そんな世界で生きるため   作:ぶつ切りローマ
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藤丸立花/02

 

 

 

 ――掠れて、朽ち掛けた記憶の欠片。

 

 その端っこに、一時期流行した異世界転生というものがあった。

 数少ない友人と、読み漁った本のことを話していた時、彼は確かこう言っていた。

 

「成績も普通。見た目も普通。こりゃあ来世に期待するしかないっすわー。辛いっすわー」

 

 そう言っていたのは、高校か。それとも大学の同級生だった様な気がする。何にしろ、彼は所謂輪廻転生、と言った風習を信じていた節があった。

 ただ疲れていただけなのかもしれない。或いは単純な愚痴か願望だったのかもしれない。

 仏教の最終目的は輪廻からの脱却であり、理想郷(ユートピア)へと至ることだ。――まぁ、つまり、そんな簡単に死んだ人間が理想郷に至るなんて出来るはずもない。

 

 だから、まぁ。その、何だ。

 

 ――つまるところ、異世界に転生してたんだけど、俺はどうすればいいのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ある男の手記"空から見た世界"』

 ――――――――――◯月△日より抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地方都市冬木。

 

 特異点Fとも呼ばれるこの町は、魔術師による殺し合い、聖杯を巡っての"聖杯戦争"が行われていた。

 七人のマスターと七騎の英霊(サーヴァント)。彼らが命を賭して求めた聖杯。それは魔術によって作成された――あらゆる過程を省略し、結果のみを引き出す、聖書に語られる杯の贋作。これを製作、または奪い合うバトルロワイアル――それが、聖杯戦争である。

 

 その聖杯戦争が初めて確認されたのがここ冬木だ。この時代、この土地で何らかの異常が起きて人類の滅亡という大事態が発生したのだ。故にこの土地の調査、探索を行い現状を打破する――

 

 それこそが、藤丸立花、マシュ・キリエライト、オルガマリー・アニムスフィアに託された望みであり――。

 

 新たに召喚されたサーヴァント・キャスター――グレムリアの使命である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――酷い景色だ」

 

 立花たち一行は、冬木の中心地――鉄の大橋付近まで移動していた。

 紅く燃え盛り、絶え間なく黒煙を立ち昇らせる――周りに広がるその風景は、地方都市というには余りに荒れ過ぎていた。

 美しいはずの景観は全て炎の海に消えていて、平穏な日々などその痕跡すらない。崩れかけた建物、むせ返るような熱気に、立ち込める曇雲。

 周りには命を感じさせるものはなく、そんな状況においてすら生存者を捜すことが困難であることが、現状を如実に表していた。

 

「はい。以前資料で見たものとは大きく異なります。ドクターに確認してもらいましたが、生存反応はもう……」

「……そう、か。まぁ、こんな状況ではな。マスター、大丈夫か?」

「……だ、大丈夫」

 

 専ら中遠距離を得意とするものの、ある程度の近接ならば行えるキャスターと、盾で近接と守護を熟すマシュ。

 そんなある程度はバランスの取れた編成ではあったのだが、移動するに当たり、余りに経験が足りていないマシュを後方に置き、キャスターが近接、マシュが二人を護るために寄り添う――という隊列を組んでいた。

 

「キャスター!!」

 

 周りを見渡し、色々なところを眺めながら歩いている姿にやる気を感じ取れなかったのか、オルガマリーがキャスターの背中に向けて叫ぶ。

 

「キャスター、あなたは前衛でしょう。そんなことを話す暇があるなら周囲に気を払ったらどうです?」

「わかっている。……心配をかけたな、ミス・アニムスフィア」

「……ふん」

 

 ぶすっと蒸すくれた表情ですぐに顔を背けるオルガマリー。友好的とはいえない態度に、マシュと立花はずっとハラハラしっぱなしだ。とはいえ、その張本人に全く気にする様子が見られないのだが。

 

「キャスターさん、所長は、その……」

「気にする必要はない。彼女みたいな生粋の魔術師からすれば、俺みたいな魔術師の紛い物なんぞ、認めがたい存在だからな」

 

 そう言って薄く笑い――その顔に緊張が走った。

 魔法陣から分厚い皮作りの本を召喚し、バサリとページをめくる。続けざまに、マシュへと喝を飛ばすように叫んだ。

 

「――敵来るぞ。構えろ!」

「は、はい!」

『敵感知に引っかかったよ! その数四――ってもう戦闘態勢に入ってるじゃないか! 僕の仕事が!?』

「ドクター、うるさいです」

『ごめんなさぁーい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――マシュ!」

「はい! せやぁっ!!」

 

 立花の指示に併せてマシュが踏み込んだ。襲い来る人の成れの果て――スケルトン。

 盾を片手に猛撃する彼女の服装は、それまでの白を基調としたカルデア戦闘服から、スーツと鎧を合わせたような露出の多いネイビーカラーの戦闘服へと変わっていた。それに追加して"武装"として盾を装備している。

 シールダーというクラスにてデミ・サーヴァント化した彼女は、剣といった武器で戦うよりも、盾を振り回した方がよく動く(・・)

 

「はぁ――っ!」

 

 言葉と共に、駆け出したマシュは風を切るように大盾を横にして、滑らせながら接近する。

相手の正面に立つその刹那に、武器"を前へと引っ張るように横へと動かし、その勢いを大盾に乗せて正面から殴打を叩き込む。

 ガシャッ――白骨が正面から砕け散りながら吹き飛んだ。

 仲間を撃破された他のスケルトンが、それと同時に声もなくマシュへと襲い掛かり始める。

 

「――"Verbrennung"」

 

 響くのは凛とした声。青白い閃光がマシュの間を縫うように放出され、白骨ども一瞬にして飲み込んだ。破壊音と共に、土煙が巻き起こされた。

 魔導の極――その一端を垣間見た気がした。

 

「――強っ」

 

 それを――軽々と敵を葬り去るキャスターの戦闘を見て、元々立花が持ち得ていたキャスターの印象が上書きされる。強い、その一言に尽きた。

 キャスター――グレムリア・ラプラスのことは、立花は以前から知っていた。神話の原点を手がけた男として、数々のゲームに出て来ていたからだ。だが、その多くは頭脳系キャラとかそう言ったものだったが為に、勝手に戦闘はそんなに強くないというイメージを押し付けてしまっていたのだろう。

 羞恥に顔が赤くなるのがわかる。

 

 ふるふる、と恥ずかしさを振り払うように顔を振って、戦闘を終わらせた二人へと声をかける。

 

「キャスターもマシュもお疲れ様!」

 

 スケルトンが比較的脆弱な部類である、というのも相まったのだろう、想像以上の快勝だった。

 動きがやや鈍いマシュをカバーするようにキャスターを配置、攻撃して動きが止まった瞬間を狙ってくる相手を誘い込んでキャスターで撃破するという、シンプルではあるが実に有効な戦術だった。ハメ殺しである。

 前もって、ある程度の戦術を建てておくのが良かったらしい。

 

「にしてもキャスター、やっぱり強いじゃない」

「……いや、そうでもない。マシュと俺を比較しているのなら、それは少し基準が異なっている」

「えっ?」

「彼女は成り立てのサーヴァント、未だ戦いに慣れていないだけだ」

 

 カルデア三大実験の一つ、英霊との融合。それ即ち――デミ・サーヴァントを作り出すこと。

 その実験体の一人が彼女、マシュ・キリエライトだ。過去にマシュとの融合を果たした何処ぞの英霊が、彼女たちを助ける為に完全に融合して"サーヴァント"ととしての能力を全て譲り渡し、そして生まれたのが"今の"マシュだ。

 そうやって誕生した彼女は、人間としての側面と英霊としての側面を合わせ持つ『成長する英霊(デミ・サーヴァント)』となった。故に、英霊としての卓越した能力を持っているものの、今は経験がたりない為に戦闘がぎこちない、という状態なのだ。

 

「すみません、先輩。私が戦闘訓練をもっとしていれば……」

「こんな状況、誰にも予想できないって。マシュの所為じゃないよ」

「先輩……」

 

 新米マスターと新米サーヴァント。すごくほっこりするシーンを見せ付けられ、キャスターは一人居心地悪そうに頭を掻く。逃げるように視線を変えて、ずっと放って置かれて不貞腐れているオルガマリーが目に入り、更に気まずそうに視線を逸らした。

 こんな時に霊体化できないのは、やはり不便だ。

 

 逃げるように周りの風景へと視界を変え、瞳に不穏が映る。

 背筋に、冷たいものが走った。

 

「――――全員、周囲警戒!」

 

 発せられた張り詰めた声に、立花とオルガマリーの側へとマシュが近寄り、盾を構えてこちらを見る。

 ノイズと共に、焦りを含んだロマニの声が耳に響いた。

 

『どうしたんだい!? その周りに敵性反応は――!』

「いや、いる。そこに、殺気を飛ばすヤツが」

 

 風切り音。障壁を巡らせた左手を振り下ろした。ガキンという金属音と共に火花が散って、地面に暗器――小剣が突き刺さる。

 

『これは……敵性反応!? 突然現れて――まさか!』

「……アサシンのサーヴァントか」

 

「コレはコレハ。マサカ我が隠密ヲヤぶルモノガイルトハナ……」

 

 気配遮断――アサシンのクラススキル。文字通り気配を断ち、己の存在を消す技術。高ランクであればあるほど気配は薄くなり、果てにはその存在すら認知できないほど。

 

「ど、どうしてサーヴァントがここにいるのよ!?」

『……そうか! ここは聖杯戦争が行われていたんだ! 何もかも狂った現状、サーヴァントが個別に動けても何も不思議じゃあなあい!』

「――ドクター、正解だ」

 

 ロマニの推測に緊張が走った。戦闘を必要とするとは思っていたが、まさかサーヴァントを相手取るとは。全員が固くなる中、キャスターは静かに状況を見極める。

 

「……ドクター、他に反応はあるか」

『ちょっと待って――サーヴァント反応、三体確認! 真っ直ぐこちらに向かってきてる!』

「……なるほど」

 

 この状況から考え見るに、味方である可能性は限りなくゼロに近いだろう。目の前のアサシンよろしく、十中八九敵だ。

 

「――――マスター、どうする」

 

「……えっ」

 

「どうするか、と聞いている。この状況を打破するのは、俺ではなく君だ。俺たちは君の矛であり、盾。そしてマスターは藤丸立花、君だ。

 それに、その命令(オーダー)に、俺たちは従う。例えどんなものであろうと否定しないし、糾弾もしない。

 だから――君が、藤丸立花が決めるんだ」

 

 告げられた言葉に、立花は思わず息を呑んだ。

 厳しく、突き放すような言葉だが、サーヴァントとは本来そういうものだ。主人と私兵。その関係を理解した上で、彼は言っているのだ。

 

「…………っ!」

 

 それがマスターになるということ。

 それが人の命を預かるということ。

 サーヴァントは現世に現れた稀人である。その命は魔力で、気負う必要のないものだが、二人は違う。立花が、そう簡単に命の尊厳を投げ捨てれるわけがない。

 それでも、選べと言っている。

 

 でないと、生き残れないから。

 

  何もしなくては生き残れない。死ぬか生きるか、二つに一つ。極限で自分ができることはサーヴァントの指示のみ。

 その事実に、息を呑む。けれど、視線をずらせば恐怖に震える所長、信じた瞳でこちらを見るマシュ、そして――敵との距離を計りながら、立花を信じたキャスター――グレムリア。

 

 ――――やろう、選ばなきゃ。生き残れない。

 

「マシュとグレムリアは急いでアサシンを倒して! 直ぐに残りの奴らやっつけるよ!」

 

 闘う。生き残る為に、闘う。

 マシュが強く頷き、キャスターは静かに笑った。

 余裕を崩さないアサシンのサーヴァント――闘いの火蓋はもう落とされる。

 ――選んだ。

 

 足を踏み出す。

 生き残る為の闘いが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――いいねェ、嬢ちゃん。そういうの、オレは大好きだぜ」

 

 




『藤丸立花』
 それは、英雄の卵――。
 誰もがみんな、生き残るために、戦っている。



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感想高評価くれると作者が狂喜乱舞します(喀血)

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