そんな世界で生きるため   作:ぶつ切りローマ
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短めだけど投稿。
さぁルナティックだぜー!



…………ルナティックとは(哲学)


邪竜百年戦争 オルレアン
仮初/10


 

 

 

 

 ――(くら)い。

 

 

 それは、ただ、途方もなく。どうしようもないほどに黒かった。

 暗くて、深くて。沼のように底がなく、そこには光すら存在しない。廻り続ける風車のように、ただただ意識のみが廻り続けていく。

 

 ――(イタ)い。

 

 ぐちゃぐちゃに意識を掻き回されて、濁って混ざった崩れた頭の中で、只管に宙を漂うそれ。

 けれど、そのことだけはどうしようもなく鮮明にあった。

 

 何故そうなったのか、それを知るのはたった一人。

 故にソレが憎むものが、唯一無二であるその存在に向けられることは如何ともならないことだったのだろう。

 

 理は燃えて、そして崩れ落ちた。

 その事情が、夢ではなくて真であると、ソレは知っていた。

 

 嗚呼、そうかと、ソレは三日月に笑う。

 

 ヒラリと舞うのは、一房の花束。

 地へと押し固められたソレは、贖罪を求め首を擡げる人に似ていた。

 

 

 

 

 

 ――虚ろい、揺らめき。

 そして男は願いを掲げる。

 

「神よ、世界に罰を与え給え」

 

 聖処女を殺し、そして私を貶めた世界など、不必要にすぎる。

 唄え。願え。我が望みを叶え給え。

 狂気に満ちたその貌は、どうしたって見られるものではなく。醜悪で。

 

 歪みの矛先は万能の願望器。

 それがどんなものであろうとも――それは器である以上、何物足りとも空に写す。

 

 光が落ちる。

 ――そして、現れたのは。

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

「――不味いことになった」

 

 疲弊しきった顔で、ロマニ・アーキマンは立花へと告げた。

 眠気眼を擦っていた立花だったが、ロマニとその後ろでふんぞり返っているオルガマリーのピリついた空気に当てられて、思わず喉を鳴らした。

 見れば、右横に立つマシュも、後方で待機しているグレムリアですら張り詰めた面持ちでロマニの話の続きを促していた。再度視線をロマニへと戻す。

 

「君たちが帰投してから行ったブリーフィングで、七つの特異点が見つかった事と、一週間後に第一特異点の攻略に乗り出すことは教えたよね? ……そう、君たちに緊急放送で集まってもらったのは他でもない、その特異点についてだ」

 

 後処理に追われ、尚且つ部下たちのメンタルケアに忙殺されて、やはりストレスが溜まっているのだろう。ガリガリと頭を荒々しく搔き毟る。吐き捨てるようにして告げる。

 

「僕らが指定した第一特異点は揺らぎの小さい――規模が小さめのもの、比較的難易度の低いものを選んでいたんだ。……でも、」

 

 カルデアの指定した第一特異点。それは残る七つの特異点の内でも最も難易度の低く、揺らぎの小さいものだった。そこでのカルデアの目的は――無論、聖杯の回収、破壊であるのだが――冠位指定が発動されて以降、一度もレイシフト経験のない、つまりはマスターとして未熟な立花に、これからの特異点攻略の勝手を掴んでもらう、という意図も存在したのだ。それは、まず間違いなく正しい選択だろう。

 カルデア唯一のマスターが達成せねばならない最終目的は、人類史のターニングポイントを歪ませる異物を特定、排除することだ。それを可能とするのは恐らく万能の願望器――聖杯だ。でなければ、タイムトラベルや親殺しのパラドックスなぞ不可能だ。

 ソレはつまり、聖杯が残っていると()()()()()()()()()()()()ということでもある。

 

「一日ほど前に僕らが観測した際には第一特異点は未だ大丈夫だったんだ。それはいいことだろう? ……でも、さっきの観測で揺らぎの超速での激化、人理定礎値の急激な上昇――つまり、第一特異点が崩壊寸前なんだ!!」

 

 カラカラに枯れて掠れた声が、現状の逼迫さを如実に表していた。蒼白い表情で撒き散らすロマニ。二度三度と大きく息を吸って、漸く冷静さを取り戻せたのか、息を整えて立花へと告げる。

 

「無茶なのは分かってる。でも、それを承知で君に告げなきゃならない。――立花くん、君は今から赴く特異点のイレギュラーを超速で解消し、尚且つ聖杯を回収してきてもらわなきゃならない。状況に猶予なんてない、()()()()()()戻ってきてくれ」

「――ッ」

 

 息を呑む。

 端的に言って、両肩に伸し掛かる責任(プレッシャー)に立花は膝を屈してしまいそうだった。当然だ、つい一週間程前までごくごく普通の一般人だった彼女か抱えこめるシロモノではない。けれど。

 

 隣を見る。マシュがいた。

 隣を見る。グレムリアがいた。

 前にはロマニがいて、所長もいる。

 それを――彼らを守りたいのなら、選べる選択肢なんて一つしかなかった。

 

「――わかった、すぐに解決して戻ってくる」

 

 藤丸立花は笑っていた。不安を押し殺した、そんな笑みで。ロマニへとそう言い放ったのだ。

 レイシフトした先でも、沢山の人が死ぬのかも知れないのだろう。沢山の血生臭い世界があるのかも知れない。

 ――だが、それを知らねば何も守れない。

 身に伸し掛かる重圧か、或いは死ぬかもしれないという恐怖でか。心臓が煩いほどに暴れだす。

 

「頼む、立花ちゃん。――所長」

「ええ、わかってるわ。……ではこれより、グランドオーダーを発令する! マスター・藤丸立花、全霊をもって異常を除去し、特異点を修復しなさい!」

「「「了解!」」」

 

 

 

 ――アンサモンプログラム スタート

 ――霊子変換を開始 します

 ――レイシフトまで後 3、2、1……

 

 ――全行程 完了(クリア)

 

 ――グランドオーダー 実証を 開始 します

 

 

 

 

 

 

「――ああ、何故」

 

 ある時、とある場所。

 そこには何もなく――否、営みの残り香だけは、残っていた。

 

「何故、こんなことを――――」

 

 一人そこに立つ男は、空を仰ぎ。

 貴方は、こんなことをする人ではないだろう、と。

 

 燻る卵に、ヒビが――入った。

 

 

 




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