ごく普通に恋をして   作:リヨ
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あの子のおうち

「さ、ちょっと散らかってるけど入って入って!」
「は、はい」
現在、俺はいろんな意味で危機的状況に追い詰められている。
俺が今いるのは、鈴木さんの家。とりあえず予想外すぎて理解が追いつかない。鈴木さんも困った顔をしてる。
「や、やっぱり俺帰ります!」
「でももう上がっちゃったし食べていったら?ねぇ?梓」
「…いいよ?」
「あ…………じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
負けた。いや、好きな子とご飯一緒できるのにこれを逃す手はない。
しかし、この時俺は肝心なことを忘れていた。
「ただいま」
「あらあなたお帰りなさい。見て!この子!」
「こ、こんばんは…」
「ん?……誰だ?」
「梓の彼氏!」
「ち、違いますってば!」
「…ほう?」
怖い!お父さんだよねこの人。目がすごく獲物を狙ってるような感じだ。射抜かれそう。
「…とりあえずご飯にしよう。さ、君も」
「や、やっぱり帰り」
「座りなさい」
「はい」
俺は無事帰れるのだろうか。

「それで、凌人くん、と言ったかな?」
「は、はい」
「梓と付き合ってどのくらいだ?」
「で、ですから付き合ってないんですって」
「ごまかさなくてもいいわよ!私嬉しいわ!梓ったらこういうこと全く話さなくて心配だったの!」
「お、お母さん!違うってば!」
「ほ、ほんとに違います!ただのクラスメートで!俺なんか陰キャラのオタクですから!」
「あら、そうなのー?彼氏ができたのかと思ったのに…」
「勝手に勘違いしたんでしょ…」
「まぁでも梓を送ってくれたのは感謝するよありがとう」
「い、いえ夜は危ないですし」
「なら、今から恋人になりましょ!ね!」
「何言ってるのお母さん!?」
「凌人くん、顔は普通だけどいい子じゃない!外見より中身よ!ほら!この人なんて顔は良くないし頑固だし後悔してるわ!」
「…」
お父さん可哀想だな…なんとも言えない表情をしている。
「た、確かに凌人くんは優しいけど…」
「…あら〜?」
なんかお母さんがニヤニヤし始めた。
「梓、あんた…」
「っ!や、やっぱりなんでもない!清水くんも忘れて!」
いや、絶対忘れません。だってこんなこと言われるのそうないし…というか初めて言われたし。
「…凌人くん」
「え?はい」
「梓とこれからも仲良くしてやってくれ」
「っ!……こちらこそ、俺なんかでよければ、すず…梓さんと仲良くさせてください」
「〜っ!」
「…ふっ」
突然お父さんが笑った。目線を辿ると隣にいた鈴木さんの方を見ていた。
俺も見ると、鈴木さんは何故か顔が真っ赤だった。
「ど、どうしたの鈴木さん?」
「な、なななんでもないよ…!」
「この子、凌人くんに名前で呼ばれて照れてるのよ!うぶねぇ」
「そ、そんなこと…!」
名前?………お、俺そういえばさっき鈴木さんのこと名前で呼んでしまった…!い、いやでも鈴木さんクラスじゃ名前で呼ばれることの方が多いし照れるのは違うんじゃ…?つまり、俺なんかに名前を呼ばれて怒っている!?
「ご、ごめん!名前で呼んじゃって…嫌だったよね」
「…え?」
「え?」
「…くくっ」
俺がそう言うと、何故か空気がおかしくなった。
「りょ、凌人くんってもしかして……梓、苦労するわよ」
「が、頑張れよ…くくっ」
「お、お父さん笑いすぎ!」
「俺何かおかしなこと言いました…?」
「い、いや、気にしないでくれ」
なんだろう。全くわからない。
「さ!お食事はここまでにして!後は2人で部屋に行ってなさい!」
「え、俺はもう…」
「そうだな。凌人くんももう少しゆっくりしていきなさい」
「は、はぁ…」
「え?え?お、お母さんお父さん!?」
「グッドラック!」
「も、もうっ…!………………じゃ、じゃあ清水くん行こっか」
「え?あ、うん」

「ど、どうぞ」
「お邪魔します…!」
初めて女の子の部屋に入る。しかもそれが鈴木さんなんて。
俺はかなり運がいいのではないだろうか。
「ごめんね、何も無いけど…」
「いや……あれ?この漫画」
「それ、最近読んでるんだ。私恋愛経験ないからそれで勉強でもしようと思って」
俺が見つけた漫画は、俺も今ちょうど読んでいる漫画だった。
簡単に言えば恋愛もの。
「俺も読んでるよ。今丁度いいところだよね」
「清水くんも?そうだよね!発売来週だから楽しみなんだ」
「鈴木さんって漫画とか読むんだね」
「うん。そんなに読む方ではないとは思うけど、一回はまったら集めたりはするかな」
「なんか意外だな。てっきり友達と買い物とかお茶とかしてるのかと」
「そういう時とあるけど、私あまり遊ばないかな。結構インドアなんだ私」
こういう普段ないイベントがあるってのはいい。
知らなかった新しい1面を知ることが出来る。
「俺も基本家にいるかな。外人多いし」
「私も。少人数で楽しくやりたい派かな。……どうする?なにしよっか?」
「うーん…」
今思えば何すればいいんだろう。恋人同士ならイチャイチャしてれば時間も過ぎていくだろうけど、俺達はそうはいかない。
「…中学のアルバムとか?」
ここで衝撃の事実発覚。俺と鈴木さんは同じ中学なのだ。
まぁその頃俺はまだ鈴木さんのことなんとも思ってなかったけど。
しかもあまり接点もなかった気がする。
「あ!いいね!待ってて…あった。わぁ、懐かしい!」
「俺あんま写ってないだろうな…避けてたし」
卒アルの写真ってなんかリア充共ばっかりで写りたくなかったんだよな。
「た、確にないね…あれ?これ…」
鈴木さんが指を指したのは、珍しく俺写った写真だった。
しかも鈴木さんとのツーショット。これはキャンプの時のものだろうか。
「こんなのいつ撮ったっけ…?」
「わ、私も覚えてない…」
恐らく俺が彼女に恋心を抱いていなかったから撮れた写真だろう。
少し照れてるけど。距離近い。この頃の俺が羨ましい。
「この時あまり話してなかったもんね…」
「こんな写真あったんだ…全く覚えてなさすぎて怖い」
「たまにこういうの見ると色々発見があるよね。…いいな…」
「しかも俺写ってるのこれだけだ…謎すぎる」
「あはは…」
一体どういう状況になったらこんなツーショットで撮れるんだ。
おい、昔の俺。
「…でも、昔を思うと今のこの状況ってすごいよね。清水くんと一緒にここにいること」
「確かに。…これ夢じゃない?」
「じゃあ…えいっ」
「いひゃいいひゃい」
鈴木さんは頬をいきなりつねってきた。良くあるやつだな。
「夢じゃないでしょ?」
「わひゃったふぁら…ふぁなひぃへ」(わかったから…はなして)
恥ずかしいし顔近すぎ。しかもなんか鈴木さん楽しそうだし。
もしかしてS?
「ふふっ、清水くん変な顔」
「鈴木さんがつねるからでしょ…」
「…………」
「…鈴木さん?」
突然鈴木さんは下を向き、口を閉じる。
「……楽しいね」
「いや、俺は痛かったんだけど…」
「………」
「鈴木さん?」
「……清水くん………………………………………………………好き」
「……………え?」
俺は鈴木さんの言葉が理解出来なかった。
好き?誰が?鈴木さんが。誰を?俺を?
「あ、え、えっと…そ、その…」
「…………ふふっ、冗談だよ!」
「へ?」
「冗談!うーそ!」
「う、うそ…?び、びっくりした…」
「清水くんすごい顔してたよ?」
「だ、だって…」
いきなり神妙な顔になってあんな事言われたらそりゃビビるでしょ。
もうこの子完全にSだ。確定。
「…もし本当だったらどうする?」
「…もうからかっても通じないよ?」
「…あはは、やっぱり?」
「多分今年一番びびったかも…」
「それなら成功だね」
「陰キャの俺に今のはダメージでかい…」
でも…今のがほんとだったら良かったのに。結局は夢物語か。
「凌人くーん?そろそろ時間大丈夫ー?」
「あ、ほんとだ。すみません!今帰ります!それじゃあ鈴木さん!また!」
「う、うん。気をつけてね」
「もう今みたいなのは勘弁な」
「うーん、それは保証できないな」
「鈴木さんが怖い…」
「ほら、早く帰らなくていいの?」
「え、うん。それじゃあまた」
「……………いつか、また、ね」
鈴木さんの最後の言葉は、俺の耳に届くことは無かった。

続く






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