高みを行く者【IS】   作:グリンチ

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潤、心からのメッセージ


   *``・*。        。*・``*     *``・*。       。*・``*
もう|   `*。 `  。 *`    |☆  |    ` *。  `。*`    |
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  `*。ヽ   つ*゚*☆・+。⊂   ノ。+ ☆ +。ヽ   つ。+・☆*゚*⊂   ノ 。*` どうにでも
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   ☆ ∪~ 。*゚ . (´・ω・`)∪ ☆    ∪(´・ω・`) . ゚*。. .~∪ ☆
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             ~∪    なーれ♪  ∪~


2-4

学園祭前日、一夏はコスプレ喫茶に一定の不安を感じつつ行事を楽しみにし、潤は極度に緊張していた。

一夏が明日の準備に奔走するように、潤も何時襲撃があっても大丈夫なように戦支度をしていく。

投げナイフ、ブロードソードを磨き、少しでも動きやすくなうように、鎧には油等を用いてメンテナンスしていく。

きっかけは今日の朝、いたずら小僧の様にほほ笑む会長だった。

 

「生徒会も何か盛り上げに貢献しないと駄目だと思うのよ」

「いきなり何を言ってるんですか、会長」

 

虚先輩のお茶を美味しそうに飲み下して、会長が何気なくそう言った。

服装に付いては突っ込まない。

話してもいけない。

似合ってはいるが何故ドレスなんて代物を着込んでいるのか知りたくもならない。

ただただ、まーた会長の発作が始まったよ、美味しい紅茶が台無しだとばかりに尋ね返した。

 

「一学期は世界的なイレギュラーが起こって面倒事が多く、学園全体で行事の度に問題が起きつづけた。 そんな不測の事態にも負けず、皆の協力の上で学園祭が開催された。 生徒の長として、その献身に感謝の意を示すためにも、生徒会が率先して音頭を取って盛り上げないと駄目と思うのよ」

 

目を細めて威風堂々と述べる会長に、人の上に立つだけの事はあると思った潤は、同意するかのように軽く頭を下げた。

 

「会長の横で山積みになっている段ボールは、つまるところその話の為ですね?」

「何が入っているんですかー?」

 

本音が中身の詳細を聞きたそうに立ち上がると、会長は中身を空けて良いと本音に告げる。

しかし、本音がバリバリガムテープを引っぺがす段階で一度待ったをかけた。

 

「あーっと、本音ちゃん。 開ける段ボールは自分の名前が書いてある奴にしてね」

 

見ると、確かに段ボールには個別に名前が記されている。

簪も自分の名前が書いてある奴を手に持ち、潤もそれに倣って段ボールを――お、重い?

カチャカチャ鉄がぶつかり合う音が聞こえるからには、何かの道具なのかもしれないが、それがどうやって盛り上げに貢献できるのだろうか。

中身の詳細を気にしていると、本音が最初に段ボールを開けたので観察してみる。

中から出てきたのは――

 

「かいちょう、これは?」

「ずばり──コスプレよ!」

 

黒猫の着ぐるみ、某女優が終身医療保険のCMで用いた、パンダの着ぐるみの様な代物だった。

簪と潤がシラケている様を見た会長は、咳払いを一度して仕切り直しをすると、概ね次のような説明をした。

生徒会の出し物が『シンデレラ』であること。

会長以外の生徒会関係者は劇には参加できないが、お姫様役はその他全校生徒の自由参加であること。

印象付けをしっかりするために、生徒会メンバーは朝からシンデレラに関係する衣装を着る事が決まっていること。

会長はお姫様役のドレス、ようやく服装に合点がいった。

 

「私は魔女ですか」

「通気性は確保したけど、熱いかもしれないから体調には気を付けてね」

「分かりました、楯無さん」

 

本音はさっそく黒猫の着ぐるみを着てはしゃいでいる。

普段の格好とイメージが被るので、何も違和感がない。

 

「お姉ちゃん」

「なに?」

「……なんで、メイド服?」

 

確かに、かなり似合いそうな雰囲気はある。

上に立つ人に共通する独特な雰囲気を持つ会長が着るより、儚げな感じがする簪の方が遙かにいい。

しかし、シンデレラにメイドいたか? と聞いてみたら会長の趣味だと発覚、簪が会長をポカポカ叩くといった微笑ましい一面が垣間見ることが出来た。

結局会長が潤を巻き込み、潤がメイド服を着た簪が見たいと誘導して事なきを得た。

さて、自分のは、と潤が段ボールに手をかけた時、なぜか物凄く気が引き締まるような感じがした。

理由なんか一切分からず、何故かこれを開いてしまうと、この生徒会での穏やかな世界に罅が入ってしまう様な、そんな酷い事になる気がした。

潤の能力が促す予知、その嫌悪感に苛まれていると、そんな事など知りようもない会長が段ボールを開いた。

 

「潤くんは騎士ね」

「いや――これは、マジですか?」

 

中に入っていたのは、儀礼用の騎士甲冑。

エルファウスト王国が定める儀礼用の代物で、魔力持ちならその騎士甲冑に『BANSHEE』と刻まれているのが分かる。

BANSHEE、日本語読みで『バンシー』。

バンシーは、イギリス本国付近に伝わる妖精であり、家人の死を予告すると言われている。

死を運んだり害を与えたりはせず、ただ死を告げるだけとの説もあるが、概ね死を告げる存在として有名である。

地位の高い人間、名声のある人間に対して、何処からともなく集まり、死を告げる。

そんなイメージが合致したのか、それとも心の奥底でよく泣いていたから丁度いいと思ったのか、潤のコールネームがこれだった。

エルファウスト王国の儀礼用騎士甲冑、しかも潤のコールネーム入り。

 

「――ん? 頼んでいたものと少し違う様な……」

「でしょうね……」

 

穏やかでない潤の表情に、只ならぬ不安を感じさせ、翌日の学園祭を迎えた。

 

 

 

----

 

 

 

生徒会でちょっとした注意次点を確認したので、少し遅れての一組到着。

ふわふわでもふもふの黒猫と、何故だか非常に様になっている甲冑を着込んだ騎士の二人。

儀礼用なので完全フルプレートではなく、某運命のゲームに出てくる男の旧セイバーといった甲冑である。

人を斬れない様に細工が施されているものの、剣まで帯びているので、非常に懐かしさを感じ、それ以上に甲冑を着てIS学園に居る違和感が凄い。

 

「ちょっと脇を失礼します」

「わあ、ナイト様だぁ……」

「……えっ、うそ!? まさか、織斑くんどころか、小栗くんまで接客するの!?」

「しかも、織斑くんは燕尾服、小栗くんは騎士スタイル!」

「ゲームに勝ったら写真も撮ってくれるんだって! ツーショットよ、ツーショット!」

 

こんな感じで、一組の出し物、『コスプレご奉仕喫茶』は一年生教室の前を人の山で埋め尽くすほど大盛況となっている。

発案者がラウラだと知った時は、あまりに本人の性格にそぐわない発案にビックリし、変われば変わるもんだと大笑いした。

職員室で千冬が笑っていた理由も知れて大満足、と思いきや人の津波が起こることまで予測すべきだった。

 

「すまない、遅くなった」

「めんご、めんご~」

「おう、潤! 早く接客に加わってくれ、忙しすぎる」

「まったく、まだ執事の方がしっくり来るぞ。 誰だ、俺に騎士役なんてさせたのは」

「セシリア」

「Son of a bitch」

 

潤がいない間、引っ張りだこになっていた一夏は悲鳴のような声を上げて潤を歓迎した。

儀礼用の騎士甲冑なんて着ているせいで疲れがたまる。

こんなごてごてした鎧を付けたとしても、なんの役にも立たないのは誰でも知っているというのに。

装飾華美にも程がある。

着るのも二回目だったか、いや三回目? どちらにせよ嫌な感じだ。

当然機嫌も悪くなる。

 

「おおっ、潤、物凄く似合ってるね」

「まあ、俺の為だけに作られたフルオーダー品だからな。 ナギもメイド服似合うな。 くるって一周回って見せてよ」

 

リクエストに答えて、ナギが一回転する。

少しメイド服のスカートが舞い上がり、何か妙に高揚感がこみ上げてくる。

 

「どう?」

「おおっ、かわいいかわいい」

 

ラウラもそうだったけど、ヒラヒラでフリヒリの衣装って女の子ってイメージが強いので普段の三割増しで可愛く見える。

本音みたいな格好でも可愛く見えるけど。

 

「遅くなったな、一夏」

「ああ、潤か。 お前も早く接客班に加わってくれよ。 マジで忙しいぞ」

「わかってるって。 ……随分執事服が似合うな。 普段から姉に奉仕している賜物か?」

「嫌味か。 そういうお前も甲冑姿が似合ってるぜ。 今までそういう服で生活していたと間違われそうだな」

 

ちょっと男二人で嫌味を言い合い、声を出して笑いあう。

 

「一夏、小栗、持ち場に戻れ」

「……一夏が他の女に傅くのが嫌なのは分かる。 だけど、そんな所まで怒っていたら、その内愛想を尽かされるぞ」

「むぐぅ!?」

 

一夏が女生徒の接客のために移動したのを見計らって箒に話しかける。

一夏が自分でない女に接待するため、その順番待ちの報告を聞くたびにイライラして頬を膨らませていた箒の頬を引っ張ってみた。

思ったより伸びる。

ふくれっ面を解消するためにやった事だが、妙に柔らかくて、きめ細やかな肌の触り心地よくて、こねくり回すついでに堪能してしまった。

暫くやっていたら、流石に怒り出したのか脛を思いっきり蹴られた。

鉄ごしらえなのでちっとも痛くないが。

 

「笑えよ、箒。 身に染みて分かったが、お前の表情は人を遠ざける。 もう少し、笑え」

「ふん! ……まったく、変わったな、お前は」

 

確かに潤が夏休み終了間際になって、学園内部における男二人の人気バランスが崩壊した。

今まで大多数の織斑派に、消し飛ばされかねない小栗派だったのだが、学園祭当日の今となって拮抗しかねない勢力と化している。

トーナメントで圧倒的強さを見せた時も勢力が膨れあがったが、今回はその数倍の速さだ。

新聞部が取材しやすくなったと喜び、潤の記事が増えたのも、その勢いを助長しているのかもしれない。

だけど、今さらなんの切欠も無しに私がそうするのもなぁ、と箒は悩み、結局いつも通りに戻った。

 

「……簪か」

 

接客に参加すると、一組にやって来ていたのは簪だった。

ご奉仕喫茶で働く面々とはまた違った趣のあるメイド服に身を包んでいる。

しかし、やっぱり似合っている。

 

「潤……案内、よろしく」

「よし、切り替えていこう。 ――こちらです、姫」

「ひ、ひめ……?」

「そういう決まりなんだ。 今の俺は、姫に使える一人の騎士だからな」

「そ、そうなんだ。 ……私の騎士、私だけの騎士、か」

 

妙に嬉しそうな表情で簪が反芻しているが、このまま出入り口で立ち止まられても困るので、お手を拝借して空いた席に案内する。

内装はオルコット家が用意した調度品が用いられており、学園祭なのに高級感あるカフェになってしまった。

特にテーブルとイスのこだわりは凄い物で、最初何の気なしに触れたのが、王侯貴族との付き合いがあった潤、更識家で同じような物を見たことのある本音、用意したセシリア程度だった。

調理担当のクラスメイト達は手が震えない様にするのにも、多大な労力を割いているらしい。

 

「ご注文は何になさいますか? 姫」

「え、えっと……」

 

そんな高級品のイスに、気負いなく座った様子を見て、改めて簪がお嬢様だったことを実感する。

会長だと無神経だなと思うのに、何故簪だとお嬢様だと思うのだろうか。

 

「……この、『騎士の奉公 フルコース』って、潤が関係してるの?」

「騎士はわたくしだけですので」

「…………決めた。 この『騎士の奉公 フルコース』ひとつ」

「『騎士の奉公 フルコース』がひとつですね。 それでは、まず初めにご説明させていただきます」

 

騎士の奉公 フルコース、とは騎士にあるまじき内容の接客体系である。

最初に、客である姫に騎士への叙任を行ってもらう。

叙任の儀式は基本的に、主君の前に跪いて頭を垂れる騎士の肩を、主君が長剣の平で叩くというものだが、『女の子の浪漫』とやらに横やりを入れられて複雑化した。

まず、刃を潰してあるだけの本物の剣を鞘から抜き出し、姫に預ける事から始め、跪いた潤の肩に剣を置き、騎士叙任の宣言と共に潤と誓いの文句を唱える。

誓いの文句は、一般的な騎士道精神を元に、『謙虚であれ、誠実であれ、礼儀を守り、裏切ることなく、弱者には優しく、強者には勇ましく、堂々と振る舞い、姫を守る盾となって、騎士である身を忘れず過ごす』といった内容を、結婚式で神父が問いかける例の『健やかなる時も~』の様に姫に誓う。

今日だけで何人の姫に忠誠を誓うのか、別々の人に誓いをたてる行為が騎士道に背いている気がするのだが、騎士道精神なんてケツを拭く紙程度と思えるような戦いを歩んだので、どうでもいい。

メイド服の簪が、顔を真っ赤に染めて誓いの文章を読み上げている。

潤も恥ずかしいが、何度か本当の叙任を受けたことが二度あるので問題なくできる。

そして、その後は潤が姫の正面に座り、にポッキーを食べさせてあげる。

その褒美として逆に姫が潤にポッキーを食べさせる、奉公とご褒美のセットが加わる。

衆人環視の中で、これは恥ずかしい。

そして最後に、サービスの一環としてお姫様抱っこして記念撮影をやって終わりになる。

このフルコースはお値段八百円、ぼったくりもいい所である。

 

――誰が考えたんだ。これ。 Fuck You. ぶち殺すぞ・・・・・・・・・ ゴミめ・・・・・・!

――金は命より重いんだ

 

 

 

「潤は、……恥ずかしくないの?」

 

簪に対して通算三度目のお姫様抱っこをして記念撮影、もうイチゴもかくやとばかりに顔を赤く染めた簪に問いかけられる。

正直、恥ずかしいです。

騎士甲冑も、叙任も、食べさせるのも、食べさせられるのも、お姫様抱っこも全部。

 

「いや、もう、やだ。 ラウラが企画者じゃなければ逃げてたね。 恥ずかしいし。 記念撮影だけなら良いんだけどな。 フルコースは勘弁してほしい」

 

フルコースを頼んだお客さん、今はメイド姿の簪をお姫様抱っこして写真撮影する騎士。

そんな妙なことを、潤はこれから半日近く続けることになっている。

お姫様抱っこする度に、女子がキャアキャア騒いで反応するのが楽しくなってきた。

 

もう、どうにでもな~れ(AA略)。

 

体重七十kg以下なら問題なくできるから騒がないでほしい、といっても女子には体重の軽い重いはかなり気になる分野なのでしょうがない。

軽い軽いと言いながらちょっと振り回すと、大体上機嫌になるので何度もやった。

我ながら随分変わった、と潤は自覚する。

一学期の頃ならこんなサービスはしなかった。

何回か姫に傅いたり、お姫様抱っこしたりして撮影していると、仄かな殺意と、分かり易い敵意を、魂が鋭敏に感じ取った。

条件反射で腰に挿してある剣を抜刀しようとし、何とか押さえ込んで発信源を探ろうと目を動かす。

 

一夏に話しかけている、ロングヘアーがよく似合う社会人。

 

一夏に警告したいが、目の前で陸上部の同級生が目を輝かせているので変に動けない。

使い間を作っておけば良かったと少々後悔するが、顔でなく魂を記憶したので今後大きな助けになるだろう。

表面だけ普通にして取り繕っていたら、背後から、その女性に小さな声で呼びかけられた。

 

「エル! てめぇなんでこんなトコに――」

「何か?」

「……あ」

「私は、小栗、ですが」

「……あ、その……すみません! 人違いでした」

 

潤の背中から話しかけた女性、そして先ほど一夏ににこやかな仮面で話しかけていた、敵意を持つ明らかに怪しい女性だった。

その女性も女性で混乱していた。

人違いどころか、むしろ、何で間違えたのか全く分からないでいた。

ここ最近、彼女が所属する、とある企業に入ってきた金髪赤眼の貴人といった風体の男、それと目の前のいかにも日本人といった風体の男。

何もかも違う――――が、この女性が困惑しているのは、確かに酷似しているからだ。

雰囲気が異常なほど似ているとでも言えばいいのか、学生がコスプレして楽しんでいるこの場において、一人だけ隔絶しているたたずまい。

 

「姫に接客中ですので、失礼します」

 

まるで肉食動物が獲物を狙うような眼光を最後に、潤が背を向ける。

そんなところもあの男を思い出す。

確かに、エルファウストと名乗ったあの男と小栗潤は似ていた。

 

 

 

----

 

 

 

一夏と潤が散々振り回され、幾度となく記念撮影をした後、一夏が一時的に接客班から離脱した。

学園祭の招待チケットで誘った友人を迎えにいくそうだ。

昔からの友人は大事だ、いなくなって始めて知った。

だから、しょうがないと思うものの、残った潤に接客の注文が殺到したので、いささか腑に落ちない。

それに、セシリアとシャルロット、箒と一緒に出かけたのも相まって相当な時間教室を空けている。

二人一緒にいなくなったらクレームが出るだろうから、せめて片方ずつ休憩に入ってくれと懇願されたので一夏が帰ってくるまで頑張るしかない。

しかし、織斑派はそもそも一夏狙いで来ているので、徐々にクレームが出始めた。

 

「遅いぞ!」

「悪い、悪い。 じゃあ、交代な」

 

最後に出かけていった箒と一夏が帰ってきたのを合図にハイタッチして交代。

潤の接客終了を宣言する。

えええええ~! と大音量のブーイングが廊下から聞こえたが何が悲しくて丸一日接客して過ごさなければならないのか。

 

「潤、私も交代だから、一緒に回るか」

 

女の子の持ち上げすぎで疲れてきた腕を揉み解していると、視線やや下から声をかけられた。

腕組状態の眼帯メイド、人のことをお兄ちゃんと呼ぶ軍人、属性多すぎるだろうに。

普段からとっつきにくい表情をしているラウラがメイド姿をしているというのが思いのほかうけたらしく、ラウラの人気は結構高かった。

 

「簪のときも思ったが、騎士とメイドはなんかミスマッチだな」

「確かにミスマッチだ。 ……似合っているとは思うがな」

「ラウラもメイド服、結構似合うな」

「ふふん、可愛いだろ」

 

かわいいだろうと自称し、潤にかわいいと評価された後、少しだけたじろいで、顔を赤くして笑った。

 

「ははは、自分で言うことか。 確かに似合っているけどな」

「で、どこに行く? 私は、茶道部とやらに興味がある」

「ならソコに行くか」

 

IS学園はどの部屋でも設備面でしっかりしているので、SADOUではなくしっかりとした本物の茶を飲めるかもしれない。

茶道部を目指してラウラと一緒に歩く。

道中で記念写真を何度か撮られ――――――

 

「………………」

「………………」

 

道端にウサギ耳が生えているのを見つけてしまった。

ウサギ耳といっても兎でもなく、バニーさんがつけている物でもなく、機械でできたウサ耳である。

 

――ああ、そういうことか、なんだかんだ言って、貴様が原因か。

 

「篠ノ乃博士、か? 相変わらず理解しがたい……? 潤? あにぃ? 潤、どうした?」

「ラウラ……、実弾装備はあるか?」

「い、いや、ない、が」

「訓練用の硬質ゴム弾射出タイプのグレネードランチャーは?」

「それならある」

「フラッシュグレネード、硬質ゴム弾射出タイプのハンドガン、ブリーチ用の爆薬も用意するんだ」

「随分重武装だな。 いや、落ち着け。 目が怖いぞ」

「怒ったらIS出す連中に比べれば落ち着いている。 あの女郎、正面きって頭下げる訳でもなく、こんな、こんな、――ふざけやがって! ぶっ殺してやる!」

 

メイドと騎士が、ウサ耳博士を追いかけるファンシーアトラクションが始まろうとしている。


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