今回は少し見やすくなるようにしました。行間を多めに取ったりしましたが...如何でしょう?
斬れない...いくらやっても手応えが感じられない...
無心となってヴァジュラテイルを斬りつづけていたナズキ。しかし、一向に思い通りにならない「モノ」に苛立ちを覚え始めた。
おとなしくっ...無様な姿にっ...なりやがれっ...!
ナズキがいくら新型神機使いとはいえ、まだ新人である。効率よくダメージを与える方法など知るはずもなく、ましてや初見の相手である。殺すことはできたとしても、嬲り殺すことなぞできやしない。
そして、もう一つ。彼が忘れていたことがある。
(...なんだ?少しづつ...戻ってる気が...)
アラガミはコアを摘出しないかぎり、蘇るということを。
ガゥゥゥゥゥゥ...
(!)
〜はたして怒り狂った新人戦士に
ゴァァァァルァァァァァァァ!
(なっ...)
〜コアを摘出するという冷静な判断ができただろうか。
(なんで...?)
スッ...
「うわぁぁぁぁァァァァァァァ!」
「おや、起こしてしまったようだね。」
右肩に触られた感触がある。だがそれは、アラガミの牙ではない。
(...えっ...?)
辺りを見渡すとそこは戦場ではなく、ラボであった。
「いや、すまない。どうもうなされていたようだから心配になってしまってね。」
すぐ近くから声がする。
「えっと...確か...」
「面識があまりないからね。ピンとこないのも無理はないよ。
私はペイラー榊。この極東支部の支部長だよ。『代理』のね。」
ナズキの肩に乗せられていた手を急いで取り払い、彼はそう言った。
細く、閉じているようにしか見えない目。およそ50歳とは思えないほどの白髪。何を考えているか分からない微笑み。
言われればすぐに分かるのだがすぐにはピンとこなかった。
「あの...博士、どうして僕が、ここに...?」
「ふむ...記憶にない、か...。報告通りだね。まぁ、簡潔に話すとしよう。」
ペイラーから聞いた話は次のようだった。
あの時、ヴァジュラテイルにとどめの「凶刃」を振るった後、復活した敵の不意打ちを食らいそうになった。そこをタツミに助けられたという。
タツミ曰く、その後急に倒れ込み、いくら呼び掛けても返事をしない放心状態にあったナズキを抱え、一旦帰投した、と。
「そして医務室に運ばれ、精神安定剤などで治療中の君に興味を示した私は、自分のラボに連れ込み、詳しく調べていた、という訳さ。」
「...でも、どうしてここへ...?」
「連れてきた理由かい?そうだね...。」
意味ありげに笑ったペイラーはこう質問した。
「君は、今の話に疑問を感じなかったかな?」
「...へっ?」
「私の話だよ。いや、正確にはタツミ君の話、かな。」
ナズキには心当たりはなかった。どれも自分が知らないとはいえ、筋が通っていたように感じたからだ。
...いや、ペイラーが自らのラボに自分を連れ込んでいたというのは納得してないが...。
「いえ...特に...」
「ふむ、そうかい。やはり新人の君には難しかったかな。」
ナズキはこの言葉に少しムッとしたがそんなこと御構い無しにペイラーは語った。
「僕は、タツミ君がアラガミに攻撃されそうだった君を助けた、...といったね?」
「はい...」
「その直前まで、君はアラガミに切りつけていた、というのは?」
「それは...何より自分が覚えていました。」
「ならばもう気づいてもおかしくないと思うけどね。」
「...えっ...?」
「妙だと思わないかい?いくらコアの摘出を忘れていたとはいえ、
ほんのわずかな間でアラガミが復活するなんて。」
「...そういえば...」
確かにそうだ。先程の悪夢でも疑問に思っていたのに。気づかなかった。
「そこに、私が君を連れ込んだ理由があるんだ。」
そして再び、意味ありげに彼は笑った。
「どうやら君のオラクル細胞には周りのオラクル細胞を活性化させる特殊な力があるみたいなんだ。
アラガミ、神機使い問わず、ね。」
「えっ?
「どうしてそのような事が起こりうるのか。わたしにもとんと検討が付かない。でもこれは事実みたいなんだ。タツミ君も君といた時、妙に調子が良かった、と言っているからね。だから気になって、このラボに連れ込んだんだ。」
「そう、だったんですか...」
にわかには信じられなかった。そのような不思議な力があるというのは。そして、認めたくなかった。
(アラガミ、神機使い問わず、ね。)
自分がいる事で、アラガミが強くなる。それは神機使いとして許せる事ではなかった。
「博士...。やっぱり、僕、クビですか...?」
不安ゆえにそう聞いた。いるだけで他の神機使いの邪魔となる。
そんな人材はいらないはずだから。
「うん?そんな事は無いよ?むしろ有難い事なんだ。その力はね。」
...?
「それって...どういう...」
「詳しい話は、いずれ分かるよ。」
ナズキの話を遮り、ペイラーはそう答えた。
「さて、やりたい事はあらかた済んだ。仲間も心配しているみたいだし、そろそろ戻った方がいいんじゃないかな。」
後ろを向き、振り返ることなくそう言った。
(一体...何を考えているんだろう...?)
「そうそう、一つ気になることがあるんだ。」
「あっ...はい、なんでしょう?」
「先程、私は自己紹介で支部長、と言ったはずだが、君は私のことを
迷わず博士、と言ったね?」
「えっ、あっ、あの...」
「何、少し嬉しくてね。支部長に就任してから久しくそう呼ばれなくてね。私もまだまだ博士として受け止めてもらえているんだな、って
思ったんだ。」
てっきり怒られるもんだと思っていたナズキはその話を、驚いた顔で聞いていた。
(やっぱり、何考えているのか、分からない...)
「やはり根が研究者だからね。支部長としているより、研究室にこもって実験している方が、性にあっているんだ。
さあ、無駄話はここまで。君にもまだまだやってもらうことがいっぱいあるからね!」
振り向きながら笑ったペイラーはそう話し、ナズキの背中を軽く叩いた。
その感触に、ナズキは
(くよくよせず進め)
といったメッセージが込められているような気がした。
「...はいっ!行ってきます!」
疑問こそあるものの、ナズキは自分に与えられた使命をこなそうと思った。
(アラガミが強くなるなら、僕はもっと強くなればいい。足を引っ張らないように、いや、むしろ自分がリードする気で行くんだ!)
力強くラボを飛び出たその足取りに、迷いはなかった。
「...そう、ナズキ君。君はとても大切な存在なんだ。その不思議な力。もはや必要不可欠な力なんだよ。」
...『彼』の為にも、ね...
END
久しぶりで変な文章になってるかもしれません。もっと精進します...,。
同時連載中のドラゴンボールの方との兼ね合いもありますが、精一杯頑張ります!
では、また、どこかで...。