UQ HOLDER! ~闇の福音と空虚の不死人   作:瑠璃色伽瑠摩@氷蓮雪乃
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リゼロって泣ける。


壱:始まり⑵

学校での退屈な授業を終え、桂香達計六名は、三つの墓が設置されている丘にいた。 これは近衛刀太の両親と祖父のお墓だ。

 

「終わったか? 刀太」

 

「ん? あぁ、悪ぃな、俺の用事に付き合ってくれてよ」

 

「気にするな。 それにお前は目を離すとすぐにどこかに行くような馬鹿?と雪姫から聞いたからな」

 

桂香は木にもたれかかりながら告げた。

 

「お、俺を犬みたいに言うんじゃねえよ!」

 

「そんな事より今夜も雪姫の帰りに奇襲するのか?」

 

桂香は淡々とした口調で文句を垂れる刀太に尋ねた。

 

「そんなの当たり前に決まってんだろ!」

 

「そうか、なら早く帰るとしよう。 俺は腹が減った、少し前に食った炒めた米みたいなのが食べたい」

 

「それもそ--俺が作るの確定なのか!?」

 

「ん? そうだが? 雪姫の飯は凄く不味い。 それに対してお前の飯は今まで食った物の中で一番美味かった、らしい」

 

桂香は相変わらずの淡々とした口調で告げる。刀太は桂香の感想に照れた頬をかきながら、

 

「し、仕方ねえなぁ。 た、確かに雪姫のよりも美味しいけどよぉ。 ホンット仕方ねえなぁ!」

 

「なるほど、これが調子に乗っているということか」

 

「ちょ、調子には乗ってねえからな!?」

 

刀太は桂香の言葉を否定。桂香はよく分からないな、と呟きながら刀太達と共に他愛もない会話をしながら帰路へとついた。

 

刀太と桂香は家の天井に身を潜めていた。そもそもなぜ彼らが自宅で身を潜めているのかには理由がある。 それは、朝とおなじで『雪姫を倒す』ことだ。 互いに口に木刀を咥えている為、目で会話をするしかないのだが、会話が成り立たないのが彼らだ。片や馬鹿、片や考えが読めない。 どれだけ長く一緒にいたとしても成り立たないものは成り立たないのが現実だ。

 

(・・・お腹すいたな)

 

(・・・アイツが何考えてんのか全く分かんねぇ)

 

桂香はキッチンに置かれている炒飯の材料の方に目を向けなながらそう思っていると、

 

「おーい、桂香、刀太、帰ったぞ〜」

 

玄関から雪姫の声が響いてきた。 桂香と刀太は即座に思考を切り替え、ただ一瞬のチャンスを待ち構える。奇襲となれば、バレれば終わりであり、また仕留め損ねれば終わりである。そのため、この一撃で仕留めなければならない。 ミスは許されない。 微かに手が震え、顔を強ばらせる刀太と手の震えも顔さえも強ばらせず冷静といった感じの桂香。 対となる存在だからこそお互いの苦手を補うことが出来る。 そしてそのチャンスが来た。 桂香は刀太が攻撃を行うタイミングを見計らう。目標である雪姫が居間に現れた瞬間、刀太が動いた。

 

「覚悟しろ、雪姫!!」

 

刀太は木刀を連続で叩きつける。 目測でおよそ計7発の連撃。 普通ならば追いつくことの出来ない攻撃の早さ。だがそれは並の人間の場合であり、不死の雪姫や、熟練の魔法使いは別だ。 雪姫がその攻撃を容易く魔法の障壁で防ぎ、殺気の篭った指突(しとつ)が放たれたのと同じタイミングで、桂香は襲いかかった。

 

「くたばれ、雪姫」

 

木刀を頭頂部へと叩きつける。 が、それは障壁で防がれた。 そこから桂香は横へと振りかぶると見せかけて、雪姫の脇腹に木刀を持っていない方の手で拳をつくり叩き込んだ。肉を打つ音がなり、雪姫の顔が微かに痛みで歪んだ。そのすきを狙い、木刀で計十回の連撃を繰り出した。 しかし、その攻撃は簡単に障壁で防がれた。 十連撃を繰り出したことにより、一瞬、桂香の動きが遅くなった。 そしてそのタイミングで、雪姫は白磁のように綺麗で程よい肉付きの足で桂香の頬を蹴り飛ばした。 それにより桂香の体は軽々と吹き飛び、壁へと背中から激突した。

 

「・・・チッ、また負けたか」

 

「フッ、残念だったな。 これで70連敗だ。 だが、私に一発くらわせたことは褒めてやる」

 

雪姫は桂香の髪をグシャグシャと力強く撫でながら告げた。桂香は微かに胸が疼くのを感じた。 それは嫌悪感ではないのは何となく分かる。だが、この胸の疼きはどういう感情なのか分からない。 桂香は未だに撫で回してくる雪姫の方を見やると、信じられないものを見たと言いたそうな顔をしていた。

 

「おい、雪姫」

 

「・・・・」

 

「雪姫?」

 

桂香は返事のない雪姫の手を掴むと、ビクッと震わせ、慌てた様子で口を開いた。

 

「わ、悪い! いや、お前が頬を赤らめて嬉しそうな顔をしていたものだから、つい」

 

「俺が、嬉しそうに? そんなこと信じられるわけないだろ」

 

「そんな事ない! さっきの表情は携帯で写真を撮って待受にしたいレベルで可愛かった!」

 

雪姫は興奮気味でそう豪語して、桂香に頬擦りし出した。 と、そのタイミングで、炒飯の載った皿を両手に持った刀太が声をかけてきた。

 

「お〜い、雪姫・・・って、桂香に頬擦りして何してんの?」

 

刀太は微かに引いた表情で頬擦りしている雪姫を見やった。対する雪姫は頬を真っ赤に染めて言葉にならない声を上げて桂香を吹き飛ばした。 そして何事も無かったかのような顔で座り直した。

 

「刀太、食べるぞ」

 

「えーと、それでさっきの--」

 

「た・べ・る・ぞ!」

 

「お、おう」

 

刀太は雪姫の圧力に顔を引き攣らせながら机に炒飯を起き、横目で目を回す桂香に同情しながら黙々と食べ始めた。

 

それから数時間後、刀太と桂香は素振りをしていた。刀太が持つ木刀は普通の重さだが、桂香はその倍の重さのある木刀を使っている為、刀太の方が素振りの数が千回多い。 汗が額を伝い、鼻筋へと流れる。時折、汗で視界が霞むが、桂香と刀太はそれを気にすることなく振り続ける。

 

「毎日毎日、よく飽きずに頑張ってるなぁ、お前ら」

 

ビールを手にぐだぁとだらしなく座る雪姫は、呆れた顔だ。 確かに彼女からしたら下らないものだが刀太と桂香にとっては別だ。 強くなる為には毎日鍛錬しなければならない。一日でも休めば終わりだ。ましてや田舎を出て都に行くという事は雪姫以上の猛者がいるかもしれない。オマケに雪姫を倒すには強くならなければならないからでもある。

 

「・・・ふぅ、終わったぁ」

 

「そうだな」

 

汗を大量に流し苦しそうに呼吸する刀太と汗をかいてはいるがあまり辛そうな顔をしていない桂香。 彼等は互いに床に倒れ込み、夜空を眺める。 その隣では雪姫がビールを飲みながら同じ様に夜空を眺めていた。だが、その表情は少し浮かない。 まるでなにか辛い過去を思い出したかのようだ。しかし、それは雪姫の問題であり、桂香と刀太にとっては関係の無い話。 ましてや雪姫からしたら大きなお世話になるかもしれない。だから桂香は雪姫にただ一言だけ告げた。親友たちから教えてもらった言葉。

 

「一人で考え込むなよ、雪姫」

 

同情でもからかいでも無い。 この言葉は彼なりに考えた最善の言葉。 本心と変わらない。しかし、彼はそれに気づいていない。 自身の心が伝えたいと思っていたことには。

 

「フッ、ほんとに生意気なことを言うやつだな、桂香」

 

「肉丸達がよく言ってる言葉を真似しただけだ」

 

桂香は夜空の月を眺めながら答えた。真っ暗な空にキラキラと輝く星。 そして存在感を強調しすぎている月。桂香にとっては夜空は縁遠いもの。 雪姫に合うまでは1度も夜空をしっかりと眺めたことはない。だからこそ、桂香は気づかないうちにポロリと言葉を零していた。

 

「・・・綺麗だ」

 

「そうだな」

 

「だな」

 

雪姫と刀太は微かに微笑む桂香を見て、自分達も微笑み頷いた。

 

次の日、桂香は首を絞められているような痛みで目を覚ました。 光が開いた瞳孔へと射し眩しさに右手で遮る。 そして少しクラクラとする頭が冴えるのを待ち、周りの状況を確かめる。

 

場所は自宅のリビング。下には布団が二枚敷かれている。右には足を桂香の腹に乗せている刀太。 左には桂香の首を脇に挟んで大きな胸を押し当てながら締め上げてくる雪姫。

 

その情報から桂香は昨夜のことを思い出す。

 

「あぁ、なるほどな」

 

桂香は雪姫が起きないようにゆっくりゆっくりと抜け出し、腹に乗る刀太の足もどかす。 そして洗面所へと向かい、顔を洗う。 その後、寝間着を脱ぎ、制服に着替え終わると、そのタイミングで、雪姫と刀太が目を覚ました。二人共まだ眠たそうな顔で瞼を擦りながらフラフラとした状態で立ち上がり、二人して洗面所へと向かった。

 

「お腹すいた」

 

桂香は先に朝食の席につき、刀太が飯を作るまで庭を見つめる。 やがて、刀太と雪姫がスッキリした顔でリビングに入ってきた。

 

「ふぅ、スッキリスッキリ!」

 

「相変わらず桂香は起きるのが早いな」

 

「お前らの寝相が悪いからだ。 それより(めし)

 

桂香はちゃぶ台に乗せた顔を庭から雪姫達の方に向けて告げた。

 

「くっ、い、痛い所を」

 

「お、おう。 今日はちょいと遅く起きちまったから軽いモンでいいか?」

 

「いいから早くしろ。 お腹が泣いている」

 

「ヘイヘイ。 あ、雪姫はまず着替えてこいよ」

 

淡々とした口調で急かしてくる桂香に刀太は適当に返事をして、座ろうとしているワイシャツ姿の雪姫に声をかけた。雪姫は面倒くさそうな顔で立ち上がり、服の置いてある部屋に向かった。 桂香はその間もぐたぁと顔をちゃぶ台に乗せたまま刀太がキッチンで料理を作っているのを眺めていた。

 

数時間後、桂香達三人は学校へと向かっていた。景色は相変わらずの田んぼや畑。 時折、駄菓子屋やコンビニが見える。

 

「毎日毎日、学校とはご苦労なことだ」

 

桂香は所々ではしゃぎながら学校へと向かう生徒達を見て呟いた。 一応、自分も生徒なのだが、学校に行かなければならない理由が分からない。 そもそも常識や戦い方、知識などは生まれた頃から全てインプットされている。簡単に言えば生まれた頃から天才ということだ。

 

「そうえば今日はあの馬鹿共と悪巧みしていないのか?」

 

「あぁ、していない」

 

「あぁあ!? そうえば肉丸達とそんな約束してたんだったぁぁぁぁあ!」

 

首を振る桂香の後ろで頭を押さえて大声で叫ぶ刀太。 雪姫と桂香は不思議そうな顔で首を傾げる。 それに対して刀太は、悪い、と謝り先に学校へと向かっていった。

 

「お前は行かないのか?」

 

「勿論だ。 それに、アイツらといてもお前に勝てる気はしない」

 

「そうか、まぁ、それもそうだな」

 

桂香と雪姫は他愛もない会話をしながら、刀太に数十分ほど遅れて学校へと到着した。 そして職員室へと向かう雪姫と別れ、桂香は一人で教室へと向かう。

 

ギシギシと踏みしめる度に軋む音が校舎内に響く。 窓の方を見やれば、畑の手入れをしている老人や、道端で世間話をしている老人などがいる。 桂香はその光景から目を離し、自身の教室の扉の取っ手に手を触れた。ギシッと軋みをあげて扉が開かれ、見慣れたクラスメイト達が各々グループを作って談笑しているのが目に見えた。 隅の方に刀太達は円を作ってひそひそ話をしており、桂香は声をかけた。

 

「刀太、何話してる?」

 

「ん? おお、桂香か。 ちょっと、雪姫を倒す作戦について話してたんだ」

 

「そうか、まぁ、俺は俺で好きにやるから頑張ってくれ」

 

桂香は話を切り上げて椅子に座り顔を机に伏せた。 それから数分後に始令のチャイムが鳴り、1日が始まった。

 

 




次回は投稿日未定です! でも早めに投稿します!







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