UQ HOLDER! ~闇の福音と空虚の不死人   作:瑠璃色伽瑠摩@氷蓮雪乃
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さて、今回で回想編終了! 次回は回想後の銭湯でのお話をして、デート回にいきます。


参拾弍:桂香と夏凛 ⑶

崩落する教会を魔力で形成された剣達と、禍々しい闇に染まる魔力の矢が縦横無尽に踊り舞う。 空気が揺れ、床が爆ぜる。その中で、二人の異形が激突する。

 

片や、イカれたマッドサイエンティストの男

 

片や、心を持たぬ不死身の男

 

彼らの全身からはそれぞれ白と黒の光が迸っている。音よりも速く移動しては、激突し、教会を揺らす。休まることを知らない怒涛の連撃。互いに譲ることはない。 止まるとすれば、どちらかが死ぬまでだ。黒の光と化した桂香は口早に詠唱する。途端、黒の光が数千の黒槍となり襲いかかる。 対する白の光と化したグライツェは右手を振った。 それだけで、数千の白槍が射出される。 激突する黒槍と白槍。 ぶつかる度に破砕音をあげて、霧散する。 更に桂香とグライツェは無詠唱で魔法を放つ。 火炎が、氷槍が、風の刃が、雷球が、激突しては大気が揺れ、互いの身体を焼き、凍らし、裂き、焦がす。 しかし、顔を痛みに歪めることはない。 一人は無の感情、もう一人は愉悦に浸る。 相容れない全く似ていない化け物達が意味も価値もない殺し合いを繰り広げる。

 

グライツェは私利私欲の為だけに戦う。

 

桂香はただ仕事をこなす為に戦う。

 

「ヒャッハァ! いいねェ、いいよ! やっぱ殺し合いはこうでなきゃなァ!! おまえもそう思うだろぉ? 『欠陥品(ディフェクト)』!!」

 

踊るグライツェは愉悦の混じった狂声をあげて白槍を連射する。

 

「--興味ない」

 

桂香は飛んでくる白槍を受け流し、空中で踊るグライツェへと接近、更に無詠唱で剣を形成、そして--薙ぐ。 大気が裂け、グライツェの白衣が風圧で靡く。障壁による防御。 グライツェの体に傷はない。

 

「クフ、フフフフ・・・アハハハハハッ!! 喰らい尽くせ! 『(二グレード)龍顎(メントゥム)』!!」

 

 

グライツェは愉悦の混じった声で笑い、詠唱する。 途端、グライツェが突きつけた右手の平の中心が輝き、魔法で形成された闇を纏う龍の顎が桂香の右腕を喰いちぎらんと襲いかかる。

 

「術式固定 掌握」

 

桂香は魔力の込められた剣を手に呟く。 途端、蒼い電流が迸り、体を覆っていく。

 

「術式兵装『疾風(アギリタース・)神雷(デウケーノス)』」

 

膨大な魔力が桂香を中心に膨れ上がる。 全身から雷が迸る。『疾風神雷』--それはかつての英雄が使用していた『疾風迅雷』の上位版。彼は英雄の力さえも利用することの出来る化け物。魔法使いに創られし異形。

 

「あの英雄の魔法を真似たところで俺に勝てると思ってんのかァ? 『欠陥品(ディフェクト)』ォォォオオ!!」

 

グライツェはそう声高らかに笑い、

 

「術式兵装『獄焔(ごくえん)死天(してん)』!!」

 

唱える。 刹那、グライツェの身体が火の粉を残して消える。衝撃。 桂香の身体が床に叩きつけられる。床が抉れ、クレーターが生まれる。肉を焼く匂いが漂う。それは徐々に腐臭を生み出す。鼻をさす匂いはすぐそばから漂う。 そして--気づく。 匂いの出処は自身の背中。 熱するような痛みが襲いかかる。 しかし、痛む素振りもせずに、その背中の燃える炎を消す。

 

「ハハハハハハ! 闇の魔法はお前だけが使えるもんじゃねえんだよォ!」

 

グライツェの声が響き、眼前に姿を現す。 全身を炎と化した姿で。 桂香は雷化した身体を生かして目に見えぬ程の速さで躱し、詠唱する。

 

「ラ・ステラ マギ・ヌス クルレーネ

 

蒼雷を纏いし月穿つ槍 焼き焦がし貫く

 

顕現しろ: 蒼雷(ガラノス・)(シエロ・)(ハスタ)

 

刹那、桂香の真横に蒼雷を纏う長大な槍が姿を顕す。 それに対しグライツェも唱える。

 

「レイ・ギス ナギ・ラス セルシテリア

 

獄炎纏いし天剣 大地を焦がす審判と化す

 

神焔の裁きを 罪地に解き放たん :獄炎(フラガ・)(シエロ・)(スパーダ)

 

途端、蒼雷天槍と同等、否、それ以上の魔力を帯びた獄炎を纏いし大剣が顕現する。 そして--激突。 爆発的な風が生じ、壁に亀裂が走る。更に人工不死人が容れられた容器が破裂する。 緑色の水が漏れ、人工不死人が吐き出される。 その時、グライツェの顔が歪んだ。 そしてすぐに、怒りへと変わる。

 

「やってくれたなァァあああ!? 『欠陥品』!! よくも、何百年かけて創り上げた実験体を! 」

 

グライツェは叫ぶ。吐き出された人工不死人達は動かない。 逆に、肉体が崩れていく。 それが更にグライツェの怒りを買う。 魔力が増幅し、桂香の蒼雷天槍を砕く。 それにより、獄炎天剣が桂香の身体を貫いた。 かに見えた。 しかし、桂香はギリギリで身を躱し、左腕を犠牲に致命傷を避ける。だが、意識が薄れていく。 どうやら血が足りないらしい。 桂香は床に力なく倒れふす。 視界がかすみ、意識が遠のいていく。

 

「--失敗した。 出血が多すぎた」

 

桂香はそう呟き、それと共に瞼が閉じる、瞬間、

 

「空洞桂香! 無事ですか!?」

 

少女の声が聞こえた。

 

「・・・夏凛?」

 

桂香は薄れいく意識の中、呟く。 得物を手に夏凛が近づいてくる。 刹那、夏凛を爆発が襲った。 その爆発は連続で十回起こる。 夏凛の悲鳴が響く。

 

「クフフフ、アハハハハハッ!! どんな気分だァ? 『欠陥品』。 大切なモンを奪われる気分はよォ!?」

 

グライツェは怒りと愉悦の混じった声で笑う。 嘲笑う。 しかし、桂香の顔は変化しない。 人形のように一切表情を変えない。 無感情の声で桂香は言葉を発する。

 

「悲しみは理解できない。 ・・・だが」

 

「は? なぁに言っ・・・!?」

 

途端、グライツェの身体が吹き飛んだ。

 

「不愉快だということは理解出来た」

 

桂香はそう呟き、雷化状態でグライツェの顔面を掴み、雷を放出する。

 

「ギィッ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」

 

グライツェは叫ぶ。 喉が張り裂けんばかりの苦鳴をあげる。 だが、桂香はそれを気にすることなく、更に雷の威力を上げる。 徐々に顔が焼け焦げていく。 グライツェは痛みから逃れるために無詠唱で魔法を発動。 遠距離の人間を操る魔法。 グライツェが操るのは、夏凛だ。 桂香はそれに気づかない。

 

「ハッ、背後がおろそかだなァ! 『欠陥品』!!」

 

グライツェが声高らかに笑い声をあげた瞬間、桂香の口から血が吐き出される。 腹部から突き出る銀色の刀身。それが抜かれ、桂香の全身を纏う雷が消える。 術式使用者の肉体が限界に達し、術式兵装が解けたのだ。

 

「お疲れ様、お嬢ちゃん♪」

 

グライツェは指を鳴らす。 それにより夏凛の洗脳が解ける。 そして、意識を取り戻した夏凛は絶望した。

 

右手に握られる血のついた刀と目の前で倒れる少年の姿に。

 

「え・・・? け・・・いか?」

 

口から少年の名前が零れる。 動かない少年の名前を呼ぶ。 何度も何度も。 不死人ならば死なないはずだ。 なのに、目の前の少年は動かない。 腹部から漏れでる血が止まらない。 夏凛の瞳から涙が零れる。 その中で、グライツェは笑う。 嘲笑う。 哀れな少女と『欠陥品』の少年を。

 

「安心しなよ、お嬢ちゃんも『欠陥品(こいつ)』と同じとこに送ってやるから」

 

グライツェは夏凛の頭を無造作につかみ、宙吊りにする。 悪魔のような笑みを浮かべたマッドサイエンティストは、茫然自失する少女の頭を掴む手に力を込める。 ミシミシと骨の軋む音が響く。 終わりを迎える瞬間、グライツェの右腕が消え失せる。否、消えたのではなく、切断されたのだ。 ブシャァと鮮血が吹き出、夏凛を赤に染める。

 

「うひゃぁああああ!? う、腕がァああああああああ!? 」

 

グライツェの口から子供のような悲鳴が漏れる。 そして、そんな男の背後で少年の声が響く。

 

「--哀れな人間だな。 グライツェ・エクライド」

 

感情が存在しない声音でそんな事を囁いた少年、空洞桂香。 グライツェは驚きを隠せない。 先程、出血多量で死んだはずの男が生き返るなどありえない。 あの時、確かに不死身でも殺せるオリジナル魔法を施したはずなのだ。 しかし、目の前に立つ少年は傷一つ負っていない。寧ろ、さっきよりも強くなっているように感じる。

 

「--消えろ」

 

桂香は右手の平をグライツェに向けて、虫を殺すように拳を握る。 刹那、それに合わせて、グライツェの身体が圧縮され、爆散した。 血が飛び散り、肉片が散らばる。 更に、グライツェの血が桂香の体に吸い込まれる。これは不死身体質の一つで、殺した者の血を吸収する能力だ。それにより、返り血は一切なくなる。 桂香は床に座り涙を流す夏凛に近づき、声をかける。

 

「泣いてるのか? 夏凛」

 

「け・・・いか?」

 

夏凛は信じられないものを見たような顔で呟く。

 

「そこまで驚く事か? 俺は不死人だ。 お前が死なないように俺も死なない。俺はお前と同じだ。 同じ不死人だ」

 

桂香は無表情無感情に告げる。 それが当たり前だというように。 夏凛は瞳から零れる涙が止まらない。 彼の口から初めて『同じ』と聞いた。 言ってくれた。 だから、嬉しくて胸が張り裂けそうになった。 心が温かい。 ふっと、自然に微笑みが零れる。 そんな夏凛に桂香は笑いもせずに、手を差し伸べる。

 

「帰るぞ、夏凛」

 

「はい、帰りましょう。 桂香」

 

夏凛はそう告げて、桂香の手を握り返して、仙境館へと帰宅したのだった。 手を繋いだままで。

 

 




今回も勢いで書きました。

さ手、次回は投稿遅れます。

それではまた次回に!!







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