妖精のいる飲食店   作:ふくちゃん

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リョウの実力

「では、奥へどうぞ。」

 

そう言って、二人を奥へ誘う。

 

ん、これって。

 

案内しながら、ふと思った。

 

「姫騎士様、その剣って公爵殿下の剣ですよね?」

 

「そうだ。と言いたいがもう違うな。正式に家から出たのだ。とは言っても貴族典範のおかげで貴族籍からは抜けないし死ぬまで貴族としての身分は保証されるのだがな。貴族をむやみに増やさないための仕組みが減る時にも邪魔をする、皮肉なものだ。まぁその際に父上からもらったのだ。餞別代わりだろうな。」

 

 

 

「はは、なるほど。さて到着です。この部屋が目的地。さあどうぞ中へ。」

 

〜〜

 

「これは…。」

 

「リョウ殿、この部屋は一体何なのでしょうか?」

 

ありゃま、二人とも呆然としてるね。

 

 

この部屋の壁にはたくさんの扉が並んでいる。

 

中央には休憩用にソファとテーブルがあるだけ。

 

初めてみたら何これ?ってなるのも仕方ないかな。

 

「そうですねぇ、ではアルティン様、今入ってきた扉のすぐ右隣の扉を開けてみてください。」

 

「え、えぇ。でも廊下から見たときはこの位置に扉なんてなかったと思うのですが…。」

 

ガチャ。

 

引き戸を開けるとそこには茶畑が広がっていた。

 

「な、なんだこれは。」

 

「こ、これは…。」

 

「この部屋にある扉は最初にこの部屋に入ったときのものを除いて空間同士を繋げる魔道具です。例えば今開けていただいた扉はうちの店で使ってる茶葉の生産場所の一つですね。」

 

 

「これは遠い土地同士を繋げるものなのか?」

 

 

「少し違いますね。近いものといえば収納関連の魔道具でしょうか。この扉はそれぞれ、その扉だけでしか出入りできない空間につながっています。」

 

「なるほど。して、なぜ私たちをこの部屋へ連れて来られたのでしょうか。」

 

「その答えはこの扉を開けたらわかりますよ。」

 

ガチャ。

 

「どうぞ。こちらが訓練場です。」

 

ーーーー

 

「これは…。」

 

「とても広いのですね。」

 

「ええ。他にもいろんな機能があります。仮想敵として何種類かのゴーレムを出したり今はただの更地ですが草原や雪原、岩石地帯や火山内部といった環境も再現できます。」

 

 

「それはすごいな。いつもここで鍛錬しなくなる。」

 

「それはご勘弁ください。さてどのような訓練がお望みで?」

 

「とりあえずリョウと手合わせしたい。私とアルティンの二人と同時に頼めるか?」

 

「かしこまりました。武器の方は?」

 

「訓練用のものがあるのですか?」

 

「ええ、隣の部屋に。」

 

「ならそれを使わさせてもらう。」

 

「了解です。では僕も支度しますので。」

 

 

 

ーーーー

 

「武器はお二人ともそのロングソードでいいですね?」

 

「ああ、鎧は自前のものを使うが武器はこれを借りる。」

 

「では始めましょうか。制限とかは?」

 

 

「魔法は身体強化のみ、単純に近接のみでお願いします。」

 

「かしこまりました。そちらからどうぞ。」

 

 

「では、いくぞ。」

 

互いに10Mくらい離れたところから、アメーリア様が動き出した。

 

やはり速い。地球では考えられないくらいだ。

 

アメーリア様が上から下へと剣をまっすぐ斬り下ろす。

 

僕は半歩横へ動き剣先を斜め下に向け持ち上げる。

 

そのまま受け流して後ろから来ているアルティン様の方へ。

 

なんとか二人は衝突せずに済んだものの足が止まった。

 

 

「さぁ、こっからはこっちの番です。」

 

そう宣言して、背中合わせで止まってる二人の周りを駆ける。

 

速く、疾く。

 

一瞬、二人へ殺気を飛ばす。

 

 

そしてそのまま半周し、いわば殺気と僕自身の挟撃をする。

 

僕に近い側にいたアメーリア様がとっさに剣を向けてくるが弾き飛ばし手から離れたところを奪う。

 

そしてそのまま二人の首筋へそれぞれ剣を向けた。

 

「チェックメイト。」

 

 

「参った。」

 

「お見事です。」

 

 

ーーーー

 

「すごいな、リョウ。最初の一合でこれはすごいと思ったぞ。」

 

 

「私は一合もさせてもらえませんでしたね。」

 

「はは、次は本気でやりたいですね。」

 

「なんと、まだ本気ではないというのか。」

 

「ええ、まぁ。」

 

まだこれくらいだとじいちゃんに片手だけで相手されちゃうよ。しかも一歩も動かずに…。

 

コンコン。

 

「ん、入れ。」

 

アメーリア様がノックに返事をする。

 

 

「失礼いたしますね。」

 

入って来たのはローズだった。ワゴンに紅茶が乗ってるね。

 

「紅茶が入りました。どうぞお召し上がりください。それとリョウ、マリアさんが楽団のことで用事みたいよ、お店に来てるわ。」

 

 

「そっか。申し訳ありません、お二方。ちょっと席を外しますね。ローズ、二人をよろしく。」

 

「はい。」

 

 

さて、楽団の方はどうなったのかな?

 


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