granblue fantasy その手が守るもの side story   作:水玉模様

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ずっと間を開けていた雷霆公との戦い完結。





過去編 5-2

 雲海の島

 

 本来多種多様な生物が闊歩するこの島だが、そこに他の生物の影も形も見当たらなかった。

 

 在るのは三つ。

 島に君臨する絶対王者。星晶が生み出した、空に在らざる獣。

 星晶獣”雷霆公”

 そして雷霆公と対峙する二人のヒト。セルグとアイリスだけである。

 

 臨戦態勢に入ってから数分。互いににらみ合う形となったセルグと雷霆公は微動だにしないまま、動き出す機を伺っていた。

 音が消え、二つに強者が放つチカラの波動だけがその場を支配する緊張感に、押しつぶされそうになりながら。アイリスは目の前でセルグから目を離さずに、戦闘の始まりを見守る。

 

 

 ――――動く

 

 

 僅かな、何かを、アイリスは感じ取る。

 特訓の成果か、セルグの動きだす気配を感じ取ったアイリスの予想通り、セルグが構えていた天ノ羽斬が閃いた。

 

「ふっ!」

 

 小さく抜ける吐息と共に激戦の火蓋は切って落とされる。

 見えない剣閃。瞬く間に幾つも放たれる光の斬撃が雷霆公を襲った。

 

 ”五月蠅い攻撃だ”

 

 雷霆公はそれを受けながら平然と佇んでいる。痛くもかゆくもない。届く前に何かに阻まれて弾ける斬撃は雷霆公にダメージを与えることはできずに終わった。

 対する雷霆公は悠々とその歩みを進め、セルグの攻撃をものともせずに前進を始める。

 

「(防御力は高いだろうが、それだけではないな……さしずめ、結界系の防御能力といったところか。天ノ羽斬にとっては絶好の獲物だ)」

 

 攻撃を受けても微動だにせず歩んでくる雷霆公を見て、セルグはその能力を分析。攻撃をつづけながら次なる攻め手に移る。

 振り抜いた天ノ羽斬を納刀。強靭な脚力にものを言わせて、正面からの接近。15mはあろう距離を瞬く間にゼロにする勢いでセルグは踏み込んだ。

 

「光破!」

 

 渾身を込めた一閃。天ノ羽斬の特性が雷霆公の結界を切り裂き、そのまま一太刀を浴びせる。

 狙うのは前足を断ち切る一閃。だがそれは、固い外殻に深く傷をつけるものの大きなダメージとはならずに終わった。

 

 ”ほぅ……我の防御を貫く術を持っていたか。だが、その程度では我は痛くもない”

 

 小さな驚きを見せるも、全ては己を害する脅威にはならないと、雷霆公はセルグへ前足での一撃を見舞った。

 

「元々お前達にそんなものはないだろう? その余裕、長くは続かせん」

 

 無難に回避しながら、傷をつけるだけにとどまった己の技に胸中で舌打ちをして、セルグは雷霆公の防御能力の仮説を修正する。

 結界のような能力はおまけに過ぎない。雷霆公が持つ強みはそれ以上に頑丈なその体躯なのだと。そして攻撃能力は――

 

「――ッ!?」

 

 瞬間、セルグは大きく飛びのいて距離をとる。

 危機感を感じて飛びのいた刹那、セルグのいた場所には雷霆公が背負いし天輪から、雷が放たれた。

 

「なるほど、オレの剣閃以上に早い攻撃か……厄介だな」

 

 地面を焦がした雷霆公の攻撃の跡を見て呟く。

 空気を裂いてセルグへと奔る雷は、正に視認する前に届く必中の攻撃。

 今のは放たれる前に避けたから逃れられたに過ぎない。回避不可能な攻撃にセルグの頬を冷や汗が伝う。

 

 ”よく避けたと言いたいところだが、奇跡は二度は続かんぞ”

 

 天輪が唸り、次射の気配を伺わせながら、雷霆公はセルグを視線で射抜いていた。

 

「セルグさん…………」

 

 心配そうにつぶやくアイリスの声は届かず、雷霆公が発する雷の音にかき消されていく。

 第二波が来る――セルグの安否を憂うアイリスの視界に再び雷が奔った。

 鞭が弾かれたような音と共に放たれる雷撃は、セルグへと確かに届くのだった。

 

「セルグさん!?」

 

 回避はできていない。その場を動いた気配はなく、舞い上がった土煙に消えたセルグに、アイリスは恐怖と共に叫んだ。

 

 

 

「――――なめるな、雷霆公。避けられないなら、受けるまでだ」

 

 

 

 確かな声が聞こえ、アイリスはセルグの無事を確認する。

 雷霆公の目の前で佇むセルグは、天ノ羽斬を突き出していた。

 

 ”ほう……”

 

 開いていた目を細めてセルグを見やる雷霆公。

 雷が放たれる瞬間に突き出された天ノ羽斬が雷霆公の雷を引き寄せ、受け止めていた。

 

「いくらお前から放たれようと、雷の特性は変えられまい。放たれる側に向けて刀を突き出せば攻撃は受けられる。あとは、蓄えた天ノ羽斬のチカラで相殺すれば、対処は十分に可能だ」

 

 天輪から放たれる雷であれば、天輪に向けて天ノ羽斬を突き出せば雷は必ずそこへ向かう。

 光属性のチカラより生み出される雷は、同様の光属性を持つセルグなら相殺は容易だ。

 セルグは天ノ羽斬を避雷針として、攻撃を捌いたのだった。

 

 ”面白い……これまでのヒトの子では既に消し炭となっていた。やはり欠片、侮ることはできないか……”

 

 セルグを讃えるような言葉と声。雷霆公の雰囲気が僅かに和らぐ。

 

 ”ならば見せよう。星晶獣の本当のチカラを!”

 

 だがそれは決して友好的な気持ちからではない。油断も隙も無しの全力を出す事を決めた最後の緩み。

 次の瞬間には、セルグを巨大な重圧が襲った。

 ヒトとは桁の違うチカラの発現。二対の翼を広げ高らかに咆哮を上げた雷霆公はその身に宿るチカラを解放した。

 天輪が唸り、幾つもの光点が周囲を漂う。

 そこは正に、雷霆公が作り出した戦闘空間へと早変わりした。

 

「(武力のナタクに対してこっちは、肉体を使わない遠距離戦がメインか……その上体躯は耐久力に満ちている。極めつけはこの空間。何かがあるはずだ)」

 

 周囲を飛び交う光点に視線を巡らしながら、雷霆公を見据えたセルグは、天輪が光を放とうとしているのを確認した。

 すぐさま、天ノ羽斬を向けるセルグだが――

 

 ”無駄だ”

 

「ッガ!?」

 

 直後に視界が途切れそうなほどの衝撃を受ける。言葉にならない呻きを上げ、セルグの身体が崩れ落ちた。

 放たれた雷の直撃。光属性を宿し、その身に属性の加護があった故、致命傷にはならなかったが、受けた衝撃は大きかった。

 

「くっ、何故当たった……?」

 

 ”あの程度で防げるのであれば我はここに君臨していないだろう。欠片よ、お主こそ星晶獣を侮るな”

 

 受けきれなかった攻撃に動揺をしながらもセルグは天ノ羽斬を杖にして立ち上がる。雷霆公の言葉を聞き流し、再び蒼い瞳が雷霆公を見据えた。

 幸いにも視界がはっきりとしている。多少の痛みは押し殺せるし、肉体事態に大きな損傷はない。雷を受けたにしては軽傷と言える。

 だが、戦う術が大きく限定されたのは間違いがない。回避できない上に防御の選択肢も奪われた。

 防御も回避も不可能な攻撃を繰り出されては受けて耐えるのみ。ヒトの身であるセルグにそれを受け続けるような余裕はあるはずも無い。

 

「(躱せない以上、受けるか撃たせないかのどちらかだ……ここは)」

 

 思考が固まった瞬間に再びセルグは接近。

 

「おぉお!!」

 

 一閃。横合いから斬りつけたところでセルグは跳躍し雷霆公の逆側へと回りながら、落ち際にまたも斬りつける。

 雷霆公の身体は大きい。横や後ろに回り込みつづけ、狙いを絞らせないで戦えば攻撃を受けることはない。

 脇腹から、尻尾へ、背中を足場に翼へと。ありとあらゆる体の部位を、斬りつけていく。

 出血はなくとも、その傷は徐々に増え、深みを増し、雷霆公の身体には確実なダメージを蓄積していった。

 振るう度に鋭さを増していくセルグの斬撃は、徐々に雷霆公の斬り方を覚えて加速していく。

 予想以上にセルグの動きが速かったのだろう。

 強靭な防御力で受け、隙だらけの相手を狙う雷霆公の思惑が崩れ始めた。

 

 ”ちょこまかと、良く動く……だがこれでどうだ!”

 

 セルグの接近の瞬間を狙い、雷霆公は天輪より雷を降らせる。

 狙いなどつけなくても良い。それは雨の如く降らせれば、確実にセルグの命を刈り取れるであろう攻撃なのだから。

 だがセルグとてその攻撃は読んでいた。

 雷が降り注ぐ直前にセルグは予備の剣を天輪に向けて投てき。降り注ぐ雷が天輪より広がる前に全てを剣に引き寄せた。

 剣が避雷針となり無傷のまま接近できたセルグは勝負を決めに跳躍。

 

「侮っていたのは、やはりお前だったな」

 

 雷霆公は己の顔のすぐ近くでセルグの声を耳にした。

 己の身を足場に跳躍したセルグは正に目の前。目と鼻の先で得物を振りかぶっている。

 

「絶刀招来、天ノ羽斬!!」

 

 全身全霊の奥義が炸裂する。

 極光の斬撃が雷霆公の頭部を吹き飛ばさんと放たれ、セルグは打ち放つと同時にその場を離れた。

 衝撃に後ろへと倒れ込む雷霆公を見据えながら、セルグは己の技が確実に入った事を確信する。

 

「所詮は、存在の違う戦いしかしてこなかった獣だ……見て、考え、勝機を見出すオレ達ヒトにかなうはずもない」

 

 ヒトと星晶獣。その戦いは等しく皆星晶獣の圧勝だろう。

 存在の格が違うもの同士の戦いとは、戦いとなるかも怪しい。

 だが、セルグの言う通り、情報を集め、考え、策を練るのがヒトの戦いだ。

 絶対強者故に、それをする必要がなかった雷霆公ではわからない、ヒトだけが持つ一つの強さがセルグに勝利をもたらした。

 

 

 

「セルグさん! やりましたね!」

 

 憂いの表情を喜色に変え、アイリスはセルグの元へと駆け寄る。

 攻撃を受けたのは一度切り。完勝とは言えないが辛勝ともいえない。無難な勝利にアイリスの表情が綻んでいた。

 

「誰に向かって言っている。この程度ならナタクの方が強かった。動きの鈍い木偶に負ける道理はない」

 

「それでも一回は攻撃を受けたんですし、心配ぐらいさせてくださいよ、もぅ……ほら、手当をしますから傷があったら教えてください」

 

「いらん。楽勝ではなかったが、それほど苦戦したわけではないんだ。いいからさっさと帰還の狼煙を――」

 

 駆け付けたアイリスに答えていたセルグの言葉が止まる。

 感じられるのは先のチカラの解放よりも激しい気配。向けられるのは、これまで感じられなかった殺気と怒気。

 倒れたはずの雷霆公がその身を起こし始めていた。

 驚きに包まれながらも、セルグはアイリスを後ろ手に隠し、起き上がり始める雷霆公の様子を見やった。

 

「バカ……な。直撃したはずだ」

 

 頭部を吹き飛ばす一撃であった。間違いなく手応えはあったはずなのだ。

 セルグの奥義は()()()で受ければいかな星晶獣といえど一撃で屠ることのできる技のはず。

 だが起き上がった雷霆公は、立派であった角が折れているものの、それ以外に大きな被害はない。

 

 ”ヒトの子風情が随分と手痛い攻撃をしてくれる。やはりは翼の欠片。瞬間的に防御壁を強化し、威力を弱めねば、消されていたかもしれんな……だが、これで我も全てを掛けるに値する強者と心得た”

 

 あの瞬間、セルグの奥義は直接斬りつけるものではなく、威力を高めに高めた斬撃の投射。天ノ羽斬の特性であった防護壁の突破が機能せず、奥義であったがためにその威力を弱める手立てを雷霆公に与えてしまった。

 落ち着いた言葉とは裏腹な、殺意に満ちた声に、セルグの後ろでアイリスが慄く。

 向けられているのはセルグだけではない。傍にいるアイリスにもまた、同様の怒りが向けられている。

 

「セ、セルグさん……」

 

「下がっていろ。もはや奴も、なりふり構ってはいられないだろう。巻き添えを食わないように離れているんだ」

 

「でも!?」

 

「早くしろ!」

 

 相手がまだその上のチカラを見せてきた。アイリスの不安が彼女をその場に縛り付けようとしたが、セルグは一喝する。

 ビクリと体を揺らしたアイリスは、雷霆公から視線を外さぬまま、静かに後ろへと下がり始めた。

 それを確認すると、セルグは再び天ノ羽斬を構える。既に雷霆公は臨戦態勢。

 いや、これはその上を見せるための準備態勢だ。何かを察して身構えるセルグの前で、雷霆公は再び大きな咆哮を上げた。

 

 雷の覇者を讃えるように、空に声が木霊する。

 咆哮と共に無作為に放たれた雷は、溢れて漏れ出した雷霆公のチカラの証。

 それほどまでに、今の雷霆公はチカラを解放している。

 

 ”若造が強く出たものだ。僅か数十年といった歳月しか生きておらぬ小僧が、良く吠える!”

 

 星晶獣らしからぬ怒りがセルグに向けられた。チカラの暴威が吹き荒れる中、それでもセルグは臆せず雷霆公を見据えている。

 

「そうやってヒトを下に見ているからお前はやられるんだ。次こそ息の根を止めてやる」

 

 恐れなどみじんも見せず、セルグも返した。互いに言い合ったまま、雷と閃光は二度目の戦いを始める。

 

 

 

 再びの接近。回り込むことは有効だと実証したセルグは、瞬足で駆け抜けて雷霆公の背後へと回る。

 

「はぁあ!」

 

 切り落としてやる。そんな意思を込めて振るわれた天ノ羽斬が雷霆公の尻尾に振り下ろされる。

 だが、天ノ羽斬が届く前にセルグは大きな衝撃を受け吹き飛ばされた。

 

 ”同じ手が通用すると思うな。我の尾はもう一つの頭部だ。二対の瞳から逃れること適わぬと知れ”

 

 尾に備わっている頭部。雷霆公の意思で自在に動く尾の頭部がセルグを見据えていた。

 

「くっ、だったら!」

 

 補足される前に次なる行動へと。瞬時に動いたセルグは、頭部と尾の間、雷霆公の背へと飛び乗った。狙うは雷霆公が背負う天輪。

 

「(こいつを破壊すれば、雷の制御は恐らく……)」

 

「セルグさん、だめぇえ!!」

 

 誘われている……どことなくそれを感じて、アイリスは叫んだ。

 直後、再びセルグを雷が襲った。幾本にも放たれたそれらは、天ノ羽斬りを突き出していたセルグの背後へと回り込むように放たれ、そして直撃する。

 

 プツンと意識を落とし、セルグは空中で動きを止めた。

 跳躍した勢いがそのまま衰えて落下し、セルグは雷霆公の足元へと倒れ伏す。

 

 ”勝負を急ぎ過ぎた欠片の負けだ。随分と早い終わりであったな……”

 

 巨体が動く……前足を持ち上げ、そのまま踏みつけるだけで眼下にいるセルグはあっさりと絶命するだろう。

 

 ”所詮はヒトの子。今止めを刺してやろう”

 

 意識を取り戻す可能性はほとんどない。幾つもの雷を一度に受けたのだ。いくら属性の加護で耐性を持っていようが限度はある。

 持ち上げた足を下ろそうとしたところで、雷霆公は思わぬところから衝撃を受けた。

 

「セルグさんから離れろ! 雷霆公!」

 

 風の風火二輪にチカラを込め、アイリスは的確に頭部へとその銃弾を発射していた。

 足は震えている。顔は強張っていて歯ががちがちと音を鳴らしている。

 それでも訓練で叩き込まれた銃による攻撃はアイリスに正確な狙いをつけさせ、僅かにその意識を引き付けることに成功した。

 

 ”小娘、次はお前だ。何も死を急ぐことはあるまい。もうしばらく大人しくしていることだ”

 

 意識を向けられた。それだけでアイリスの身体は後ずさりしそうになった。

 視線を向けられ、声を聞いただけで、アイリスは失禁するかと思えた。

 それほどまでに星晶獣の……本気で殺意を向けてくる星晶獣の気配は恐ろしかった。

 それでも、アイリスに引く気は無い。

 大切な先生が。己が願いの同志が、今命を落としかけているのだ。

 

「(ポーションは持ってる……あとは一度でいいからひるませてセルグさんを回収できれば)」

 

 足を下ろそうとしている雷霆公とその下にいるセルグを見て、アイリスは意を決した。

 

「ううぁあああああ!!」

 

 動き出すきっかけは半ばやけくそに近い。だが、アイリスの思考は淀みなく体を突き動かす。

 走りながらポーチより引き抜くのは、炎の属性を込めた銃弾、”イフリートポイント”が装填された弾倉。

 それをアイリスは、風火二輪に装填しないまま、雷霆公に向けて投げつけた。

 

「これでも、くらえぇええ!」

 

 雷霆公の眼前へと投げた弾倉に向けて、チカラをため込んでいた風の風火二輪の引き金を引いた。

 着弾した瞬間に眼前で起きた大爆発に雷霆公の身体が揺れる。

 僅かに後ずさり、降ろされた前足が大地を踏んだ時、アイリスはセルグを掴まえ、すぐに後退。

 煙で視界が見えない雷霆公から身を隠す様に、近くの岩場へと転がり込んだ。

 

「セルグさん! うっ、ひどい……」

 

 セルグの容態を見て思わず呻く。

 皮膚の一部は焼け焦げていた。いくら属性の加護があろうと限度があった。

 幾重にも重ねられた雷の直撃は、セルグに致命傷に近い傷を負わせていた。

 

「まだ、息はある。キュアポーションを――」

 

 ポーチを漁りすぐに取り出したキュアポーションを口に含ませようとする。

 煙が晴れ、雷霆公はすぐに二人を探し出すだろう。セルグにキュアポーションを飲ませて、僅かでも治癒の時間を稼がなくてはいけない。

 

「お願いです、セルグさん。飲んでください」

 

 だが、意識のないセルグにポーションを嚥下する力は残されていなかった。

 口の端を伝い流れてしまったポーションを見てアイリスはすぐに次の行動へと移る。

 

「ん……!」

 

 おもむろにポーションを煽ったアイリスは、それを口内に含んだままセルグへと口移しで飲ませていく。

 

「う、ぅ……あ」

 

 奇跡の妙薬が体を癒していく中、セルグは意識を取り戻し始めた。

 

「あとは……少しでも時間を」

 

 残りのポーションを再び飲ませたアイリスは、セルグが癒えるまでの時間稼ぎをしようと、セルグを置いてその場を離れた。

 

 

 

 

 ”どこに隠れた……ヒトの子等よ!”

 

 怒りが含まれた声にアイリスは下腹部から縮み上がるような恐怖に襲われるも、意を決して岩陰から飛び出す。

 

「私はここだ! 私が……お前を倒す!」

 

 風火二輪を両手に構え、雷霆公の前に躍り出たアイリスは、震える体に鞭打って戦いの意思を見せた。

 

 ”あの若造だけでなくそなたももはや容赦はしない。すぐに消し炭へと変えてくれよう!”

 

 天輪が唸り光り始める。すぐにあの雷撃が放たれるだろう。

 だが次の瞬間、アイリスは目を見開いてその手に握る銃を幾度も撃ち放った。

 

 光と音が爆ぜる。

 放たれたのは天輪から雷撃。幾本も放たれたそれは、セルグに向けた時と同様、アイリスへと直撃する。

 

 

 

 ――――はずであった。

 

「はぁ、はぁ……っはぁ」

 

 息も絶え絶え、極度の緊張と生きている事への安堵にアイリスの身体がまた震える。

 雷撃は放たれた……だがそれは、アイリスの元へと届かずに、雷霆公の周囲に無作為にばらまかれるだけで終わっている。

 

 ”小娘……気づいていたのか?”

 

 驚きと戸惑い。雷霆公がそれを見せる程に、アイリスがやってのけたことは雷霆公にとって驚きの出来事であった。

 

「思った通りでした……セルグさんに直撃した雷撃。あの瞬間に貴方の周囲には光の点が幾つも浮遊していた。そしてそれはセルグさんが撃たれたと同時に消えていた」

 

 驚く雷霆公に時間稼ぎも含めた己の推論を述べていくアイリス。雷霆公は興味深く耳を傾ける。

 

「セルグさんを的確に狙った雷撃は全部貴方の周囲に飛び交う光の点を中継点として奔らせていた。そうでしょう? セルグさんの刀よりも引き寄せやすい雷を走らせるための中継点。だから私は、私にたどり着く前にその光点を全部撃ち抜いてあげたんです。狙い通り、私には攻撃が届かずこうして、ピンピンとしています」

 

 少しだけ……下腹部に湿った感触があることから目を反らし、アイリスは自信満々を装いながら雷霆公に告げた。

 時間は稼げた。あとは信じて待つのみ……種明かしまでした以上、雷霆公は雷撃ではアイリスを襲うことはないだろうが、だからと言ってアイリスが雷霆公の体躯を相手に戦い続けられるわけがない。

 

 ”見抜いたのは見事だが、それだけだ。そなたを囲い打ち放っても良い。我が嘴で突き貫いても良い。いかに我の攻撃を分析したところでそなたの死は変わらん。次は外さんぞ……”

 

 数を増やす光点。アイリスを囲んだそれは、今のアイリスに全てを潰すことは不可能な数。次放たれれば、光の属性の加護がないアイリスにとって致命傷たる雷が直撃する。

 

「そうですね……私が戦うのはここまでです。あとは――」

 

 心配はいらない。アイリスは全幅の信頼を以て雷霆公に返す。

 やられたまま……彼がこのまま終わるわけがないと。アイリスは信じているから。

 

 

 光が奔る。

 雷ではない。幾つもの閃光。全ての光点を叩き潰すそれはアイリスにとっては見慣れ始めてきた、信頼する一人の戦士の攻撃であった。

 

「――――チンチクリン相手に粋がるなよ。お前の相手はオレのはずだ」

 

 絶対の殺気。

 雷霆公同様に、彼のどこか逆鱗にたる部分に触れてしまった。

 膨れ上がる殺気は研ぎ澄まされ、周囲の空気を冷たくさせる。

 そこには天ノ羽斬にチカラを湛え、全開の殺気で雷霆公を見据えるセルグの姿があった。

 

 ”我の攻撃を受けて無事だと……? 小娘、貴様何をした!”

 

「ヒトにはヒトの強さがあると言ったはずだ。これもその一つ。ヒトの叡智が生み出した結晶。奇跡の妙薬、キュアポーションだ」

 

 小さな小瓶に入った妙薬をセルグが見せつける。意識を取り戻したセルグはすぐさま己のポーチからもポーションを取り出し服用。

 治り切らなかった傷を完治させ、再び立ち上がった。

 

 ”僅かなこの間で治癒をしたというのか。そんな馬鹿な”

 

「それができるからオレ達は強いんだ。事態を想定し、見極め、勝機を掴む。お前達力任せな星晶獣ではたどり着けない境地だよ」

 

 ”愚かな、たとえ治癒を施したところで、我の攻撃から逃れることはできない。今一度その身を焦がしてくれよう!”

 

 再び吠えた雷霆公に応えるように、幾つもの光点が漂い始める。セルグを囲み、光点から光点へ道筋を作れば、セルグの全身を雷撃が襲うだろう。

 

「種明かしがされた以上。オレにそれは通用しないぞ」

 

 だがそれをセルグは悉く切り払う。

 見えない剣閃から放たれる幾多の斬撃が、光点の全てを撃ち落とす。

 

「そこのチンチクリンとは処理能力が違う。どれだけ出そうが全部潰して見せよう」

 

 ”それでも我を倒すことはできぬ。お主同様に我も再生を施している。既に先ほどの攻撃の傷は癒えたぞ。一撃で倒せねば、お主は我の雷を受けて終わる!”

 

 雷撃での攻めをあきらめ雷霆公は動き出す。巨大な体躯はそれだけで武器だ。二対の瞳でセルグを捕らえ接近戦にもつれこませ、至近距離での雷撃で仕留める。

 走り出した雷霆公を見て、セルグは天ノ羽斬を天に翳した。

 

「――光来」

 

 小さく呟かれた言葉がセルグのチカラを高める。

 光の奔流に晒され、セルグを覆う。そのままセルグは走りくる雷霆公を迎え撃った。

 

 ”八つ裂きにしてくれよう!!”

 

 四本の爪が備わった巨大な前足が迫る。セルグが頭から潰されるかのようなその光景にアイリスが僅かに息を飲む中、セルグはそれを天ノ羽斬で受け止める。

 

 ”愚かな……喰らえぃ!”

 

 距離を詰めたことでセルグを雷が襲う。

 前足の攻撃を防いだところに直撃した雷がセルグを焦がすも、セルグは微動だにしなかった。

 

「攻撃用に開放した光のチカラで全身を覆う。付け焼刃だが、今お前を倒すためだけなら十分のようだな……」

 

 ダメージは最小限にとどめられたことにセルグが笑う。

 普段であれば攻撃力を高めるために天ノ羽斬りへと集約するチカラで全身を覆い、光の加護を強める。

 防御も回避も不可能な攻撃に対して、セルグは受け止め切る選択をした。

 

 ”それで勝てると思ったか! いくら受け止められようがヒトの身でそれが持つはずもあるまい。すぐに終わらせてくれよう”

 

 天輪が唸る。再度放たれるであろう雷は数を増やし再びセルグ焦がすことだろう。

 だが、それはセルグにとっても同じ事。瞬時に天ノ羽斬を納刀したセルグは、覆っていたチカラを解除。天ノ羽斬へと集約。

 

「絶刀招来」

 

 雷撃より先んじて放たれるは変わらぬ奥義。変わらぬ一振り。

 されどそれは、雷霆公の前足を切り落とし、雷霆公の胸部を断ち、その背中を貫けて、唸る天輪を切り裂いた。

 

「防御するのは一度きり。接近したのが運の尽きだったな……防護壁を切り裂ける天ノ羽斬とオレの最強の奥義は全てを絶ち切る」

 

 威力を阻む防護壁は雷霆公が距離を詰めたことで天ノ羽斬によって切り裂かれる。あとは威力減衰なしのセルグの奥義が雷霆公を断ち切り、雷霆公は身体を二つに裂かれて崩れ落ちた。

 

 

 今ここに、激闘の幕が下ろされる。

 

 

 

 ――――――――――

 

 ”我の負けか……見事であった、欠片よ”

 

 身体を二つに断たれた雷霆公は悔しさを滲ませながら、止めを刺さんと歩み寄ってきたセルグへ語り掛けた。

 侮りは既になかった。だが、己の防御力への自信がまんまとセルグの懐へと飛び込む選択をし、一度はセルグの奥義を耐えたことから、それを受けることを厭わなかった。

 その選択が、雷霆公の命運を決めた。

 

「言ったはずだ。見極め、考えて、勝機を掴む。それがオレ達ヒトの強さだと」

 

 ”大したものだ、欠片よ。そなたはヒト非ざるものを秘めながら、ヒトの強さを身に着けているのだな”

 

 欠片――――何度か耳にしていたその言葉がセルグにひっかかりを覚えさせた。

 

「――ナタクも言っていたが、その欠片ってのは何だ? オレには一体何がある?」

 

 ”欠片とはまさに言葉の意味だ。星晶獣である我らには、その存在の異質さが見える。我らもそれが見えるだけでそなたという存在が何なのかはわからぬ”

 

「結局何もわからないんじゃねえか……使えねぇ」

 

「セルグさん……何か気になることがあるんですか?」

 

 静かに落胆するセルグの元へと寄ってきたアイリスが疑問を呈する。

 雷霆公の言葉に不服そうな様子はどことなく、拗ねた子供の用にも見えて笑えたのは内緒だ。

 

「ん? いや、なんでもない。気にするな。というか不用意に近づいてくるなよ……不意をついての最後の一撃なんてのがあったらどうするんだ」

 

「それこそセルグさんのおかげで、そんな気配がないのがよくわかりますから平気ですよ。ですよね、雷霆公さん?」

 

 ”ふん、若造もそうだが、そこの小娘も侮れないものだ。我の攻撃を見抜く観察力と言い、我を相手にとる度胸といい、小さな身でよくやる”

 

 雷霆公を倒すチカラこそないものの、戦いの決め手となったのはアイリスの観察力によるものだ。

 アイリスが雷霆公の攻撃の仕組みを見抜けなければ、セルグは成すすべなく雷に撃たれて負けていた。

 星晶獣からの称賛にアイリスの表情は僅かに緩むのを見とがめて、セルグが指を弾くまではお約束であったが、それでもアイリスの心は弾んだ。

 

 ”忌々しいものよ。ヒトの子風情にやられ、この島を明け渡すことになろうとは。創造主の願い、もはや適わぬか……欠片よ、一つ我の願いを聞いてくれぬか?”

 

「願い……?」

 

「なんなんですか?」

 

 ”この島、この島の生き物。共に創造主が我に託した大切なものだ。それを忘れないで欲しい”

 

 壊さないでくれ。汚さないでくれ。そんな願いが込められた言葉であった。

 それを聞いてセルグはため息。アイリスは決意の表情を込めて返す。

 

「やはり愚かなのはお前だったようだな。言ったはずだ、お前が落としてきたのは調査の為に来ていた者達だったと……確かにヒトが入り込むことで生態系が荒らされる可能性はゼロじゃない。だが、同時にヒトだからこそ生態系を守る動きもできる。絶滅を迎えそうな種を守ったり、荒れた土地を直したり。

 お前がかつて見てきたヒトの業は深かったのだろう。信じられなかった気持ちはわかるが、それでもその言葉はオレ達ではなく彼らに向けるべきだった」

 

「安心してください。ここの学術的価値は非常に高いです。嫌でも保護協会のヒト達が、しっかり管理してくれます。私達ヒトにとっても、ここは生き物たちの楽園という認識ですから」

 

 ”――――そう、か。感謝しようヒトの子よ。さすれば我の生まれてきた意味もあったというもの”

 

「話は終わりか? なら、今楽にしてやる」

 

 光を蓄え、天ノ羽斬が輝く。最後の一太刀、それを見舞うために。

 

 ”既にコアは崩壊している。やるが良い、欠片よ”

 

「ここは悪いようにはならない。安心して眠るといい……」

 

 ”そうか――――創造主よ、我らの願い、真に叶いそうだ……”

 

 天ノ羽斬による一閃で雷霆公が消されていく。

 光の粒子となって天へと還っていく雷霆公を見送りながら、二人は天を仰ぎ続けていた。

 

 

 ――――――――――

 

 

 

「セルグさん……」

 

 帰還の狼煙を上げ、迎えが来るまでの間に、アイリスがポツリと呟く。

 

「言いたいことは予想がつくが、オレの答えは決まっているぞ」

 

「えっ!? な、何で分かったんですか!」

 

「そんな顔していれば嫌でも予想はつく。本当に倒す必要があったのですかって言うんだろ?」

 

 最初に見せたヒトへの怒りは、島を守るための想いの裏返し。

 ただ壊されたくなくて、汚されたくなくて。ヒトを寄せ付けないようにしていただけであった雷霆公の願いを聞いてアイリスはどこかいたたまれない想いであった。

 

「――はい。雷霆公はこの島を守りたかっただけだったし、一緒にこの島を守っていくことだって――」

 

「ブレるな。お前の戦いは星晶獣の脅威を空から排除する事だったはずだ。

 確かに雷霆公は島を守るために戦っていた。だが同時に、奴は既に幾つもの艇を、島を守るために落としてきているんだ。共に守るという選択肢は、奴がヒトにとって脅威となってしまった時点で消えている。脅威となってしまった奴が島にいる限り、火種は消えない。艇を落としてしまった時点で、奴の存在を消さねば、この島はどのみちヒトの侵攻によって荒らされていただろう」

 

「そう……かもしれないですけど」

 

「あまり入れ込むな。星晶獣が作られる理由は様々だ。ナタクのように覇空戦争に勝利するために作られた完全戦闘用から、今回のように外敵から島を守るために作られたものまでな。空の民にとって脅威なことは基本変わらない。お前はこれから、相対する全部にそうやって話をして事情を聴いて回るつもりか?」

 

 星の民と空の民は相容れないと言えよう。必然、星の民が作り出した星晶獣は空の民にとって脅威以外になりえないのが普通だ。

 今回のように争い事とは別の目的で作られた星晶獣の方がレアケースなのだ。アイリスの想いは普通とは外れている。

 

「――仕方、ないんですね。わかりました」

 

「納得はしなくても理解しろ。でないと、命を落とすぞ」

 

「――はい」

 

 納得していないことは明らかだったアイリスをセルグは窘める。

 迷いを持ったまま戦えば、簡単に命を落とす。セルグですら、今日は命を落としかけているのだ。

 まだまだ未熟なアイリスにそれは危険な思考だとセルグは諭し、アイリスもそれを理解はして己の感情を飲み込んだ。

 

「それはそうと」

 

「――はい?」

 

 切り替えたようなセルグの声音にアイリスが呆けながら返すと、セルグはその頭に手を乗せた。

 

「今回はよくやった。お前がいなければオレはやられていた。お前がいなければ、オレは活路を見出せなかっただろう。更にはオレの為に時間稼ぎまで――無謀に過ぎるとは思うが結果的には大活躍だ」

 

 突然の称賛に、アイリスの思考が追い付かずに固まった。

 褒められた? いや、きっと聞き間違いだ。この人が簡単に褒めることなどありえない。

 

「えっと、いえそんな。何とかしなきゃってもう夢中で……」

 

「恐れずよく戦った。少し……お前の事を過小評価していたな」

 

「きょ、恐縮です」

 

 折角褒められたというのに、当の本人は素直に受け止めきれずに、ぎくしゃくと返す。

 そんな姿に、セルグは思わず小さな笑みを浮かべた。

 最初は一人で戦うつもりであったのに、結果的には助けられ、活路を見出してもらった。戦闘力こそ、全然足りないことは間違いないが、それを覆すだけの度胸と観察眼はアイリスの戦士としての強さを一気に上方修正させるものであった。

 

「フッ、珍しく褒めたんだ。素直に受け取っておけ。さて、迎えも来たみたいだな」

 

 機関部が騒がしいく放つ音が聞こえ、少し遠目に迎えの騎空挺が現れたのをセルグは確認すると、いまだ落ち着かぬアイリスを置いて歩き出した。

 

「帰還するぞ。()()()()――」

 

 それは、彼にとって一つの証。背中を預け、共に戦える彼にとって数少ない、相棒の証。

 

「へっ? 今なんて……」

 

 これまで一度として呼ばれなかったその呼び名を受け、アイリスはまたしても驚きに思考が追い付かずに固まった。

 

「ほら、いくぞチンチクリン」

 

「あ、ちょっと!? 何でまたチンチクリンに戻したんですか! っていうかチンチクリンって言うのやめろぉーー!」

 

 方や小さな笑みを浮かべ、方やちいさく頬を膨らませ。

 二人の戦士はこの日、少しだけ仲良く帰還したのだった。

 

 

 

 ―――――――――

 

 帰還する艇の一室。

 そこにはベッドに寝転がり一人物思いにふける一人の女性の姿。

 命を懸けた戦いの後で疲労は大きい。

 すぐさま眠りに落ちそうな体に鞭を打ち、アイリスは今日の戦闘を振り返る。

 

「(夢中で忘れてたけど、今日私……セルグさんとき、き、キスしちゃった!?)」

 

 戦闘を振り返って反省会をしていたアイリスは、そこまで遡ったところで、顔を赤面させていた。

 ひたすらに助けようと夢中だった。感触とかそんなものは更々覚えちゃいない。

 だが、その事実だけはしっかり頭に残っており、年頃の娘故その手の事についてはやはり思い入れが強いというもの。

 

「(男の人としたの初めてだったけど、私なんて大胆なことを……)」

 

 実際問題、セルグに意識は無く、その顛末を全く知らないのだから気にする必要もないかもしれない。

 だがやはりアイリスも乙女。気にするなと思っても気にしてしまうのが(さが)

 

 

 帰還する艇の一室で、キャーやらウーといった妙な音声が聞こえたことが、船員の中でささやかれていたのは言うまでもない……

 

 

 




如何でしたでしょうか。

過去編ほとんど原作キャラ出ないからちょっとあれなんですけど、お楽しみいただけると幸いです。
ちなみに今回の話に合った口移しで意識のない人に飲ませるのは現実にやったら窒息してしまうのでやってはいけません。
よくアニメではある演出ですが、気道と食道と切り替えができない無意識化では全部気道に入ってしまうので死んじゃいます。
試す人なんていないと思いますけどやらないように……

それでは、またしばらく過去編はサボって本編更新に走ります。

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