プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー

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いわゆる魔改造ぐだ子モノです。
しかも、ゲームと違い成人もしてますしお酒も飲めます。割りと毒舌キャラです。
ビジュアル的にはるろうに剣心の緋村剣心をおっぱいの付いたイケメンにした感じです。顔に傷も負っていますが☓じゃなくて一文字です、はい。


序章
ダイナミック人理修復の始まり


 

 『人理継続保障機関フィニス・カルデア』……そんな組織の名前を耳にした時、私は即座に「あっ、また胡散臭い組織に関わっちまったぞ」という焦りを覚えずにはいられなかった。

 

 ――それは何故かって? ……全てを振り返って語ると疲れるだけじゃ済まされないので割愛するが、私こと、大学を卒業したてのうら若き乙女である藤丸立香のこれまでの人生は悲しいまでに波乱万丈に満ちていた。

 というのもあれだ、別に両親が離婚したとか事故に遭って長らく車椅子生活が続いたり、国民のごく僅かにしか発症しない病気になったりなどしたわけではない。一歩間違えば似たような状況になりかねなかったが、まあそれは奇跡的にも現実に起こり得なかったから良しとする。

 

 さて、私がこれまで何を体験してきたかについてであるが、手っ取り早く説明するならばそれは――『怪奇現象』だ。ケースが多岐にわたるので語りやすい内容のみに限定するが……そうだなぁ、何時頃から巻き込まれるようになったかについてまず答えると、ぶっちゃけ小学生という世間的に見てガキンチョの頃である。

 当時の記憶を思い返すが、あれは途中から巻き込まれた感じが否めなかった。――否、実際にそうだった。まさか偶然遠足に来ていた山で迷子になったクラスメイトを探していたら、羽虫をグロテスクにした上で巨大化したような存在に襲われるなんて思わないだろう。

 あの時は寸前のところで職業様々な大人数名に助けられたが、もし彼らと出会っていなかったら今頃は首のない無残な死体となって発見されていたに違いない。……結局、その後は無事にクラスメイトも生きてる状態で見つかり無事に下山することが出来たが、刑事だという一人に家まで送ってもらった時の言葉が今でも耳に残っている。

 

 

『……いいかい、奴らに君も目をつけられているかもわからない。気をつけなさい』

 

 

 思えばこれは警告だったのだろう、もう二度と平穏な日常を送れると思うなという……実際、その通りになり、私は死と隣り合わせな生活を送らざるを得なくなった。刑事さんが言っていた『奴ら(・・)』に文字通り目をつけられてしまい、その時から戦い続けることを強いられてしまったのだ。

 それからというもの、何処ぞの古びた屋敷では怨霊だの異形と化した館の主に襲われ、ある時はケモミミ幼女を抱えながら教団を名乗る連中や亡者と戦ったり、またある時は観光に訪れた村のヤバイ儀式に介入したせいで住民のほぼ全員と追いかけっこした挙句変な液体で押し流したり、さらには忍者を名乗る集団や巨大生物同士の戦闘に出くわし後始末を押し付けられたりもした。

 そして気がつけば私は、異常事態の収拾をつける為の組織に半ば強引に参加させられ、同じように怪奇現象に巻き込まれた人間のケアや応援に呼ばれるようになり、いつの間にやら『プロサバイバー』だの『困ったときの姐さん』だの『おっぱいの付いたイケメン』『ちくわ大明神』だの良いように言われるようになってしまっていた。おい、最後のは何だ。

 おかげで服を脱ぎ去れば生傷は絶えず、虐待でも受けているのかとたまに誤解される始末だ。一応その度に誤解は解いているが、回数が増えるといい加減面倒臭くなりつつあった。

 

 ――で、結局なんだっけか。ああそうそう、カルデアとかいう組織についてだったか。

 つまるところ、過去の経験則から変な組織集団に良くも悪くも絡まれていただけに警戒心がパないのである。そもそも、何で献血したらアニメ作品のポスターが貰える的なイベントに参加したら、直後に「君には適性がある!」とアロハシャツの外人に勧誘されとるんでしょうか私。つーか、カルデアって人里からものっそい隔絶された雪山にあるのかよ。益々ヤバイし生かして帰すつもりねーなこりゃ。

 とりあえず二つ返事で勧誘を受け入れるわけもいかず、ちょっと考えさせてくれと時間を貰って上司的な立場にいる人に急ぎ確認を取ったが、国連が公認する組織と聞いて思わず愕然とした。もしかすると、またしても世界レベルの何かの陰謀か計画が自分たちの知らぬところで動いているのではないかとそう思ったからだ。

 

 正直、関わるべきか迷いはしたが、私以外に40名以上スカウトされているとの情報が追加で回ってくると動く以外の選択肢はなかった。……隔絶された環境に、適性云々で集められた数十名。こういうケースでは大抵違法な人体実験やらが行われている可能性がある。

 その事を踏まえて、私は最悪施設の破壊も辞さないようフル装備を整えると、日本を出発して問題の大型施設へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、私が警戒していたことは半ば(・・)杞憂に終わった。

 どうやら、施設のトップたる所長が言うには適性者をスカウトした目的は、世界的な危機を解決するためとのことだった。どう危機的かというと何でも、「未来を観測して今後の世界が安泰かどうか確認したら、滅んでんじゃねーか! どういうことやねん!?」――ということらしい。何でだよって思ったのも束の間、原因の一つに観測された異常なエリア『特異点F』が関わっているそうだった。AじゃなくてFなのは冬木市と呼ばれる都市の名前から取っているとのことだ。

 ふーん、なるほどねー……と感心していると、唐突に強烈な眠気が襲ってくる。確か霊子ダイブとやらのせいでどうしても眠くなってしまうのだとか。入館した直後もこれのせいで冷たい床に伏す羽目になっていた。割りと気持ちよかったがな。

 でも他の皆はピンピンしているわけで……気になって隣の席の子に小声で尋ねたところ、私以外の皆は前日には既に入館していたらしい。何だよ私だけハンデありとか許せん。集合日時を意地悪で遅れて教えられた気分である。ぷんぷん。

 不満を顔に出して所長にぶつけていると運が悪いことに目があった。嫌そうな顔をしていることが癪に障ったのか、もしくは所長自身ストレス溜まっているのかは知らないが適当に相手をする。ペラペーラ、ペララっと。

 

 ――その結果、見事に怒りを買ってしまいファーストオーダーとやらから外された。やったぜ(・・・・)

 

 だってねぇ、やろうとしていることは真っ当な事なんだろうけど、物騒なこと考えている気配を持った人間が既に紛れている(・・・・・・・)時点でアウトでしょう。流石に誰かは特定できなかったが、少なくとも誰かに殺意を向けていることを理解するのは容易だった。こんな所にいられるか私は部屋に戻らせてもらう!(フラグ)

 一先ず、何かありそうな雰囲気なので自室で待機することを決め、今日あったばかりなのに何かと世話を焼いてくれている眼鏡っ娘のマシュの案内を受けて部屋の前に立つと、微かだが内部から鼻歌が聞こえてくる。

 部屋を間違えたのかと思ったが、部屋番号は入館証の記載内容と一致していた。つまり、部屋にいるのは……不法侵入者だ。

 そうとなればダイナミックエントリーである。既に運び込まれているであろう荷物には私以外が触れれば危険なものが幾つかあるのだ(何故検査をパスできたのかは疑問だが)。その事で騒ぎになるのを避けるためにも、まずは侵入者の体に覆い被さって組み付きをかける。唸れ私の筋肉。

 

「……へっ?」

 

 呑気にベッドの上で何かを物色していた白衣の男が口をポカンと開けているのを余所に、私は訳あって黒い長手袋で覆っている左腕をナイフのように突き出し相手の喉元に突きつける。

 

「――私の部屋で何をしているの?」

 

「ひぃ!? こ、ここ空き部屋でのはずじゃ……だからサボり部屋に使ってたんだけど……」

 

「サボり? ……失礼だけど、貴方の名前は?」

 

「ぼ、僕はロマニ・アーキマン、ここの医療部門のトップだっ!!」

 

 そう言って、男は首から下げていた身分を示す顔写真入りの証明書を見るように促してくる。……心理学的観点から見てもどうやら嘘はついていないようである。では問題は、彼が何を物色していたかだ。

 拘束を続けたまま周囲を確認すると、書類に紛れて白い何かが付いた皿と……フォークが見つかった。匂いも確かめるが、なるほどサボりに部屋を使用していたというのは本当のようである。てか、ケーキだこれ! 人の部屋で甘いもの食ってんじゃねえ!

 馬乗り状態を解除した私は非礼を働いたことを素直に詫びた。平謝りでないちゃんとした謝罪だ。

 

「……そうか、君が最後の子なんだね。……え、荷物? 床にはなかったからクローゼットかベッドの下じゃないかな?」

 

 ロマニの指摘通りに荷物はすぐに見つかった。特別荒された痕跡もなく、すぐに持ち出すことはできそうだった。持ち出し用のリュックに手早く荷物を移し壁際に置いておく。

 事が本日中に起きるかはさておき、今は追い出された経緯でも説明して暇を潰しつつ、把握しきれていないカルデア内の内部情報を聞き出すとしよう。

 

「――とまあ、そんなわけで」

 

「それは災難というかこちら側のミスだ。一般枠ということで蔑ろにしてしまって申し訳ないね」

 

「いえ、結果的にオーダーから外されてよかったと思います。こっちも万全じゃない状態で参加しても迷惑かけるだけですし」

 

 レイシフトとやらの直後に不意打ちでもされたら咄嗟に反応できないかもしれないからな。意識が覚醒してない中の攻撃はマジ勘弁。

 世間話を交え情報を引き出していると、前所長がなくなったことやマスター適性がない故に現所長が追い詰められていること、それと……直接的な表現ではないがレフ教授に依存している気があることを引き出せた。あっ、これレフ教授が死んだら手が付けられなくなるパターンやね。遠回りだけどカルデア内を混乱させるには十分な手段と言えるだろう。

 ――などと、考えていると早速その本人からロマニ宛に通信が入り、中央管制室でレイシフト実験が開始されることが伝えられた。今医務室にいるんだろうと尋ねられているが、ところがどっこい私の部屋である。こちらに来いと言われてすぐに駆けつけられる距離にはいなかった。

 

「あはははは………」

 

 笑っている場合じゃないだろうに。こら、どうしようって顔をするな。自分でなんとかしろよ。

 というか、レイシフトもうやんのかよ。はえーよ。つくづく私に不親切だなぁもう。……ってあれ、電気が点滅して、消えた……停電?

 

「な、何だっ!?」

 

「これは……」

 

 突然の出来事にお互いに戸惑う中、間髪入れずに轟音が遠くから鳴り響き室内を震えさせた。恐らくこれは――爆発。それも規模の大きな。

 ……問題は何処で爆発したかであるが、そんなものはすぐにわかった。スピーカーからアナウンスが聞こえ、中央管制室――今しがたロマニが向かうように要請された場所が騒ぎの大本であると言ったのだ。

 畜生、陰謀渦巻く何かが起こったのだとしても、早すぎる―――。

 

「……ちっ!」

 

 よもやすぐに使用することになるとは思わなかった荷物一式を抱え、私は部屋を飛び出した。

 

「藤丸君っ!? どこへ――」

 

「……決まってる! 管制室だっ!」

 

 静止を無視して走ると遅れてロマニも後をついてくる。それを横目に私は大きく指笛を吹いた。途端、背後から素早い足音とともに息遣いの荒い灰色の何かが両者の間に入った。

 

「ええっ、犬っ!? ――いや、オオカミッ!? 何で!?」

 

「私のペットです! ……シルバ、誘導お願い!」

 

「ワンッ!」

 

 交渉して入館を認めてもらっていた飼い犬もとい飼い狼(性別:メス)に指示を飛ばし、安全な侵入経路を辿って中央管制室の奥の様子を窺う。生存者は……駄目だ、瓦礫が邪魔な上に皆揃って筒状の装置(コフィン)に入っているせいで生きているか死んでいるかの判断もしにくい。

 

「――自動消火設備はこの部屋にはないの!?」

 

「……あるはずだが作動していない! 爆発で故障したか切られているのかも――とにかく、このままじゃ不味い!」

 

「どうするの!?」

 

「ッ、僕は発電所の様子を見てくる! カルデアの火をここで止めさせる訳にはいかない……君も早く逃げるんだ、でないと隔壁が―――あっ」

 

 振り返れば入ってきたばかりの扉は頑丈にロックされてしまっていた。

 おいおい、言ったそばから閉まってんじゃん。っべーなおい。

 

「ちなみに内側から開く方法は?」

 

「……この状況じゃ無理だよ。一度閉まってしまうと強引に吹き飛ばすぐらいしか方法は……でも、君は」

 

 一般枠。要するにマスターとして適性はあっても魔術に関してはトーシロの役立たずってわけだ。残念だったな。

 

「ここまで、なのか……」

 

 ガクリと膝を折り項垂れるロマニ。そんな彼を見て私は呆れて溜息を付いた。

 ――諦めるの早すぎだろうと。仕方がないのでちょっと本気を出すことにする。

 

「しゃーないけど、いっちょやりますかね」

 

「ふ、藤丸君?」

 

 背負っていたリュックからランドセルに入れたリコーダーのように無理矢理括り付けていた、『キミタケブレード』とカタカナで刺繍された包みを取り外し、残った荷物をロマニへ押し付ける。そうして、包みから中身を露わにした私は棒状の持ち手を掴み……居合いの構えを取った。

 

「いやいや、そんなまさかっ!?」

 

「その、まさかだっ!!」

 

 刹那、構えた獲物には不釣り合いな斬撃という名の衝撃波が放たれる。

 ただの一閃……だったにも関わらずそれは隔壁を溶かすように消し去り、通って来た道を管制室から覗かせた。

 えっーと何だっけこの技、えらく長ったらしい名前だった気がするけど……まあいいや、今日からこの技は隔壁殺しな! ほらロマニ、道は文字通り切り開いたぞ。発電所に行くならさっさと行きなされ。

 

「なんて無茶苦茶な……君は、一体何者なんだい」

 

「そんなことは今は語ってる余裕はない。こっちは生存者がいるか探すから早く火をなんとかして」

 

 預けていた荷物をふんだくるように回収し、私は彼を外に押し出すとさっさと瓦礫を乗り越えて中枢へと向かった。

 途中、装置に入った人間の容態を覗き見るがどいつもこいつも見るからに危篤状態にあり私一人では手の付けようがなかった。医学的知識は一応持ち合わせているが、完全に応急処置でしのげる度合いを超えている。

 カルデア内に医療スタッフが何人いるかは知る由もないが、とても一度に捌ける量ではないだろう。

 

「……くそっ」

 

 爆発の規模からして犯人は最初から適性者全員を殺すつもりだったと仮定。もしくは、特定の誰かを狙うために巻き添えにされたのかもしれないが、そうなると候補に上がるのは所長か教授だ。運良く被害を免れたロマニもターゲットに含まれていた線もある。

 やはり、集められた人間の中にカルデアの活動を快く思わない人間が居たのだろうか。最初に集められた時に特定できていれば……いや、精々気が狂っていると笑われるのがオチだろうな。過ぎたことを後悔しても意味はない。

 

「誰かっ! 生きているなら返事をして!」

 

 生存者に大声で呼びかけるも目立った反応はない。となれば、返事ができる状況下に置かれていない可能性が高いということだ。

 ならば、私の相棒たるシルバのみが頼りだが果たして――ん、遠吠えが聴こえるが、犬ではない甲高い声も混じっている。この声は何処かで………。

 最奥部から響く声に従って何とか呼ばれた場所に辿り着くとそこには、見覚えのある猫のようだけどそうでないような白い生物が一緒にいて、その後ろには見知った誰かが――マシュ・キリエライトが瓦礫の下敷きになって倒れていた。

 

「マシュっ!?」

 

 すぐに駆け寄り、脈を測る。辛うじて脈はあるものの非常に弱々しい……体温も低下しているようだ。出血は……頭部からと、瓦礫に埋もれている下半身から多数。無理に引き摺り出すのは困難だった。これでは応急処置もクソもない。

 

「せ、んっ、ぱ……い?」

 

「……ッ待ってて、すぐに助けるから!」

 

 意識はあっても弱々しく、持って数分かもしれない。早急な集中治療が必要だ。

 けれど、運び出すのは現実的に考えて不可能。そう、現実的(・・・)に考えれば―――。

 

「………」

 

 決断を躊躇している余裕はない。大事なのは助けられるか助けられないかだ。

 実際問題、助けられることには助けられるの(・・・・・・・・・・・・・・・)だが、それによって私は最悪嫌われるかもしれない。それが少し怖かった。

 

「背に腹は代えられない、か……」

 

「わ、たし、のことは、いい、んです――は、やく……にげ、て」

 

「――ッ」

 

 この娘はもう死を悟ってしまっているというのか。

 その若さで、その世界の広さを知らない純粋な瞳で、それを悟るのは―――早すぎる。

 ふざけるな、もっと生き足掻いてみせろ。生きることをまだ、諦めるな。

 

「……マシュ、私がいいって言うまで……目を閉じていなさい」

 

「えっ?」

 

「今、助けてあげるから」

 

 覚悟を決め、己のなかの恐怖を殺し、私は左腕の長手袋を外す。

 一見すると、何の変哲もない普通の腕のようにも見えるがよく目を凝らせば誰でも違和感(・・・)に気づけるだろう。

 ……そうだ、私の腕は厳密に言えば()()()()()()()()。その証拠に、肘の上の辺りで肌の色が異なり境目が出来ていた。まあ、それだけならまだいいが問題はここからである。より違いを際立たせるために私は腕を……変形させた。色は鉛色のようになり指先は触手のように蠢いていた。

 

「フォウッ!?」

 

 ああ、不思議生物のフォウにも見ないように頼んでおくべきだったか。すまんがマシュには教えてくれるなよな。

 腕の形を再構成し、己の身長と同等かそれ以上のサイズに固定する。そして、瓦礫の隙間に手をかけて力一杯に掴むと、指先の肉の焼ける感覚が自身を襲った。……が、そこまで痛くはない。

 

「つくづく私って……いや、これは彼女(・・)の侮辱になってしまうか」

 

 回想に浸ることのないよう首を振り、マシュを救出することだけに意識を傾けると徐々に彼女と瓦礫の間に隙間が開き始める。長くは時間をかけていられない……よって、勢いのままに浮かせてそのまま反対側へと押し倒す。ズゥン……と重々しい音が響いたのを確認した私は、急いで腕を元に戻してマシュに近づいた。濃い血の匂いが鼻の奥を突き刺す。

 

「……思った以上に酷い」

 

 瓦礫で隠れていた部分は完全に潰れていた。この分では骨は何処もかしこも既に役目を果たしていないだろう。加えて、臓器へのダメージも大きいように思える。

 この分では、私の持つ技術では痛みを和らげる程度がいいところだろう。さっさと安全な所に運びたいが担架なしで運ぶのは負担が大きかった。ロマニはまだ戻らない。

 

 そこへ、追い打ちをかけるようにアナウンスが鳴った。

 要約すると、近未来100年の人類は存在せず、何もかもが終わっているとの事だった。であれば、何時の時点で終わりが確定するのか――もしや、今か?

 

 続けて、レイシフト実験について続報が入る。

 該当メンバーが確認できない……当たり前だ、皆瀕死状態なんだぞ。これで確認なんてしやがったら死に体で変な所にワープだぞ。止めを刺すつもりか。

 ああん、確認しましただと? おいおいマジで殺しにかかるつもりか……って、No.48を再登録?

 私を勝手に登録するな、マシュを放って実験に参加させるつもりか。巫山戯んな、ぶち殺すぞ。

 

 こちらの拒絶を無視した身勝手なカウントダウンが開始され、視界が、意識が段々と揺らいでいく。

 

「せ、んぱ……」

 

「――くっ、そおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 しがみ付くようにマシュの差し伸ばした震えている手を強く握った瞬間、私の存在はカルデアから消滅した。

 

 




主人公が最初から人外化している件について(どうしてこうなった

彼女が体験した内容については章を追うごとに解説する予定です。

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