プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー
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少し間を置きましたが更新です。
勤務先の環境に慣れたり、イベント走るのに忙しかったです。
水着勢ですが何とかコンプしました。

特異点ピックアップは第五特異点で見事に爆死です。(アニバーサリー礼装凸ったんで少し許すけどエジソンき過ぎぃ……

そんなわけでどうぞ。


人のドラゴンでステーキが食べたい!

 導かれるままに教会内へと入った私達を待っていたのは、僅かな灯りのみが周囲を照らす無人の空間だった。

 一瞬、避難した住民は何処だという疑問が過ぎったが、フランス兵が尋ねるまでもなく地下の部屋にいると教えてくれると中央横の物置部屋へと入り、カモフラージュが施された下に続く階段を降りる。

 そこでようやく他の人間の気配が感じ取れるようになり安堵すると、近づいてきた兵士の同僚らしき人物に軽く事情を説明しつつ頭を下げて警戒心を解き、そのまま廊下の奥に位置する部屋の前まで一行は何事もなく辿り着いた。

 その流れで、誘導してくれた兵士に神父様とやらに取り次いでもらえるか先に入って確かめてもらう。……そうして、束の間だが交渉が完了し面会が可能になるまで暇になった私達は、とりあえずということで状況の整理を行った。

 

「……にして、どう思うこの状況を」

 

「思っていた以上に特異点が引っ掻き回されてそうだ、っていうのが率直な感想かな……まさかのっけからの敵が開幕神話生物とは思わなんだ」

 

「敵さんもそれだけ必死ってことだろ。けど、彼奴等に加えて他のサーヴァントの連中を相手することになると……ちとやべえかもな」

 

 ただでさえ図体がデカイ上に連中は空中戦も出来るので、複数体に出くわせばそれだけ戦闘の場の面積は取られこちらの動きが制限される事になる。

 場合によっては、数の暴力によって迫られ逃げる隙間もない事態に陥ることもあり得るだろう。そうなれば負傷覚悟でダイナミックにフィリピン爆竹をぶちまけなければならないやもしれない。

 

「警戒すべきはあのデカブツを大量に投入され、儂らが疲弊しているところを畳み掛けられることよな。……早いところ、敵軍の情報が欲しいものよのう」

 

「いつの時代も優先すべきは高度な情報戦か。遅れてきた分後手に回るのは仕方がないことだけど、どう巻き返したものやらね」

 

「此処の神父の方との接触が、その足がかりになればよいのですが――」

 

 マシュの言う通り、今は少しでも劣勢を巻き返すための何かが欲しいところだ。

 些細な事でも良いので今のフランスの内情を聞けるだけ聞き出さないと、何を目指し何と戦えばいいのかも明確に定まらない。

 ……関係ないけど、そういえばアストルフォは何処へ行ったんだろ。戦闘に乱入してきてから姿を見てないけど、エミヤの方にいるのかな。確認してみよう、おーい。

 

『エミヤ、そっちは大丈夫そう?』

 

『……今のところは再襲撃の兆候はなさそうだな。あと、アストルフォだが先程戻ってきてこちらにいる』

 

『ああ、やっぱり。……もう、一体何処行ってたのさ、こんな時に。何か珍しいものでもあったの?』

 

 珍しいものイコール神話生物だったとしたら困り物だが、エミヤがないと断言しているので要らぬ警戒はしないでおく。

 すると、理性蒸発系ボーイの彼は小さく考え込むように唸ると、自分でもよくわかっていないと答えてこちらをズッコケさせつつ気がかりなことを述べた。

 

『んーと、懐かしいような、因縁を感じるような……でも会ったら指差して笑ってしまいそうな、そんな変な気配を感じたんだよ。すぐに消えちゃったけどね』

 

『もしかして知り合いでも召喚されて近くに居たのかな? さっきの今だから自然と関与していたのかと疑わしくはなってしまうけど』

 

『そんな感じの雰囲気は感じなかったけどなー……ホントに様子を見に来ただけーってみたいにボクは思ったよ?』

 

 ……ふーん、やっぱりよくわからないが気にはある程度留めておくことにしようか。もし味方になりそうなら儲けものというぐらいに。

 遅れ気味の点呼もとい安否確認を済ませていると、そこでようやくアポを取ってくれていたフランス兵が部屋の外に出てきた。

 すぐさま面会が可能か確かめたところ、問題ないとのことで私達はぞろぞろと雪崩れ込む勢いで室内に立ち入る。

 ――すると、小さな火の灯りが複数置かれることでまともな光量を獲得している書斎めいた部屋の中に、初老のそこそこ鍛えていそうな細身の神父が机の上で手を組んで待っていた。

 イメージ的には秘密組織の司令……とはいかないものの参謀的立場にいるような人物、という印象を何となくだが抱く。どう話しかけたら良いのやらと迷っていると、先手を取られて神父側から淡々とした言葉がこちらに飛んできた。

 

「……待っていたぞ、藤丸立香。いや、今は人類最後の魔術師、カルデアのマスターだったか?」

 

「なっ……私を知っている、だって……!?」

 

「それだけじゃありません! 何処から来たのかも話していませんのに、カルデアから来たことが既に知られています!」

 

 身構えていたとはいえ思わぬ事態に一気に警戒心が高まり、自分達は選択をファンブって序盤から地雷を踏んだのかと焦り額に汗を垂らす。同時に、ハンドサインでノッブに出口の確保を依頼しゆっくりと移動してもらうと。ドアをぶち破ってでも逃げる準備を突貫で整える。

 対し、神父はというと何を考えているかもわからない表情のまま瞳を一旦閉じて息をつき、そう露骨に距離を置かんでもいいと言って積み重なっている紙の束や小物の影から何かを掴むと、私に見えるようにコトリと前方に場所を移した。

 

「私が何者か気になっていることだろうが……これで納得してくれるかね?」

 

「それは―――」

 

 視界に入るように置かれたそれは、百年戦争が起きたこの時代に不釣合いな形状と技術、意匠が施された銃のようなもので……微妙にデザインは異なりカスタマイズがなされているも何処か見覚えがある代物だった。

 ――否、見覚えがあるというレベルではない。外見はどうあれ、その大元となったアイテムの存在を自分は間違いなく知っていた。忘れるはずもなかった。

 であるからして、マイノグーラからの情報と紡ぎ合わせると、神父のその正体を言い当ててみせる。

 

「まさか、イス人なのか?」

 

「ご名答。……直接の面識はないが、君の噂はかねがね聞いているよ」

 

「――へえ、そいつは結構なことだね。ちなみに、噂ってのは誰経由で入ってきたのかな?」

 

 イス人だから味方と判断するのも早計が故、返答に困るであろう難しい問いを試しに投げかける。……これで、曖昧に濁すのであれば信頼度はマイナスに少々傾くがどう返してくるか。下手に考え込まず、素直に答えてくれればいいのよ?

 

「ふむ、それならこう答えよう。日本科学技術大学の理工学部の『教授』と、私が未来のこの教会で身体を借りていた神父の下で見習いシスターをしていた少女から君の活躍を聞いた」

 

 理工学部の『教授』に、フランスのシスターの少女……だって?

 ……うぉーい、どストレートに知り合いだとわかるし……噂じゃなくてちゃんと口伝えに聞いてんじゃねえか!!! 特に『教授』はある意味アンタのお仲間なんですがね!! 頭脳派じゃなくて肉体派だけど!!

 信頼できるような証拠を示せとは言ったけど直球過ぎてなんだか引いてしまうわ。いや、自分から話し振っといて何様のつもりだって話だが、正直もうちょいぼかすかと思っていました。イス人同士の飲み会の席で聞いたとかその程度にな!

 

「つうか、よりにもよってレティシアがシスターやってる先の神父かよアンタ」

 

「ああ。驚いたかね? 彼女は喜々として君に旅行先で助けられたことを語ってくれたぞ」

 

 レティシアというのは聞いての通り、私と面識のあるフランス人のシスターの名だ。

 彼女との出会いは確か彼女が、日本への観光で島原を訪れていた時だったか。地の利がわからず迷っているところを、別件の用事を終えて彷徨いていた私が案内してあげたのはよく覚えている。

 それから例の如くまた妙なトラブルに巻き込まれたのはお約束だが、いつもと違ってひたすら逃亡劇を繰り広げていただけだった気がした。

 後からわかったことだが、どうも追ってきた連中は彼女が偶然拾った某一族の家紋入りのアイテムを狙っていたようである。……勿論、渡すことなんかせず然るべきところに届けてトンズラこいたけどね。

 

「……彼女は元気かと聞きたいところだけどまあ、今の状況じゃわかりきったことか」

 

「聞くのも野暮な話じゃな。――それで、此奴は味方ということでいいのか、立香よ?」

 

「それこそ野暮な話だと言いたいげな目線を向けてきてるし、害はないということで味方と判断してもいいんじゃないかな。……但し、そうであるならそれで何かもたらしてくれないと困るけど」

 

 チラチラと視線を投げ返す私は、時は一刻を争うとして神父に情報提供を要求した。……出会ってすぐ「待っていた」と言ったからにはさぞかし有力な情報を抱えていることだろう。でなければここに来た意味がなく時間をロスしたことになる。

 

「元よりそのつもりだとも。……ひとまず長話になることは免れんのでな、腰掛けるといい」

 

「それではお言葉に甘えて……」

 

 マシュが率先してその辺にあった椅子を人数分調達し、一同はやっと落ち着くことが出来る機会を得る。約2名ほどそうじゃないが後できちんと休む時間は作ってあげよう。

 ということで、今後の行動方針を示すための生存戦略ぅ、始まりますよっと。んでもって、今ならカルデアに繋いでも問題なさそうなので回線を開き会話に参加してもらう。

 

「それで、何が聞きたいのかね? 言っておくが提供できる情報にも限度があるのでな」

 

「……収集がまともに出来る程の状況ではないということか?」

 

「そうだな。要請に応じてこの地に来てみたはいいが、時代がこうも違うと集めるに集めれん。加えて、情報を得るがために死と隣り合わせになりながら人から人へと乗り移っていては私の精神が持たんよ」

 

「そうかい……なら、その上での質問だ。――この特異点の発生の原因は、黒幕は一体誰だかわかるか?」

 

 単刀直入にズバリと私は本題に切り込む。これがわからないとなればそれを探るまでの労力が必要となるが、そのせいで特異点修正のタイムリミットをオーバーしちゃいましたーなんて事になったら本当にどうしようもない。

 ぶっちゃけ、楽できるところは楽したいというのが心からの本音だ。何事も効率よく進めなきゃ疲れるに疲れるだけになりストレスが溜まるだけになる。それに誰だって、常日頃から激しい勢力争いの図に巻き込まれるロボモノ主人公の終盤の形相みたいにはなりたくないでしょ。

 

「ふむ、黒幕か……きちんとした説明を先にしたいところだがご希望の通り、結論の方から述べよう。この異常なフランスの状況を作り出しているのは―――昨日、処刑されたばかりのジャンヌ・ダルク……その人だ」

 

「なっ……」

 

『ちょ、ちょっと待ちなさいよ。処刑されたばかりってことは死んだのを誰もが見届けているってことよね? なのにその言い方だと……』

 

「まるで蘇ったかのような感じだな。処刑方法は火炙りだった筈だから不死鳥の如く復活でも遂げたってことかね?」

 

 んなわけないことはわかっている。でも、聖杯なんて存在を知らなければ大抵はそのように勘違いしてしまうことだろう。この時代ならキリスト教の影響が強いがために、主の加護を受けたということで片付けられてしまいそうな気もする。逆に言えば―――

 

『聖杯か……聖杯によって処刑されたジャンヌ・ダルクは蘇らされた、もしくは事前に不死状態になっていたという事になるだろうね』

 

「……概ね正解だ。しかし、そのジャンヌ・ダルクが蘇った直後に行った行動は一つ。処刑した恨みを晴らさんとばかりにシャルル7世とピエール・コーションを殺害したそうだ」

 

「成程、そうなれば人理が揺らぐのも当然の帰結か。……でも、それだけじゃ済まなかったんだろう?」

 

 二人を始末したところで収まらなかった結果がこの村が襲われる要因になっていると考えると筋が通る。

 神父はその予想を事実だと肯定し、現にこの村以外も壊滅的被害を受けていて窮地に何処も陥っていると語った。

 

「蘇った彼女は竜の魔女を自称し、その名の通りに竜種を従え各地を襲撃している。その中に君達が撃退した落し子達も含まれているのは語るまでもないがな」

 

「竜種ってのは所謂ドラゴンって奴か? あの火を噴いたりするやつ?」

 

「……そうだ。よって、制空権は彼女によって既に掌握されていると言っても過言ではない」

 

 この時代の装備で対空戦を挑もうなど自殺行為も甚だしいことだ。……あーもう、益々私らが何とかしないといけない羽目になろうとしているな。

 

「そこにさらにサーヴァントもいるんだろう。そいつ等に関する情報はねぇのか?」

 

「素性や正体までは特定できんよ、面と向かって相対したわけではないからな。だが、少なくとも目撃情報では少なくとも4体は配下にいるとして確認されている。出てこないだけでそれ以上いる可能性は十分にありえるがな」

 

「――という事はエミヤが言ってた通り、一勢力にサーヴァントが固まっているわけになるか。そうなると、相対する勢力が生まれても何ら不思議ではないらしいけどそっちはどうなんだ?」

 

「それは私も初耳だ。……が、まとまった勢力ではなく個別にであるのなら召喚されている節がある。何でも、竜種を撃退する力を有した騎士が2名ほどいると目撃情報がある」

 

『竜種を撃退……そうか竜殺しか! ジャンヌ・ダルクが竜を従えている事に対するカウンターとして多分召喚されたんだね!』

 

 その話が本当なら連中も早めに始末しようと動くだろう。もしかすると、今この瞬間にもということもあるかもしれない。

 ……完全に出遅れているな。遅れてるからこそ特異点は発生したのだということは重々理解しているが、こうも後手に回らされていては自然と焦るというものだ。

 

「カウンターで呼ばれたサーヴァントは、群れてないのなら必然的に勧誘してこちらに引き込むとしてだ……問題はまだあるんだろう?」

 

「ああ、残念な事にな。実は先にこの事を話すべきだったのだが最初から混乱させるのも悪いと思ったのでな」

 

 意味深な素振りを見せる神父に怪訝な目を向けると、彼はこちらの度肝を抜く様なことを平然と言ってのける。

 

 

 

「ジャンヌ・ダルクだが蘇り暴虐を行っている方とは別に、兵士を庇い守ったというジャンヌ(・・・・・・・・・・・・・・)がもう一人居るとの証言がある」

 

「……え?」

 

 

 

 ――つまり何だ、この時代には死んだはずのジャンヌが善と悪に分かれるように二人も存在しているという事になるのか。何それ怖い。

 今のタイミングで話してもかなり衝撃的だが、冒頭で話していたらもっと頭の上にクエッションマークを浮かべていたことだろうと思う。

 

「英霊としてのジャンヌもまたカウンターとして呼ばれている、ってことでいいのか」

 

「狙われるとしたら最優先で狙われるだろうなー……」

 

「そもそも、もう交戦しとったとしたら襲撃はそのジャンヌという奴を炙り出すもしくは誘い出す意味もあるやもしれん」

 

 そこの詳しい時系列やタイミングに関しては直接本人に聞かなければ判明しないだろう。

 ……話をまとめると、カウンター召喚されたサーヴァントを探して三千里しながら、敵側のジャンヌとその手下達を倒して聖杯というお宝をGETしてくればいいのね。

 何だか王道RPGみたいな展開だが、シンプルでわかりやすければその方がやりやすいというものだ。

 

「気をつけたいのは合流前に敵のジャンヌ達に出くわすことと、それから――」

 

『はぐれだと思っていたサーヴァントが敵の手先だった、なんて事だね。区別についてはカルデアの解析技術を持っても難しい。精々わかってそのサーヴァントの属性ぐらいだが、それだけで敵味方を分けるのは止めておいたほうがいい』

 

 史実や言い伝えでどう語られていようが丸々参考にせず、直接会って己の目で本質を見極めろって事か。こりゃ自分の力量も同時に試されているようで難題だな。しくじったら殺されかねない。

 

「ま、お主なら大丈夫じゃろ! 謙遜せずはっきりと物申すタイプじゃから腹に一物抱えている奴よりよく思われるじゃろうな!」

 

「なーに、やり取りでミスったとしてもだオレらがフォローしてやるから安心しな。だろ、盾の嬢ちゃん?」

 

「は、はい、精一杯カバーさせていただきますので、先輩はどんと構えていてくださいっ!」

 

「お、おう……」

 

 青春マンガにありがちな空気になり、場も暖められたわけであるがこれからが大変だ。

 大雑把な方針は出来上がっても次に何処へ向かえばいいのかそれが定まらない。ジャンヌ探すにしたって手当り次第探していたら時間の浪費だ。何か手がかりはないのやら。

 

「ならば、ヴォークルールへ行くといい。彼処であれば彼女が向かう理由が少なからずある」

 

「ジャン・ド・メスとベルトラン・ド・プーランジか……この時期に存命か否かは知らないが一応目指す理由にはなるか」

 

「……博識だな」

 

「映画や文献で紹介されていた程度にしか知識にないよ。……今日はもう日も暮れているし、一旦休んで明朝に出発するということでいいか?」

 

 反対するものはおらず全員一致で休息を取ることに専念することが決まると、神父に空き部屋を用意してもらい外に出て移動をする。

 タイミングもいいのでエミヤ達に戻ってきてもらい、目的地が決まったことを共有した私は一日の記録をレポートに纏め上げ早めに床へとついた。無論、有事に備えて感知用の仕掛けは忘れぬよう教会の内外に施しておく。

 

 ――その甲斐あってか再び目を覚ますまでの間に被害を受けることはなく、気分が悪いのを押し殺していた体も快調に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、太陽の日差しが出始めた頃、簡単に手持ちの食料で朝食を済ませた私はイス人がインストールされた神父に別れを告げ、ドンレミの村を速やかに後にすることにして位置的にパリがある方面へ向けて早足で歩を進めていた。

 また、当初の予定通りに今度こそ班分けをしてエミヤとシルバに別ルートから同じ目的地を目指してもらうと途中に戦いの爪痕が幾つも目に映り、つい最近の間にこの地でも戦いがあったことが窺い知れた。微かに漂う血の生臭い匂いが緊張感を無駄に煽る。

 

「……文字通りの壊滅状態みたいで幸先が思いやられるなぁ」

 

『しっかりしなさいよ、貴女の調子次第で戦局は左右されてしまうんだから』

 

 へいへーい、わかってますよーっと曖昧な返事をして一度通信を切る。

 ……って、飯食ったばかりなのにもう腹の虫が鳴いてるよ。エミヤの反対を押し切って食べやすいブロック食品で済ませたけど、やっぱあの程度じゃ体は物足りんかったか。

 

「あー、さっさと特異点修復して焼肉食べたい。ていうか今食べたい。ドラゴンの肉って美味いのかなー」

 

「さ、さあどうなんでしょうか。皆さんは食べたことは……」

 

「ねえな」「ないよー!」「儂も食べてみたい!」

 

 揃いも揃って未経験で余計に期待が高まる。私、某ファンタジー小説で傷癒やすのに使われたぐらいにしか知識ないのよね。ほんまマンガ肉とかってどんな味するのか気になって仕方がないよ。

 

『というわけで、機会があったら調理のほどよろしくお願いしますわ』

 

『何だ唐突に!? 私だって食べたこともなければ捌いたこともないぞ!?』

 

『そこはフィーリングで勝負っすよ。美味かったらカルデアの貴重な食料にもなるし、レパートリーも増える』

 

『……言い出しっぺなのだから手伝ってはもらうぞ?』

 

『任せろい、そのぐらいお安い御用さ』

 

 何せ私はヌシと呼ばれた大魚を釣ったと同時に三枚卸しにしちまう女なんだぜ、と女子力でなく野武士力をアピールしていく。

 何故にそんなことをしているんだという声が聞こえるが、そりゃ引き上げた途端に鋭利な角みたいなのが刺さらんと迫ってきたらカウンターかましたくなるでしょうが。……あ、別に釣ったときに特に事件に巻き込まれたりはしてないから完全に趣味を満喫しただけだよ。

 

「釣りはいいよなぁ、久しぶりにやりてぇもんだ」

 

「やったことあんの兄貴」

 

「……あー、あるみてえだな。ぼんやりとだが魚屋でバイトしてたような記憶もあんな」

 

「こわっ」

 

 どんな過程を辿ればそんな経験をするに至るのか小一時間問い詰めたいところである。――えっ、エミヤもフィィィィイッシュ!って連呼して釣り上げてた? ……あんたら何してんのホンマ。

 平行世界の聖杯戦争の平和なカオスっぷりに、どうしたらそれが酷くなってさらに全世界規模の歴史さえも左右する事態になるのと白目をひん剥く。

 騒動の中心にいる奴が巫山戯ているかいないかで聖杯戦争の趣旨が決まるのなら、全ての黒幕は完全シリアス路線を突っ走ってやがるな。だったら、それに付き合いつつも時折巫山戯させてもらおう。ギャグ補正で差をつけるんだ(暴論)!

 

「――儂知っとる、ギャグ漫画じゃと話の区切れ目に急所狙われても、次の話では何か軌道ズレてて割りかし無事だったりするアレ!」

 

「意外と凄いんだよねあの補正……マジレスすると、要するに自分のペースに引き込んだ者勝ちっていうのが結局のところ戦いの真理なわけよ」

 

「それは言えてるな」

 

 自分の姿勢を崩さないってことは相手の物言いや行動に圧倒されないってことだからね。マシュも我を強く持ってどんと身構えていこうな。ガッツがあるのは兄貴お墨付きだし。

 

「はいっ!」

 

「良い返事だ。その調子その調子」

 

 ……さて、朝のジョギングのノリで駆け抜けてはみたが、もうちょい頑張ればそろそろ見えてきそうな感じだろうか。

 砦が目印になるとか出発前に言われたような気がしたが、襲撃をもう受けていて『砦だった何か』になっていたとしたらどうしましょうかね。

 まず野宿は確定するとして、身を隠せる場所を探さないとな……例えば森とか。幸い、遠目からでも結構生い茂っていて隠れやすそうなポイントは見つかったけども、敵のテリトリーだったりする危険性も考慮にいれないとアカンな。やることなすこといちいち頭働かせてやんないといけないのマジしんどいっすわー。

 

「……ああ、そうそう。言い忘れてたけどさ、万が一の時の逃走手段にフォードも持ってきてあるけど、それも駄目なら最悪敵の制空権であろうと空を突っ切るから覚悟しておいてね」

 

「えっ、空ですか……? まさかアストルフォさんのヒポグリフ……」

 

「いやいや、流石に全員は乗せられないよ~。命綱垂らしてならギリギリかもだけどバビュっと飛べなくなっちゃうよ」

 

 そんなことは承知済みだ。だから、移動に用いるのはサイズ的にも無理があるアストルフォのヒポグリフではない。

 暴れ馬のような奴で見た目怖いかもだが移動手段としてもってこいのを実は用意しているのさ。シャンタク鳥って言うんですけどね。

 

「例の如く神話生物だったりする」

 

「デスヨネー……じゃが、呼ぶからにはきちんと飼い慣らしてはおるんじゃろうな?」

 

「そりゃもう当たり前ですよ。ビジュアル映えこそしない奴だが知能は高いしこちらの言うことは大体理解してくれる。……その気になれば、宇宙空間にだって行ける凄い奴だよ」

 

「――宇宙ゥ!?」

 

 まあ何の備えもなしに行ったら到達した時点で私ら即死するのは言わずもがなだがな。いや、その前に酸欠になってくたばる未来しか予想できないわ。……ワープで行けば問題ない? 問題大ありだわ。

 

「じゃあ、月にも行けるの?」

 

「色んな障害をブレイク・スルーできる備えさえしていれば行けるんじゃないかな……てか、アストルフォ――君って月まで旅行しに行ったんだっけか」

 

「うん、そうだよー♪」

 

 ヒポグリフも大概やべえな。あと、宇宙服もない時代に生身で月に行こうとするとか怖いよ。魔術的な処理を施して行ったのであれば、それこそ魔術ってそんなことも出来るのかって唖然となるわ。

 そう言っている私も外から地球が一望できる謎空間……月らしきところに拉致られたことあるんですけどね。あの時は、わーい宇宙だーとは素直に喜んでいられなかったよ。ムーンビースト共大量におったしな。んで、脱出できたと思ったら今度は影の国ですしおすし。

 

「他の巻き込まれた連中は元の世界にそんな日も経たないうちに帰れたのに、私だけ月単位ですよ。酷くないですか」

 

「……ひでえなおい」

 

「おかげで帰ってきたら帰ってきたで家族にも知り合いにも上手い言い訳せなあかんかったし、時期が時期で補習に参加させられるでもうてんやわんやだったよ」

 

 あの頃ほど得たものと引き換えに失ったものというか後回しにされたものが多かった時はないと、開いていない通信の彼方にいる師匠へと恨みを募らせる。

 稽古つけてくれたことには感謝はしてるけど、修行と称して従者紛いのことをさせるわ、疲れ果てた寝込みを度々襲ってきたのは万が一記憶喪失になろうとも絶対に忘れない。あとケルトのタイツみたいな戦闘服をお土産に持たせてくれたけど、一体何処で使えば良いねん……ははーん、人理が焼却されてる今ってか。やかましいわ!

 

「着るのは止めとけ、師匠が伝染るぞ」

 

「――ほう、言ったな。戻り次第、儂の部屋に来い。みっちり扱いてやるぞ、セタンタ(声真似)」

 

「……本人かと一瞬ビビったから止めてくんねえかな!?」

 

「是非もないよネ!」

 

「くっそ似とるなお主!?」

 

 宴会芸御用達の声真似を披露したところで、タイミングを狙い澄ましたかのように通信が本当に入る。やべえ、本人ご登場か……と身構えていると普通にロマニがモニターに投影された。

 鬼気迫る表情からして他愛のない会話に混じりに来たわけではなさそうである。だとすると―――

 

「何かあった?」

 

『指示を受けたポイントを目指している途中で悪いけど、悪い知らせだ。ヴォークルール周辺をモニタリング中に魔力反応が複数現れた』

 

「類似パターンと数は!?」

 

『提供された神話生物のデータとは異なるパターンだ。数は最低でも5体……動きの速さからして恐らく噂の―――』

 

「……ドラゴンの群れか!」

 

 直ちにエミヤとも連絡を取り、情報にズレがないかを確かめる。

 ……が、報告内容に寸分の狂いはなく、目指していた砦は半壊している上に今度こそ陥落しそうになっていることが明らかとなった。

 話を聞きながら高速移動をしていると視線の先に黒煙が噴き出しているのが確認でき、視認した直後に大爆発を引き起こして砦の壁の中央に修復が不可能なレベルの大穴を開く。

 その衝撃に慌てふためき怯える兵士の姿があちこちで動き回るのがこちらからでも見て取れる。中には瓦礫に埋もれた者もいるようであった。

 

「――周辺にサーヴァントの反応は?」

 

『現状は確認できない! そっちからはどうだいマシュ?』

 

「……皆さん以外の反応は感じ取れません。なので、少なくとも目指した先で鉢合わせになる可能性はないかと!」

 

 だったら上等、心置き無くドラゴン解体祭り&救助活動だ。人理修復戦隊ゴーカルデアス、出動!! 武装の携帯を許可するッ!

 

「蒸着ッ!」

 

「……それは違うと思うんじゃが!? ともあれ、エンチャントファイアされとるのを黙って見過ごすわけにはいかぬ、者共よ突撃じゃあ!!!」

 

 ノッブの号令を受けて被害を受けている現場へ急行をする。

 そして、敵だと間違われるよりも先にマシュの手を借りて人間砲弾のように跳躍を行い、キミタケブレードを片手に翼を広げてバッサバッサと飛行を続けるドラゴンの一体の前に飛び出る。

 互いに姿が目に入り、脅威だという認識が取り交わされるとドラゴンは今にも火炎を噴き出しそうな体勢となり胸いっぱいに息を吸い込む。……だが遅い、そちらが攻撃を決意した瞬間にはもうこちらの先制攻撃の準備は終わっているのだ。

 私は心の中で詠唱を完了させていた呪文を発動させ、文字通りに息の根を止めに掛かった。

 

 

「――深淵の息。さあ、水のない此処で溺れ死になさい」

 

「■■■■■■■■■――!!???」

 

 

 声にならない叫びとは程遠いが、ドラゴンの気持ち的にはそう表現するのが相応しい断末魔が耳を劈く。

 ……無理もない、何せ今ドラゴンの肺の中は溜め込んだ息以外に海水が大量に混入し、人で言うむせた状態の最上級に悩まされているのだから。

 混乱し吐きそうに叫ぶ以外に行動など取れるはずもなく、次第にドラゴンは翼をはためかせるのをやめて弱々しく地上へと墜ちていく。

 そこに畳み掛けるべく背に飛び乗ると、私は刀を鞘へと一度戻し……回転を付けて横一文字に空間を薙いだ。首は刎ね飛ばされ、残された胴体からは噴水のように海水が混入した血が噴き出す。

 被らないように距離を取った後に近づいてみたが動き出したり再生をする様子はなく、目論見通り即死したようだった。

 

「ほい、これでお肉確保っと」

 

「水の無いところでこの程の水を……信じられん。ならば儂はその逆を行くッ!!」

 

「その構えは――」

 

 種子島を某機動戦士の兵器みたく器用に操っていた炎上系女子は、あろうことか得物を手放して左右の手を何かを掴むかの状態で手首の辺りで重ね合わせる。

 待て待て、そいつは著作権的に不味い……というかなんで知ってるんだ!?

 

 

 

「……今必殺の、ノーブーナーガー、波ッッッ!!!」

 

 

 

 技名とともに彼女の手からは同じ形をした炎の塊が飛び出し、元々弱らせていたらしき一体に向けて進んでいく。

 対象は回避する余裕が無いほど追い詰められ疲弊していたのか大した抵抗もなく直撃を喰らうと、織田家の光る家紋を浮かび上がらせて爆発四散した。

 

「本能寺ィ―――エンドぉ!!」

 

「……本能寺された側が相手を本能寺していくとか新しいな」

 

「死に芸は活かしてなんぼじゃからな!」

 

 死因が弱点になるとか前情報で聞いていたけれど、稀に宝具として昇華することもあり得るのかー。勉強になるなぁ。

 などと適当に関心をしていたのも束の間、残りの個体もキレイにたいらげられて戦利品という名の食料として回収される事となった。座標を通達してクーラーボックスにぶち込んでっと。

 生き残った兵士に何やってんの、そもそもあんたらなんなのと怪訝そうな目で見られるも、通りすがりの武芸者の自警団もとい傭兵ですと受け流しさっさと救助活動に手を貸してあげた。

 ……そのついでに聞き込みも欠かさず行ったところ神父からのタレコミ内容と合致し、追加で蘇ったとされる悪のジャンヌの容姿に関する情報が手に入った。

 

「顔や体格は生前と変わらないが、肌の色は死体見たく白く装いは全身真っ黒と来たか……むむむ」

 

「……既視感のような何かを感じますね」

 

「そうなの?」

 

 上手く説明できないが似たようなものを何処かで見た覚えがあるし、それに関する話も聞いた記憶があるような気がした。ええと、誰から聞いたんだっけ……。

 すぐには思い出すことが出来そうになかったので、次にエミヤ達と合流するまでにどうにかしようと心に決めた私は一先ず目先の問題をどうにかすることにした。

 ――そうです、フラグ回収乙をしてしまった寝泊まりの問題ですよ。多少の被害程度だったら宿を提供してもらえたかもしれないのに、被害をリアルタイムで受けていたとなれば厄介になるのは失礼というより無理な話だ。

 そんなわけで皆さん、野宿確定です。お疲れ様でした。

 

「「えー」」

 

「辛いのは一緒やで……この鬱憤は飲んで食べて忘れよう」

 

「肉も手に入ったことだしな、パーッとやるか……」

 

「そう、ですね……」

 

 そうと決まればシェフを呼ばねば。――おーい、エミヤさんや。戦いには今回加わらずにいたようだけど大丈夫かー?

 てっきり援護射撃ぐらい戦闘中に飛んで来るかと思ったけど、一切来なかったので不思議に思っていたが今回はジャンヌ達の介入を警戒して傍観を貫いたのだろうか。文句は別にないけれどもね。

 ……がしかし、返ってきたのは予想外の内容であり、事態を急激に加速させる理由の一端となって私達の前に現れることとなった。

 

 

 ――そちらの戦闘に介入しようとしたジャンヌ・ダルクを拘束した。すぐにこちらへ来てくれ。

 

 

 現れたのはどちらの方のジャンヌなのか……期待と不安が絡み合うように交錯した気持ちが私達の心を埋め尽くした。




神父がやべーやつと警戒した人すみません、その人ただの情報提供者です。そしてさり気なくアポクリファでその胸で聖女は無理でしょな人に憑依されている子も交流(直流だ!)があったことが暴露。

大学教授はどんと来いのその人だったりするかも。
ただし、肉体を完全に乗っ取られてるわけではなく共存している状態だったりします(どうでもいい

その相棒の人?古武術使える探偵に雇われつつグルメ巡りながら怪事件追ってるってよ。運命に逆らえってなぁ!


……はい、おふざけが過ぎましたね。
そんなわけで次回はジャンヌと合流してステーキ試食会です。つまり死にます。(死なねえよ)

次回もお楽しみに。







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