妖精のいる飲食店   作:ふくちゃん

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学生の敵

「マスター!ここ教えて〜。」

 

「はいはい。」

 

七月も半ば、もうすぐ学園も夏休みである。

 

 

夏休みがくるということは、その前のアレもくるということである。

 

 

そう、テストだ。

 

日本全国どこへ言っても学生の敵であり毎月のお小遣いの天敵でもあるテスト。

 

もちろん、この世界でも学生の敵である。

 

期末試験が近づくにつれ、ここで友達と勉強していく生徒さんが増えた。

 

今呼んだ子もそのうちの一人だ。

 

えっと、ここをこうして……

 

 

はい、これでできるよ。

 

 

「ありがと!マスター!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「ったく、ここは塾じゃないんだけどなぁ。」

 

 

「そんなこと言ってるくせして、顔は笑ってるわよ。」

 

カウンターに座ってリース嬢と一緒にケーキを頬張るマリアにからかわれる。

 

「そうかな?」

 

 

「そうよ、ねぇみんな。」

 

「そうねぇ〜、普段通りに見えて、少し楽しそうというか嬉しそうな顔してるわね。」

 

「うんうん。店内がこの状況になってからずっとそうだね!」

 

「私も、そこまであなたのこと知っているわけではありませんが、どことなく楽しそうですよ。」

 

「ふーん、そう見えるんだ。」

 

「実際どうなのかしら?」

 

リース嬢が尋ねてくる。

 

「うーんなんというか、懐かしい感じなんだ。」

 

 

「「そういうことね!(〜)」」

 

二人は納得したみたいだね。

 

さて、不思議そうにしてる二人にどう説明したらいいのやら…。

 

 

ーーーーーー

 

 

「僕がまだ故郷で学生やってた時、夏休み前の期末試験前には同じように喫茶店で勉強してたんだよ。他のテスト前のときは部活が休みになるから休息も兼ねて勉強してたんだけどね、夏休みの頭からコンクールシーズンだから部活は休みにならなくて、遅くまで部活した後じゃないと勉強できなかったからね。」

 

「コンクール?」

 

マリアがなにほれ?って感じでケーキを食べながら聞いてくる。

 

「簡単に言えば音楽大会。学校がいくつもあるからそれぞれの音楽部が演奏を競う大会かな。課題曲と自由に選べる曲の2曲を50人くらいで演奏するんだよ。」

 

「なにそれ楽しそう‼︎やりたい!」

 

マリアが目を輝かせる。

 

「はいはい、その通り楽しいんだけど、先に君たちの楽団をちゃんと整えようね〜。あの演奏会の後結構な人数が参加表明したらしいじゃん。練習場所とかの用意は手伝ってもいいけどどうするか示してくれないとね楽団長。」

 

「はぃ…。」あーあシュンとしちゃった。

 

 

まーいいや、ほっとこ。

 

 

「マスターはコンクールで、どんな楽器を演奏なさったんですの?」

 

リース嬢も気になるようだ。

 

「僕は楽器はトロンボーンでしたね、指揮をすることも多かったですけど。」

 

「トロンボーンといいますと、あの伸び縮みする金属のでしたか。」

 

「ええそうですね。僕が初めて触れた楽器でもあります。いい楽器ですよ。」

 

あ、なんかベラの頬が赤い。かわいいね!

 

「あなたを見ていると、いい楽器なのはわかりますよ。いい笑顔で話されてますから。」

 

 

「それはどうも。んじゃそのいい楽器を楽しむために、まずマリアと楽団をね?副団長。」

 

「ええ…。そうですね…。」

 

深めのため息ついたみたいだ。

 

 

あっ、でもー

 

「先にテストがありましたね。」

 

ー勉強も忘れちゃダメだよ?

 

はぁぁ…。ため息二つ。店内に放出されました。


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