そんな世界で生きるため   作:ぶつ切りローマ
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なにがあったし。

ありがとうございます!


弓兵と/05

 

 

 冬木のキャスター、真名クー・フーリン。

 

  アイルランドの光の御子、或いはクランの猛犬とも呼ばれるケルト神話における大英雄。影の国の女王スカサハに師事し、ルーン魔術に槍術と様々な智慧を学び、因果逆転の槍を授かり数多の戦場で無双を誇り、生きて帰った伝説の戦士だ。

  本来ならば、ランサーとして召喚されるべき英霊ではあるのだが、今回の聖杯戦争ではキャスターとして呼ばれたらしい。それで、槍がねぇと本人は心底嘆いていたが、立花は思う。

 

 ――槍がなくても強いじゃん。

 

 新米マスターかつ新米魔術師である立花はよく分からないが、キャスターのクー・フーリンは弱体化しているらしい。戦闘続行能力こそあるものの、ランサーとキャスターではまず間違いなくランサーに軍配があがる。それほどまでに、彼にとって魔槍の存在は大きいのだ。

 無知であるがゆえに、そのことを詳しく分からない立花ではあるが。

 

「ほーれほれ。右から左から敵が来るぞー」

「いやぁぁぁあああッ!!」

「マシュ、左から行くよ!」

「は、はい!」

 

 ランサーでもやっぱりイカれてるんだろうな、なんてマシュに指示を飛ばしながら思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――」

 

 冬木の市街地から離れた山の頂、その山頂の崖近くに一人の男が弓を持って眼下の燃える街並みを俯瞰していた。

 この男の正体はこの度の聖杯戦争において正式に召喚されたサーヴァントの一人だ。シャドウサーヴァントとなりながらも、後ろに控えるサーヴァントに危害が及ばないよう常に近くに佇んでいた。

 男――アーチャーは街の空気が変わったことを悟り、街を視認できるよう本来の場所を離れていたのだが。

 

 敵性サーヴァント、発見。

 

 既に生き絶えた街で動く、一つの暗い影を視認した。大きめの黒いコートに、表情の窺い知れない顔。――何かを読んでいるのか、視線は下を向いていた。

 瞬間にしてアレがこの空気の原因だと判断する。

 となれば、彼の行動は早い。手には、剣を無理矢理捻じ曲げた矢が収まっていた。それを弓に番え、遥か遠くにいるサーヴァントへと狙いを定める。

 距離二〇、方角十一――

 

「――――偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

 ――砕けた幻想(ユメ)が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「――うわぁっ!?」

「先輩っ!?」

「きゃあっ!?」

「フォー!!」

「クソ、アーチャーの野郎か!!」

 

 キャスター先生のパーフェクト宝具教室を終えた立花ら一行。息絶え絶えといった様子で、キャンプ周辺で体を休めていた。

 マシュの宝具開帳訓練をキャスターに任せて、町の見回り、及び食料の調達を行っているグレムリアの帰還を待っていたのだが、突然街の一角で大きな爆発が巻き起された。

 キャンプから少しばかり離れたところで大きな閃光が弾けた。続き様に続き衝撃と土煙が押し寄せ、あまりの衝撃に足元が大きく揺れた。

 

「あの野郎、セイバーのお守りをしてんたんじゃねェのかよ……!」

「あれがアーチャーの攻撃!? 全然場所が違うじゃない!?」

「いえ、違います! 狙いは私たちではなく、今の方向は――」

「グレムリア!!」

 

 丁度先の爆発が起きたのは、グレムリアが食料の調達へと向かっていた方角だ。つまり、アーチャーは単独で動いているグレムリアへと攻撃の矛先を向けている訳で。

 ――マズイ。

 一瞬にして、焦りと恐怖が心の中を埋め尽くした。

 

「――全く、酷い目にあったな」

「グ、グレムリアァァァ……アレ? えっ、な、なんでさ?」

 

 死んだかと思われたグレムリアだったが、叫びかけた立花のすぐ後ろに無傷のまま立っていた。

 

「だ、大丈夫だったの!?」

「なに。荷物を纏めていたら、捻れた剣の形をした矢がすぐ其処にあっただけさ。大したことはない」

「……それでよく無事だったね」

 

 そう軽々というグレムリアに、一同が心の中で安堵した。あの爆撃のような狙撃を放つアーチャーの攻撃で、よく無傷のまま、しかも疲労すら見せずに帰ってきたものだ。

 

「……先程の攻撃、宝具クラスですよね?」

 

 膨大な魔力がなければ起こり得ないほどの爆撃。それを不思議に感じたマシュがキャスターに問う。あれほどの爆撃が攻撃手段として扱えるのであれば、あのアーチャーはギリシャの大英雄クラス。シャドウサーヴァントであるといえ、こちらが勝てるとは到底思えない。

 

「あー、あの野郎の真名は分からねぇが、能力ならわかってる。少なくてもあのレベルの攻撃をバカスカ打てるほどじゃねェ。接近戦なら勝てる」

 

 キャスターの言葉に、マシュが安心したように頷いた。情報はある程度揃っているらしい。だが、それでも安心できないものはいる。

 

「――勝てる、なんて簡単に言うんじゃないわよ!」

 

 それは、誰よりもこの探索に責任を感じているオルガマリーだった。

 

「シャドウサーヴァントだから接近戦なら勝てるですって? でも、アーチャーがあんな攻撃を打てるなら、貴方の言っていた聖杯を守るセイバーの元にたどり着けないじゃない!」

 

  この特異点における変異の中核は聖杯である。それが存在するのは洞窟の中。

 さらに加えて、聖杯を守護しているのがセイバーのサーヴァント。だが、聖杯に近づくには先ほどのアーチャーの爆撃のような射撃を掻い潜らなければならない。

 

「ま、そうだわな」

「じゃあどうするのよ」

「当初の予定じゃ洞窟に引きこもっているアーチャーを倒してから、セイバーに挑むつもりだったが、こうなりゃ仕方ねぇ。予定変更だ」

 

 キャスターは一度大きく息を吸うと、オルガマリーへと背を向けた。そして、目の前の男へと告げる。

 

 

 

「グレムリア、やれるか?」

「――抜かせよ、キャスター」

 

 

 ――希代の魔術師(まほうつかい)は、静かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

 防がれた。が、それだけだ。

  アーチャーは淡々と弓に再び矢を番える。鷹の様に鋭い瞳が黒尽くめのサーヴァント他、二騎のサーヴァントと人間二人を捉えていた。物陰に隠れたが――そのまま撃つのは容易い。

  このまま聖杯戦争から退場願おうと弦を引き絞った。

 

 三騎と二人が山の方へと駆けていった。

 狙撃に対する策をなにも弄せずに無防備に走るなど、弓兵からすれば、彼らのその行為は無茶無謀に過ぎる。

 あの気に食わないキャスターにしては短絡的に過ぎる行動ではあるが――

 

「そのまま行かせると思ったか」

 

 アーチャーは視界に捉えているサーヴァントの内、盾を持った少女へと狙いを定めた。彼女とアレを会わせてはならないと、本能がそう叫んでいるのだ。

 そしてそのまま――弓矢を放った。

 

 

 

 

 ズガンッ。弓矢が炸裂する。

 チッ――舌打ちと共に魔本を解放、障壁を展開してそれを防ぐ。激音が轟いた。即座に判断して立花へと告げる。

 

「――予定通り俺が残る。早く先に行け」

「……グレムリア、やっぱり」

「いいから行くんだ。これが現状に置いての最善手、それはマスターもわかっているだろう。――まぁ、安心しろ。俺はそう簡単に死なない」

「それ死亡フラグだから」

「そうか? まぁ、いいさ。……早く行け」

 

 キャスターの声がする。

 

「オラ、時間稼いでもらったんだからさっさと行くぞ」

「……グレムリア! 後で合流してね!」

「わかっている」

 

 障壁で爆撃を防ぎ、ため息を吐きながらも、走り去ってゆく足音が複数聞こえた。オルガマリーが、そしてマシュが待っている、と言葉を置きながら聖杯の元へと走って行く。

 

 さて――。

 

「――――賢者の本(アカシックレコード)

 

 

 

 

 

 ――また防がれた。これでは埒があかない。どうするか、と弓矢を片手にアーチャーは思考を深める。盾のサーヴァントたちを行かせてしまったのは自身の不始末だが――それよりも、あの黒いサーヴァントが最優先だ。でなければ彼女に危険が及ぶ。

 恐らく彼奴は魔術師寄りのサーヴァント。接近戦では自身に分がある。ならば。

 アーチャーは弓を捨て、両手を翳し――

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

「な、ん……!?」

「初めまして色男。調子はどうだ?」

 

 目の前に、黒いサーヴァントが現れて、アーチャーは一瞬瞠目する。そして、その目の前に強大な魔力を孕んだ魔法陣が展開された本。……なるほど。

 

「貴様がここにオレを転移させたのか」

 

「ご名答。……早速で悪いが、君には死んでもらわねばならない。マスターとの約束があるからな」

 

「安心したまえ、直ぐに会えるさ――冥土でな」

 

 互いに言葉を吐き出すのと同時に一気に踏み込み――双剣と剣が交錯する。

 

 

「――ふんっ!」

「――シッ!」

 

 響く金属音。

 斬り結ぶこと五合。埒があかないと判断したのか、アーチャーは即座に後ろへと大きく跳躍する。左の双剣を矢へと姿を変形させ、そして右の手には黒い洋弓が出現する。当たり前のように、まともに殴り合うつもりは元々なかったらしい――

 

「Vision Schiwert」

 

 対するグレムリアは、無数の剣を召喚した。

 そのまま魔力で速度、威力を上乗せしてアーチャーめがけて射出――しかし同じくアーチャーの投影した剣に相殺される。

 だがそれを一切気にすることなく、夕闇に紛れるようにアーチャーが連続で矢を放ってくる。右の魔術で迎撃、空間に連続で叩き込まれる神秘の矢をマナへと戻す。

 直後、直感的に悪寒を感じ取って後ろへとバックステップ、同時に頭上から落ちてくる物が見える――剣だった。

 

「――I am the bone of my sword」

 

 詠唱を感知する。この術式は――固有結界か。

 時間稼ぎをすれば相手に有利になる。ならばここで一気に行くのがベスト――だが、剣軍と魔本の即席魔術では倒しきれない。その上、ケイオスタイド……いや、聖杯の泥か。ならば。

 

 

「"Behörde Freigeben"」

 

 

 

 

 ――――上書きせよ、テウルギア。

 

 

 

 

 テウルギア――その本来の権能が解放される。

 

 無限の剣製と、神話の始まり。

 神話を体現した月の欠片が大地に現れたその瞬間。

 矢へとその姿を成した剣と、神話を記した世界の一部が。

 

 

 激突した。

 




『テウルギア』
 その本来の権能は――上書きすること。

一体ナニを上書きしたんでしょうね(白々しい)

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