箱庭の空   作:白黒yu-ki
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第十一話 新スキル

翌日、俺はヘンリーに礼を言ってゲンテンを出た。今日1日はレベル上げを行い、明日大聖樹に向かうことにしよう。

 

周りに誰もいないことを確認し、ボードを出現させる。今の俺の空欄職レベルは3。武闘家が5で魔術師が2。あとは商人、医者、鳥が1だ。空欄職のままでも能力は高いので、今日はこのままレベル上げを行う。少し移動すると目玉がたくさんついたスライムを見つけた。初日に見かけたが、戦うのはこれが初めての相手だ。

 

「先手必勝だ!」

 

俺は駆け出して蹴りを出す。武闘家の時よりもキレは無いが、能力の高さを活かした蹴りがスライムのボディにめり込んだ。

 

「な…なに!?」

 

しかしめり込んだだけでダメージのようなものは感じられない。スライムは俺の脚を伝って上半身に上がって来そうだったので、俺は慌てて飛び退いて距離を置いた。

 

スライムは弱いモンスターの印象だったので、俺は少し戸惑ってしまう。本当は強いのかと考えを改めていると、スライムのボディに浮かぶ無数の目玉とは別に、中央付近に紺色の塊のようなものが見えた。目玉でうまく隠してはいるが、俺には一瞬だけだが見えたのだ。

 

「弱点か?」

 

俺は駆け出して手をスライムのボディに突き刺し、その塊を掴む。ボディもそうなのだが、その塊もゼリーのように柔らかかった。俺はそれを握りつぶしてみた。するとスライムを形成していたボディがドロっと崩れ、それはもう動くことはなかった。やはりこれが弱点だったようだ。スライムを形成するコアとでもいうべきものか。弱点さえ判明すれば後は簡単だった。

 

 

 

それから3時間ほどスライムや巨大蛾を倒し、空欄職がレベル5になった。

 

ーーーーー

生明光太郎

職業:

レベル:5

HP :45

MP :9

力 :72

体力 :108

素早さ :80

知識 :28

幸運 :13

 

スキル:チェンジ、神眼

武闘家レベル:5

武闘家スキル:回し蹴り

魔術師レベル:2

魔術師スキル:ランク1火魔法

透明人間レベル:1

商人レベル:1

医者レベル:1

鳥レベル:1

ーーーーー

 

スキルが追加されていた。

『神眼』……どことなく厨二病を思わせるが、どのように使うのだろうか。

 

「チェンジと同じようにボードに触れる、と言う訳でもないか。眼、という事は何かを見ればいいのか…?」

 

神眼と心に思い続けてボードに視線を落としているが変化はない。スキルを覚えても、それがどういったスキルでどのようにして使用するのかが分からない。どこかに説明文でも書いてくれていれば楽なのだが、そこまで便利仕様ではないのだ。用途が分かるまで放置するしかないかと諦めかけた時、視線を動かして思わず硬直してしまった。視界がいつもと違う。目の前に見える風景は先ほどと変わらないのだが、文字が浮かび上がっているのだ。

 

目の前に浮かんでいる文字は『雑草』。それは見れば分かる。どうやら目の前に生えている草を指しているようだ。視線を動かし、遠くにいる巨大蛾を見つける。その蛾は『飛毒蛾』という文字が浮かんでいる。あいつ、毒をもっていたのか…。

 

「要するに、神眼というのは対象の名前を知る事ができるスキルということか」

 

チェンジと違ってそこまで便利なスキルじゃない…いや、待てよ。これとチェンジを組み合わせればどうなる?

 

俺は職業欄に触れて『飛毒蛾』という文字を出現させた。同時に自分の姿もキモい蛾に変わる。生理的嫌悪を感じてすぐに元の空欄職に戻したが、これは使える。名前が分かればその姿になれるし、最初のレベルは1だが同じ能力を得る方ができそうだ。ただ、チェンジする事が可能な職でもなってはいけない職がある。それはチェンジを発動するための動作。ボードに手を触れてイメージする必要がある為、ボードに手を触れる事が出来ない姿の職は必然的に禁止となる。雑草等になった場合、そこまでは良いが元の職に戻れない危険があるのだ。

 

「その条件で名前が分かれば…」

 

職業欄に触れてある人物を思い浮かべる。

 

ーーーーー

生明光太郎

職業:ヘンリー・バーン:医者

レベル:1

HP :38

MP :0

力 :28

体力 :35

素早さ :20

知識 :58

幸運 :20

 

スキル:チェンジ、神眼

ヘンリースキル:体温測定、縫合

武闘家レベル:5

武闘家スキル:回し蹴り

魔術師レベル:2

魔術師スキル:ランク1火魔法

透明人間レベル:1

商人レベル:1

医者レベル:1

鳥レベル:1

ーーーーー

 

俺は自分の顔に触れて違和感を覚える。これは確かに自分の顔でない。ヘンリーの姿だ。職業にも変化が現れ、今の状態はヘンリーでもあり医者でもあるということか。ヘンリーよりレベルは低いが、医者のスキルを2つ使えるようになっていた。チェンジと神眼。これは色々と応用が利きそうだ。

 

 

元の姿に戻り、新たなスキルを覚えて区切りも良いし、別の職のレベル上げを行なった。夕方になる頃には空欄職が5、武闘家が8、魔術師が4に上がった。

 

 

今日もヘンリー宅でお世話になろうかと考えていたが、自分の周りに違和感を覚えた。不自然な草木の掠れを感じたのだ。

 

『何かがいる』

 

とっさにそう直感した俺はすぐに対応できるようボードを出現させる。俺が警戒の構えをとると、それは姿を現した。見覚えのある顔だ。ティアたち商人を襲った盗賊だ。あの時よりも仲間を増やして俺を囲んでいた。総勢5人。俺のステータスは高いが、一斉にかかってこられると対応が難しい。どうしたものかと考えていると正面に立っていた盗賊が下卑た薄ら笑いを浮かべる。

 

「あの時のお礼をしにきたぜ。覚悟はできてるんだろうな?」

「急に来られて覚悟ができている訳がない。覚悟しておくからまた今度来てくれ」

「そうはいくかよ。今日は親分も来てくれたんだ。おめぇの命もこれまでよ!」

 

盗賊がそう叫ぶと、その背後から2メートル近い大男がやって来た。筋肉隆々で巨大なサーベルを二刀も持っている。

 

「子分をかわいがってくれたようだな! たっぷりとお礼をしてやるぜ!」

 

さて、どうするか。ボードは出現させたままなので、逃げようと思えば逃げられる。透明人間とでも願えば簡単に逃亡できるだろう。しかしこの盗賊たちを放置しておくと、またティアたちのように被害に遭う人たちが出てきてしまう。人助けなんて大層な事をするつもりはないが、目覚めも気分も悪くなるだろう。ここらでしっかりと懲らしめて逮捕なりしてもらった方が良さそうだ。

 

盗賊親分が巨大なサーベルを掲げて振り下ろそうとした瞬間、ボードの職業欄の文字が浮かんだ。

 

『職業:ドラゴン』

 

さあ、お楽しみタイムだ。






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