NEW GAME!夢に向かって。   作:どんでん
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ねねちゃんと一緒に

フェアリーズストーリー3の発売日の朝。

「ごめんね。急に誘っちゃって」
「気にしてなくていいよ。私もこっちの特典は気になってたから」

私とねねちゃんは限定版の特典を購入するため、ゲーム店の列に並んでいた。限定版には店舗ごとでもらえるドラマCDがついており、私はねねちゃんに誘われる形であおちゃんや八神さんたちとは違うお店で限定版を購入するために列に並んでいる。

「ソフトはもらえるけど、通常版だから、限定版のドラマCDはもらえないし、好きなキャラのドラマCDはやっぱりほしかったからね」
「ともっちたちはスタッフだから、もらえると思ってた……」
「遠山さんの話だと、経費削減とかでもらえないんだって」
「社会の波が会社までにも……」
「あはは……」

私たちはソフトはもらえるみたいだけど、限定版ではなく、通常版という形になり、遠山さんはそっちのほうがコストがかからないといっていた。

「しかし、すごい人だね……」
「それだけ期待されてるってことだよね……」

私たちが来る前からすでに行列が出来ていたことから、相当期待されていることが感じられた。

「ところでともっちはさっきから何を見てるの?」
「ツイッターにクリアしていた人たちのフラゲが投稿されていたからね。自分たちがかかわったゲームだし、やっぱり気になるというか」

待っている間、私はツイッター内に投稿されていたゲームに関する感想やネタバレに関する書き込みがあったのを見つけ、それを読んでいた。

「いい評価もあれば、悪い評価もあるね……」
「私たちも昨年まで逆の立場だったからね……今は作る側だけど、昨年まではプレイする側の視点でゲームを見ちゃってたから。悪い評価も受け止めないといけないよね」

書き込みはいい評価もあれば、当然悪い評価もある。悪い評価の欄を見ると、心が痛むが、それも受け止めないといけない。

「ともっちは……すごいよ……それをみただけで普通だったら落ち込みそうなのに」
「そうかな?」
「うん……あおっちも前向きだけど、それの上をいっているというか……」

私の場合は気持ちの切り替えがうまいし、駄目だったときはしょうがないって思えるタイプだしね。

「ねねちゃんはこれからどうするの?」
「これからって?」
「プログラマーとして勉強するのかって話」

私の質問にねねちゃんはうなりながら考える。

「私、絵はかけないし、頭も良くないし……プログラマーって難しいんでしょ?」
「そうだね。簡単にはなれないね」
「私にはできるかわからない……でも、二人と離れるのはいやだし……」

ねねちゃんは悲しそうに表情を崩す。

「ねねちゃんが本気でプログラマーを目指すなら、私は協力するし、応援もするよ」
「ほんとに?で、でも……ともっちも仕事が大変で忙しいんじゃ……」
「もちろん、空いている時間でね。私にできることがあるなら、協力はしたいし、友達と一緒にゲームを作ってみたいからね」

やっぱり、友達と一緒にゲームを作るとそれが思い出になるし、楽しみも生まれてくるから。

「どこまでやれるかわからないけど、挑戦してみるね」
「大変だろうけど、一緒に頑張ろう!」
「うん!」

私の言葉にねねちゃんのうれしそうな笑顔を向けてくれた。

そして、販売の時間になると、店員がキャラのコスプレをしながら、売り子に立つ。
社員だから気づくことだけど、少し違和感がある。あれはどこか違う、本来はもっとこうであるというまるで子供のような違和感を抱いていた。

「ここはナイト君のドラマCDだから、店員もそのコスプレだね」
「そうだね。やっぱり違うな……」
「何が?」
「いや、なんでもない」

多少の違いはあるけど、気にしないほうがいいのかな。それに楽しみにしているお客さんの笑顔を見ると、そんなことを気にしている自分が馬鹿らしく思えた。

「次のお客様どうぞ~」
「あ、はい」

店員さんに呼ばれ、私はレジに並ぶ、店員さんに楽しみにしていましたといわれ、反射的に私もですという言葉を返してしまい、店員さんにへ?という表情をされたことで私は恥ずかしくなり、赤面してうつむいてしまった。
お金を払って特典ももらって店を出る。しばらくもしないうちにねねちゃんも鼻歌を歌いながら出てくる。

「それじゃあ、あおちゃんたちと合流しようか」
「うん」

私たちはあおちゃんたちがいるゲーム店に向かった。向かった先のゲーム店の近くではあおちゃんたちの姿があり、ねねちゃんははじめ先輩の所に走っていく。

「おひさー!別店舗特典手に入れてきたであります!」
「たすかるー!おつかれー!」
「おやすいごようであります!」

ねねちゃんは袋をはじめ先輩に渡す。その光景をほほえましそうにみていると、あおちゃんが私に声をかける。

「ごめんね。ねねっちがともっちを誘ったみたいで……私もそっちにいけたらよかったんだけど」
「別にいいよ。むしろ、誘ってもらって助かったというか……一人で行列に並ぶとか、ちょっと無理だったから……」

ねねちゃんに誘われなかったら、私はきっとこっちにきていただろうから。

「意外……ともっちはそういうのは得意だと思ってた」
「私、そういうのは苦手だから。人ごみとか、行列とか並ぶだけで疲れちゃうタイプだからね」

私が苦手なものとして人ごみや行列といったものは苦手で一人でいることはまずありえない……

「ここってカレンのドラマCDだったの?」
「うん。ともっちたちの所は?」
「こっちはナイト君」
「いいなぁ……ナイト君のは気になるなぁ」

あおちゃんは羨ましそうな視線を向ける。

「後で貸してあげるよ」
「ほんとに!?」
「うん。そっちのも聞いた後でいいから、貸してね」
「ありがと~。やっぱり、ともっち~優しい~」

私たちは八神さんのいるところに向かうと、ねねちゃんとはじめ先輩が壮大なネタバレ話をしていた。

「まさか闇落ちしてラスボスになるとは思ってなかったけど」
「そうそう意外だったよね」
「でもあの平和主義なナイトとは違う考え方は結構好きなんだよね。だからぐっときちゃって最後の一騎打ちも……」

ふぇぇ……なんで人がいるところでネタバレをしちゃうんですかね……この人たち。

「ねねっち、ストップ!」
「二人とも、ここでその話は駄目!」

私とあおちゃんが二人を止めるが、すでに話は周りにいる人たちに聞かれており、ひそひそ話がこちらまで聞こえてきた。

「やばい!帰ろう!」

八神さんの判断でその場を急いで離れるが、遠山さんは見たことない顔で震えており、それをなだめる八神さんも苦笑いだから少しは恐れているかもしれない。

「智香ちゃん……これ」

声がするので振り返ると、ひふみ先輩が携帯をみせてきた。携帯の画面にはさっきのネタバレの内容が書き込まれている。

「もう広まってるー!?」

ひふみ先輩はあおちゃんにも携帯をみせ、あおちゃんは驚いた顔で大声をあげる。

「早いよ!」
「ちゃ、ちゃいますよ!フラゲしてクリアした人やって」

全員が驚愕している中、私だけは冷静で、携帯を操作し、ツイッター内やネットの中に検索をかけていた。

「あの……これ、多分大丈夫じゃないですか?」
「どういうこと?」
「私、さっきまでこのツイッターみてましたし、それまでにラスボスの情報はここに書き込まれてますからね……情報が投稿されている時間帯はちょうど私たちが並んでいる時だし、あの話を聞いており、ツイッターでその話をしたとしても、時間もさほどたってませんし、すぐに広まるということはないとおもいます」
「……じゃ、じゃあ、この情報はどこからきたの?」
「早く広まっている原因のひとつはさっきのゆん先輩がいってましたけど、、先にフラゲした人が発信し、それが拡散していったのではないかと……」
「つまりは私とねねちゃんが話したネタバレはまだ拡散されていない可能性が高いということ?」
「そういうことになりますね……今のところ、二人が話してた内容の書き込みは無いですね……」

はぁ……それにしても、心臓に悪い……

「智香ちゃん~……」

遠山さんは泣き出しそうな表情で私の手を握る。

「ありがと~。気づいてくれて~」
「どういたしまして……今後、ネタバレは人がいないところでお願いします……」
「ご、ごめんなさい……」

こうして、私たちの初めての発売日はいい思い出もあり、ちょっとしたハプニングもありという……今後、忘れることのない一日として、しっかりと記憶に刻み込まれるのだった。