ドラえもん のび太の聖杯戦争   作:悪・猫

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62.聖杯戦争開始九日目/追憶の古傷.中編~鉄人兵団編~

デマオンを倒した俺は普通の人間なら生きていけないような極寒の地、北極へ来てきた。

 

凍えるような白銀世界の中で俺は一人、テントを立て、ひっそりと暮らしていた。

 

いつ凍死してもおかしくない、運が悪ければ白熊に寝込みを襲われ、手足を食いちぎられるかもしれない、そんな環境下の中、俺は一人、自分の死を待ちながら過ごしていた…

 

この世界では銃器はこの極寒の地では役に立たない、この氷点下で銃の内部は凍りつき、作動しない。

 

あの土に埋めても、川に沈めても整備すれば作動するAKやドラグノフ狙撃銃でさえ、この氷点下でセーフティが凍りつき、作動することができない、その他も銃器も同様である、トカレフこそ、安全装置はないものの、氷の粉が内部に入り込み、スライドと干渉してしまい、うまく作動できず、その他の銃器この気温のせいで作動できない

 

唯一、頼れるもののと言えばジャックが最後に残していったサバイバルナイフ、一本のみである。

 

このナイフでアザラシを狩り、なんとか生活できている。

 

そんなある日のことだった…アザラシ狩りを失敗し、冷たい水の中に漬かってしまい、凍える足を無理やり動かして、本拠地まで向かっていた

しかし、体はもう既に限界で、低体温症であと少しというところで倒れてしまった。

 

この時、悟った、ああ、ここで死ねるとやっとこの自然の中で…静かに死ねると………

 

 

とてもあっけない最後だなと思いながらも薄れる意識…そんな時、一瞬だが、とても珍しい髪の色した謎の少女が見えた気がした…

 

「さ…桜…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさい」

 

暖かい…それが意識が戻って最初に思ったことだった、そして、それと同時になぜ自分は生きているのかと?言う疑問に直面する

しかし、その理由はすぐにわかった、俺の隣にいたのは明らかに薄着な少女が本拠地で火を焚いていたからだ…

 

「よく生きていたわね、地球人にしては生命力が高いのね」

 

少女は他人事にように坦々と俺に対し、そう言った…そのことに思わず困惑しながらも俺は体を起こした…

 

「お前は……?」

 

「私はリルル、まさか、こんな極寒の地で人類が生存しているとは思ってもいなかったわ、まあいいわ、あなたほどの生命力を持つ人間ならいい奴隷になれるはず」

 

「奴隷?あぁ、そういうことか……おまえは人間ではないと言うことだな?」

 

すぐに彼女の発言ですべてを察した、彼女は人間ではない、人間でなければそんな薄着でこの極寒の世界で生きていられるわけがない。

それに彼女から生命力が感じられない、冷たい機械のような物が感じられるだけだった

 

「えぇ、そういうあなたは私たち、鉄人兵団にとっては有名人よ、あの【魔族】を壊滅させた張本人、名前は確か…【NOBITA】」

 

「鉄人兵団…?」

 

「えぇ、メカトピアの住民であるロボットによって構成された侵略部隊…私はメカトピアからいち早く地球に送り込まれた【工作兵】…ここを鉄人兵団の本拠地とするためにここに来たの」

 

「ご苦労なことだな、それで…俺が最初に捕獲された地球人だということか…」

 

「えぇ、あなたはこの地球を侵略するにおいて、もっとも危険な人物、聖杯の破壊、そして、我々メガトピアと同じ勢力を持つ魔族の撃破、あなたをいち早く確保できて幸いだわ」

 

「それはどうも…だが、安心しろ、俺はお前たちが攻めてきても何の抵抗しない、安心して侵略してくれ、むしろ、今ここで俺を殺してくれて構わない」

 

俺の言葉が意外だったのか、メカトピアから送り込まれた工作兵・リルルは唖然とした表情で俺をみる

 

「なんだ?」

 

「いいえ、意外な回答に少々びっくりしているだけよ、あなたはこの人類にとって、最後の防衛線だと思っていたわ。我々に匹敵する魔族を滅ぼした張本人がまさか、もう諦めているなんて…」

 

「別にあの時はしつこく頼まれたから動いただけだ、今回はその必要はない、人類を奴隷にしようと殲滅しようとお前たちの勝手だ、俺は決して手を出さない約束してやってもいい」

 

「…………」

 

思わぬ回答に余計混乱したのか彼女は俺の目をジッとみる。そんな彼女はどことなくロボットのような機械的な動きではなく、感情を持ち、行動しているように見えた

 

「心拍数も瞳孔の開き具合も変わらない…嘘をついているようには見えない」

 

「それはそうさ…なんなら俺と取引をしないか?」

 

「取引?」

 

「あぁ、これからお前たちの本拠地の配置を手伝ってやるよ、そのかわり、地球侵略作戦が開始する前に俺をお前の手で殺せ…」

 

「私が…あなたを殺す?」

 

「なんだ?お前たちの兵器だったら俺くらい簡単に殺せるだろ?それに俺を奴隷にするよりも殺した方が今後のお前たちにとっても得だろ?」

 

「……理解できない、だけどいいわ、あなたみたいな死にたがりいつでも殺せる、その取引に乗ったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから始まった…メカトピアの送り込まれた少女・リルルとの生活……巨大ロボット・ジュドーの組み立てや本拠地の作成など、できる限りのことをした。

ジュドーの武装の拡張、魔法による防御結界など、数十人の上級魔術師でも太刀打ちできぬようにすべての弱点を潰していった…

 

「明日、鉄人兵団が地球に到着し、攻撃を開始する…その前にあなたを処刑するそうよ」

 

リルルの報告に俺は「そうか」と軽く返事をしながらジュドーの最終チェックをする…そんな日々を送りだしてから三か月後…出会って以降、雑談と言える会話はなかった、しかしリルルが突然、俺に話しかけてきた

 

「気になったのだけど、あなたはロボットに対して、抵抗が全くないのね…普通なら人類は機械を物と見下しているはずなのに」

 

「当たり前だ、俺にはロボットの【親友】がいた…俺からしたらロボットは物じゃない…俺は人類とロボットは共存できると思っている」

 

「人類とロボットが共存…?そんなことありえない、ロボットは人間よりも賢く、効率的よ…人間はおろかで残忍で、醜い」

 

「確かにな……俺もそんな醜い人間を見てきたさ、だからこそ、今回は人類を守る義務は俺にはないと考えている」

 

俺の回答を聞いて、しばらく無言が続く…しばらくたった後、再びリルルは俺に対し問いを投げかけてきた

 

「あなたには大切な人はいないの?」

 

「いない」

 

「あなたが言っていたロボットの親友は?」

 

死んださ(・・・・)

 

「死んだ?壊れたんじゃなくて…?」

 

「あぁ、僕の親友は確かにロボットだったさ、だけど僕は道具とも、ロボットともとらえていない【親友】と思っていたんだ。【壊れた】は物に対しての言葉だ…親友に対して【亡くなった】というべきだ」

 

「つまり、あなたはその親友を一人の【人間】と捉えていたの?」

 

「…難しい話さ…彼はいつまで立っても親友だ、もし、君たちが地球を侵略せずに人類行く末を傍観するのであれば君の疑問の答えがでるさ」

 

俺はそう言いながらカバンからドラえもんの形見である四次元ポケットをとりだす…今もそうだ、ドラえもんなしでは誰も守れない。

ピー助や、ロップル君…ペコやエルの国を救えたのもドラえもんのおかげだ…ドラえもんと四次元ポケットがあるからだ…やはり、俺は昔と同じ、【弱虫のび太】だ

 

「矛盾してるわ、あなたが言っていることは…あなたは私たちの目的を傍観すると私に言った、だけど、今は逆…傍観しろと言っている」

 

「………そうだな、さっきのことは忘れろ」

 

「やっぱり、あなたは生きたいの?あなたの話を聞く限り、あなたには心の残りが」

 

それ以上は言わせなかった、彼女の首元にナイフを突きつけ、彼女の発言を遮った。

 

「俺に心残りなんてないさ…俺は早く死んでしまいたい…親友を救えず、大切だった人も救えなかった、そんな俺に存在価値なんてない…俺は早く死にたいんだ」

 

 

恐れていた、彼女が【機械】ではなく、【人間】に変わろうとしていることを…最初にあった彼女は国から与えられた使命に従順で、信頼していた。

そのことは彼女がここに拠点作りで十分に感じていた、もちろん、俺にメカトピアのことを語るときもそうだった

しかし、そのことに対し、俺は余り干渉しなかった、人間と機械…俺が言っていた【共存】の話は嘘ではない、しかし、今回においては話は別だった、俺は早くこの世から消えてしまいたい

 

早く死んで楽になりたかった、こんな俺が生きていること自体、許されるわけがないのだから…もし、リルルに感情と言う概念が生まれてしまえば彼女は俺を殺さないかもしれない…

リルルと出会って気づいたが、彼女も鉄人兵団も人間と同じ知性を持っている、人間と同じ文化をたどり、そして、人間が犯した間違いを通ろうとしている。

それに気づいたとき、彼女はどう思ってしまうのであろうか?しかし、今はそんな感傷している場合ではない、俺の目的はこの世を去ること…死んだ後の人類や今後のリルルたちの未来に干渉する必要性はないのだから

 

「そう、なら私が自らの手で明日、殺してあげる…」

 

彼女は冷酷な眼で俺を言った…そのことに安心した俺はナイフを降ろした…

 

「最後にお願いがあるの、そのポケット、私たち、鉄人兵団に渡してくれないかしら?あなたが言うロボットに興味があるから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつが魔族と魔星を滅ぼした張本人か…まさか、早々に捕獲できるとは…よくやったリルル」

 

「はっ!」

 

リルルの言う通り、この極寒の地に鉄人兵団がやってきた。

鉄人兵団の総司令官なのか?金色のロボットは上から目線でリルルに褒め、一本の棒に磔にされている俺を見た

 

思っていた人物よりもひ弱そうだったのか…少々鼻で笑いながら、リルルへ指示を渡す

 

「おまえが捕獲したのだ、おまえが手を下すがいいリルル、この者を処刑後、我々、鉄人兵団は地球侵略作戦を実行する!地球人ども一匹残らず捕獲するのだ!!」

 

総司令官の命令と共に雄叫びともいえる歓声が凍える世界で響く。

その世界で行われようとしている人類にとって最悪な事態だ、しかし、その人類でその計画を知るものは人類ただ一人、【野比のび太】一人だった

 

その気になればこのような拘束、簡単に解くことができる。そして―――――――あの時のようなこのロボットたちを破壊することは可能だ。

 

しかし、もはやその気はない。野比のび太と言う【魔法使い】はもはや早く死ぬことしか考えていない。自らの力が災いや望んでいない結果を生む…そんな出来損ないが生きていても意味がないから…

 

「約束通り…今からあなたを殺すわ」

 

隊長の命令が下った…リルルはその隊長の指示に従うため、指先に高出力のエネルギーを一点に集中する。

 

「あなたに最後に聞きたいわ、あなたはどうして…その力を…手にしたの?その特別な力を…」

 

「ロボットにはわからないことさ…それ以上、人間の感情に深入りするとおまえは【メカトピア】でやっていけなくなるぞ?」

 

「そう…まあ生憎…」

 

放たれた高出力のエネルギー…その一線のエネルギーは俺の腕を掠りながらも拘束具を貫通し…後ろにいる鉄人兵団幹部を装甲を貫通した。

 

「もう手遅れだけどね…」

 

金属音と共に冷たい氷の地面に倒れる鉄人兵団の幹部………その光景に鉄人兵団の兵士たちは目を疑った…

 

「リルル!!」

 

隊長の驚愕が入り混じった叫び…しかし、リルルは動揺する素振りも見せず、俺に取引を持ち込んだ

 

「私はメガトピアの発展のためなら何でもする…人類捕獲作戦は不効率と判断したわ…私は彼が言うロボットと人間が【共存】できる時代を見てみたい」

 

「リルル!!貴様!!我々は自由を求めるために、この地球の人類を奴隷にするためにやってきたのだ!!ロボットと人間が共存だと?人間は我々よりも愚かな下等生物だ!!」

 

「確かに…でもそれは我々も一緒です、もともと奴隷だった私たちがまた奴隷制度を作る…それは私たちメカトピア住民の過ちを再び犯すのではないのでしょうか?」

 

「リルル!!

 

「私はメカトピアを裏切ったわけでも、総司令官を侮辱しているわけではない…私はメカトピアの未来を考えているだけです…」

 

「リルル!!人間如きにメカトピアへの忠誠心を捨てるとは…!許さぬぞ…断じて!!」

 

槍を構え、電撃を放つ総司令官…その電撃は確実にリルルに直撃した…その強烈な電撃に悲鳴をあげながらも彼女は自身が言ったことを曲げなかった…

 

「私は…間違っていない!!」

 

「ええい!!おのれ!!おのれおのれおのれ!!!メカトピアを否定し!鉄人兵団まで否定するなど…!!このごみが!!」

 

槍で倒れたリルルを嬲る総司令官……腕が取れても…どこかが破損しても…彼女は自身が言ったことを曲げない…

 

「これより…ゴミと【NOBITA】を処刑する!!このごみがぁぁぁ!!」

 

「…………ロボットも人間も愚かだな、自分の過ちすら認めないんて」

 

リルルを槍で突き刺そうとする総司令官の顔面に靴底に仕込まれたスパイクが食い込む…そのまま冷たい地面に総司令官を踏みつぶし…総司令官から奪った槍を総司令官の胴体に突き刺した

 

「貴…様……」

 

その一言のみを残し、機能を停止する総司令官…漏れ出すオイル…総司令官を呪いの泥で飲み込み…俺は鞘からナイフを抜いた…

 

「リルル…………」

 

倒れるリルルに心配そうにみると…彼女はもう既に起動停止寸前…その光景に思わず、NOBITAは眼をそむける

 

「眼をそむけないで…」

 

破損した体を動かし、俺の袖を引っ張る…リルル…その手には破損だらけだったはずの綺麗な四次元ポケットだった。

 

「あなたが言っていたことは本当だった…そのポケットには人類もロボットも助けられる不思議な道具ばかりだった……私たちの国は兵器ばかり…そんな人助けをできるような道具なんて…なかった」

 

「お前………」

 

「本当は…あの時、あなたと最初にあったとき…私はあなたを殺すつもりだった。だけど殺さなくてよかった…あともうちょっとで…メカトピアは同じ過ちを犯すところだった…」

 

「リルル…」

 

「私は此処までようね…でもメカトピアの間違いに気づけた…でも、その間違いを正すことはできなかった…お願い…鉄人兵団を…止めて」

 

リルルの言葉にあの光景がフラッシュバックする…オイルまみれのドラえもん…突き刺さった槍は確実にドラえもんの命を奪った

いつまでの忘れられないあの光景…思い出したその光景に感情的になりながらも歯を噛みしめた。

 

「俺は誰も守れない…現に君も守るところか…」

 

「えぇ、でもあなたは……誰よりも優しい、その優しさはいずれ、あなたが守りたい者を救えるわ…」

 

「……………」

 

「だからお願い…人類を見捨てないで…自分に失望…」

 

リルルの言葉を遮るように放たれるレーザー…そのレーザーはリルルの胸を貫く…

胸を貫かれたリルルに思わず、彼女を抱え上げる…

 

「リルル!!」

 

「失望…しないで…自分に…失望…しないで…あと、ジュドーを…頼んだわ」

 

風前の灯火のようにチカチカと光る眼――――――――しかし、その眼が消えたと同時にリルルの頭は地面に転がった。

 

「お前たちは…リルルの言葉を理解していないのか!!リルルの言う通りだ!!お前たちがやっていることは…やっていることは…!!」

 

俺は叫んだ――――――――――しかし、鉄人兵団たちはプログラムされた通り俺にレーザー兵器を向ける。

その姿に思わず、眼を背けながらも…四次元ポケットに手を突っ込んだ…重々しい感覚と共に四次元ポケットから現れた【ジュドー】…その眼は悲しそうで…彼ら鉄人兵団にレーザー砲を向ける

 

「…………ちっ!!」

 

呪いの影を複数展開しながらも…ジャックのナイフを抜き…靴底に装着されたスパイクの感覚を確かめた…

そして、すぐにテキオー灯を取り出し、自分が所持している銃器にその光を浴びせ、銃器の内部に銃弾を送り込んだ

 

「【NOBITA】…お前たちは俺をそう言って、恐れていたな…そうだよ、俺は【野比のび太】じゃない…俺の名は…【NOBITA】だ」

 

リルルを地面におろし…襲い掛かる鉄人兵団たちに銃を突きつける…そうリルルの願いをなるべく守るように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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