プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー

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2週間ぶりの更新です。
イベントに残業と全然手を付ける暇がなくて少しずつしか書き溜めることが来ませんでした。

あと、英霊剣豪ですが実装からすぐさまプレイしクリアしました。
熱い展開で大変よろしかったです。
インフェルノさん欲しさに回したら彼女来たけど、武蔵ちゃん2人も来て驚きました。正月の爆死は何だったのか(

あと、キャメロット舞台も見に行きましたが鑑賞後は直ちにベディに聖杯捧げてました。尊すぎるでしょ


友情ブレイクバースト

 現状のままでは倒しようがない刺客の正体が発覚し、私達一行はより一層竜殺しを求めて活動をしなければいけなくなった。

 つーか、何だよファヴニールって……反則もいいところだろ。こんな事になるなら現代の竜殺しにでもなっておけばよかったぜ。……え、そういう問題じゃないって?

 

「竜殺しがこの特異点に二人いることはわかっているけれど、かなり限定して探さないといけなくなったな」

 

「つまり、討ち倒した人物であるジークフリートに絞って探さねばならないわけか……」

 

「もし最初から召喚されてなかったとしたら厄介じゃぞ。別の竜殺しに代役を頼めるかも不安じゃ」

 

「エミヤさんの宝具で代用することは……?」

 

「理論上は可能だがランクが落ちるのは避けられない。元より連発が可能な宝具のようだがそれ以上に放つ必要が出てくることだろう」

 

 効率的ではないし、エミヤが後方支援を担うという方針が崩壊することに繋がる。

 であるからして、やはり血眼になってプロであるジークフリートを探す必要がある。だが、手がかりがないことには迂闊に動きようがないし、実戦投入が間近となれば長距離の移動は危ういと言えた。特にオルレアン方面へ向かうのは危険が過ぎる。

 

「いえ、手がかりならあるわよ」

 

『何だって、それは本当かい!?』

 

「ええ、伊達に狂化に抗っていたわけではないわ。私はあの女の影に隠れて竜殺しと思われるセイバーを匿ったの」

 

「――何処に!?」

 

 問題はそこだ。近場でなければこちらは大胆に行動することを迫られる。慎重に今は事を進めたいのでそれだけは避けたいところだ。

 一抹の不安を余所に、マルタは投影された地図を眺めると最後に竜殺しと会ったという場所を指し示した。

 

「リヨンか……」

 

「街の状態としてはどうなのですか?」

 

「何回か襲撃して放置の状態ね多分。拠点化は別にしていないはずだから移動していなければ身を隠すには――」

 

「逆にもってこいって訳か」

 

 考えたなと感心しつつ私は、匿ったという具体的な場所の特徴について聞き出し、捜索に掛ける時間を短縮しようと試みる。

 すると、領地内に建てられた城に未だ居る可能性が高いとの証言が取れ、探す苦労が軽減される運びとなった。いちいち聞き出さずとも案内を任せればいいとも考えはしたが、出来れば向こう側にマルタが寝返ったことを悟られたくはない。

 

「でも会えたからといって無理に戦わせるような真似はしないであげて。彼は野良サーヴァントであるが故にまだ消耗した状態にある」

 

「成程……であれば、その場でファヴニールの襲撃を受けたとして撃破は難しく、良くて撃退がいいところということだな」

 

「ジークフリートだったならの話だがな」

 

『しかし、竜殺しのセイバー。この局面においては失っては困る存在だ。藤丸君、くれぐれも厳重に保護を頼むよ』

 

 そうと決まれば行動あるのみである。

 予定であれば明け方を待ってから行動を起こすつもりでいたが、マルタがこちらに派遣され結果が出るまでの時間とそれに伴う追手の二次派遣がこちらへ到達する時間を考慮に入れれば話は変わるというものだ。

 恐らく、こちらがリヨンへ到達したかしないかのタイミングでかち合う可能性が高いため、回避するには今のタイミングでのリヨン到着が望ましいと言えた。捜索に掛ける時間もただ削るのではなく増やすに越したことはない。

 

「じゃあ、休憩は一旦お開きってことで。異論はない?」

 

「ええ」

 

「ああ、いいぜ」

 

 移動は……そうだな。念のため先行して様子見を行う班と連絡を受けて進む班に分けようか。

 いつも通りエミヤに遠くからの確認は任せるとして、すぐにUターンできるように機動力を与えたいところだな。

 

「――なら、ボクが一緒に大丈夫か見てくるね!」

 

 アストルフォがちょうど良く名乗り上げ、二人は早々に召喚されたピポグリフに飛び乗って変わらず星が輝く夜空に向かって駆けていった。

 んじゃまあ、私達は野宿セットを片付けて夜中のドライブに洒落込む準備を整えようか。火の始末は特に入念にっと……。

 

「これ以上の大所帯になることが想定されると、移動手段についても要検討ですね……」

 

「なーに、その時は私がシャンタク丸を呼び出すまでよ。4人ぐらいなら余裕で乗せられる」

 

「なお、コイツが乗らないともれなくアザトースの玉座へご招待な件について」

 

「……もし行っちまったらどうなんだ?」

 

「わからん」

 

「えっ?」

 

 私も行ったことがないからな、辿り着いてしまったらどうなるかなんて想像でしか語ることが出来ない。

 諸説によれば、この世の全ての現象や物事の「起源」とされているぐらいに危険かつヤバイ存在だ。真偽はどうであれ、接触すればただでは済まないことは確実だ。かなり低い確率で生存出来たとしても精神の方が持つかどうか……まさに触らぬ神に祟りなしというヤツである。

 まあ、間接的に夢の中っぽいところで会った気もするけれど、適当に忍殺語で会話したことぐらいしか記憶に無いです、はい。

 

「そんなアブねー所に行きかける使い魔召喚すんなよ……」

 

「シャンタク鳥自体は無害なんだよ。それに、心配しなくともこの特異点が乱立している状況下でアザトースに接触なんて出来るかってんだ」

 

「あ、これフラグだ」

 

「折るから問題ないです」

 

 私のフラグブレイカー能力を舐めないでいただきたい。そもそも私が乗って言うことをきかせてさえいれば件の問題は発生しないので。

 ――っと、変に駄弁っていたら荷物も纏め終えて車に積み終わったな。あとは出発してもよいかの合図が来るのを待つだけだが、面倒なことになっていないといいが。

 

『……マスター』

 

『あっはい、やっぱりタダでは入れなさそうですか』

 

『いや、見たところ守りは皆無だ。エネミーなど一体たりとも見当たらない。構造物の損傷は思った以上に激しいがな』

 

 となると、竜殺しのサーヴァントの魔力反応があるかどうかだけか。無ければ振り出しに戻ってしまうけれど……。

 

『探知についてはこれからだ。一先ずはこちらに向かって出発しても何ら問題はないだろう』

 

『わかった、そうするよ』

 

 連絡を終え、車のエンジンを駆動させた私達は舗装もクソもない道を走り、ひっそりとリヨンの街へと侵入するに至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で、微弱な魔力反応が感じられたのが情報通りの此処か」

 

 これと言って道中に襲撃を受けることはなかった後続組の私達は、目的地に到着すると手分けをして捜索を行うまでもなく領地内の一ヶ所へ集っていた。

 そこはマルタが告げたひときわ目立つお城であり、外見こそ戦闘の被害を大きく受けているが内部はまだ丈夫そうに保たれている様子だった。

 先んじてマルタと一緒にやや遠方へ退避したエミヤの解析によれば、件の竜殺しと思わしき反応は地下で静止していて動いていないとのことである。

 カルデア側でもダブルチェックを行い、安全確認の下で人質救助チームよろしく突入を開始すると、目の前には灯りのない寒気が酷くする虚無のような空間が広がっていた。

 

「まるで廃墟探索に来ている気分だな」

 

「写真撮るか?」

 

「撮らねえよ、心霊スポットってわけじゃないんだから」

 

「そう彼女が呟いていた時である……おわかりいただけただろうか」

 

 おわかりいただけないので、それらしいナレーションを付けるのは止めましょうねノッブ。

 

「彼女の後ろを孤独なSilhouetteがふと横切ったのをVTRは捉えていた……」

 

「捉えてないし、そもそもVTRを残せるものを持っていないでしょうが」

 

「けど、射影機に写っとるよほら?」

 

「って、人の部屋から勝手にやべえ物持ってくんなよオイ!?」

 

 骨董屋でふと手に入れてしまったありえないものが写ってしまういわく付きのカメラを没収し、本当は何も写っていなかったことを確認して私は安堵する。もし写っていたのなら確実に寄り道をしていたところだったよ。

 ……とにかく今は竜殺しの発見を優先して地下へと続く道を探さないとならないわけだ。素直に階段を手分けをして見つけよう。

 

「そんな事しなくとも直接床をぶち抜けばいいんじゃねえか?」

 

「ほう、ダイナミック竜殺し捜索をご所望か……」

 

 ポキポキと骨を鳴らして構えを取れば、慌ててジャンヌとマシュが制止をしてきた。

 

「せ、先輩っ!?」

 

「……本気でやらないで下さいね!?」

 

 心配しなくともやらんがな。やったら敵襲があった時に外へ出にくくなるし、向こうが容易にこちらを見つける要因にもなりかねないしな。

 てなわけで、慎重に事を進めよう。皆、懐中電灯やランプは持ったな!! 無いなら丸太でもいいぞ!(よくない

 

「あっ、あそこに階段があるよ!」

 

「でかした!」

 

「お、ワインが貯蔵されてるじゃねえか。多分、そんじょそこらの物よりも美味いに違いねえぜ」

 

「でかした!」

 

「とくとくとく……ぐいっ、ぷっはー美味いッ!!!」

 

「飲んどる場合かーッ!?」

 

「鍵が厳重にされてたけれど、ピッキングというので色々したら簡単に開いたわ!」

 

「でか…した…?」

 

 何で王妃がそんな器用なこと出来るんだよって思ったら、夫のルイ16世は無類の錠前マニアだったな。何処かで難しい鍵の開け方をわざわざ彼女に披露してみせたのかもしれない。

 ――そんな雑学を思い出しつつ、慎重と言いながらも完全に怒涛の勢いで各部屋を漁り地下へと突き進んでいった我々一行は、やがて魔力反応が何処よりも一番伝わってくる部屋の前に辿り着く。

 素直にノックするか迷いもしたが、隠れてるのに『はーい、今出ますよー』と返して出て来るサーヴァントが居るわけがないので、借金の取り立てを行うように乱暴に扉を私は蹴破ってみせる。――そして、吹き飛んだ扉の哀れな残骸の先に何者かの気配を感じた。

 

「……そこに、誰かいるのですか?」

 

 誰よりも早くジャンヌが居るであろう誰かに問いかけると、奥から聞いたことのあるような声色の男の声が苦痛を含んで聞こえてくる。

 同時に、よろよろと不自由そうに立ち上がる動作音も聞こえ、こちらに近づこうとしてくる様子が窺えた。

 

「くっ……オレを殺しに来たというわけか」

 

「え?」

 

「……いいだろう、このような男を殺したければ存分にかかってくるがいい」

 

 どうやら相手はこちらをオルタの仲間だと誤解しているようであった。そりゃ、大所帯で一気に来られたら当然警戒もするわな。私がそっちの立場でもきっと同じようにするはずだ。

 でも想像と現実は異なるので、瞬時に弁明の言葉を投げかけようと試みる。――が、そこにアストルフォが割って入り、何時になく熱い態度で応対した。

 

「――待ってくれ、ボク達は君を倒しに来たわけじゃない! 助けに来たんだっ!」

 

「……オレを助けに……来ただと?」

 

「貴方を匿ったというサーヴァントから事情を聞きました。彼女は此処には居ませんが、竜の魔女の支配下にはもうありません」

 

「その話を……信じろと言うのか?」

 

 なんなら令呪使って呼ぼうか? 彼女の狂化解くのに使ったばかりでもう1画減るのは痛いけど、それで信用が得られるなら安いものだと割り切ろう。

 1画分使用済みであることをアピールし、本来の聖杯戦争であれば次に令呪を使えば猶予がなくなることを大胆にも示す。

 

「いや……それには及ばない。だが、教えてくれ。何故手負いのオレをわざわざここまで探しに来た?」

 

 理由をご所望か。なら、答えはシンプルである。

 

「――邪竜ファヴニールを竜の魔女が使役し、近々こちらの目の前に現れると件の保護した彼女から聞いた」

 

「ファヴニール、だと……!?」

 

「ああそうだ。ただの竜なら私達だけでも倒せるが、奴が相手だというのなら話は別だ」

 

「……成程な。要するにそちらは『竜殺し』の仲間を欲しているというわけか」

 

 正しくは適材適所であるジークフリートをだが、もうこの際とやかく言うまい。

 さて、要件は伝えたわけだがそちらとしては何か条件や言うことはあるだろうか。

 

「――一つだけ、質問させてくれ。そこの『彼』にだ」

 

「えっ、ボク?」

 

「そうだ」

 

 驚いた事に初見で男であるとは見抜けないであろうアストルフォを『彼』と断言し、竜殺しであるとされる男はたった1つの問いを述べる。

 

「……君は何の為に戦うんだ? マスターの為か?」

 

「えー、うーん、それも一応あるけれど……世界の危機だって言うし。それから何ていうか―――」

 

「――『心地良い』からか?」

 

「うんっ! ……って、何で知ってるのさ!?」

 

「ああ、君は変わらないな……だからこそ、こうしてそこに居る」

 

 彼が答えるよりも早く、予測というより既に知っていたと思わしき反応を男は見せた。

 そうして男は、ようやく影に隠れていた身体をこちらの灯りのもとに晒し、真名を堂々と告げる。

 

「――オレの名は、ジークフリート。かつて、邪竜ファヴニールを討ち滅ぼした……即ち、君達が求める竜殺しだ」

 

『ビンゴだ! やったね、藤丸君!!』

 

 ロマニが歓喜の声を上げており私としても喜びたいところであるが、こちらに近づこうとする彼を見てあることに一部のサーヴァントと共に気がついた。

 すぐさま駆け寄り肩を貸してやると、無理をしている人間らしく体重がやや重くのしかかってくる。

 

「ジャンヌ、気がついたか?」

 

「ええ、これは……酷い呪いです」

 

「……何だって、どういうことなの!?」

 

 わからない面々に対して説明すると、彼は高度な呪いの類によって傷が癒えない状態を付与されているらしかった。

 通常の解呪系魔術では歯が立たないレベルで複数刻みつけられており、ジャンヌの見立てでは最低でも二人以上の聖人による洗礼詠唱でやっと解くことが可能であることがわかった。

 

「1つずつ解くのではなく、複数同時でなければ駄目なやつみたいだな……妙な小細工をしやがって」

 

「君の力でどうにかならないのかい?」

 

「解呪が出来るアイテムはないこともないが、どれもこれも特定の呪いに対してのみしか効果を発揮しないものばかりだから使えない」

 

「ならば、マルタの奴を解呪のためにUターンさせるかの?」

 

 確実かつ安全に実行するのであればそれが好ましいと言えるが、戻ってこさせている合間にオルタに襲来されたら隠蔽工作が台無しになる。

 だがしかし、必要なリスクとして敢えて思い切った行動を取るべきかという考えもあり、一概に判断を下すことはできなかった。大丈夫だと高を括っていたら不意打ちを受けることなんてザラだしなぁ。

 

「仮に、エミヤがマルタに使っていた短剣を利用するにしても再合流が必要になるか」

 

「できればここで何とかしたいが、そのための手段がねえんだろ? じゃあ、やるしかねえじゃねえか」

 

「待て、焦るでない。こういう時ほど所持品やら各々が持つスキルやら能力のチェックじゃ」

 

 促されるようにマスターの特権であるサーヴァントのステータス確認を実施し、何か使える手立てがないか高速で確認する。

 うへえ、情報量パなくて整理が大変で脳みそ溶けそう。定期テスト直前に大きなHPL案件終わらせた時を思い出し、顔がFXで有り金全部溶かしたかのような表情に私は自然となった。

 

「ん……何だこれ」

 

「何かありましたか!?」

 

「宝具名が不明だけど、全ての魔術を打ち破る的な説明が頭に入ってきた」

 

「誰、誰、誰の宝具なの!?」

 

 急かしてくるので、失礼を承知で持ち主を指差してみると当の本人はキョトンとして、自分が所持しているとはまるで自覚していなかった態度を取った。……いや、君なんやけどアストルフォきゅんや。

 

「ええっ、ボクっ!?」

 

「もしかして自覚なしに持ってる系の宝具……なわけないか」

 

「とりあえず、持っている宝具を分かる範囲で挙げてみましょう?」

 

 えーっと、この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)にそれから―――

 

魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)だね!」

 

「……なんか最後の、それらしい名前の宝具だけど、確認した中になかったんだが」

 

「だって、仮の名前だからね! 似た感じな名前だったと思うから付けてみたんだ!」

 

 それじゃねーかよ!! というかステータスも仮の名前で本人認識してるならそれで上書きして認識させろっての。

 ……言いたいことは山ほどあるが、取捨選択して必要最低限に留めて私は尋ねる。

 

「で、それはどうやって手に入れたの」

 

「んー、ロジェスティラから貰った!」

 

「……その時、名前は教えてもらった?」

 

「ような気もするけど、ちょーっと待ってね! 今なら思い出せるかもしれない! むむむっ!!」

 

「………」

 

 コイツはダメそうな雰囲気である。やはり、安全を考えて此処から遠ざけていたマルタに戻ってきてもらうしかないのか。

 あるいは、アストルフォが理性を取り戻せるだけの環境を構築できればいいのだが、狂気の象徴たる満月をなくすことなんて物理的に無理だろう。ムーンビースト共で月を覆い尽くすなんて危ない考えが過ぎったが、そんな事すれば月をその後で破壊しなければなくなる。

 

「やたらと敵を月にぶつける作品あるじゃろ? あれ儂、太陽にぶつければ良くねって思うんじゃが」

 

「太陽は焼却炉か何かかよ」

 

 殺しても蘇るような不死生命体相手なら有効だけれど、そうでない相手に仕掛けるのは良心が抉られるので止めて頂きたい。

 

「ああっー!」

 

「どうした、突然大声を上げて……まさか本当に思い出せたのか」

 

「一応はね! ……でも、すぐにまた忘れちゃうかもしれないから、答え合わせと一緒に使ってみるっ!」

 

 そう言って座っているジークフリートの前に躍り出た彼は、魔導書を片手で開きページを噴水の如く吹き出させた。

 辺りには本の用紙が接着剤でも塗られたかのように張り付き、幾つかの物は二人を包み込む球体にならんと宙を忙しなく舞った。

 

 

「……『黒』のセイバー、ボクが君を助けてあげる!」

 

「――! ああ、すまない。頼む……『黒』のライダー」

 

 

 二人だけにわかる短いやり取りの後、魔導書は強烈な魔の光を帯びてついに発動する。

 

 

破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)――!!!』

 

 

 真の宝具名が響き渡り、発動した効果が粒子となってジークフリートに優しく降り注ぐ。

 間を置いてから再度駆け寄って呪いの具合いを確かめると、ジャンヌは悪い意味でなく良い意味で首を横に振った。

 

「そんな、解呪されてる……!?」

 

「綺麗さっぱり失せていますなぁ」

 

「……凄いです」

 

「へへ~ん、どんなもんだいっ!」

 

 魔導書を元に戻したアストルフォはふんぞり返ってドヤ顔を晒した。

 その横から王妃が歩み寄れば、彼女も宝具を用いて治療に乗り出した。

 

「よかったわ、今度は傷を癒せるみたい」

 

「これですぐにとは言わないが、彼等が来ても多少は戦えるだろうね」

 

 しっかし、月が丸見えな夜空であるのに何故思い出すことが出来たのだろうか。

 隠しの条件でもあってそれが今回たまたま発動したりしたのかな? それらしいような会話があったようだが。

 

「概ねその認識で間違いはないだろう……もっとも、奇跡に近い巡り合わせだが」

 

「なんか、冬木に居た連中と近いような感じがするぜ」

 

「冬木か……ある意味無関係とは言えないかオレも彼も……そして、ルーラー」

 

「わ、私ですか?」

 

「ああ、君もその中に入っている……が、ピンときていない辺り随分とイレギュラーなようだ」

 

 そこで話を一度区切り、ジークフリートは知りたいのなら覚えている限りで語ると言ってこんな場所だが休んでくれと促してきた。

 ……ま、天井はあるし雨はしのげる。寝れるだけの広さもあり、他の部屋から使えそうな備品は運び込めるとくれば野宿より何倍もマシであった。

 ということで、本日はジークフリートさんが居る城の地下をキャンプ地もとい宿泊先とする!

 

 抱えていた荷物を床に置いた私達は、友人宅にお泊まりに来た気分でワイワイとその場に腰を下ろした。




はいそんなわけで、ジャンヌさんとマルタさんによる解呪かと思いきやまさかのユウジョウブレイク!(アポクリファ……)でした。

ですので、次回はアポクリファ関連の説明回ですね。
何故、破却宣言を新月でも無いにも関わらず使えたのかもここで解説したいと思います。(まあ、今回の話でだいたい察しはつくでしょうけれど)


次回もお楽しみに

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