箱庭の空   作:白黒yu-ki
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第二十五話 帰ってきたゲンテン

ゲンテン近くの草原。

俺とナギとユウドはようやくそこまでやってきていた。帰るのに時間はかかってしまったが、グリーンが話していた出発日に間に合って胸を撫で下ろす。

 

ユウドの剣士レベルは6。ナギの料理人レベルは5になっていた。ユウドの持つ木刀は強度がそれほど高くなく、既に先端部分は折れてしまっている。子どもに刃物を持たせるのは心配だが、シイカの武器屋で売っていた剣を買い与えた方が良いのだろうか。そんな事を考えていると不意に特殊眼鏡が反応する。

 

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属性:レアメタル

弱点:石の目

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視界に何かがはいってきたようだ。そちらを確認すると、そこには空中をふよふよ浮き銀色に輝く石があった。この辺りでよく見かけるスライムのようにいくつかの目玉もある。初めて見るモンスターだ。神眼スキルを使用したところ『メタルストーン』という名前らしい。

 

「ユウド、フォローはする。アレを倒せるか?」

 

「やってみる!」

 

俺の呼び掛けにユウドは応え、木刀を振り上げてメタルストーンへ振り下ろす。レベルの上がっているユウドの剣捌きは鋭いものがあったはずだが、宙に浮くメタルストーンは微動だにせず、ユウドの持つ木刀がへし折れるだけに終わってしまった。

 

「お、俺の伝説の剣が…」

 

いつの間にそんな大仰な剣になっていたのか聞いてみたいが、今はまだ戦闘中だ。相手の反撃に備えてすぐにユウドのフォローに移れるよう身構えていたが、メタルストーンはこちらをバカにするかのようにゆらゆらとその場で旋回するのみ。この機に俺はユウドを下がらせ、自身で攻撃する。空欄職だが俺の能力値は高い。石に対して拳で挑むのは無謀かと思えたが、俺の視界に収まるメタルストーンは『分析』によって弱点が赤く光って映し出されていた。

 

石には目があり、特殊な工具が無かった時代、石工たちはそれを読んで最小限の手数で石を割っていたとされる。

 

弱点の『石の目』がそれを差しているのだとしたら、赤く光る部位がその石の目なのだろう。これは分析していないと分からない。もし分析できていなければ、俺はきっと目玉を狙っていただろう。だがあれは弱点ではないらしい。

 

俺は拳を握り、赤く光る部位目掛けて突きを放つ。ガンッという衝撃音と共にメタルストーンの体がぐらぐらと揺れる。微かに亀裂が入った。それを見て、間髪入れずにもう一箇所の石の目を蹴り上げる。更に亀裂が入り、目玉がぎょろぎょろと浮かび上がった。後残り一箇所。だが命の危機を感じたのか、メタルストーンは残像すら見えそうなスピードで俺の視界から逃れようとするが、それよりも先に俺の拳が残る石の目を捉えた。

 

ピキッという音をたて、メタルストーンは真っ二つに割れた。地に落ちるメタルストーンにもう目玉は浮かばず、ただの石になっていた。それを見下ろす俺の元に、ユウドとナギが駆けてきた。

 

「やっぱり兄ちゃんはすげえや!」

 

「コウタロー様、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ。それよりもこんなモンスターもいるんだなぁ」

 

「私も初めて見ました。でも酒場に立ち寄る冒険者さんから聞いたことがあります。攻撃しても全く倒す事が出来ない銀色のモンスターがいる、と。おそらく…同じ種族のモンスターだと思いますが…」

 

ナギの話を聞き、俺は成る程と納得する。俺も『分析』が無ければその冒険者と同じように倒す事など出来なかっただろう。普通は石の目を読む事など、熟練の経験者でなければ不可能だ。だがそこまで倒すのが難しいモンスターであれば、経験値は相当期待ができる。俺は意気揚々と能力ボードを開いた。

 

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生明光太郎

職業:

レベル:14

HP:78

MP:28/31

力:90

体力:133

素早さ:99

知識:42

幸運:27

 

スキル:チェンジ、神眼、技宿

武闘家レベル:13

武闘家スキル:回し蹴り、足払い、二段蹴り、発勁

転送士レベル:10

転送士スキル:物質短距離転送、物質中距離転送

魔術師レベル10

魔術師スキル:ランク1火魔法、ランク2火魔法、ランク1水魔法、ランク1風魔法

付与術師レベル:4

幽霊レベル:3

幽霊スキル:すり抜け、取り憑き

僧侶レベル:3

僧侶スキル:癒しの光、解毒の光

イルカレベル:2

イルカスキル:クリック音

ドラゴンレベル:2

ドラゴンスキル:炎のブレス

透明人間レベル:2

透明人間スキル:透明化

結界師レベル:1

結界師スキル:守護結界(小)

飛毒蛾レベル:1

飛毒蛾スキル:毒鱗粉

商人レベル:1

医者レベル:1

鳥レベル:1

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何度見ても思う事だが、多すぎる職業に自分でも呆れてしまう。だが一番最初に目に飛び込んできたのは自分のレベルだった。この一回の戦闘でレベルが3も上がっていたのだ。メタルストーンはかなりの経験値持ちという事らしい。是非ともまたお会いしたいものだ。

 

「新しいスキルがあるな」

 

スキル欄に見覚えのないスキルが増えているのに気付いた。俺は早速『分析』を始める。

 

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技宿

数多くの職業を経験してきた者がその恩恵を受けるスキル。それらの経験は決して無駄にならず、いつでもその身に宿っている。他の職業で身につけていたスキルが使用可能になる。

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これは…とても便利なスキルだ。俺は試しにランク1火魔法を掌に灯す。火の大きさは魔術師時の方が大きい気がするが、空欄職のままで初めて魔法を扱える事ができた。おそらく他のスキルも同様に扱える事ができるのだろう。このスキルは各職業のデメリットも消す副次的メリットもある事に気付く。例えば、魔術師や転送士は基本能力は低いがその扱えるスキルは魅力だ。だが技宿スキルを使用すれば基本能力の高い空欄職のまま、それらを扱えるようになるのだ。そして戦闘中にわざわざ能力ボードを開いてチェンジを使用するという手間も省ける。

 

「時間がある時には色んな職業になってみてもいいかもしれないな」

 

俺はそう呟いて二人に向き合い、遠くに見えているゲンテンを指差した。

 

「やうやく着いたな。あそこがゲンテンの町だよ」

 

数日離れていただけだが、ゲンテンの町がやけに懐かしく感じてしまう。ゲンテンに向かう途中、ユウドが盗賊たちの成れの果てである雑草の前に浮かぶ能力ボードを見つけて報告してきたが、俺は「気にするな」と苦笑する。

 

ゲンテンの町に入り、ヘンリー宅に辿り着くと玄関先でティアが出迎えてくれた。ティアは俺の姿を見つけて嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

「コウタロー、おかえり!」

 

「ただいま、ティア。そうだ、紹介しておこうか。シイカから一緒に来たナギとユウド。何て言ったらいいのか…新しい仲間…かな?」

 

俺は後ろにいる二人をティアに紹介する。

 

「ナギ、ユウド、こっちがティアだ」

 

「まぁ、可愛い子ですね」

 

ナギはティアに対して好印象をもったようだが、それよりもティアとユウドだ。二人は互いに睨み合っている。

 

「お前が兄ちゃんの仲間か? まだ子どもじゃないか」

 

「子どもはあなたの方。コウタローは私が守るから、あなたは大人しく遊んでいればいい」

 

「なんだとっ! 俺は兄ちゃんに剣士にしてもらったんだ。将来は絶対に有名な剣士になるんだぞ!」

 

「私だってコウタローに強くしてもらったもん。でもあなたは有名になれるかもしれない」

 

「そ、そうか?」

 

「無謀で自信家ですごい弱い剣士としてね」

 

「なにを!」

 

年齢が近いということで良い競争相手になるかと楽観的に考えていたが、ここまで相性が悪いとは思ってもいなかった。まるで水と油だ。二人の言い合いは俺とナギが止めるまで続いたのだった。








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