UQ HOLDER! ~闇の福音と空虚の不死人   作:瑠璃色伽瑠摩@氷蓮雪乃
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久しぶりです。

今回は、桂香と夏凛の過去話です!

かなり夏凛がキャラ崩壊してるかも知れませんが、お許しください。




参拾壱: 桂香と夏凛 ⑵

数百年前から田舎町の教会で、非人道的実験が行われているという噂の真相を確認する。 それが五回目となる桂香と夏凛二人での任務だった。

夏凛と桂香の二人は、教会のある田舎町に午後7時頃に到着し、そこにあるとある宿屋の一室を借りていた。

二つのベッドに、机と椅子が二つ。簡素な作りの部屋。そこで、パジャマ姿の夏凛と桂香は椅子に座り、明日について話し合う。

「明日は情報収集をします」

夏凛は机に置かれたお茶をひと口啜り、言う。時計は『20:05』を指している。空は暗くなっており、空いた窓から夜風が吹きつける

「潰さないのか?」

桂香は非常食として常備している細長のブロックの形をしたカロリーバーを咀嚼しながら尋ねる。 口がパサパサとして美味しくないと雪姫達は言っていたが、桂香は気に入っている。

「馬鹿なんですか、空洞桂香。 私達は、本当にあの教会で非人道的な実験が行われているのかを確かめに来ただけで、教会を破壊しにきたわけではありません」

「それなら、乗り込んだ方が早いだろ?」

さも当たり前のように桂香は告げる。 夏凛は、はぁ、と呆れた溜息をつき、額に手を触れる。と、部屋の扉をノックする音が聞こえた。 そしてそれと共に、女性の声が響く。

「お客様、そろそろ他のお客様が就寝する時間ですので、小声でお願いします」

どうやら宿の店主が知らせに来たらしい。

「えぇ、分かりました。 教えていただき感謝します」

「それでは、ごゆっくり」

夏凛は宿の店主にお礼を告げる。 暫くしてドアの外にいた人の気配が消え去った。 それを確認して、夏凛は小さな声で告げる。

「噂では、あの教会では、非人道的なやり方で人工不死人を製造しているようです」

「・・・俺と同じか」

「はい、あなたと同じです。 ですが、あなたは既にその組織は潰したと言っていましたよね?」

「あぁ、潰した。 雪姫に負けた二日後にな」

桂香は数年前の出来事を思い出して頷く。 あの時、創造主を殺した時の感覚は未だに手に残っている。 肉を抉り、切り刻み、数え切れない創造主達の返り血を浴びた。あの感覚はそうそう味わえないものだ。

「そろそろ寝ましょうか」

「あぁ、寝るか」

桂香と夏凛は歯を磨き、電気を消して、それぞれベッドに潜り込み、瞼を閉じる。 その日は、意外とすんなり、意識が消えた。



翌日、桂香達二人は昨日言った通り、情報収集を行っていた。 しかし、その情報収集で得られたものの中に、非人道的実験の話は出てこなかった。 隠しているということもありえるが、探りすぎると逆にこちらが危なくなる。仕方なく、桂香達は強行手段へと移る。

田舎町の住人達が静まり返った闇のように暗い夜空の中、桂香と夏凛はローブを身に纏った姿で屋根の上で、教会の様子を伺っていた。 すると、宿の方から教会へと向かう住人達が見えた。 皆一様に、明かりのついたランプを手に教会へと入っていく。

「あの人達は・・・なぜ教会に?」

「予想が当たったみたいだな」

「待ってください、空洞桂香。 あの人達がまだ、非人道的実験をしているという証拠はありません」

「そんなの見ればわかる。 行かないなら、お前はそこにいろ」

桂香はそう告げて、制止する夏凛を無視して、教会の扉を開けた。

教会の中は、所々に小さな灯りが点々とついているだけの薄暗い空間。 列を作る長椅子は砕け、倒れている。 桂香はその中を真っ直ぐに歩んでいく。 元から道がわかっているかのように。しばらく歩いていると、南京錠がされた鉄製の大扉が現れた。桂香はその南京錠を無造作に掴み握りつぶす。 バキンッ、と音が鳴り、南京錠が砕け散る。 そして、鉄製の大扉に手を触れ、押す。 重い軋む音をあげながら、扉が開く。 と、そのタイミングで、左右に取り付けられているランプが光を灯す。それにより、その場所の全景が現れる。

左右に取り付けられているランプと、よく分からない大量の機械。 地面は何かが収まっているかのような大きな丸い容れ物が敷き詰められている。そして、その一番奥に、小型のタッチパネル式の機械が置かれていた。

桂香はその機械を見た事があった。 自分が造られたあの場所で。 桂香は詠唱を呟く。 刹那、彼の背後に魔力で構成された刃を持つ剣達が顕現する。

「--潰せ」

その声を合図に、剣達は縦横無尽に部屋を切り刻んでいく。建物を支える柱が砕け、天井から瓦礫が落下する。 その中を桂香は真っ直ぐに歩く。 タッチパネル式の機械の下へと。 と、その時だ。

「久しぶりだなぁ、『欠陥品(ディフェクト)

若い男の声が崩れる教会の中で響いた。そして、火花の散る音が鳴り、建物を切り刻んでいた剣達が消滅する。しかし、桂香はその男に返事することなく、機械を操作する。沢山の実験資料と実験体の名前が並ぶフォルダの中に行方の消えた妹の名前は無かった。 そして、桂香は《open》と記されたパネルを押した。 すると、地面に敷き詰められていた容れ物が浮き上がってくる。 そして、その容れ物が全貌を現す。

「俺と同じ人工不死人か」

「は、お前みたいな欠陥品と一緒にしてもらっちゃ困るなぁ。 コイツらは、俺の最高傑作の兵器さ!」

と、桂香の呟きに、若い男は答える。 その若い男は徐々に近づいてくる。

「改めて、俺の名は、グライツェ・エクライド。 久しぶりだなぁ、『欠陥品(ディフェクト)』」

若い男、グライツェ・エクライドは、三日月形の笑みを浮かべて、魔法の矢を展開し、宣言した。 それに対し桂香は魔力で構成された刃を持つ剣達を顕現させ、

「--やってみろ」

と答え、狂気の男と欠陥品による歪な殺し合いが始まった。


その殺し合いが始まる数十分前、夏凛は通信機で雪姫に教会についての噂と桂香の独断を報告していた。

「--以上です。 空洞桂香をどうしますか? 雪姫様」

「連れ戻せ。 桂香は自分では気づいていないと思うが、心の奥底に闇を抱えている。 何色にも染まらぬドス黒い闇だ」

「闇、ですか?」

「あぁ、そうだ。 夏凛。 あいつはお前と同じで、神からの一方的な運命を押し付けられた只の人間だ。 ただ平和に静かに生きたかっただけのどこにでもいる普通の人間だ」

通信機から発せられる雪姫の声には、桂香を心の底から心配しているような感情が込められていた。 夏凛はギリッと下唇を噛み締める。

「あの男が、私と同じ? 彼は違う。 私とは全然違う。 神からの一方的な運命? 普通の人間? なら私は? 神から傍迷惑な愛を押し付けられて不死身になった私は? 私だって普通に暮らしたかった! 魔女狩りにだってあわなくてすんだ!八つ裂きにされて、斬られて、刺されて、それでも体に傷はつかなくて、ただ苦痛だけが残る。 それに比べて、あの男は痛みも悲しみも苦しみをなんにも知らない!! そんな男が私と一緒なわけがない!!」

夏凛は叫んだ。 限界だった。 自身の苦しみを痛みを理解してくれる人は雪姫ぐらいだった。それなのに、あの男と自分が同じなんて、認めたくなかった。 神からの一方的な愛と、あの男が押し付けられた運命は別物だ。雪姫の息を呑む声が通信機から聞こえた。何かを言おうと迷っているのだろう。 しかし、夏凛は止まれない。 溢れた感情は止まることを知らない。 決壊したダムのように溢れる。

「私は・・・こんな夢のような力なんていらない。 ・・・ ただ、退屈な日常を過ごしたかっただけ。 それなのに、なんで・・・私の人生なのに・・・なんで・・・選択する権利がないんですか! 生まれた頃から決まったルート以外は歩めない。 いるかも分からない神になんで決められなきゃいけない! これは私の人生で、私の、私だけのものだ!」

夏凛は呪う。 自身の境遇を。 この世界を。これまで感情を爆発させたことなんてなかった。 なのに、あの男に会って心のどこかで救われている気がした。自分と同じ不死人なんだと。 だけど、違った。 あの男は笑わない。 怒らない。 悲しまない。 喜ばない。 痛みを感じない。 苦しみを理解できない。 欠陥を抱えた存在だ。 それが哀れだった。 人形みたいな無表情で喋るあの男が。 瞳は読めない。 何を思い、何を感じているのか。 自分のことを滅多に話さない。 異形の存在。 だが、それでも、何故だろうか。 彼を放っておくことができない。 したくない。 嫌だと頭で思っても、心が、身体が、動いてくれない。 頭をよぎるあの男の彼なりの素っ気ない不器用すぎる言葉や、時折見せる凛々しい顔つき。きっと、彼は気づいていないんだろう。彼は異形だ。 異形で、それで、誰かが支えてあげないと崩れてしまう存在だ。 だから、きっと、雪姫はあの男を引き入れたんだろう。 人間の感情と仲間の良さを教える為に。

夏凛は大きく息を吸い、吐く。 そして、スッキリした顔で、教会を見やる。 刀を握る手に自然と力が込められる。 静かないつもの声音で通信機に囁く。

「取り乱してすいません、雪姫様。 これより、教会の破壊任務を行います」

「--すまない、夏凛」

教会へと向かい駆け出す時、通信機が切られる前に雪姫の言葉が発せられ、通信は途絶えた。






今回は、ちょっと勢いで書きすぎたので、うーん、って感じです。

さて、次回は、桂香VSグライツェと、夏凛のデレ?って感じですね。


それではまた次回に!!