ハリーポッターと新聞記者   作:十凶星

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 一日遅れてしまってすみませんでした!でも一万五千字超えたので許してください何でもしますから(ん?今何でもするって(ry)

 では、どうぞ!

・呪文と効果が続けて書かれていたため修正


第四話 初めての授業と賢者の石

――早朝、私は談話室の机に向かって、まとめた文花帖ネタ帳のページをぱらぱらとめくっていた。

 

「う~ん、これは嘘っぽいから没……こっちは理解しづらいから没……思ったよりも新聞の記事にできそうなネタがないものね……今日から授業が始まるからいいものの、あ~、新聞を印刷する道具もないし、退屈だわ~」

「そればっかりは仕方がないわね。あそこ幻想郷から持って来るにはさすがに遠いし、かといってここに印刷できるものがあるわけでもないしね。おはよう文。もう少しで朝食の時間らしいから、ダフネを起こしてきたわよ。さっさと行きましょう?」

「あら、パチュリー、起きてたの?……まあいいわ、じゃあ朝食食べに行こうっと」

「おはよう文、パチュリー」

 

 そういって三人で連れ立って大広間へと向かう。地下室なので大広間までは意外と遠いのだ。早めにいかないと席をとれなくなってしまう。

 私たちが大広間につくと、周りの人皆がハリーについて噂していた。「ハリーが…」「ポッターが……」などとずっとざわざわしているし、何よりグリフィンドール生の浮かれようが凄い。

 

「うるさいわね、もう少し静かに食事できないものかしらね」

「まあ、仕方ないんじゃないですか?ハリーなんていう英雄が学校にやってきたんですから、そりゃあ興奮もしますよ」

「う~ん、文のその口調が急に変わるのは何というか慣れないわよ~、なんでそんなに一々変えられるの?」

「そんな事言われましてもね~、取材時に相手方に粗相をするわけにもいかないじゃないですか。だから取材時、もしくはあまり知らない人がたくさんいるところではこの口調でしゃべってるんですよ」

「そうなのね~」

 

 ダフネがトーストを頬張りながらそう聞いてくるが、その質問に関してはあまり詳しく答えることはできない。あまり話しすぎると私の出自にもかかわってきてしまう問題だからだ。

 三人でご飯を食べていると――イギリス料理で美味しいのは朝食だけらしい――ハリー・ポッターが中へと入ってきた。噂話をされているのが耳に届いたのか少しいやそうにしながら隣にいるロンと一緒に食事を始める。その頃には私たちも食事を終わらせていたので、最初の授業の呪文学をやる教室へと向かい始めていた。

 

 歩き始めてから気付いたが、この学校には本当に階段が多い。一分ごとに動く階段や三十秒ごとに動く階段など、動くペースが違ったり、一つの階段が二つ以上の場所へ行ったり来たりするのだ。パチュリーの地図がなければ当の昔に迷うか遅刻してしまっていただろう。

 そのおかげもあって、私達が呪文学の教室へと着いたのは誰よりも早い時間だった。それもそうだろう。まだ授業開始まで十五分もあるのだ。新入生としてはとても早く着いたのだろう。呪文学のフリットウィック先生はとても驚いていた。

 

「いやー、新入生の中でこんなに早く来たのは私が教えている中で初めてだよ。まだ時間もあるし、予習でもするかい?」と先生が独特のキーキー声で言った。

「あー、いえ、結構ですフリットウィック先生。私達……といっても私とパチュリーだけですが、もうN.E.W.Tレベルの呪文はほとんど網羅してますから。むしろ今はオリジナル呪文を作るのが趣味になっているくらいですので」

「本当かね?それじゃあ、あっちの呪文の練習室へと言って、少し見せてもらおうか」

「ええ、分かりました。デウス ヴェンタス(神霊の風) フィエンド ファイア(悪霊の火)!」

 

 私がそう唱えると、自分の振った杖の先から火災旋風とでもいおうか、燃え盛る唐紅の業火と、無限に回り続ける旋風が飛び出していく。それは驚いているフリットウィック先生の前でしぼんでいき。到達する直前で消え去った。

 

「いやー、いやー、これは驚いた!まさか一年生が悪霊の火と自分で作ったオリジナル魔法を使いこなすとは思わなかったよ!スリザリンに十点!だがさっきの風はともかく、悪霊の火は闇の魔術に含まれる危険な呪文だ。使用には十分気をつけることだね」

「ありがとうございました。他にも見せましょうか?多分次はパチュリーが見せてくれるはずですよ、ね、パチュリー?」

「何で私が……、まあいいわ。では、行きますよ先生……ルーモス スピリタス(精霊の光)

 

 パチュリーの呪文は確か守護霊の呪文と同じような効果を持つものだったか。攻撃の要素がないわけではないが、自身への加護が主な効果となる魔法だったはずだ。

 これは先生も効果が分からなかったようで、少し首をかしげながらパチュリーへと聞いた。

 

「?これは何の効果のある呪文なのですか?ルーモスということは光に関係のある呪文だというのは分かるのですが……」

「これは守護霊の呪文が使える人が少なすぎるという事から、もう少し簡単に吸魂鬼ディメンターを追い払えないだろうかと思いまして、そこから造った呪文ですね。守護霊の呪文には及びませんが、ディメンターをある程度ひるませることができます」

「ほう、ほう。それはすごい!守護霊の呪文と同じ効果ですか!スリザリンにもう十点あげましょう!そして今度から私の部屋へと遊びに来なさい、特別授業を行いましょう」

「ありがとうございます」

 

 ダフネは固まってしまっている。私たちのレベルが高すぎたのだろうか。とても驚いた表情だ。

 

「えっ?パチュリーも文もそんなに魔法使えたの?知らなかったわよ!」

「いや、そりゃあ今日が初めてなんだから知らないでしょうよ、それにわざわざ知らせるようなことでもないですしね。まあ、先生とパチュリーに教えてもらっていればきっと上手くなりますよ。もうそろそろ授業も始まる時間でしょうし、戻りましょうかね」

 

 授業はつつがなく進んだ。まあ、最初の授業から実習をやるわけでもなく最初は理論のみだったが、それでも魔法の授業を受けているということがうれしいのか、生徒はずっと興奮しっぱなしだった。ダフネはパチュリーとわたしにしつもんぜめだったのだが。

 次の授業の変身術の教室へと向かっている間、ダフネはまだ私達に対して質問をしてきていた。

 

「ねえ、なんでそんなに魔法の知識があるの?私の家にだってそんなに魔法の本があるわけでもないのに」

「まあ、私はパチュリーから教えてもらってたから。パチュリーの家は図書館と言ってもいいくらいに本があるからね、勉強には事欠かなかったんでしょう、パチュリー本の虫だし」

「そんなところね。私はもともと本が好きだったし、うちは本が集まるところでもあったから、魔法の勉強には困らなかったのよ」

 

 変身術の教室につくと机の上に猫(マクゴナガル先生だろう。猫にしては保有霊力が高すぎる)が座っていた。私が小声でマクゴナガル先生にしかわからないように「マクゴナガル先生、吃驚しました。先生ってアニメーガスだったんですね」というと驚いたのかびくんと一度体を震わせると首を振って変身を解いた。

 

「はぁ、授業を始めます。取り敢えずスリザリンに五点差し上げましょう。アニメーガスが見破られるのは変身術の教師になってから初めての経験ですよ。変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なもののひとつです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒には出て行ってもらいますし、二度とこのクラスには入れません。始めから警告しておきます。アヤ、あなた机を豚に変えられますか?」

「は、はい。変えられますけれど?というか家具を変えるのって相当後の方の授業ですよね。流石にほかの人ができるかどうかわからないんですが。やりましょうか?」

「ええ、じゃあこの教壇を変えてもらいましょうか」

「分かりました」

 

 私は机に向かって杖を振るい、豚の姿を強く念じる。変身術は微妙に苦手な分野なので上手く出来るかわからなかったが、少しかくかくしているような気もするが、ある程度はよくできたものだろう。

 

「すごいですね。一年生では出来る人はいないでしょう。スリザリンにもう五点、差し上げましょう」

 

 クラスから歓声が上がった。先生は私が変えた豚を杖を振るって元の机へと戻すと、家具を変えるにはまだまだ時間がかかるということを言った。私たちはさんざん複雑なノートを採らされたあと、一人一人にマッチ棒が配られ――私のみ花瓶を鳥に変えるというものだった――それを針に変える練習が始まった。

 パチュリーは一瞬で針に変えてみせると、先生はさらにスリザリンに五点をくれ、パチュリーも私以上にできるとわかると、私と同じ課題を与えて見せた。

 授業が終わるまでにマッチ棒を変えられたのはダフネ・グリーングラスだけだった。

マクゴナガル先生はダフネをほめると、疲れたような笑みでその授業を終わらせた。

 

 「闇の魔術に対する防衛学」の授業は拍子抜けだった――まあ、クィレル先生が生徒に力をつけさせたくないというような思惑もあるのだろうが――教室にはニンニクの強烈なにおいが漂っていて、パチュリーは「レミィが苦手そうな臭いね」と皮肉を言った。実際、先生がルーマニアで出会った吸血鬼を寄せ付けないためらしい。まあ、

パチュリー曰く「吸血鬼は実際にはそこまで大蒜に弱いわけじゃないわ。太陽にだってすぐに灰になるわけでもないし、流水だって私たちが気持ち悪い食べ物が嫌い~とかその程度よ」と言っていたが。それにターバンは厄介なゾンビをやっつけたときにアフリカの王子様がお礼にくれたと言っていたが、変な臭いをしているし、それがヴォルデモートの臭いと顔を隠すためだと知っている私達からしてみれば、何を言っているのだという話だったのだが。

 

 私達は魔法薬学の授業がある地下牢――寮のすぐ隣だ――に向かいながら、今までの授業について雑談していた

 

「闇の魔術に対する防衛学は酷かったわね。あんなの授業ですらないわ、私が教えた方がよっぽど身のためよ」

「いや、パチュリーが教えたらそれこそ酷いことになるわよ。だって習ってないところからもバンバン出してくるじゃない」

「私はそれよりも貴女達が点を取りすぎてると思うのよ。今までの二日で何点取ってると思う?四十点よ?ハーマイオニーですら二十点も取れていないっていうのに……」

「まあまあ、着いたわy――着きましたよ。魔法薬学の授業ってどんなのなのでしょうね?スネイプ先生は生徒思いだけど表にはそれが出せないツンデレさんだっていう事は分かったんですけど」

「ツンデレってなに?文」

「ご説明いたしましょう!ツンデレというのはですね、いつもはツンツンツンツン、厳しいことしか言えないのですが、ふとした折にデレ、要するに弱い所ですね、を見せるのがツンデレです。想像してみてくださいダフネさん。いつもは「何やってるのよ」とか、「知らないわよそんなの」とか言っているパチュリーさんが、ふとした時に「いつもは……ありがとね」とか頬を赤らめながら言ったらどうします!?萌えるでしょう?それがツンデレという物なのですよ!」

「ま、まあ何となくわかったわ……、確かにパチュリーがそんな事言ってくれたらこっちが恥ずかしくなりそうね。でもスネイプ先生がツンデレっていうのはどうしても想像できないわ……」

「ちょっと待ちなさい、なんであなた達私がモデルとして扱われているのよ。ありえないでしょう、別に私はツンデレじゃないわよ」

「ふふふふふ、そう言っている人こそ、真のツンデレという物なのですよ――あ、着きましたね。では、入りましょうか」

 

 魔法薬学の教室はとても気味が悪い教室だった。城の中の教室よりも少し寒く、壁にはずらりと並んだホルマリン漬けやらアルコール漬けの動物の入ったガラス瓶が立ち並び、その上明かりは上から吊り下げられたランプのみ。私は別にそこまで怖くないが、ダフネは気味悪そうに自分の肩を抱いていた。

 スネイプ先生もフリットウィック先生と同じようにまず初めに出欠をとった。そして、ハリー・ポッターのところでちょっと止まって。

 

「あぁ、さよう」と猫なで声でだ。

「ハリー・ポッター。我らが新しい――スターだね」

 

 といった。マルフォイやらクラップ、ゴイルはクスクス冷やかし笑いを漏らしたが、ハリーやロン、グリフィンドール生はいらいらしていた。出席を取り終わると先生は生徒の方を見まわした。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ――」

 

 スネイプが話し始めた――私はメモを採り始めた――。呟くような話し方なのに、生徒たちは一言も聞き漏らそうとしなかった。

 

「このクラスでは杖を振り回すようなばかげたことはやらん。そこで、これも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち上る湯気、人の血管の中を這いめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。吾輩が教えるのは、名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である――まあ、ただし、吾輩がこれまでに教えて来たうすのろ達より諸君がまだましであればの話だが」

 

 大演説の後はクラス中が一層しーんとなる――事はなく、私が拍手をし始めた―ハーマイオニーは自分がうすのろではないと証明したいかのようにうずうずとしていた。

 スネイプが突然、「ポッター!!」と呼んだ。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

(簡単じゃないですかハリー、それだけじゃ何にもなりませんよ)

と私は思ったが、聞かれたのはハリーなので黙っていた。まあ、ハーマイオニーはすっと手を上げていたのだが

 

「分かりません」とハリーは答えた。

 

スネイプ先生は口元でせせら笑うと、

 

「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい。ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、何処を探すかね?」

 

 ハーマイオニーはさらに高く、椅子に座ったままあげられる限界まで手を伸ばした。いい加減学習しないのだろうか、そういうのは先生によってするかしないか決めなければならないのだ。この場合、スネイプ先生は確実にハリーを憎んでいるか、スリザリンをよっぽど贔屓してるのかのどちらか、もしくはどちらもだ。だからハーマイオニーは手を上げるべきではない Q.E.D.

 

「わかりません」

「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったということだな、ポッター、え?」

「最後だ。ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だね?」

 

 この質問でとうとうハーマイオニーは立ち上がり、地下牢の天井に届くくらいに手を伸ばした。

あまりにもハーマイオニーが可哀想だったので、私も手を上げた。

 

「わかりません」

「ハーマイオニーが分かってると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

「いや、座りなさい、ハーマイオニー。射命丸、君は分かるらしいな、どうだね?」

「ええ、分かりますよ。まず、最初の質問ですが、アスフォデルとニガヨモギを合わせただけでは特に何の薬になると言う訳ではありませんが、それにさらに刻んだカコウソウの根、催眠豆の汁などを合わせることによって、非常に効果の高い水のように澄んだ色をした眠り薬となります。「生ける屍の水薬」と呼ばれるこの薬は飲ませすぎると一生目を覚まさないこともあるそうです。そしてベゾアール石は石ではなくヤギの胃から取り出されます。萎びていて茶色く、石というより干涸びた内臓のような見た目で、見つかることは稀です。そして最後にモンクスフードとウルフスベーンの違いですが、まあ呼び方の差ですね。何方も同じトリカブトのことを指しています。トリカブトは日本では日本三大毒物にも数えられ、烏頭、烏レイブン頭ヘッドや附子などと呼ばれています。また、ヘカテーの象徴で、ケルベロスの涎からできたとも言われています。こんな感じでよいでしょうか。」

「ああ、満点回答だ。ただ惜しむらくはトリカブトはアコナイトとも言うな。ただ完璧な回答だ。むしろ吾輩でもここまで詳しく説明することはできなかっただろう。特にトリカブトの日本名などの説明は良かったぞ。スリザリンに十点だ、どうだ?諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?そしてポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点」

 

 その後の魔法薬の授業中はグリフィンドールいじめが続いた。スネイプ先生は生徒を二人ずつ組みにさせて、おできを治す簡単な薬を調合させた。私とパチュリーの組、マルフォイ、ダフネの組以外はほとんど全員が注意を受けることとなった。

 そしてマルフォイが角ナメクジを完璧にゆでたからみんな見るようにといった瞬間、地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がった。私はとっさに「カプトエア カヴァ頭を空気で包め」と叫んだのでパチュリーと共に特に問題はなかったが、ほかの人はネビルのこぼした薬とその気体を吸ってしまったようで咳をしている。

 

「馬鹿者!」

 

とスネイプが怒鳴り、杖の一振りで――おおかたスコ―ジファイ清めよの無言呪文だろう――で床にこぼれた薬を取り除いた。ネビルは薬をもろに被ってしまったのか、全身に真っ赤なおできが噴出し、痛みでうめき声をあげていた。

 

「おおかた、大なべを火から降ろさんうちに、山嵐の針を入れたんだな?医務室へ連れて行きなさい――いや、そういえばノーレッジとシャメイマルの組が完璧な調合をしていたな。ネビル、これを飲むのだ。そうすればおできも消えるだろう。まあ、出来ていなかった場合は酷くなるかもしれないがな」

「そして、ポッター、何故針を入れてはいけないと言わなかった?彼が間違えば自分の方がよく見えるとでも考えたな?グリフィンドールはもう一点減点だ」

 

 スネイプ先生は私たちの鍋から薬を瓶一杯分採ってネビルに渡すと、ハリーに理不尽極まりない減点を食らわせた。ネビルのおできは時間を逆転させたかのようにスーッと収まり、ネビルはこちらに感謝の念を述べてきた。

 スネイプ先生はこちらへと歩いてくると、私とパチュリーに一つ告げた。

 

「このあと時間は空いているだろう?奥の部屋まで来たまえ、魔法薬学については二人ともとても優秀なため、特別授業を行おうと思う。着いてきたまえ」

「あー、ごめんダフネ、あとで一緒にご飯食べましょう?」

「わかってるわよ~、私もすぐに追いつくからね、まあ、その代わり、今日の夜は覚えておきなさいよ!」

 

 そういってダフネは教室の外へと駆けていった。私とパチュリーは奥の部屋で紅茶を出してもらい、丸椅子へと座らされた。

 

「この特別授業では、そなたらのレベルを図りたいと思う。そなたらはどのくらいの魔法薬まで作れるのだ?」

「えっと、私よりパチュリーの方ができると思いますよ?まあ、フェリックス・フェリシスが一回だけ作れたことがありますね。」

「まあ、私は脱狼薬は作れるわよ、ああ完全脱狼薬ね」

「ふむ、それは私にも作れんな。どうやって作ったのだ?」

「それは企業秘密ね、強いて言うならばポリジュース薬をヒントにして作ったら上手くいったわよ」

 

 そう言うとスネイプ先生が驚いたようにパチュリーを見る。その発想はなかったとでも言いたいかのようだ。

その後、スネイプ先生は私にたくさんの書き込みがされた自身の教科書を送ってくれた。パチュリーにはいろんな分野の魔法役の論文だ。他にもいろんな議論を交わし、充実した時間を送ることができた。

 

 

 

 

――次の日

 

 私とパチュリー、ダフネはとても疲れていた。マルフォイの自慢話が止まらないのだ。ずっと「僕は小さいころから箒をやってきたから箒にはとても慣れてるんだ」とか、「僕の乗ってる箒はコメット260っていってとても早いんだ」とか本当にうるさい。正直なところ私が本気で飛べば音速は出すことができるので箒とかの話を聞かされても特に何の感慨もない。

 

「はぁ、マルフォイが言っているコメット260なんてただ派手なだけよ。ニンバス2001が最近出たらしくてね、それは最高時速が可笑しいくらいに出るらしいのよ!それにマルフォイはヘリコプターに遭遇したとかって言っているけど、貴族の屋敷にはちゃんとマグルよけの呪文がされているはずよ!」

「そうね、ヘリコプターが来るなんていう事はあり得るはずがないわね。まあ、半分くらいは本当かもしれないけど、嘘のやつも多いでしょうね。じゃあ、校庭に行きましょうか」

 

 そう言って校庭へと向かう。確かグリフィンドールと合同授業だったはずだ。20本ほどの箒が地面に整然と並べられている。学校の箒はシューティングスターと言って骨董品のような性能で全然使えないのだと双子のウィーズリーがずっといっていた。

 マダム・フーチが来た。白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしている。

「何をボヤボヤしているんですか」

「みんな箒のそばに立って、さあ早く。右手を箒の前に突き出して、そして、『上がれ!』という」

 

 みんなが「上がれ!」と叫んだ。

私とハリー、マルフォイ、ダフネ、そしてパチュリーの箒はすぐさま手に収まったが、上がった箒はあまりなかった。ハーマイオニーのは地面をころりとしただけで上がろうとしない。

 次にマダム・フーチは箒にまたがる方法を教えてくれた。マルフォイの握り方が間違ってると知らされて、ハリーやロンがずっと笑っていたのが印象に残った。

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルくらい浮上した後、前かがみになって降りてきてください。笛を吹いたらですよ――一、二の――」

 

 ところが、ネビルが笛を吹かれる前に飛び出して行ってしまった。

 

「こら!戻ってきなさい!」という先生の大声をよそに、ネビルは空気の抜けた風船のように飛んで行ってしまう。十メートルを超えたところで私は箒をもって飛ぶ振りをしながら飛び出した。真っ逆さまに落ちていく。後八メートル――六メートル――四メートル――二メートル――ローブの首を掴んだ――そのままゆっくりと速度を落とし、地面へと降り立つ。

 

「大丈夫ですか!?怪我は!?……無いようですね。良かった……何をやっているのですか!笛が吹かれてからと言ったでしょう!あなたもです、怪我がなかったからよかったものの、怪我をしたらどうするつもりだったのですか、ネビルを安全のため医務室へと連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにしておくように。さもないと、クィディッチの『ク』の字を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますからね!」

「えっと、文さん、ありがとう……」

「どういたしまして、目の前で死なれても目覚めが悪いですしね」

 

そう言って涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら先生にネビルは医務室へと連れられて行った。

 

「なんでネビルを助けたんだ!お前はスリザリンだろう!?」

 

 ネビルがいなくなった瞬間、私に向かって罵声が飛んできた。は?なんで助けたんだですって?

 

「何を言っているのですかあなたは、目の前で死にそうな人を見て助けるなとでも?そんな事言ってネビルが死んだらどうするつもりだったのですかねぇ、あなたウィーズリーでしたっけ?ハリーといつもつるんでる子でしたよね。本当に馬鹿なのでしょうか。これではあながち純血主義というのも間違っていないかもしれませんね、マグルに溺れてしまうと頭の回転が下がってしまう……と、こんなところですかね。それで?何か反論はありますかね?あ、これは確かネビルの思い出し玉でしたね、どうぞマルフォイ!」

 

 私が思い出し玉をマルフォイに投げるとマルフォイはにやりと笑って

 

「ごらんよ!ロングボトムのばあさんが送って来たバカ玉だ」

「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」

「それじゃ、ロングボトムが後で取りに来られる場所に置いておくよ。――おっと危ない!射命丸!」

「はいはーい」

 

 ロンが取り返そうとしてマルフォイが投げた思い出し玉をキャッチし、箒をもって飛び上がる。ハリーも私を追って飛び上がってくるので空中でホバリングをしながらハリーと向かい合う。

 

「ハリーさんじゃないですか、今日箒に乗るのが初めての人なんかに私が負けると思いますか?」

「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」

「あやややや、こわいこわい、か弱い女の子を箒から突き落とすだなんて、ハリーさんは野蛮ですねぇ。そうです!ネビルが後でとれるところに置いておきましょうか?そうですね――木の上、なんてどうでしょう?」

 

 私がそういった瞬間、ハリーの箒が槍のように私に向かって飛び出してくる――遅い、私は箒を持ちながら体をロールさせることによってハリーの箒を躱す。

 ハリーは鋭く一回転して、箒をしっかりつかみなおすと、私の方を向いた。

 

「パチュリーもここまではこれないぞ、ピンチだな、シャメイマル」

「あやや、パチュリーがいないと何もできないと思われてるのですか、心外ですねぇ、実戦では私の方が上だというのに、年季が違うんですよ年季が。では、こうしましょう。私がこれからこの思い出し玉を放り投げます。それを私とあなたで追いかけて、あなたが捕まえられたらこの思い出し玉は返しましょう。まあ、私がとった場合もネビルには返しますから安心してくださいね!」

 

 と言って、私はガラス球を空中高くに放り投げ、カウントダウンの用意を始めた。

 

「三――二、――一、――ゴー!」

 

 私がそう叫んだ瞬間、ハリーと私は一直線に急降下して、玉と競争していた。私が一歩抜け出す――天狗のスピードをなめてもらっちゃ困る――地面から一メートルほどのところで玉を掴み、空中でくるくるとターンを繰り返した。スリザリンから歓声が上がる。

 

「ハリー・ポッター…!」

「シャメイマル!」

 

 マクゴナガル先生とスネイプ先生が歩いてきた。あ、これやばいやつかしら。

 

「よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに」

「そうだ、怪我がなかったからよかったものの、ふとすれば大怪我に繋がっていたのだぞ、着いてきたまえ」

 

 私はダフネとパチュリーにグッドサインを送ってからスネイプ先生に引きずられていった。スネイプ先生はガーゴイルの彫像の前で立ち止まると「海苔せんべい」と言った。私は何で日本のお菓子の名前を急に言ったのだろうかと思ったが、それはすぐに分かった。ガーゴイルの彫像が頷くと、横へと開いていったのだ。「入りたまえ」といって奥の方へと進んでいく先生に私もついていくと今度は気の扉があった。スネイプ先生は二度ノックすると「入ってよいぞ」とダンブルドア校長の声が聞こえて来たので私にもここがどこだか漸く分かった。校長室だ。

 

「おお、よく来たの。スネイプ先生、用件は分かっておるぞ、そこの射命丸だろう、察するにマクゴナガル先生と同じことかの。クィディッチに一年生は出れないという規則を変えて欲しいというお願いかの?」

「ええ、その通りです。スリザリンのクィディッチチームのシーカーにと思いまして、あなたに直談判しに来た次第でございます」

「ほほう、そうか、そうか、別に良いぞ、いい選手が増えるのはこちらとしても大歓迎じゃ。射命丸、お主も頑張るのじゃぞ。もう相当の点数を取っているようじゃがの」

「ありがとうございます。クィディッチのスリザリンシーカーとして精一杯やらせていただきます!」

「それでのう、お主歓迎会の時にノーレッジと残っていたじゃろう、あの時は何を話していたんじゃ?」

「いえ、面白そうな先生が多いなぁ、という事と、どんな授業があるのかなという話だけですが。それとか弱い女子生徒の心を覗こうとするとは、やめた方がいいと思いますよ」

「そうか、引き留めてすまんかったの、では行ってよいぞ」

 

 私はそう言われて校長室を出ていく。だが風を操って校長室の中の音だけはこちらへと届くようにしておく。さっきの反応からして、こちらを疑っているであろうことはほぼ確定だ。クィレルについて気付いているということまではばれていないだろうが、それでも開心術をかけてくるくらいには疑っているのだろう。

 クィディッチチームに入るということは、箒を持ってきてもいいのだろうか、ブラッククロウは今鞄の中に縮小呪文をかけて入っているが。

 まあ、怪しまれないように明日フクロウ便で持ってきてもらうのが堅実な手だろう。

 

 

 

「え?退学の知らせとかじゃなかったの?」

「ええ、そうみたいですね。クィディッチのシーカーになってくれと言われました。『パチュリー、ダンブルドア校長がある程度私達を疑ってるみたいです。少し気を付けて』」

「そうなのね、確か一年生で二人も寮代表になったのなんて史上初でしょうね『分かったわ。行動にはもう少し気を付けましょう。まあ、ここから点を取らなくなっても逆に怪しまれそうだけどね』」

「へ~、そんなすごいことだったのね」

 

 夕食時、私を含めた三人はさっきの飛行訓練の時の話をしていた。ハリーも多分そうだ、まあ、退学するっていうのにあそこまで嬉しそうな顔は普通しないだろう。マルフォイがハリーの座っている机へと向かって言っている。

(む、あれはネタの予感がしますね……)

「ちょっと待っててください、ハリーとマルフォイが話しているので、少し混ざってきますね」と告げて、私は小走りでハリー達の方へと向かう。ネタの予感というのもあながち間違いではなかったようで、夜に決闘をするなどという話をしていた。

 

「面白そうな話をしていますね、私も混ぜてはもらえませんか?」

「射命丸……!」

 

 ロンが親の仇を見るような目でこちらを見てくるが、怖くも何ともない。というかなんで同じ寮の人を助けてあげたのにそんな目でにらまれなければいけないのか、その後の思い出し玉の事件が原因なのか。

 

「あや、ロン君じゃないですか、どうしました?そんな親の仇でも見るような目をして。それで、夜中の決闘でしたっけ。私も参加しますよ、楽しそうですしね。介添人というのが必要なのですよね。じゃあ私はパチュリーにしてもらいましょう。来るかどうかは別として、そちらはロンとクラップでいいですね?」

「ああ、構わないさ。真夜中にトロフィー室でどうだい?いつも鍵が開いてるんでね」

「あ、マルフォイ、先に帰ってて下さい。私はこちらの二人と話がありますので」

 

 手を振ってマルフォイ達を見送る。ハリーとロンが凄い形相で見てくるが、そんなに私のことが嫌いなのだろうか。

 

「まあまあ、そんな目で見ないでくださいよ~」

「何しに来たんだ」

「あやや、嫌われちゃいましたねぇ、いい情報を教えてあげようかと思いましたのに」

「君に聞くことなんて何もないよ、早く帰ってくれないかな」

「はいはい、分かりましたよ、じゃあ、最後に一つだけ――マルフォイの言葉は嘘です。そしてあなた方はトロフィー室には来ない方がいい、私は取り敢えず監視の目的で行きますが。もう一度言いますよ、マルフォイの言葉は嘘だから来ない方がいいです。では、また魔法薬学の時間に会いましょう」

 

 そう言い残して私はパチュリー達の方へと向かう。パチュリーに『今日、マルフォイ達が決闘をするというわなを仕掛けたので、これに乗じて四階の廊下を偵察しちゃいましょう』とだけ言って談話室へと向かう。

 もう少しでクィディッチの試合があるので、ブラッククロウを袋に包んで紫からもらったスキマへと放り込む。確かホグワーツにフクロウ便で届けてくれるらしいので、こういう時には本当に使い勝手がいい。

 十一時ごろになり、私とパチュリーは目くらまし呪文と消音呪文を目いっぱいかけてスリザリンの談話室を出た。いくつか部屋を通り抜け、地図を見ながらトロフィー室へと着いた。

 

「あやややや、ハリー、来てはいけませんよと言ったではないですか、恐らくマルフォイはフィルチに告げ口しているでしょう――ほら、足音が近づいてきますよ、さっさと逃げなさい!」

 

 私がそう怒鳴ると、ハリーとロン、そしてハーマイオニーとなぜかネビルが反対側のドアから消えていった。私とパチュリーは隅で臭い消し呪文をさらに使って縮こまっていた。

 ハリーが逃げ出していく途中にミスをしたのかすごい音がトロフィー室に響く。フィルチは悪態をつきながらトロフィー室から出ていった。

 

「ふぅ、ひやひやしたじゃない、あのヴォルデモート狂が、さ、パチュリー、さっさと四階の廊下に行きましょう?」

「ええ、転移呪文でいいわね」

 

 そう言ってパチュリーが懐からホグワーツの地図を取り出し、四階の右廊下をぐっと一回押す。すると私たちの周りにぼんやりと光る大きな魔法陣が現れ、私たちの体を飲み込んでいく。気付くと私は、小山ほどの大きさもある犬の前に立っていた。犬と言っても頭が三つもあるような犬だが。パチュリーはこの怪物がなんだかわかっていたようで、杖を一振りした。すると杖からきれいな音楽が流れ出てきて、怪物の周りへと進んでいく。何小節か聞いたところで怪物――さっきパチュリーがケルベロスと呼んでいた――ケルベロスは大きな音を立てながら沈んでいった。

 

「びっくりしたわね、まさかケルベロスが出てくるなんて思ってもいなかったわ。ダンブルドアもある程度考えてるみたいね、文、先に進む?それとも戻る?」

「もちろん進むでしょ、さ、早く行きましょ」

 

 そういってケルベロスの巨体で隠されていた扉を開けながら私は言う。ここまで来たらもう進む以外の選択肢はないだろう。扉を開けるとどこまであるかもわからないほどの穴が地下へ地下へと伸びていた。私が「ルーモス グラティス(光よ 自由自在に)」と唱え光の玉を下へと降ろしていくが、自分の妖力、魔力の操作範囲外に出てしまったことで、光は消えてしまう。パチュリーと今度は浮遊呪文を使いながらゆっくり降りていく。五分ほど降りると、植物の蔓で編まれた地面の上に立った。たしか、『悪魔の罠』と言ったか。パチュリーは太陽を杖の先から出し、悪魔の罠を日涸びさせた。

 

「はぁ、ホグワーツも落ちたものね、この程度の罠しか張れないなんて。本当にここが世界一の魔法学校なのかしら」

「ダンブルドアもまだ若造ってことでしょ」

 

 軽口をたたきあいながら奥へと進んでいく。気付くと、通路の出口についた、目の前にはまばゆく輝く部屋が広がっている。宝石みたいにキラキラした無数の羽の着いたカギが飛び交っている。

 私とパチュリーは呼び寄せ呪文を使って鍵を引き寄せると、他の鍵が襲ってくる前に鍵を開けて中へと入った。

扉にガガガという鍵が刺さる音が何度も響く。扉がぎしぎしときしむのでパチュリーが魔法を終わらせる呪文、フィニート インターカーテム と唱えると、鍵が落ちる音が何度もなった後、何の音もしなくなった。ほっとして次の部屋へと私たちは進んだ。

 

 次の部屋には驚くべき光景が広がっていた。見たこともないほど大きいチェス盤だ。チェスはレミリアの家で何度かやった(やらされた)ことがあったが、ここまで大きいのは初めてだ。

 パチュリーが黒のナイトへと触れ「チェスをしなければならないのね?」と聞くと、黒いナイトは頷き、馬は蹄で地面を搔いた。

 

 

「はぁ、やらなきゃダメなのね、じゃあ、私はナイトをやるわ、文はルークになってもらえるかしら」

 

 そういった直後からパチュリーの猛進撃が始まった。ほとんど味方の駒を取られることなく、もう少しで詰めだとわかるくらいのところまで持っていったのだ――これは後で聞いた話なのだが、パチュリーに何であんなにチェスが強かったのか聞いたところ「あんなこれから先の手がほとんど見える相手とずっとやらされていたら、そりゃあ強くもなるわよ」とのことだ。レミリアってズルい。

 

 まあ、チェスも難なく切り抜けた私たちは、次はどんな罠が来るのだろうかと内心ワクワクしながら次の扉を開けた。だが、ただのトロールで、悪霊の火と神霊の風の呪文で簡単に対処することができた。

  次の扉にはただテーブルがあって、その上に七つの瓶が整然と並べられていた。

扉の敷居をまたいだ瞬間、入り口に真っ赤な炎が燃え上がった。同時に前にも黒い炎が上がった。

私が瓶の横に置かれた巻紙を取り上げると、こんな文が書いてあった。

 

「前には安全 後ろは危険

 君が見つけさえすれば 二つが君を救うだろう

 七つのうちの一つだけ 君を前進させるだろう

 別の一つで退却の 道が開ける その人に

 

 二つの瓶は イラクサ酒

 残る三つは殺人者 列に紛れて隠れてる

 長々居たくないならば どれかを選んでみるがいい

 君が選ぶのに役に立つ 四つのヒントを差し上げよう

 

 まず第一のヒントだが どんなにずるく隠れても 

 毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左

 第二のヒントは両端の 二つの瓶は種類が違う 

 君が前進したいなら 二つのどちらも友ではない

 

 第三のヒントは見た通り 七つの瓶は大きさが違う

 小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入ってない 

 第四のヒントは双子の薬 ちょっと見た目は違っても

 左端から二番目と 右の端から二番目の 瓶の中身は同じ味

 

                        ……だそうよ、特に難しくも何ともないじゃない」

「小さい瓶が前に進めるやつね、でも一人分しかないわね」

「はぁ、そんなことしなくてもいいじゃない、……はい、これで通れるようになったわ。前に進みましょうか」

 

 黒い炎を抜けて扉を開くと、こじんまりとした石畳の空間が広がっていた。そこには四本足のテーブルが置かれ、その上にきらきらと妖しく輝く真っ赤な宝石が転がっていた。

 最後はダンブルドア校長がどんな罠を作ってくれているのか期待していただけに、なんも置いてないとわかって、分かり易く自分の肩が落ちる。

 

「あ~、ほんと拍子抜けね。ただの賢者の石じゃない」

「あはは、まあいいんじゃないかしら、ある程度は価値のある物なんでしょう?」

「いいえ、しかもこれ粗悪品よ。ただ魔力のある物を混ぜ合わせただけのね。もう賢者の石でこの空間埋め尽くしてやろうかしら、そうすればヴォルデモートも簡単に復活できるでしょうしね。この程度の賢者の石――そう呼ぶのもなんかいやね――なら何度も飲まないといけない水でしょうよ。本当の賢者の石で作ったのならば、神話に出てくるエリクサー、そしてギリシャのネクタル、アンブロシアが賢者の石のことだと思うのだけど、または幻想郷にもあるらしいわね、日本の蓬莱の不死の薬と同じようなものができるはずよ、一口飲むだけで永遠の命が得られるね」

「ほほう、そんなものがあるのじゃのう?儂も知らなかったわい、見せてはくれんかの?」

 

 バッという擬音が表示されそうなくらいの速度で私は振り返った。ヴォルデモートかとも思ったが違った。ただのダンブルドアだ。ホッとするとともに、違反がばれたことで何か弊害がないかと勘繰ってしまう。

 

「ええ、別にいいわよ。賢者の石程度ならいつでも――それこそここでだって――作れるわよ」

 

 パチュリーが手と手を合わせて、可視化できるほどの濃密な魔力を手の間に集め始めた。それは十秒ほどすると手の間からこぼれる水となり、一分もすると真っ青に輝く宝石となった。

 

「賢者の石なんて錬金術の頂点だなんだと言われているけれど、本質としては魔力を濃くして固めた魔力の結晶体なのよ。だから人間とは違う膨大な魔力を持っている私からしてみたら、賢者の石なんてただの魔力回復薬としての扱いでしかない」

 

 そう言いながら、少し魔力が足りなくなったのか、賢者の石を丸々飲み込みながらそういうパチュリー。 

 

「ふむ、お主はでは人間ではないと、そう言いたいのかね?」

「まあそんな認識でいいわ、私は魔法使いよ。こっちは妖怪、天狗と言われる種族ね」

「儂らの魔法使いとは違うのかね、違うようにもあまり見えんのじゃが」

「は?あなたと私が同じ魔法使い?あなた魔法をなめてるでしょう、不老となって全ての魔道を極めるのに何千年かかると思ってるのよ、私ですらまだ終わってないのよ?それをたったの百年とかしか生きていない人間風情が何を言っているのよ。悪だとか正義だとか、馬鹿馬鹿しい。探求心を忘れてしまった魔法使いは魔法使いとは呼べないわ。ニコラス・フラメルは確かに凄いことをしたのでしょう。だが、それを妻と一緒に過ごす時間に当てる?不老長寿となったのに魔道の研究に進まない?そんなのはもう魔法使いとは呼べないわ」

 

 パチュリーは喘息なのにも関わらず、これだけのことを一気に言って見せた。魔法使いの探求心というのは天狗である私にはわからないが、天狗にとっての組織と同じくらい大事なものなのだろう。まあ、私は別に組織とかはどうでもいいと思っているのだが。

 ダンブルドアがこっちを見てくるので、私も自己紹介と行こうか。

 

「まあ、さっきパチュリーが簡単に紹介してくれましたけど、自己紹介と行きましょうかね。幻想郷にて天狗社会の新聞記者をやらせてもらっています、烏天狗の射命丸文と申します。信じられないようでしたら背中をご覧ください」

 

 そう言って私は隠したうえ、背中でずっと折り畳んでいた羽をバサッと広げる。ずっと閉じていたので羽が痛いが、まあ仕方ないだろう。

 

「まあ、そこまでは分かった。それで、お主たちの要求は何なのじゃ?」

「いいえ、あなた達への要求は特にありません。私達の役目はこの場所を見守る事ですからね」

「ふむ、ならよいのじゃがのう、射命丸はクィディッチ、頑張るのじゃぞ。そして、クィレルがヴォルデモートだというのは知っているじゃろう?ハリーがやられないよう見守っていて欲しいのじゃ。まあ、お主らに命令などできないので、お願いという形になってしまうのじゃがの。良ければたまには校長室に遊びに来てくれてかまわん」

「ええ、授業は簡単すぎて暇をしていたので構いませんよ。では、ダンブルドア先生、また今度」

 

 ダンブルドア校長と別れた後、私達は談話室を抜けてすぐにベッドの方へと向かった。簡単だったとはいえ大分歩いたので、私は兎も角、体の弱いパチュリーは疲れてしまったのだろう。ベッドに入った後、すぐに寝息が隣から聞こえてきた。私も少し疲れているところはあったので、ベッドに入るとすぐに寝てしまった……、ダンブルドア校長は賢者の石をどうするつもりだったのだろうか?

 

 




 いかがでしたでしょうか、切る場所が見つからず少しグダグダになってるような気がするので、あとで修正するかもしれません。 
 
 本格的に夏休みに入ったので投稿ペースが宿題のせいで下がるかもしれません。

 では、また次回お会いしましょう!

・今回出てきたオリジナル呪文

デウス ヴェンタス《神霊の風》 風を自由自在に操る魔法。強者が使うと、伝説上の怪物の姿を取ることもある。ここでは元からあったわけでなく四大元素の中で火と水のみあったという設定だった。

ルーモス スピリタス《精霊の光》 強烈な守護の光を放つ魔法。ディメンターやそのほかの闇の魔法生物にある程度の被害を与えることができる。難易度としてはO.W.Lくらいの簡単なイメージ。反対呪文はノックス エクスピラビット《怨霊の闇》。

ルーモス グラティス《光よ 自由自在に》ルーモスの光源を空中で移動させる魔法。要するに狐火みたいなもん。


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