妖精のいる飲食店   作:ふくちゃん

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〜異世界でのんびりやってます〜

ある朝、目覚めると僕は異世界にいた。

眠りについた記憶はなかったのに。

 

あの日のことはよく覚えている。

「知らない天井だ…。」と言って目覚めたんだ。

小説や映画、漫画なんかではよく見る話だろう。でも僕はごくごく普通の人間だ。ただ、吹奏楽部の活動が楽しすぎて過労死するぞ?って言われるくらい練習していたくらいで。

 

そんな僕がどうしてこんなことになるんだろうって何度も考えたさ。

 

僕は両親を早くに亡くした。両親はプロの音楽家をしながらバーの経営もしていた。そのせいか遺産がすっごい額だった。その遺産を横取りしたがる叔母を退けてからは一人暮らしをしながら両親に教えてもらった音楽に明け暮れる日々だった。少しだけやりすぎていたかもしれないけど。ちなみに僕は父さんが初めて僕にくれた楽器のトロンボーンが一番好きだよ。

 

そのおかげで、一通りの家事はできるし、その中でも料理は美味しいって友人たちに人気だった。音楽も毎日欠かさず練習していたら知らない間にそれなりにはなっていたと思う。バーの手伝いをするうちにカクテルの作り方とかも覚えた。

 

でもそれだけしかできない僕が異世界に突然放り出されて生きて行けるわけもない。

 

僕がきたこの世界はまさにファンタジーな世界だ。街から出れば魔物がたくさんいる。少なくとも剣と魔法の片方がないと街と街の移動もままならない。それか冒険者さんに護衛を頼む。他にも獣人さんとか龍人さん、あと魔族の人たちもいる。宗教とかでの迫害はないわけじゃないけどみんな仲がいい。

 

そんな世界で僕を助けてくれたのはマーリンっていうこの世界の梟のような鳥が大好きじいちゃんだ。

昔は冒険者としてブンブン言わせてたみたい。引退して王都でのんびり宿を経営していた。僕が目覚めたのはその宿の一室だ。なんでも王都の外に食材調達してる途中に倒れているのを見つけたんだって。側にあった荷物も一緒に。そのものから推測すると僕は部活帰りにこの世界に来たっぽい。そして保護してくれたというか、孫にしてくれて冒険者としての能力と宿の仕事をじいちゃんに、それと鑑定してもらってわかった天職の「職人」に関するスキルをじいちゃんの友人に叩き込まれてやっと一人前って時に老衰で死んじゃった。僕は宿を引き継ぎ、元気にやってます。

この世界に来て3年。今日も元気にいきます。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ。『梟の止まり木』へ。お泊りですか?それともお食事でしょうか?」

 

本日も開店です。

 


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