そんな世界で生きるため   作:ぶつ切りローマ
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カルデア日常編――。
修正版です。


断章 日常─カルデア交流記
カルデアデイズ/09


 

 

 

 

「グレムリアくーんーやーい」

「…………」

「君が別の世界線に到達したって本当なのかい? そこから見た景色ってどんなだったのさ? それとギリシャ神話の人たちってどんなに強かったんだい?」

「……、…………」

「別に教えてくれたっていいじゃないか。何もしないよ――……それとも、キミは対価が欲しいのかい? だったら私の体なんてどうさ。途轍もなく美しいのは自負しているよ、だって私が最も美しいと思った女性を模擬したんだからね!」

「……。…………レオナル――」

「ダ・ヴィンチちゃんと呼びたまえ」

「………………」

 

 ……どうしてこうなったのだろう。

 猫なで声でこちらへとすり寄ってくる絶世の美女(オトコ)を見て、術式を弄る手を止めることなく俺は空を仰いだ。

 

 一体誰が、こうなることを予測できたというのだ。俺ですら無理だった。

 

 女の姿をした生粋のオトコに襲われてます。

 更に満面の笑みで俺の黒歴史を抉ってくる。

 

 ……ああ、そうか。わかったぞ。

 悲しきかな、どうやらここにはマジモンの変態しかいないらしい。

 

 更に言えば、周りの職員たちも白い目で見てるから辞めて頂きたいものだ。

 張り合いないなー、なんて言いながら隣のレオナルドもシステム・フェイトの修理と調整を止め処なくこなしていた。ちぇー、と口を窄めながら籠手に包まれた手を振るう。

 天才――その領域の存在は誰も彼も正気な奴なんていない。そういう人物を見て来たから、彼女もまさにそういう類であるということはわかっている。自重するときはしておいてほしいだけなのだ。

 最優先で修理を敢行している英霊召喚システム――フェイトは大部分の修理が完了し、職員たちの仕事効率を考え見ても、そう長くは掛からないだろう。それはいい。喜ぶべきことだろう。だが違うのだ。そうじゃないのだ。

 取り敢えず俺の貞操硝子ハート諸々が危うい。

 

「……ん、あれ? こんなところで一体どうしたんだい、ダ・ヴィンチちゃん、グレムリア」

 

 ――ドクター! 助かった、君にしかできないことがあるんだ!

 俺の代わりに死んでくれ(エスケープゴート)

 

「って、グレムリア!? そんな顔で一体どうしたんだ……何をしようとしているんだい!? 目が、目が笑ってないよ!? やっ、やめ、ヤメロォォ――!」

 

 

 

 ――遡ること数刻前。

 

 

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

 

 

「――というのが、俺が知る限りの特異点でのあらましだ。何か質問はあるか?」

 

 所変わってカルデア管制室。

 オルガマリーを救出し、特異点Fを無事脱出したグレムリア一行だったが、ここでレフ・ライノールの後始末に追われていたドクター――ロマニ・アーキマンたちに、先の状況を説明していた。

 同じく管制室にいるオルガマリーは、先ほどのことを思い出したのか顔を青くしていて、ロマニは難しそうな顔で下を向いている。

 序でに言えば、カルデアのキャスター、レオナルド・ダ・ヴィンチにレフの最後のことを言ったら無茶苦茶爆笑していた。

 

「ぷっ、ぷはっ、あはははは――ッ!! おいおい、最後の捨て台詞すら言えなかったとか、悪役としても三流とか本当に救いようがないな彼は――! お腹がよじれて千切れちゃいそうだよ!」

「……レオナルド、君は笑いすぎだ」

「っと、ごめんごめん。ああ、それと、グレムリア、私のことはダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」

「……考えておく」

 

 お腹を抑えながらヒーヒー言っているダ・ヴィンチにため息を吐く。相手にしていたらキリがなさそうだ、なんてグレムリアは思案した。

 

「キャスター……いや、グレムリアと呼ばせてもらうけど、オルガマリーはどうなっているんだい?」

「俺が用意した魔力結晶体――つまりは聖晶石を使って、英霊モドキとして座に登録。カルデアに戻ってきた後に、俺を介して魂の物質化に近い形で受肉させた。今の肉体の情報は焼却以前のカルデアのものだ。レイシフト適性は無くなっているからそこは注意してくれ」

「わかった」

 

 歪なる聖杯戦争は終幕を迎えた。

 セイバーを打倒し、聖杯も回収することで特異点Fは解消される。当初の予定では、この時点で人理は保証されるはずだったのだが――レフ・ライノール、及びレフが「彼の王」と仰ぐ何者かによって、人理は焼却された。

 シバでもって人理を再測定した結果、冬木とは別の七つの特異点が現れたことが判明。

 それに対し、先ほどオルガマリーたちによってグランドオーダーが発動された。役者は藤丸立花――だが、彼女ならば大丈夫だろう。

 

 ロマニが、帰還してから蘇生したオルガマリーのバイタルチェックを行いたいといって、管制室をやんわりと追い出した。キシリと扉が開いて、彼女が外へ出たのを確認すると、徐にロマニは口を開いた。

 

「それで、問題はレフのことなんだけど――」

「――証拠ならあるぞ」

「えっ?」

「ヒィ、ヒィ……あー、お腹痛い……」

「だからお前は笑い過ぎだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――英霊召喚システム・フェイト。

 

 それはカルデアの誇る技術の結晶の一つ。ありとあらゆる時代より英霊を召喚するそれ。まず間違いなく高性能ではあるのだが、そのシステムには非常に面倒な一面が存在する。

 

 英霊召喚システムは、資源さえあれば幾度となく英霊を召喚することが可能ではある。

 注意すべきは英霊召喚のための必要条件。フェイトによる召喚には、サーヴァント――英霊側の同意が必要不可欠なのだ、ということだ。つまりこのシステムでは、触媒を使った強引な上位英霊の召喚――即ち通常の英霊召喚のような真似は、現状不可能である。

 それ故、マスターである藤丸立花と共に戦うことを認めた英霊が呼ばれることとなるのだが――。

 

 

「――つまりガチャってことだね」

「違う」

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

 

 ――カルデア帰投より凡そ八時間が経過した。

 

 与えられた自室にて物思いに耽っていたグレムリアが、館内放送で呼び出され、指定された場所――星空が散りばめられたような黒い部屋に来ていた。ドアを開けると、先に来ていた立花とマシュがロマニと何か話し込んでいた。

 これでいいのか、といって右手にぶら下げていたそこその重量のある袋をロマニへと手渡す。袋を開けて中身を確認すると、ロマニがそれをいくつか摘んで立花へと渡す。

 マジマジとそれを見つめながら、

 

「――えっと、ドクター。これは?」

「それは聖晶石。多大な量の魔力を込めた魔力結晶体の一つだよ。このカルデアに於いて英霊を召喚するために必要な触媒さ。本来の英霊召喚なら必要ではないんだけど、この英霊召喚システム・フェイトは()()のではなくて()()()()()()()()んだ」

「……来てもらっている? それってつまり」

「うん、つまり立花くん自身を認めた英霊、それか人理焼却というこの現状の解決を手伝ってくれるという英霊を呼ぶことができるんだ」

「…………認め、られる」

 

 ロマニが立花の手へと残り聖晶石を渡す。その数凡そ八。人理焼却によって魔力が荒れ狂っている現状、これだけあれば二回程度は召喚可能だろう。

 

「難しく考えることはないさ、マスター。仲間が増えると思えばいい」

 

 むむむと頭を捻るように首を傾げていた立花を見かねて、グレムリアが助け舟を出した。ガチャみたいにな――と続けようとして思わず口を閉ざした。聖晶石とフェイトへと向ける視線が怪しい光を灯していた。

 

「…………仲間、増える……ガチャ……ガチャ、十連……諭吉……」

「立花くん。まるでソシャゲの闇に飲まれた課金兵みたいな顔してるけど、我がカルデアの召喚システムはホワイトでクリーン。高レアの排出率も低くない。……というか元々NもRもSRもないし、基本的に英霊は一流だから気にしなくていいよ? それに、冬木で手伝ってくれた英霊たちが来てくれそうなものだしね。これが所謂冬木ピックアップってやつかもね」

「ピックアップ、だって……! 引かなきゃ、引かなきゃ、星5レア……UR……」

「ドクター!」

「な、なんだい!?」

 

 立花の足がプルプルと震え始めた。胸を押さえて苦しげに浅い呼吸を繰り返す。まるでケンカの後のように、口元を拭ってボロボロの声で呻いた。

 

「――――英霊召喚ガチャとか、そんなに酷いものがあったなんて……! 下手すればグランドオーダーよりもキツイじゃないか!」

「取り敢えずガチャっていうのやめようか」

「それに先輩、今無理して召喚する必要もないんですよ? 後に回しても何も問題ないのでは」

「マシュ。課金兵はガチャからは逃げない!」

「は、はい!」

 

 

「――立花、逝っきまーす!」

 

 立花が手元の聖晶石を四つ捧げる。

 魔力を感知しシステム・フェイトが起動した。転輪が回り始め、淡い燐光が円環に纏わりつく。回り続ける円環によって生み出されたエネルギーが召喚サークルを満たし、そしてそれらが三つに割ける。

 カルデアの電力が唸りを上げ、爆発的な閃光と共に人形が生まれた。薄い燐光が弾け飛び――紅い外套が目に映った。

 

「――サーヴァント・アーチャー、召喚に応じ参上した。さて、君が私のマスターかな?」

 

 鷹揚な声で告げた褐色肌の男――アーチャー。冬木で立ち塞がった彼の参戦に、立花が静かに頷いた。その横のグレムリアは無表情だ――口元をを歪めていたのには誰も気がつかなかったらしい。

 立花と軽く自己紹介を交わした後、アーチャー――エミヤが立花の手に握られた数個の聖晶石を見て少し眉を上げる。

 

「……おや、まだ召喚途中だったのか。戦力が多いに越したことはない、続けてくれ」

「解ったガチャ継続する」

「英霊召喚のことガチャっていうのやめない?」

「そぉーい!」

 

 ロマニの言葉を忘却の彼方へと通しながら、立花は見事なフォームで聖晶石をサークルへと投擲。聖晶石を捧げて術式を起動させる。

 再度光が発生し、英霊召喚の為の環境が形成される。

 溢れんばかりのシステム・フェイトの光が、通常のものから七色の光へと変化した。それを見ながらロマニが驚愕の声を漏らす。

 

「これは――最上位の霊基確認! これは期待できるぞ!」

 

 ロマニの声のその後――埋め尽くすほどの光とともに、彼女は姿を現した。

 光を反射して煌く金髪に、チャームポイントとばかりに飛び出るアホ毛。青いジャージでその華奢な体を隠し、マフラーで口元を覆う()()()

 

「――少々というかかなりフライング気味ですが、増えに増えたセイバーというかついにはクラスを超えてアーチャーやランサーにまで増えてしまったアルトリア種許すまじの精神で顕現しましたコードネーム・謎のヒロインXですよろしくお願いします……え、私が一人目? アルトリア顔狩り放題じゃないですかやったー!」

 

 揺れる。揺れている。

 帽子を貫通して伸びるアホ毛がピコピコと動いている。まるでそれ自体が意思を持っているかのように。彼女の登場に英霊召喚室が静まり返ったその最中、エミヤが一人白目をむいて崩れ落ちた。

 

「ああっ、エミヤが、エミヤが人には見せられないような顔をしてる! しっかりして、しっかりしてアーチャー!」

「アーチャー、おい。どうしたっていうんだいアーチャーくーん!」

 

 そしてアーチャー(の胃)が死んだ。




エミヤと謎のヒロインX参戦。
一体彼女はナニトリアだというんだろうか……。
槍ニキは少しお預け。

さて、カルデアの日常ネタを考えねば……。



第一特異点を難易度ルナティックするかいなか、それが問題だ……!


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