では、本編をどうぞ!!
夏--それは暑く、熱い季節。
夏--それはかき氷やアイスクリーム、西瓜が美味しい季節。
夏--それは課題は多いが、長い休暇が取れる季節。
夏--それは開放感、そしてどこか気怠く思う季節。
夏--それは
というわけで、僕達は今は海に来ていた。
「‥‥海っ!!」
「だーーぁ!!」
「デェーース!!」
前を見れば何処までも広がる青い空、サンサンと照りつる太陽に熱せられた白い砂浜。そして、何よりもその白い砂浜へとさざ波を打ち付けている青い海。
それらを視界に収めた途端、姉様とその腕に抱かれている僕が少し垂れ目と眠たそうに半開きした黄緑色の瞳をキラキラとさせる。
そんな僕たちの隣に立つ橙のビキニの上に白と水色のシマシマシャツへと身を包む響お姉ちゃんが今にも海に駆け出そうとしている中、後ろから物静かな声が聞こえてきた。
因みに呼び止められた僕達の服装は姉様から説明すると、黒と緑色を基調としたビキニの上から薄手の黒いパーカーを羽織っていて、僕は白と花青緑を基調としたビキニの上から黒いTシャツを着ている。
「切ちゃん、歌兎、はしゃぎすぎだよ」
「そうですよ、私達は遊びでここに来ているのではないんですから」
「響もはしゃぎ過ぎだらこけちゃうよ」
今にも駆け出そうとしている僕たちを追いかけてきたピンクのワンピース型水着の上に白い薄手のパーカーを身にまとったシラねぇとその隣にいる白いビキニの腰へとエメラルド色のパレオを巻き、頭の上に麦わら帽子を被ったセレねぇ、薄紫色のワンピース型の水着に白いフリをあしらった水着の上に白いカーディガンを羽織った未来お姉ちゃんが
そんな三人の注意を聞き、僕と姉様、響お姉ちゃんは目に見えて悔しそうな表情を浮かべる。
だって目の前にこんなに綺麗な涼しそうな海が待っているというのに、そこに向かっていけないなんて、まるで大好物を目の前に置かれて飼い主に待てと指示されている飼い犬のような気持ちだ。
「うぅ……そうデスけど……目の前の海が」
「私達を呼んでるんだよ」
「‥‥ん」
残念そうな顔をしてみても、やはりこればかりはどうにもならないようだ。
「なら、早くギアを水着ギアへと変化させるこったな」
「そうすれば、早く海にも入れるわよ」
「弥十郎のダンナがそう言ってたしな」
「私としてみれば、そのような時間も己が剣を鍛え上げるために使うべきだと思うのだが」
僕らを止めた三人の後ろから四人並んで歩いてくる右端から赤いビキニの端に白いフリをあしらい、その上から薄桃色の薄手のパーカーを羽織るクリスお姉ちゃん。
その隣が何故か大きめなサングラスを付けて、白と黒を基調としたビキニを身につけたマリねぇ。
その横を歩くのが、ニカッと片頬をあげた笑顔が眩しい橙と黄色を基調としたビキニに身を包む奏お姉ちゃん。
その奏お姉ちゃんの隣を歩くのが渋い顔をしている藍色の薄手のパーカーに水色のビキニを身につけた翼お姉ちゃん。
そんな翼お姉ちゃんのセリフに奏お姉ちゃんとマリねぇが失笑し、それぞれ好き勝手言っている。それを聞いた翼お姉ちゃんは忽ちに顔を真っ赤に染め、異論を唱えているがそこに
「翼は真面目すぎるんだよ。今からそんなんだと身が持たないぞ」
「奏の言う通りよ、翼。そんなにカチンカチンに鍛え上げてもいざという時に根元からポッキリ折れては使い物にならないわ。だから、今はカチンカチンに鍛え上げるよりもそこに
「さ、防人の剣はそう簡単に折れはしない!ましてや、根元からなぞ……いくら、マリアでも言っていい事と悪いこーー」
「ーーはいはい。ほら、私達はこっちで待機組よ」
そんな翼お姉ちゃんもマリねぇによって水着ギアを変化させてない組を待つ待機組の陣地へと引っ張られていく。マリねぇに手首を掴まれ、連れていかれる翼お姉ちゃんを見ていた奏お姉ちゃんは振り返るとセレねぇ、シラねぇ、姉様へと声をかける。
「セレナ、調、切歌。あたしらもマリアと翼の後を追うぞ」
「はい、分かりました、天羽さん。月読さん、暁さん、私達も」
「うん、行こう、セレナ。というわけで、切ちゃんは私と一緒にこっち組」
セレねぇに声をかけられたシラねぇはコクリとうなづくとガシッと姉様の手首を掴むと暴れる姉様をズンズンと自分達の陣地へと引きずっていく。
「ふぇ?あぁ〜っ!歌兎がぁあああ!!歌兎があんな所にぃ!!!調、あと少しあと少しだけ待ってください!歌兎に最後の挨拶をぉおおお!!」
「ダメ。そう言って、歌兎に抱きついて離れようとしない切ちゃんを何度も見てきた。だから、絶対ダメ」
「うぅ……でも、でもぉ……今あの場所には激鬼怖いおっぱいおばけしか居ないんデスよ?あんなおっかない所に歌兎を置いておけないのデス」
引きずられている姉様はポカーンと立ち尽くす僕へと左手を伸ばし、バタバタとシラねぇへと抵抗しながら、何も関係ないクリスお姉ちゃんをディスる。
どうでだろうか、何故か最近姉様がクリスお姉ちゃんを集中攻撃する事が多くなった気がする。しかも、敵視しているような気がするし……学校での様子では仲良しな先輩後輩ってシラねぇや響ちゃん、未来ちゃんに聞いてるのになぁ……学校と今では何が違うと言うのだろうか?
そんな事を思っていると、ディスられたクリスお姉ちゃんの我慢の緒が切れたのか、首からかけていたイチイバルの赤い結晶を鷲掴みにすると聖詠を口にしようとする。
「こら!てめぇ、誰が激鬼怖いおっぱいおばけだぁ!!!
あの過保護ぉ!今度という今度は袋の蜂にして、もう二度とあの過保護な口が開かなくしてやる!!」
そんなクリスお姉ちゃんを宥めるのが未来お姉ちゃんと響お姉ちゃんである。
シラねぇに引きづられて去る姉様に向かい走っていこうとするクリスお姉ちゃんの右腕を自分の左腕を絡めているのが未来お姉ちゃんで、左腕は自分の右腕を絡めている響お姉ちゃんで二人ともあたふたと荒れ狂うクリスお姉ちゃんを静める言葉を掛けている。
「まぁまぁ、クリス。落ち着いて」
「そうだよ、今の私の先生は"頼れる"クリスちゃんしか居ないんだから」
「‥‥ん、クリス先生頼れる。だから、僕たちに水着ギアを変化させる方法を教えて欲しい」
念押しとばかりにそう言う僕達にさっきまで暴れていたクリスお姉ちゃんは頬を赤く染めるとそっぽを向いてぼそっとつぶやく。
「しゃ……しゃーねぇーな。お前達がそこまで言うんなら、あたしが直々に教えてやるよ」
(ちょろい)
つい、そう思ってしまったのは許してほしい。
前々から思っていたけど、クリスお姉ちゃんは人の
「……時々、クリスちゃんのちょろさが怖く感じるよ」
「……将来、悪い男の人に捕まらないように今からそのちょろさを直しておかないと」
「‥‥ん、これもクリスお姉ちゃんの為だもの。僕、お姉ちゃん達の言うとおりに行動する」
「……じゃあ」
響お姉ちゃん、未来お姉ちゃんと顔を合わせてボソボソと作戦会議をしていると、後ろを振り向いたクリスお姉ちゃんが怪訝そうに眉を潜める。
「お前らそこで何こそこそ話してやがる」
そんなクリスお姉ちゃんに三人してあたふたと慌てながら近づくと其々、クリスお姉ちゃんの身体を押して陣地に向かう。
響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんが左右の手首を掴んでいるので僕は後ろからクリスお姉ちゃんの背中を押す。
「なんでもないよ、クリス先生」
「さぁ、私達は早い所自分の陣地行こう」
「‥‥ん、行こ、クリス先生」
「ん? あぁ……って、変なところを押してんじゃねぇーよ、チビ!!」
「‥‥? 僕、変なところ押してる?」
「お、押してるだろ!!あ、あたしのお、おし…っ」
だが、クリスお姉ちゃんは顔を赤く染めると背中を押している僕を睨んでくる。
なので、僕は自分の小さな両手が触っている所を見てみるすると二つの丘の間に隙間へとめり込んでいた赤い布に白いレースがあしらっている…う、うん…どうやら僕は思いっきりクリスお姉ちゃんのお尻を鷲掴みにしていたらしい。
「……あっ、ごめんなさい」
と謝罪してから、小さな手を僕は薄桃色のパーカーによって隠されているクリスお姉ちゃんの背中を押そうとして--後ろに引っ張れ、パフっと緑色と黒のトップスに覆われた双丘へと顔を押し付けられる。
「そんなおっぱいおばけよりもあたしの方が数倍頼りになるデス!だから、歌兎。あたしの事も先生と呼んでくださいのデスよ!!」
そうまくし立てる姉様の登場は僕を始めとした水着ギア補習組の面々が驚きのあまり固まってしまった。だって、姉様はついさっきシラねぇとセレねぇの手によって待機組の方へと連行された筈……なのに何故、僕の目の前に居るのだろうか?
(姉様、僕に黙って……緒川様に忍術習ったのかな?)
まさに神出鬼没な姉様の行動に驚きから復活したクリスお姉ちゃんのキッレキレなツッコミが
「だから、おっぱいおばけおっぱいおばけ
「もう、切ちゃん。クリス先輩と響さん達の邪魔してはダメだって」
「これも歌兎ちゃんが水着ギアに変化するために必要なことなんですよ。さぁ、翼と姉さんの所に戻しましょう?暁さん」
「離してくださいぃいい!!!調ぇっ!!セレナぁあ!!歌兎ぅううう!!!!」
大暴れする姉様を見て、呆れ顔のクリスお姉ちゃんが僕の方を見るが……その表情かまたしても驚きで満たされる。
「お前、よくあんな暑苦しい奴と一緒に居て辛くならないな……って、え? へ? へ? 今、あいつらに……? へ? なんでここに居るんだよ、お前」
そう、クリスお姉ちゃんの前に居たのはにっこり笑顔で日焼け止めを手に持っている姉様であって、僕の前に腰を落とすと手に持った日焼け止めのキャップを取り、掌で馴染ませた日焼け止めを僕の身体へと塗りたぐる。
もちろん、その際に行うクリスお姉ちゃんへと集中攻撃も忘れてない…流石、姉様抜け目がない。
けど、塗る前に気付いて欲しい。今、凄いカオスな空間なんだよ? クリスお姉ちゃんは怒りで顔真っ赤だし、響お姉ちゃんと未来お姉ちゃんなんて両目が落ちそうなくらいに目が見開かれているんだよ? 僕はそれにハラハラなんだよ?
「何故って、歌兎に日焼け止めを塗る為デスよ。歌兎の綺麗な肌が黒く染まってしまったら、あたしがテンパりファイヤーデスからね。そんな簡単なことすら分からないとは、さてはクリス先輩は脳への栄養もその大きな胸に持っていかれたのではないデスか?」
「よぉーし、お前はあたしにボッコボコにされたいんだな?」
背後でポキポキと手を鳴らすクリスお姉ちゃんの存在や両目が落ちそうほど驚いている響お姉ちゃん・未来お姉ちゃんの存在など最早、過保護な姉様の前では意味を成さず…僕はハラハラしながらも姉様の言うとおりに両腕を単に伸ばす。
「はい。歌兎、ばんざーいデスよ。ばんさいをしてください」
「……ん」
「あたしの話をきけぇ!!!」
そして、遂にクリスお姉ちゃんの叫び声が炸裂していても、姉様のヌリヌリと僕の身体へと日焼け止めを塗る手は止まることなく、それを見ていたクリスお姉ちゃんは疲れたように右手で顔を覆うと首を横に振る。
「よし、これで前はOKデスね。次は後ろデス」
「……姉様、くすぐった、い……よ……っ」
「じっとしててくださいね?これも歌兎の綺麗な肌を太陽から守る為なんデスから」
誰も姉様の過保護節を止める人が居なくなった今、過保護な姉様は誰よりも最強であり、ヌリヌリと塗りたぐる日焼け止めの量がいつもよりも1.5増しになってる気がするのは僕のせいであって欲しい。
あって欲しい上にさっきから姉様のほっこりした掌がこんな公衆の面前で触ってはいけないところを触っている気がしてならない……というか、触ってるっ!今確実に触ってるぅっ!!
(僕のトップスの中に手を突っ込んでるし……今、丘の天辺を姉様の掌が通ってーー)
僕はそこで顔を真っ赤にして固まっていた顔を後ろに動かし、姉様を止めようと試みる。
「……ね、姉様!?そこは日が当たらない所だからっ、いいって……!!日焼け止めなんて塗らなくてもーー」
「ーーダメデス!そう言って油断していたら、痛い目に合うのデスよ?歌兎をあの日焼けの痛みを味あわせるわけにはいかないのデス!」
「だからって……っ!」
「あぁっ……歌兎、動いちゃあダメデスよ。いい子デスから、お姉ちゃんの言うことを聞いてください」
「……ゔぅっ……っ……」
ヌリヌリと僕のトップスの中を塗り終え、最終確認ということで片手でサワサワと触っている姉様は空いた右手を今度は下へと滑り込ませようとしている。
そんな暴走する姉様の後頭部を思いっきりしばくのはクリスお姉ちゃんである。
「い、い……いい加減にしろぉ!!この過保護バカっ!!!」
顔を茹でタコよりも赤く染めたクリスお姉ちゃんは"はぁ…はぁ…"と肩で息をしながら、自分をジト目で見てくる姉様を睨みつける。
「過保護バカとは
僕ですら意味わからない基準を持っている姉様にクリスお姉ちゃんは呆れながらもご丁寧にツッコんでいく。
「どっちも変わんねぇーし、意味が分かんねぇーよ!!あと、そんなくだらない事でドヤ顔を浮かべて、胸を張るんじゃねぇ!良いからその妹のトップスの中に滑り込ませている手と下へ向かっている手を退けやがれ!いつも言ってるだろ、そう言うのは家でしろって!!」
クリスお姉ちゃんのツッコミにキョトンとした表情で答える姉様にクリスお姉ちゃんが反射的に聞き返している。
「家でもしてきたデスよ?」
「なら、何故今してるんだ!?」
「クリス先輩、備えあれば憂いなしという素晴らしい言葉があるのデス」
にっこりと悟った笑顔を浮かべる姉様にクリスお姉ちゃんは失笑した上で力無くその場にへたり込みそうになる。
「……はぁ……、頼む。誰か、この過保護をどうにかしてくれ。あたしはつっこむのが疲れた」
こうして、砂浜について1時間も経ってない間からうちの過保護な姉様に疲れ果ててしまうクリスお姉ちゃんであった----。
妹への愛さえあれば忍法なんてちょいのちょいなのデス!って感じで、始まった水着ギアの特訓ですが…正直セレナさんと奏さんのが決まってません!(笑)
なので、この続きは8月の後半か…9月頃になるかもです!
そして、うちの姉様が過保護すぎる。を評価、お気に入り、誤字報告してくださる多くの読者の皆さま、本当にありがとうございます(土下座)
これからもうちの過保護な姉様とその姉様に可愛がれ逞しく成長していく主人公をよろしくお願いします!