UQ HOLDER! ~闇の福音と空虚の不死人   作:瑠璃色伽瑠摩@氷蓮雪乃
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ノルマ達成!


拾伍: 力の手 ⑶

桂香が人狼と白髪の男と激闘を繰り広げる数20分前。

 

彼は、エナと共に借りた家にいた。 しかも、外から聞こえる爆発音や人の悲鳴にさえ気づかずに二人は眠っていた。 途端、扉が開かれ、誰かの足音が聞こえた。 それはおよそ10人ほど。桂香は瞼を開き、その誰かの方に視線を向ける。 少しぼやけるが、目の前の誰かが黒光りした銃器を向けているのが分かった。そして、乾いた銃声の音が響いた。 誰かが持つ銃器から放たれた弾丸が迫る。それを合図に全方位から弾丸が放たれ、迫る。 しかし、桂香は動ずることもなく、恐怖で体を縮こませるエナを抱き寄せる。 刹那、弾丸が届くてまえ、桂香とエナを取り囲むように、障壁が展開され、全ての弾丸が跳ね返された。 その弾丸は的確にその誰か達の額を貫く。 だが、それは一瞬だ。 倒れた誰か達は何事も無かったかのような動きで起き上がる。 桂香はその人形のような動きに思い当たる。

 

「・・・影傀儡か。 なら、凍らすのが手っ取り早いな」

 

桂香はそう呟き、片手を振る。 瞬間、影傀儡達の体が足元から順に氷像のように固まっていく。 影傀儡達はその攻撃に慌てることもなく、気味の悪い声をあげながら凍っていき、やがて、腰、胴体、頭へと到達し、完全なる氷像となる。 桂香はエナを背負い、外に出た。

 

外はあまりにも悲惨な光景だ。といっても死体の山があるという訳では無い。 燃え盛る街に、爆発音や人々の悲鳴が飛び交っている。 桂香は所々にいる影傀儡達を凍らせながら走っていると、路地裏の隅に倒れる黒服達を見つける。

 

「無事か? お前ら」

 

「あ、兄貴」

 

「・・・すいやせん、油断しました」

 

黒服2人の体には無数の銃弾の痕があった。桂香は2人を壁にもたれさせ、ある疑問を尋ねる。

 

「・・・この数時間に何があった?」

 

「お、俺たちは、兄貴達とわかれた後、路地裏にいたガキ共と戯れてたんです。 そしたら・・・兄貴が凍らせたアイツらが現れて、俺達に弾を放ってきたんです」

 

「ですが、俺達もそう簡単には死なないので、ガキ共だけでも逃がしました」

 

黒服2人はそう告げて、まだ治りきっていないのか苦しそうに咳き込んだ。

 

「・・・それが出来れば上出来だ。 後は、俺達、〈不死身衆(ナンバーズ)〉に任せろ。それと、傷が直ったら、ホルダーアジトに救援の連絡を頼む。 後、こいつも頼む」

 

「へ、へい!」

 

「お気をつけて! 桂香の兄貴!!」

 

「・・・あぁ、気をつける」

 

桂香は黒服2人にホルダーアジトへ連絡できる端末とエナを託し、路地裏を飛び出して影傀儡達を率いているであろう本体を叩くために街を走る。

 

何処も彼処もが、影傀儡達による放火や銃声の音、そして、人々の悲鳴が支配している。桂香は進路を邪魔する影傀儡達を風の魔力刃で切り刻む、又は凍結させる。 しかし、毎回毎回、同じことをしていれば魔力が尽き、本体を叩く前に戦線離脱だ。 おまけに夏凛はシャワー、刀太と九郎丸は建物にいなかった。 その為、彼らの安否がわからない。だが、全員が一応不死人ということもあり、無事だと考えるが万が一の可能性がある。 桂香は夏凛の方へ向かうことを考えたが、すぐさま、刀太と九郎丸を探す方針へと変えた。 何故なら、夏凛ならば一人でなんとかなると考えるからだ。 彼女は〈不死身衆(ナンバーズ)〉のNo.4だ。桂香よりもナンバーが高く、本気の彼女と戦えば恐らく勝てないほどの力量差がある。それに比べて、刀太と九郎丸は余りにも劣っている。 力量差も判断力も、戦闘センスもだ。 だからこそ、桂香はそちらの2人を探すことに専念する。

 

「・・・探せ」

 

桂香は両手から魔法で造られし魔鳥や、魔鴉を計8体出現させ、刀太と九郎丸を探しに行くよう命令する。 すると、魔鳥や魔鴉は一声鳴くと、四方八方へと飛び去っていった。

 

「よし、後は本体を・・・」

 

刹那、桂香の頬が何かに打ち抜かれ、体が衝撃に耐えきれず吹き飛んだ。家々を何軒か壊し、やがて、地面で数回バウンドして勢いが止まる。桂香は汚れた制服のズボンの汚れを払い、何かの衝撃が放たれた方を見る。

 

そこにいたのは、二足歩行で立つ狼だ。 人狼族と呼ばれる亜人。 そして、構えと先程の衝撃から彼が、武闘家である事を理解する。

 

「お前、案外頑丈だなぁ、ガキ」

 

「・・・散れ」

 

桂香は無詠唱で黒と白のリングで形成されている長い銃身から人を貫き焦がすほどの熱量が込められた砲撃を放つ。だが、狼はその攻撃を躱し、カウンターの獣拳による10連撃が繰り出された。桂香は連撃を障壁で防ぎ、お返しとばかりに魔力の込められた拳で20連撃を放つ。その内、約10発は防がれるが、残りの10発程は狼の鳩尾、顎、鼻面に命中した。脳が揺らめき、狼は後ずさる。 桂香は後ずさった狼の懐に潜り込み、至近距離からの魔法を放った。

 

「--白雷掌(吹き飛べ)

 

刹那、狼の鳩尾の中心で膨大な量の魔力が白雷となり爆発した。どデカい爆発音と打撃音を響かせて、狼の体は吹き飛んでいく。しかし、桂香の攻撃は終わらない。 『瞬動術』で吹き飛ぶ狼の元まで近づき、上空へと蹴り上げる。狼の体は突然の蹴りに、勢いが垂直へと変わる。 砲弾のように吹き飛ぶ狼は無理矢理体制を立て直し、空中を蹴ってこちらへと突撃してきた。桂香は空中の狼の元へと同じように空を蹴り、突撃する。

 

そして、狼と桂香の拳がぶつかり、ゴキャァっという音が拳から響いた。 それは骨の砕ける音。 しかし、桂香達はそんなことお構い無しに、空中で殴り合う。 顎を打ち抜けば、頬骨を砕かれ、鼻面を叩き折れば、左肩を砕かれる。それが、幾度となく続き、桂香達は地面へと落下する。

 

片や、顔中の骨が折れ、全身の骨をも砕け、立ち上がれない状態。

 

片や、全身の骨を砕かれ、眼球を抉られ、顔中の骨を砕かれ、立ち上がれない状態。

 

どちらもボロボロだ。 立ち上がることさえできないほどの致命傷。 だが、彼らは治癒能力の高い。 このぐらいの傷さえも治してしまう。 2人は再び起き上がり、激突する。 終わらない無限の戦い。 永遠の戦い。 かのように見えたがそれは違う。 狼は治癒能力が高いだけで不死では無い。 そして、治癒能力も不死人には劣る。 だから、多少の傷は残る。 だが、対する桂香には先程までの痛々しい傷はない。

 

「・・・チッ、不死ってのはめんどくせぇ」

 

「・・・諦めて、死ね」

 

刹那、鼻の下を指で擦った狼の眼前に現した桂香は、顎に蹴りを放ち打ち上げた。 そして、上空へと飛び、狼を瓦礫の山のある方向へと放り投げた。 砲弾と化し吹き飛ぶ狼の元まで移動し拳を放つ。 しかし、それを防がれカウンターが叩き込まれるが、それを更にカウンター返しをしてを繰り返す。 やがて、瓦礫の山に辿り着くと、影傀儡達に襲われている刀太達を見つけた。

 

そして、話は現在に戻る。

 

 

時を置き去り姿を消した狼。 彼が行ったのは、本物の『瞬動術』。 それは、長年磨き続けた者しか到達出来ず、反応できないモノだ。であれば、桂香にもそれは反応できない。狼は既に桂香の横を通り過ぎていた。 そして、時は動く。 桂香の全身から鮮血が舞った。 それが、狼の攻撃だということに遅れて気づく。

 

「・・・くそ」

 

桂香は血を吐き出し、地に前のめりに倒れ--吹き飛ばされる。 そして、大きな拳による連撃が桂香の体を襲う。 鼻が折れ、頬骨が砕け、両肩、両足をもがれた。 更に、止めと言わんばかりに腹部を蹴り、上半身と下半身が分かれた。

 

「・・・ここまでか」

 

桂香は顔面を押し潰さんと迫る狼の足裏を霞む視界で見やり、諦めの言葉を呟いた。 刹那、狼の体が誰かの拳で吹き飛んだ。 そして、狼を吹き飛ばした誰かの姿が視界に映る。

 

それは、両腕が漆黒の装甲を覆ったようになっている拳を構え、立つ近衛刀太だ。

 

「・・・刀太」

 

「桂香、ゆっくりしてろ」

 

「あぁ、そうさしてもらう」

 

桂香はそう呟いて、体の修復に専念する。 刀太は白髪の男と狼を睨みつけ、

 

「随分、ダチを痛めつけてくれたみてぇだな? てめぇら、タダじゃすまねぇぞ」

 

そう宣言した。

 




バトル続きです!

それでは、また次回に!!







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