ハリーポッターと新聞記者   作:十凶星

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 好きなキャラは文とアリス、十凶星でございます!

 某アリスのハリポタ小説を読みまして、東方とハリポタのクロスオーバーを読み漁っていたのですが、あまりなくて、ないなら自分で書けばいいじゃないとのマリーアントワネットからのお告げで書くこととなりました。

更新は不定期となるでしょうが、頑張っていきたいと思います。

では、どうぞ!


第一話 幻想郷との別れは唐突に

 表には微塵も出す気はないが私、清く正しい新聞記者、射命丸文は内心で辟易していた。

扉を開いた瞬間に掛けられる声で、内心でさらに顔をしかめる。

「あら、遅かったわね。待ちくたびれたわ。」

その理由はもちろん目の前にいるこの大妖怪――八雲紫(スキマ)のせいだろう。

 胡散臭さ、嫌われている度幻想郷№1(文々。新聞調べ)の私達が住んでいるこの結界に囲まれた妖怪の楽園――幻想郷と呼ばれる――の管理者だ。

 

「あやや、これはこれは紫さんじゃないですか、どうしたんですこんな時間に?……はっ、何かスクープでも持ってきてくれたんですか?それなら大歓迎しますよ」

「いえ、そういう訳でもないのだけれどね、まあ、それと同じような情報ならあるわ。お茶なら机の上よ。とりあえずかけなさいな。話はそれからよ」

 かく言う私もこの妖怪(と暴食幽霊姫(幽々子)、八意永琳)だけは苦手だ。その他の妖怪ならば口先三寸で騙しきる自信がある者の、この妖怪たちは頭の中で何を考えているのか、全く察することができないから厄介だ。特に紫なんかはその扇子で口元を隠す動作さえやめれば、胡散臭さもある程度消えるのではないだろうかと思うのだが。

 促されるままに椅子へと腰かけ、出されたお茶を口に含む。……無駄に美味い。こういうところがある

からイラつくのだ。しかも当然のようにお茶を出しているがここは私の家なのだが。

 

「では、始めましょうかね。いい話と悪い話、両方あるのだけれど何方から聞きたいかしら?」

「悪い方の話でお願いします」

「悪い方ね、悪い方は……もしかすると幻想郷が滅びるかもしれないわ」

「え゛」

 

と奇妙な声が口から洩れる。だが、それも仕方ないだろう。なにせ私たちが住んでいる幻想郷だ。

大体予想はつくが、この八雲紫が管理しているのに滅びるとはどういう事だろうか。

(吸血鬼異変再来!!みたいな感じでしょうかねぇ。また新しい侵略者でも来るのでしょうか?)

「今度は何が来るんですかね?また外国ですか?」

「察しがいいわね。そうよ、今回はイギリス、レミリアの母国ね。そこから魔法族と呼ばれる魔力を扱う人間たちが流れ込んできそうだわ。分かってはいると思うけど、ノーレッジとか、マーガトロイドみたいな魔女、魔法使いじゃないわよ?普通に年も取るし、食事も必要な普通の魔女ね」

「まあ、そこまでは分かりましたよ。で、何をして欲しいんですか?ある程度なら出来ますけど、あまり大きすぎることだと、見返りも欲しいのですが」

 

 予想が当たって少し驚くも、捨虫、捨食の法すら会得していない人間程度に、幻想郷の妖怪が負けるわけがないと思うのだが、殺しに特化しているのだろうか?

 

「まあ、少し待ちなさい、次はいい話ね。その魔法界の偵察になんと!射命丸文さん、貴女が選ばれることとなりましたわ!出発は半年後、準備しておくことですわ。紅魔館に連絡を取ってパチュリー・ノーレッジに取り次いでもらえるように頼んでおいたからよろしくね」

「ちょっと待って下さい紫さん。なんでなんですか。」

「え?だって勢力に属していながら自由に行動出来て、幻想郷屈指の実力を持っている妖怪なんてそうそういないじゃない?それに当てはまる人物、というか妖怪をピックアップしていったら、貴女しかいなかったんですもの。それじゃ、確かに伝えましたからね!」

 

それだけ一気にまくしたてると、隙間の中へと去っていった。

驚きで声が出なかったが、再起動してスキマを問い詰めようとするも、その頃にもういるはずもなく。

大きく溜息をついた瞬間、また隙間が開いて。

 

「あ、必要なものは机の上にリストにして置いておきましたので。それでは今度こそ、よろしくお願いいたしますわ~」

 

隙間が閉じていく。残された私にできることなんて、リストを眺めることくらいなのだった。

 

 

ちなみにそのリストと言えば。

 

 

『 ホグワーツ魔法魔術学校 校長 アルバス・ダンブルドア

 マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長

 

  親愛なる射命丸殿

 

  このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

 教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

 新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。 

 

   敬具

 

 副校長 ミネルバ・マクゴナガル』

 

という手紙と、

 

『親愛なる射命丸文へ

 

  九月から必要になる教科書のリストを送りますわ。

 杖や箒は香霖堂の店主に作ってもらうのが望ましいでしょう。

  箒は飛べるから問題ないと思いますが、作ってもらってください

 飛んでもいいですが、それをあまり見られないようにしてください。

 

 

 必要な教科書

 

 ――――――

 

 ―――――――

 

 ――――――――――

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  では、改めて、ホグワーツ魔法魔術学校御入学おめでとうございますわ♪

 よい学校生活が遅れることを祈っております♪

 

                             八雲紫より

p.s

  魔法はあなたが親しい紅魔館のパチュリーに習うとよいでしょう。

 先程も言った通り連絡はしてありますのでいつでも行ってきて構わないわ   

                                    』

 

「ほんと、ありえないわよ…全くネタにもならないじゃない……」

 

 何故だか無性に破りたくなったのは、決して気のせいではないのだろう。

いらいらする頭を押さえながら、私は平穏な新聞記者生活が崩れることを悲しんでいた。

 

 

 

 

 

 

―――香霖堂

 

 

「おっはようございまーす!清く正しい射命丸で~す!」

 

次の日、私は香霖堂へとやってきていた。理由はもちろん杖と箒を作ってもらうためだ。

 

「ああ、いらっしゃい。取り敢えずそこへ座りなよ。どうしたんだい今日は、新聞……ではなさそうだね。」

「ええ、そうなんですよ。今日はですね、ちょっと魔法界というところへ出張取材に行かなければならなくなったので、文々。新聞が十年くらい休刊になってしまうことのお知らせと、そこへ行くにあたって用意しなければならないものを霖之助さんなら作れるだろうと思いまして。」

「文々。新聞が休刊?それは困ったね……それで、用意しなければならないものとはどんなやつだい?物によっては作れないのもあるかもしれないが」

 

そう言われたので、スキマからの手紙を取り出してカウンターへ置く。

さらに妖怪の山に生えている霊力の宿っていそうな木の枝、白狼天狗の尻尾の毛や、烏天狗の羽の毛など、材料になりそうなものも全部机の上に置く。

 

「えっと、まずは杖ですね。作り方は確か紫さんの手紙に乗っていたはずです。あとは箒。箒も同様ですね」

「杖と箒か…作り方はこれに載っているんだね?どれどれ……うん、まあ、この程度なら僕でも作羽くれると思うよ。お代はこれくらいだね」

 

 霖之助さんがさらさらと書いてこちらに出してきた紙を見て驚愕する。

それもそうだろう。杖一つ作るのに家一戸分くらいのお金が使われているのだから。

 

「はぁ!?何でこんなに高いんですか!?もっと安くして下さいよ!私こんなお金持ってませんよ!?」

「そうかい?それなら無縁塚までひとっ走り行ってきて、うちにありそうな商品を持ってきてくれないか?そうすれば杖も箒もただにしておいてあげるから」

 

そう言われて自分の目が輝いたのが分かる。扉を蹴破って飛び出すと、霖之助さんに、

 

「ほんとですか!?なら今から行ってきますね!待っててくださいね~!」

 

とそう言い残し、無縁塚へと飛んでいくのだった。

 

その後、持って帰ってきた商品と言えないようなナニカを見て、霖之助さんが頭を抱えることとなったのは、完全な余談だろう。

 

 

 

 

 

「さあ、(わたくし)は今、紅魔館へと潜入しています!目に優しくない真っ赤な壁が私を出迎えてくれますが、特に誰かがいるという気配は致しません。ここには吸血鬼が住んでいるという噂が人里でまことしやかに囁かれていますが、こんなところに本当に吸血鬼が住んでいるのでしょうか!?期待が高まりますぬわぁっ!」

 

 急に顔面に向けてナイフが一斉に飛んでくる。それを慌てて躱すと私の目の前に咲夜さんが現れた。

 

「……人の家で何をやっているのですか?不法侵入罪で訴えますよ。」

「あやや、咲夜さんじゃないですか、何って実況中継ですよ。実況中継。知っているでしょう?」

「いえ、知らないけど。まあいいわ。魔法界について聞きに行くのでしょう?案内いたしますわ。」

 

 咲夜さんがそういうと、あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!「私は咲夜さんが案内するといった瞬間に」な… 何を言っているのかわからねーと思うが本当だ、瞬間移動だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 私が戦慄しているのをよそに、咲夜さんは図書館の扉を開けて中へ入る。慌ててついていくと、パチュリーの使い魔、小悪魔(通称こぁ)が出迎えてくれた。

 

「射命丸さんですね?パチュリー様がもうすぐ来るわよって言っていたのでお出迎えに参りました~さ、こちらへどうぞ」

 

 そういって小悪魔は歩き出す。さっきのように置いてかれないように歩いていくと、パチュリーが見え、手招きしている。

 

「よく来たわね、さ、ここへ座んなさい、紅茶とクッキーは食べていいわよ」

 

そういわれるので私は遠慮なくクッキーをつまむ。紅茶も飲んで一段落着いたところで、パチュリーが話し始めた。

 

「今日は、魔法界についての説明だったわね。こあ、ホワイトボードを持ってきてくれるかしら?」

「かしこまりました、今持ってきますね」

 

そう言って、こぁさんが大きなホワイトボードを引っ張ってくる。パチュリーはそこに黒のペンで「魔法界」と書き込むと、それをぐるーっと丸で囲み、

 

「魔法界には、大きく分けて三つの種類の人間がいるわ。純血と言われる両親がどちらも魔法使いの魔法使い、マグル生まれ、純血主義の人は穢れた血というけれど、両親ともにマグル――これは魔法の使えない人間のことね――がいるわ。そして最後に混血というまあ、マグルと魔法使いの子供がいるわ。ここまで大丈夫?」

 

 眼鏡をかけてまるで先生気分でパチュリーが授業をしているので、私もノートをだして、生徒として授業を受ける。気分は寺子屋だ。

 

「ええ、大丈夫です。パチュリー先生」

「そう、ならいいわ。じゃあ次、霊力と妖力についてね。射命丸さん、答えられるかしら?」

「はい、先生。霊力は人間が使用するもので、同じ現象を起こすのに一番量が必要です。次に妖力についてですが、妖力は妖怪が使うもので、霊力の次に量が必要です。ちなみに一番少ない量で済むのは神力です。」

「正解よ、完璧な答えね、グリフィンドールに五点」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、魔力の説明に移るわ。魔力は人間しか扱えないという人がいるけど、厳密にはそういう事はないわ。人間の魔法使いは杖を使って魔法を使うけど、杖というのが一種のエネルギー変換を行っていて、杖の中で霊力を魔力に変換して魔法を使っているの。だから妖怪もエネルギー変換さえできれば魔力を扱う事ができるわ。例外は『種族:魔女』の私みたいな妖怪ね。私達は大気中にある魔力を上手く吸収して、体内に魔力をためることができるわ。それ自体は他の人もできるけど、さらに捨虫、捨食の魔法を使っているものだけが種族が魔女、魔法使いとなるわ。うん、こんなところかしらね。そしたら次は実際に魔法を使ってみましょう。ん゛っん゛ん゛、こあ!こあー!妖力を魔力に変換する杖を持ってきてもらえるかしら!」

 

私がパチュリー先生の話を一生懸命ノートを取っていると、パチュリーが突然大声を出した。

(喘息持ちなのに、あんなに大きな声を出して大丈夫なんでしょうかね?)

 

「はい、これが取り敢えず霖之助さんだっけ?が杖を作ってくれるまでの貴女の杖よ。大事になさい。」

「おお、ありがとうございます!大事にしますね。」

 

 もらったのは何の変哲もない杖。特に何か装飾が付いていると言う訳でもなく、本当にこれで魔法が撃てるのかと心配になるが、まあ大丈夫だろう。

 

「それで、どうやって魔法を使うんですか?」

「こうやってよ――アクシオ 小悪魔」

 

 パチュリーが杖を軽く振りながらそう唱えると、「きゃあ!?」という声と共に、小悪魔が飛んでくる。

あの程度の言葉で魔法が使えるというのなら覚えるのは楽だろう。私は人と違って覚えるのも早いのだし。

 

「うわぁ、すごいですね。そんな簡単な言葉で魔法が使えるなんて。」

「私の専門は精霊魔法だけど、精霊はあまり頭が良くないらしくてね、むしろ簡単な言葉でないと理解して現象を起こしてくれないのよね。逆に神様は頭が良いから祝詞をしっかり唱えないとならないでしょう?池にいるチルノみたいなものよ。」

 

 最後の例が一番分かり易かった。確かにチルノにはあまり難しい言葉は理解できないだろう。

そう考えると、組み合わせるのもそこまで難しくなさそうだ。パチュリーのようにあまり複雑なのは使えないだろうが、それでも魔法という響きだけでもいいものだ。

 

「まあ、実際杖の振り方なんてそこまで規定があるわけでもないし。妖力を扱うみたいでいいのよ。呼び寄せるのだったら円状に、守るのだったら盾状にという風にね。やってみなさい。守る呪文はプロテゴよ、発音はしっかりしないと聞いてもらえないからそこは注意してね。」

 

 言われた通りに杖から盾を作り出すように魔力を放出し、「プロテゴ!」と唱える。すると結界のようなものがあらわれた。パチュリーがそれに炎弾をあてると、目の前で盾に当たり、霧散した。一発受けただけで盾の呪文は切れてしまったものの、出来たということが私に自信をつけた。

……まあ、自分で結界を張った方が便利なのだが。

 

「初めてにしては上出来ね。貴女が行くホグワーツの生徒は魔力を扱えても、それがどの様な形か認識しようとしないから、その点妖怪のあなたなら妖力とかで慣れてるでしょうし、アドバンテージになるでしょうね」

「ちなみに、魔法界にはどれくらい呪文があるんです?」

「まあ、呪文なんて作ろうと思えば無限に作れるから、言語を覚えてしまうのが早いと思うわ。だから呪文学と言っても九月までにできることなんてラテン語と英語の練習くらいね。」

「そうなんですか。なんか詰まんないですね。もっとこうシュババー!、とかビリビリー!とかそういうのを創造してたのでなんか拍子抜けです。記事にしようかと思ってたんですが難しそうですね。」

「記事になんてしたら真似して死ぬ人がたくさん出てきそうだからやめた方がいいわ。知ることができた人だけがそういう事はやればいいものなのよ。」

 

 「まあ、そんな人は本当に一握りなんだけどね。」とそう締めくくり、その日の最初の授業は終わった。

 

 

 最初の授業が簡単だったからわからなかったが、パチュリーの「魔法授業」は酷いものだった。おかげで相当なことを詰め込むことができたが。月曜日は魔法薬学と呪文学、火曜日は箒と変身術、水曜日は――という風に全く休みがないのだ。休みをもらったと思っても宿題と言って自分固有の魔法を作ってきなさいとか言われるし、正直死ぬかと思った。パチュリーは自分が魔法使いだから他の人が食事が必要だということをわかっていないんじゃないだろうかと何度本気で思ったことか。閑話休題。

 私は今、妖怪の山のあたりを自分の家に向けて飛行している。もうイギリスへと出かけるというので、荷物の支度をしに来たのだ、これが終わったら霖之助さんのところへ行って箒と杖をもらいに行こう。

 考え事をしながら飛んでいると前から「おーい!」と呼ぶ声が聞こえ顔を上げる。

 

「どうかしましたかって……ああ、はたて(引き篭もり)か、久しぶりね。どうしたの?あの生粋の引き篭もりのあなたがこんなところに来るなんて。明日は雨かしらね。念写でもしたのかしら?」

「文、あなたいぎりすに行くんだって?何で言ってくれなかったのよ!急に言われてもびっくりするじゃない!」

「あれ、言わなかったかしら?ごめんなさいね、私これからイギリスに行ってくるのよ。Do you understand?(理解したかしら?)

「え?は?今なんて言ったの?」

「理解したのって言ったのよ。まあ、一年ごとに帰ってくるわよ。たしかクリスマスと夏だったかしら?分かったのなら行くわね。早く戻って支度しようっと」

「……まあいいわ。帰ってきたときに私の記事がランキングに載ってても恨まないことね!」

「貴女のような弱小新聞には私の新聞は食えないわよ。イギリスに行ってネタを拾ってくるから、覚悟しておきなさい!」

 

 軽口をたたきあってその場を離れる。淡白な別れだと思うかもしれないが、妖怪にとって七、八年程度なんてことないので、あのくらいのほうがちょうどいいのだ。

 家について支度を始める。教科書に関してはすべてパチュリーが持っていたのでそれをもらった。

そう言えば、パチュリーとは随分打ち解けたのだ。それこそ、私が素の口調でしゃべれるくらいに。

 

「ま、それだけ濃い期間だったってことよね。さ~てと、霖之助さんの所へ行こうっと」

 

 そう言って、トランクをもって空へと飛び立つ。今度こういう重りをつけた状態でほかの人と勝負してみようかしら。そうすれば勝負になるかもしれないし。

 香霖堂へと着くとドアを乱暴に開けて中へと入る。むっとした空気と、何処となく懐かしい匂いが私を包むが、そんなことはどうでもよくて。

 

「霖之助さーん、射命丸ですよー、杖出来ましたかー?」

「ああ、射命丸か、出来たよ。これだ。」

 

そういって霖之助さんが取り出したのは、白っぽい色をした短い杖。確か杖に使われてる木はある妖精が宿っている木の枝?だったような気がするけど、これはそのどれとも似ていない。

 

「天界の桃の木の枝、烏天狗の羽、長さは二十センチ、天界の桃の枝を紫にもらってね。いいのができたと思う。振ってみてくれるかい?」

 

 杖を振ると、ピンクの花が部屋の中に咲き誇った。それを見て霖之助さんはうんうんと頷くと奥から長い袋を持ち出してきた。ということはこちらが箒の方か。

 

「よかった、合ったようだね。こっちが箒だ、ブラッククロウ、同じように桃の木で造られているよ。」

「霖之助さん、ありがとうございました。これはささやかなお礼だとでも思ってください。スコージファイ(清めよ)!」

 

 私がそう唱えると、汚かった部屋が一瞬で綺麗になった。物などは相変わらず置かれているが、随分とましになったものだろう。

 

「ああ、ありがとう。じゃあ、楽しんでくるといいよ。」

「ええ、ありがとうございました。では、また来年会いましょう!」

 

 そう言って香霖堂を出ると、目の前にスキマが開いていた。中から手が出てきて手招きをするので中へと入っていく。中へ入ると、大きな目玉がぎょろぎょろとこちらを見てきて、少し気持ちが悪くなった。正直何度も入りたくはない。

 

「あら、来ましたのね。貴女にはこれから一か月、ロンドンの一軒家で暮らしてもらいますわ。二週間前くらいにはホグワーツの先生がいらっしゃると思いますから、それまで待っていることですね。」

 

 そういってスキマの中でスキマを開く。これがその家へと繋がっているのだろうか。私は八雲紫の底知れなさを感じながら、スキマを潜り抜けるのだった。

 

 

 

 

 

 私が家で惰眠をむさぼっていると、下の方からノックとインターホンの音が聞こえた。

私も順調に現代社会に毒されていってるわと思いながらドアを開けると、緑色のローブを羽織り、黒い山高帽をかぶった、THE・魔女という人物が立っていた。

 

「アヤ・シャメイマルですね?副校長のマクゴナガルです。ダンブルドア校長が、唯一のアジア系の人でで何かと大変だろうということで、私を派遣なされました。今からダイアゴン横丁へと行きます。遅れないようについてきなさい。」

 

 と、そういうのでマクゴナガル先生についていく。何度か道を曲がり、ちっぽけな薄汚れたパブの前でマクゴナガル先生は急に止まった。私は急に止まったのでマクゴナガル先生にぶつかりそうだった。

 

「『漏れ鍋』――マグルは近づかないようになっています。、ここからダイアゴン横丁へと入りますが、混みあっているのではぐれないようにしなさい。」

 

 そういってマクゴナガル先生が中へと入り、奥へと進んでいく。何度かマクゴナガル先生が声を掛けられたが、「今は生徒の案内中なのです。」というとすぐに引いていった。

 パブを通り抜けると、壁に囲まれた小さな中庭に連れ出された。ゴミ箱と雑草しかない薄汚れた中庭だ。

 

「ここですね、少し待っていなさい……こうでしたね。アヤ、ダイアゴン横丁、魔法使いの世界へようこそ、歓迎しますよ。」

 

 マクゴナガル先生がただの壁のレンガを杖の先で三度たたくと、たたいたレンガが震え、くねくねと揺れる。そして真ん中に空いた小さな穴が広がっていき、次の瞬間には目の前にアーチ形の入り口ができた。むこうには石畳の通りが広がっていて、先が見えなくなるまで続いていた。

 

「あやややや、これはすごいですね。私初めて見ましたよこんなの、ホグワーツに入るとこんなものも作れるようになるんですかね?」

「ええ、作れるかどうかはあなた次第ですが、頑張ればできるようになりますよ。では、換金しに行きましょうか」

「分っかりました!」

「お金はグリンゴッツでおろします。すぐ近くにあるのでさっさといきましょう」

 

 そういって歩き出すが、二分もしないうちに大きなブロンズの扉の前についた。

両脇には真紅と金色の制服を着て立っている小さな生き物がいた。

 

「グリンゴッツでは小鬼が守護をしているのです。盗もうとする人なんていませんし、もしいたとしても地下にいるドラゴンやその他色々な罠によってすぐに捕まってしまうでしょう」

 

 白い階段をのぼりながら、マクゴナガル先生がそういった。小鬼は私から見ても頭一つ分くらい小さく、賢そうな顔をしている。

 入口につくと、小鬼がお辞儀をした。さらに二つ目の扉があり、そこには盗めないよ(要約)ということが書かれていた。大分お金は持ってきていたので、マクゴナガル先生曰く二年分の学費と教科書は変えるだけのお金があるだろうとのこと。

 買い物も順調に進み、残るは制服だけとなった。

 

「あとは制服だけですね。制服ならばマダムマルキンの店が良いでしょう。すぐそこにありますので自分で行けますか?」

「もちろんですよ、あの看板のお店ですよね?じゃあ行ってきます!」

 

 そういって「マダムマルキンの洋装店――普段着から式服まで」という看板の下がっているお店の中に一人で入っていった。

 マダムマルキンは藤色の服を着た、愛想のよいずんぐりとした魔女だった。

 

「お嬢ちゃん、ホグワーツなの?」

「ええ、今年から入学します、よろしくお願いしますね」

「大丈夫です、全部ここでそろいますよ……今あのハリー・ポッターさんが丈を合わせているところよ」

 

 店の奥の方で、眼鏡をかけた男の子がピンで丈を合わせている。

 

(あやや、こんなところであの有名なハリー・ポッターに出会えるなんてついてますねぇ)

 

 そんなことを考えながらハリーに近づいていく。後ろ向きだったのであまり見えなかったが、前から見るとあの有名な額の傷があることがわかった。

 

「あやややや、あなたがかの有名なハリー・ポッターさんですか?こんにちは、私も今年からホグワーツに入学するんですよ」

 

そう言ってにっこりと営業スマイルを見せると、ハリーは少し顔を赤らめながら、

 

「僕、有名だなんて言われてるけど、僕が何をしたかなんて全く覚えてないんだ。きっと僕、ホグワーツに入ってもびりだよ……」

「そんなことないでしょう、有名になるという事、しかもあの悪名高いヴォルデモートを倒した人となれば、赤ん坊のころから才覚を現していたということに他なりません!あなたにはきっと才能があるんですよ。だから大丈夫です。」

 

 そう言って励ましてやると、いくらか気分も楽になったようで、自分の住んでいた家のことをいろいろと教えてくれた。

 採寸が終わって店の外へと出ると、マクゴナガル先生と大きな男の人が一緒に話していた。ハリーの付き添いだろうか。

 

「終わりましたよ~マクゴナガル先生」

「それは良かった。隣はハリーですね?マクゴナガルと言います、グリフィンドールに入るのならばまた会うこともできるでしょう。ではハグリッド、私はシャメイマルの付き添いがありますのでこれで。」

「ええ。ありがとうごぜぇました。ほら、ハリー、あとは杖だけだ、杖はオリバンダーの店が一番だからな…さっ、いくぞ。」

「うん、じゃあね、シャメイマル?」

「また今度会いましょう、ホグワーツでね」

 

 そういってハリー達と別れる。もう買い物は終わったので、あとは帰るだけだ。

私が歩き出そうとすると、マクゴナガル先生が後ろから引き留めてきた。吃驚して後ろを向くと、先生が

 

「帰りは姿現しを使います。私の手を握っていなさい」

 

 というので手を握っていると、胃のあたりを握られるような感覚とともに景色がぐるぐる回り始め、バチンッという音とともに視界が暗転していく。吐き気が収まると私は自分の家の前へと立っていた。

 

「おお、これはすごいですね、ホグワーツにも行けるんですか?」

「いえ、ホグワーツでは姿現しは出来ませんので移動手段はホグワーツ特急で行くこととなります。では、私はこれで」

「ありがとうございました~」

 

 そういってマクゴナガル先生は姿現しで消えていった。

私はベッドに寝転がると、パチュリーにもらった通信用のオプションを手に取り、スイッチを入れる。

 

『はいはい、どうしたの文?』

「パチュリー、今日ハリーにあったのよ、まさかこんなに早く接触できると思ってなかったからびっくりだわ。でもあまりオーラというかそういうのは感じられなかったのよね。親がすごかっただけなんじゃないの?まあ、どちらにせよネタとしては最高の素材だからなるべく接触していくようにはするけど」

『そうね、ヴォルデモートから生き残った男の子とは言われているけれど、多分古代魔法の愛の魔法ね。母親がヴォルデモートに殺されて、その時にハリーをどうしても守りたいという思いが愛の魔法としてハリーを守っているのだと考えられるわ。ああ、あと私も多分ホグワーツに入学することになりそうよ。八雲から連絡が来てね、「やっぱり文屋だけだと不安になるから、あなたも行ってきてもらえるかしら?拒否権はありません、レミリアからも許可はもらっているわ」だそうよ、』

 

 そこでパチュリーは言葉を切った。そして、

 

「それに私もあなたのことが心配だしね、オプションを付けたとはいえ、死の呪文は相当強力よ、あなたでも死ぬ可能性があるくらいにはね。」

 

 急に隣から声が聞こえてきて飛び上がる。隣を見ると、魔法陣の中からパチュリーが出てくるところだった。

 

「……パチュリー、その現れ方やめた方がいいんじゃない?正直ホラーでしかないわよ。」

「はぁ、仕方ないじゃない。あまり他の人に感知されたくないのよ。急に現れると魔力の波が大きくなるからね、その分ゆっくり現れれば同じように魔力の波も穏やかなものになる。だからこんな風に現れるのよ、私も出来ることなら使いたくもないわ」

 

 そういっていつものネグリジェのような服から杖を取り出す。それを軽く振ると、明かりがともり、それが広がって固まり、ホワイトボードを作り出した。

 

「えっ、ここまで来て授業するの?あともう一週間で入学じゃない、する必要なくない?」

「貴女まだ動物もどき(アニメーガス)出来ないでしょ。そこの特訓よ、アニメーガスになると何かと便利な点が多いからね。」

 

 そういってパチュリーはにっこりとした笑みを浮かべる。

 夜のロンドンの街に私の悲鳴が響き渡るのだった




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