プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー
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今回は短め。ガチバトルを次回でやりたいので。


衝突する因縁

 

 ――第三次聖杯戦争で強奪された大聖杯が引き起こした聖杯大戦により、マスターとサーヴァント達は黒の陣営・赤の陣営・中立のルーラーの3つに分かれ、かつてないほどに戦局は混沌を極めていた……。

 その最中、偶然にも自我を獲得するに至ったホムンクルスの少年は、残り僅かな寿命で何を成すのか悩みながら、突き動かされるように戦場へと飛び込んでいく。

 やがて運命は世界をも巻き込み、少年少女は大いなる野望を持つ男と対峙する。

 

「とまあ、そんな事が何処かの世界であったわけなのね。大体わかった」

 

「相変わらずの理解の速さ、惚れ惚れするのぉ」

 

「よせよ、褒めても出るのは火の付いたフィリピン爆竹だけだぞ」

 

「殺しに来てやがるじゃねーか」

 

 冗談は常套句だからね。

 ……それはそれとして、聖杯の予備システムが発動した世界でジークフリートとアストルフォが揃って同じ陣営に呼ばれることなんてことがあったとは思わなんだ。しかも、その時のルーラーがジャンヌで、私の知り合いのレティシアの身体に憑依する形で現界していたとはね。道理で奇妙な縁を感じると思ったら、ちょっとした同窓会になっていたわけだ。印象に残るような出来事を経験したりすると、割りと世界を違えても思い出すもんなんだ。

 まあ、特異点のせいで色々曖昧になっているのも関係しているらしいけれども。

 

「……そうか、彼は最後まで戦い抜いたか。君のマスターにまでなるとは予想外だったが」

 

「いやぁ、なるまでに酷い目にあわされたけどねっ! 具体的に言うと赤のセイバーに殺されかけたり、元のマスターに彼を殺すように令呪で命令されたりで……」

 

「……よく耐えたな」

 

「伊達に理性蒸発してないもん!!」

 

 いやそれ関係あるのかというツッコミを総員で挟みたいところであるが、アストルフォなら仕方がないかと妙に納得してしまった次第である。つか、顛末までなんとなくで覚えていたってことはちゃっかり最後まで生き残っていたのか君は。もしかしてヒロインポジ?

 

「何故でしょう……覚えがないのですがそれは絶対違うと、何かが語りかけてきているような気がします……」

 

「黒いオーラ出とるけど、微妙にオルタ化してね此奴?」

 

「そんな簡単にオルタというものになれるものなんでしょうか」

 

「なれるわけねーだろがおい」

 

 けれども、オルタで偽物なジャンヌが現在のフランスで暴れているわけですしおすし、何かのはずみで影響受けてそうなるとかあり得なくないかもしれない。確証はないけれど。

 

「んにゃ待てよ、セイバーの奴もアホ毛を引っこ抜くと確かオルタになったような……」

 

「マジかよ」

 

『ええ……朧気ながら覚えていますが、どういうわけかアホ毛がスイッチ代わりになっていたんですよね。普段は美食家で大食らいといった感じでしたが、一度毛が抜けると途端にジャンクフード好きになりまして……あ、大食らいなのは変わらないです』

 

 カルデアで待機組のメドューサが追いかけるように証言するが、そこは少食にならないのかーい。

 てっきりオルタって本人の真逆を行く存在だと思っていたけれど、一概にそうだと言い切れなくなってきたな。誰しもが持つ別側面や闇の類いともはっきりと言い難く、結論の言葉を述べるのに詰まってしまう。別に急いじゃいないがね。

 

「――ま、儂も沖田の奴とフュージョンするタイプのオルタっぽい何か持っとるから気にしたら負けじゃ」

 

『えっ、アレって彼女が守護者をやっている時の場合の姿では?』

 

「合体しても結局同じ姿になれるんじゃから、守護者な沖田だけの所有物ではなかろうて」

 

 細かいことはわからないが、オルタもまた十人十色で複雑だということは重々理解した。今後、オルタ系の英霊を召喚した際の教訓として受け止めよう。

 一方で、戦局をジークフリートを含めてまた再び振り返ってみると、経験者的にも芳しくないことが指摘される。

 

「……状況は異なれど、一方の勢力に聖杯が既にあるというのは不味いな」

 

「せやね。使えない状態ならまだゴリ押しが出来て余裕がありそうだったけど、使える状態にあるというのがやはりネックかな」

 

「うーん、ボク達の時と同じように強襲しちゃって奪えればいいんだけどねー。誰か、空飛ぶ要塞みたいな宝具持ってない?」

 

 あれば苦労しないと言わんばかりに誰も返事はせず、結局のところアブダクションによる聖杯回収は出来ないことがわかってしまった。てことは、素直に殴って奪うしか他に方法はないってことですね。

 

「あるいは脳筋思考で、オルレアンごと宝具ブッパにて跡形もなく吹き飛ばすとか」

 

「本拠地わかってるからこそ出来るっちゃできるが、この面子だと火力が乏しいだろ」

 

 広範囲の破壊に特化していそうな宝具持ちは残念ながらノッブとエミヤぐらいであり、イカれた作戦を実行するにしても二人への負担が大きすぎるか。……何か良い代案はないものやら。

 

「気配を察知されるのを覚悟して、空から畳み掛けるとかどうだろう」

 

「空――空挺作戦か……やるにしてもドラゴンによる防衛網を掻い潜らないといけないリスクがあるし、第一全員で降下することは出来ない」

 

「加えて、向こうに腕の立つアーチャーがおれば誰かが欠けることに繋がるじゃろう。それが立香であれば儂らの負けじゃ」

 

 地上ルートで自身が侵攻したとしても同じリスクが伴うのは避けられない。

 ……何ていうか、パワーと圧倒的にスピード感が足りないのよな。そのせいで柔軟に対応されてしまう気がしてならないんだ。効果音に例えると、ズバババーンとドォーンって感じが抜けてしまっている。

 

『スピードは抜きにして、破壊力というパワーのみに絞れば爆破か何かをぶつけるのが得策じゃないかな。後者を選ぶなら一撃で守りを崩すだけの質量が求められるね』

 

「……爆破は設置するのも遠くから飛ばすのも無理があるから、自然とぶつける方が選ばれるわけだが――選択肢には何がある?」

 

「私のガラスの馬はどうかしら? 頑張れば多分大きく出来ると思うわ」

 

 うーん、どのぐらい大きく出来るかは別として耐久性が心配である。強度を魔力とかで補正できるなら十分に候補となりうるが……まあそこは防御呪文とか展開すればカバーは出来るか。

 ただし、キラキラしすぎてかなり派手で目立つのは避けられなかったりする。

 

『あの、提案なのだけれど……』

 

 何ですかいな所長。もっと突っ込ませるのにお誂え向きなのをご存知で?

 

『こっちにもドラゴンが居るのだからそれをぶつければ良いんじゃないかしら』

 

「此方のドラゴン?」

 

『――タラスクよ。聖女マルタが召喚できるって言っていたでしょう。魔力注ぎ込みつつ完全武装化して突撃させれば破壊力も素早さも申し分ないんじゃないかしら』

 

 ……ふむ。つまり、劇場版タラスク~フランスの小さな勇者たち~を実行しろと。

 前提としてタラスク君の素の動きが早いことが求められるが、高速スピンとかは得意なのだろうか。

 出来ると信じて確認の念話を飛ばしてみたところ、それくらいは容易いとの回答が得られた。勿論、巨大化も出来るようで、もはや大怪獣バトル待ったなしである。

 

「よし、それでいこう。別途、もう一段階策を打ち立てたいところだけども、それは決戦前までということで保留だ」

 

「……辿り着くまでに此方の状況もどう変わるかわかりませんしね」

 

「良い意味で変わっていればいいのだがな」

 

 その通りだなと全員が頷いたところで時間を確認すれば、既に日を跨いでいることになっていた。時間も忘れるほどについつい話し込んでいたようだが、そうでもしないと認識の共有を完了するとか無理だろう。

 自然と出たあくびを噛み締めつつまともな寝床を築いた私は、令呪が元通りになったのを見届けてから重い瞼を閉じて横になった。

 

 ……そして翌朝、就寝中に襲撃がなかったことを喜びながら朝食を仲良く取っていたところに、竜の魔女ことジャンヌ・オルタが空気も読まずにリヨンに対して猛攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちょっと、どういうことよ!?」

 

 恐らくは此方の反応を追ってか、もしくは消失したマルタの反応を追ってか自ら出向いてきたと思われるオルタは、タレコミ通りにファヴニールを伴って意気揚々にこれなら勝てるまいという挑発的な言葉を複数並べてこちらへと迫ってきていた。

 それに対し、食べかけの朝食を口に咥えながら向かい合った私達は、アドリブでIQが低いような受け答えをしてさも恐怖を抱いているかのように装うと、彼女が満足気にニンマリ微笑んで命乞いをしろと調子に乗った発言したのを気に――ノータイムでジークフリートを戦場に投入して宝具を発動するように要請をした。

 ……これにより、呪いもなく仮契約によるバックアップを得られている彼の攻撃を受けた邪竜は、体力フルで襲来したというのにものの僅かでレッドラインを彷徨うこととなり、苦しみの咆哮を辺りに大反響させて轟かせる。

 

「どうもこうも、お前の判断ミスだ。かの大邪竜を仕向ければ竜殺しのいない私達を倒すことなど造作も無いと踏んだのだろうが、生憎竜殺しなら既に仲間にしている」

 

「ファヴニールを一撃で瀕死に追い込む力―――そんな、まさかッ!?」

 

 竜を使役してフランスを蹂躙しようとした時点で、ある程度想定すべきだったカウンター的要員の事を考えていなかった様子の彼女は、遅すぎるこのタイミングでようやく目の前に居るのが誰なのかを理解した。

 

「ひ、退きなさいファヴニールッ!!」

 

「遅いっ!!」

 

 ここで逃がすのを許すほど現実は甘くはないことを思い知らしめるが如く、ジークフリートの携えた剣戟は美しくかつ鋭く大翼をもいだ。まさに天魔は失墜し、地面には衝撃と共に死に体が倒れ伏す。

 残る敵はもはや脅威とも見て取れないワイバーンのみとなって、以前のようにサーヴァントを引き連れていない彼女は丸裸も同然となった。

 

「さーて、前回同様ぬるぬるローションプレイカムバックと行こうか」

 

「巫山戯ないでッ、この……化け物の変態ッ!!」

 

「ああ、だからこうしてお前を甚振ろうとしているんじゃないか」

 

 触腕をアグレッシブに動かしまくり、エロ同人に成りかねない様子を見せれば、絡みつかれた時の記憶がフラッシュバックしたようでオルタは反射的に縮み上がった。

 ちなみにだけども、今のところの好感度や印象はおいておくとして、容姿的にかなり好みなんですよねこのオルタちゃん。ちょくちょくからかってやりたい欲が自然と出てくる。

 

「どっちが悪者かもうわけわかんねえな」

 

「よく言うでしょ、誰かにとっての正義は誰かにとっての悪だって。少なくとも私はコイツにとっての大いなる悪だよ。だが、当の本人は見合う正義を持ち合わせていないようだ」

 

「――言わせておけばッ!!」

 

「じゃあ聞くが、お前の憎悪や怒りに正当性はあるのか」

 

 周りに裏切られ処刑に科されたという事実は、己の人生に関わった人間……家族や友人でさえも手にかけてもいい理由になるというのか。

 だとしたら人間としてとことん落ちぶれたもんだ、狂った聖女様とやらは。

 

「家族や友人だなんて、そんなモノはッ……」

 

「――盾の嬢ちゃんッ!!」

 

 『私にはない』と言い切って彼女は、ワイバーン共に一斉に火を噴かせて此方を攻撃してくると、それに紛れて騎乗したまま旗を振り翳し突撃を行ってくる。

 咆哮は底知れぬ憎しみを杭として放ち、既に崩壊していた土地のすべてを再び薙ぎ払った。

 

「――先輩っ、無事ですか!?」

 

「皆さんも怪我はありませんか!!」

 

 兄貴の咄嗟の警戒の声により、マシュと此方のジャンヌが協力して防御を行ってくれたおかけで物理的ダメージはゼロに終わった。

 だが、安心したのも束の間で、通り過ぎたかと思った彼女は消滅寸前のファヴニールの下へ舞い戻ると、懐から手の平サイズのカプセル状の何かを取り出し、露出した傷口を抉るように『それ』を押し込む。

 

「何をするつもりじゃ!?」

 

「なんだか嫌な予感がするよー!?」

 

 咄嗟に止めようと動こうとした時にはもう遅く、切り裂かれた翼があった位置には触手で編まれたかのような歪な作りの大翼が生え始め、それ以外の外傷がみるみるうちに治り始めていた。

 多分、見えていない内部の異常も徐々に消え去っているに違いない。

 

「――ジークフリート!」

 

「ああ、わかっている!」

 

 再生しているとならば、完全に再生し切る前にもう一度滅ぼすと攻撃を繰り出す。

 ……が、威力が弱まっているわけでもないにも関わらず、巨体に外傷は一つたりとも付くことはなかった。

 また、よく観察すれば、火炎を吐くはずの大きな口からは溶解液のようなものが滴り落ち、頭部は如何にも侵食されているように管が浮き出て凶悪な姿を晒していた。

 

『……バカな、さっきまで通用していた宝具が通用していないだって!? どうなっているんだ!!』

 

『待って、そうじゃないわ。ダメージは入っていたけれども、再生力のほうがそれを上回ったのよ!!』

 

『あるいは竜ではない別のモノに変質しているのかもしれないな』

 

 三者三様にバックアップチームからはああでもないこうでもないという声が届く。

 

「マイノグーラ、お前の観点ではどうだ?」

 

『貴女の師匠と同意見と言ったところかしら。そうねぇ……邪神竜ファヴニール(仮)にでもなったと今は考えなさい』

 

 クトゥルヒをも従える技術を有していることから、それを応用した何かをファヴニールに対して使ったのだろう。

 しかし、竜殺しをもってしてもまともに削れない相手にすることが可能であるのなら、何故最初からそうしなかったのか疑問だ。……アレか、変質させたら言うことを聞かない存在に成り果てるとかそんな王道な理由だろうか。

 ……皮肉にもその勘は当たり、元凶たるジル曰くこうなると手がつけられなくなるとオルタは言い放って、自分だけ被害を免れようと残ったワイバーンを引き連れてそそくさと退去してしまった。うわー、完全に押し付けられたよコイツの後始末。

 

「くっ、すまない……彼女が手出しができないまでに討ち滅ぼすべきだった」

 

「……いや、君のせいじゃない。誰もあんな切り札を残しているとは思わないよ!」

 

「アストルフォの言う通りだ。……ちっ、嫌な記憶が甦るっての畜生」

 

 悪態を垂れる合間にも変質という名の進化は行われ、新たに二つほど首から頭部にかけてのパーツが誕生していた。このまま続けられては、やがてヤマタノオロチを彷彿とさせる姿になりかねない。いや、もっと言えば九頭竜の方が正しいか。

 

「■■■■■■■■■■■―――!!!! 」

 

「――うわっ!」

 

「危ねえなぁ!!」

 

 竜のモノとはかけ離れた奇怪な音に耳を塞いでいる余裕もなく、畳み掛けるように吐かれた溶解液と火炎を私達はそれぞれ安全地帯へ飛んで回避する。

 どちらも吐けることに驚いたが、未だなおジークフリートとの因縁は続いている様子で彼を優先して狙っていることがわかった。

 

「俺が注意を惹き付けるしかないか……すまないがマスター、その間に何か策を練ってくれ」

 

「……負担はでかいぞ」

 

「だったらボクも付き合うよ! なーに、泥舟に乗ったつもりで任せてくれ!」

 

「そこは大船だろ」

 

「そうとも言うね!」

 

 ……因縁には因縁をぶつける作戦で時間を稼ぎ、囮以外のメンバーで倒す算段を立てる事になった私達は、短期決戦を強いられながらも持久戦で目の前の脅威に立ち向かうべく行動を開始した。

 




邪神暴竜ファヴニール、変生。

竜特攻が効果的でなくなった今、果たして一行は脅威を倒すことが出来るのか。

あ、アポクリファのダイジェスト部分は分かる人にはわかるあれのパロです。








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