから、その驚き具合がよく分かる。詳しい説明を求めようとしたが、その前に映像内のミライが語り続ける。

 

『――キョウシュウエリアに暮らすヒトもフレンズも、突如現れたセルリアンに殆ど食べられてしまいました――サーバルには伝えてないですが、おそらく…”あの子”も…。もうこの島で無事なのは、私たちだけかもしれません。――こうなった以上、私たちで解決しないと』

『ミライさーーん!』

 

そこへ一人のフレンズが、ヒョコッと顔を出してきた。その姿に多くの者が唖然とする。

 

「なっ…!?」

「サーバルちゃん…!」

 

それは紛れもなく、一行と共に旅をしてきたフレンズ――サーバルそのものだった。

 

「どうして…どうしてサーバルちゃんが…?」

「私、知らないから他の子だと思う。多分、私より前にフレンズ化した子なんだよ!」

 

同一種類のフレンズは、同時に二人と存在出来ない。そう教えられていたサーバルは、前世代以前のサーバルキャットだと思った。

話している最中も、映像内のサーバルはミライと会話を続ける。

 

『さっきカラカルがすごいものを見つけたんだ!”山”がとても大きな雲で、すっぽりと隠れてるんだって!其処から白いセルリアンが出てきているみたい!』

『…明らかに何かあるって感じですね。――サンドスター・ロウの噴出を止める為、どの道向かう予定でしたが…。何とかセルリアンの少ないルートを探して、山頂を目指さないと…』

「…何かさっきから、すごく怖い事ばかり話してるわね…」

 

何か薄ら寒いものを感じ、首筋から冷や汗を流すアミメキリン。過去のパークで、末恐ろしい事が起きたのは間違いない。おそらく、これは第3の異変時の記録映像なのだろう。

 

『大丈夫だよ!セルリアンなんて、私たちが全部”パッカーン”ってやっつけちゃうよ!』

『ふふっ、そうですね。全部”パッカーン”と撃破すれば、解決ですものね』

『そうだよ!パッカーンだよ!』

 

自分たちの置かれた状況に憂鬱な気分だったミライは、サーバルから元気を貰う事で表情を緩める。声もある程度明るくなったようだ。

 

「…サーバルちゃん?」

 

ふとかばんは横に立つサーバルを見る。そして彼女の変化に目を瞬かせた。

 

「あれ?あれ…?」

 

サーバルは自分が涙を流している事に気が付いた。視界が歪んだので拭き取ろうとするが、まるでキリがない。

 

「おかしいな…早起きしたからかな…?」

「……」

 

柚崎は自分の涙を拭きながらサーバルとかばんを横目に見る。サーバルの涙は自分と同じ、懐かしいものを感じて流れたもの。そんなふうに思えた。

 

「あれ…?かばんちゃん?君も泣いてるの…?」

「え…?」

 

柚崎に声を掛けられるまで、かばんは泣いている事に気付かなかった。

 

「かばんちゃんも…私やマコトちゃんみたいに、早起きしたの?」

「たしかに今日は早起きはしたけど……でも何だろう?ミライさんやあのサーバルちゃんを見てると……涙が止まらないよ…」

「はは…何でだろうね。私もだよ…」

 

サーバルとかばん、そして柚崎の3人は、泣きたい衝動を抑えられず、涙を流しながら映像を見続けた。やがて映像が終わり、ミライの姿は虚空へと消えた。

呆然と立ち尽くしていた百田は、ハッとなって口を開く。

 

「柚崎。どういう事だ。彼女は一体…?」

「…はい。彼女の名前は『ミライ』。私の…実の従姉です」

 

涙を流したまま、一同に衝撃の事実を伝える柚崎。朝田以外の日本勢は驚きを隠せなかった。まさか地球人全員が夢で見た女性が、共に旅をしてきた仲間の血縁者だったとは…果たして誰が想像できただろうか。

そして気になったのはサーバルとかばんも同様だ。

 

「イトコ…それって何?」

「親の兄弟の子供を指すの。ミライお姉ちゃんは私のお母さんの、お姉さんの娘なんだ」

「家族…って事ですか?」

「そうよ」

 

柚崎は目に残った涙を拭き取り、何度も鼻をすすりながら虚空を見詰める。

 

「…本当に…この島に居たんだね、お姉ちゃん。元気そうで良かった」

「真琴…」

『やっぱり君だったんだネ、マコト』

 

伊藤が傍に寄ろうとした時、突如ラッキービーストが話し始める。彼が初めて柚崎の名前を呼んだ瞬間だった。

 

「ラッキーさん…?」

『僕はミライ――君の従姉から、君についての情報が与えられていたんダ。何時も楽しそうに、君の事を話していたヨ』

「…記録映像から察しはついたけど、君はミライお姉ちゃんと一緒に居たんだね?」

『そうだヨ。現在時刻は西暦205X年――もう30年近く前になるネ』

 

ここで日本勢は、パークと日本の時差が30年以上ある事を知った。同じ地球からとはいえ、必ずしも時期が一致する訳ではないようだ。

柚崎はラッキービーストを抱えると、優しく微笑んだ。

 

「…そっか。君はずっと私を待っていたんだね。ありがとう、ラッキーさん」

 

ロボットにとって30年という時間は余りにも長い。何時壊れてもおかしくない筈だ。それでも今日まで稼働し続けられたのは、最早奇跡だろう。

柚崎はミライの姿を届けてくれたラッキービーストに、お礼を述べた。

 

『気にしないデ。僕はコウのように、君について何かを頼まれた訳じゃないからネ』

「コウさんが…?」

『彼女はミライから、君宛てにメッセージを託されているんダ』

 

そう言って再び映像を再生するラッキービースト。どうやら先ほどの続きらしい。ミライとサーバルが会話をしている。

其処へ空から降りて来たであろう、15歳くらいの美少女。風に揺れるセミロングは白くしなやかで、両側のアホ毛はくるんと上にカーブを描いている。

紛れもなくコウだ。しかし、一部の容姿が異なる事に出会った全員が気付いた。

 

「…天使?」

 

柚崎がポツリと呟く。映像内のコウは、頭ではなく背中から純白の翼を生やしていた。まるで全体的に光っている様に見える。天使と言う表現が、この少女には最も相応しい。

 

「あっ、僕の夢に出てきたコウさんと同じだ!」

(え?何故…?どうして…!?)

 

かばんが声を上げるその後ろで、ルッダは内心穏やかではいられなかった。彼女は見るからに動揺している。

しかし映像は、そんな彼女の心情などお構いなしに流れていく。

 

『ミライ、サーバル。山への侵入口を見つけたわ。麓から山頂へと続く地下トンネルよ。そこならセルリアンは少ないし、あの嵐を避けて通れる。カラカルも既に準備済みよ』

『分かりました。行きましょう、サーバルさん、”アリーシェ”さん!』

『うん!行こう!』

「えっ…”アリーシェ”?」

 

聞き慣れない名前に目を丸くする柚崎。いや、状況から考えてコウを指しているのは間違いない。しかし、ゆきやまちほーで聞いた時は”コウ”と呼ばれていた筈だ。

 

「というより、コウさんのあの姿は何だろう…?まるで天使みたい」

『――彼女はヒトじゃないヨ。そしてこの時は、フレンズでもないんダ。でもヒトと同じで道具を作り、使う事が出来るらしいヨ?』

「ヒトでもフレンズでもない?じゃあコウさんって何の動物――」

 

柚崎が尋ねようとした時、ルッダがラッキービーストに迫った。鬼気迫る彼女に、柚崎は一瞬気圧された。

 

「る、ルッダ…?」

「どうして…どうして”この種族”がパークに居るんだ!ラッキービースト!」

『………』

 

ルッダの質問にラッキービーストは一切答えない。生態系の維持の為、ヒト以外の動物とは会話をしないようにプログラムされている為だ。

勿論、そんな事をルッダが知る筈もなく。

 

「頼む、答えてくれ!何故”光翼人”が…『魔法帝国』の民が居るんだ!!?」

「「「「「!!!!?」」」」」

 

凄まじい衝撃が日本勢を襲う。彼らはコウが何の動物か、遂に知る事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルッダたち有翼人の祖先であり、圧倒的な力で世界を支配した恐怖の国――『魔法帝国』こと『ラヴァーナル帝国』――コウはその国を建国した種族『光翼人』の一人だった。

 




プリンセス「次回、『???』」



『けもフレ2』放送まであと6日。待ち遠しい!

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