凡骨闘士の最強道   作:脱毛希望

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おまたせ!(檄遅+誰も待ってない)


負け組の決意と権力者の思惑

……目が覚めるとアタシはベットの上で寝ていた。

 

「ステラ!目が覚めて良かった……」

 

アタシの横にはイッキが座っていた。

 

「………………………………………………………え???ここは………?アタシ………は?」

 

ここは何処なのか?何でアタシが寝てるのか?隣にイッキがいるのか?全く状況が把握出来ない。

 

「落ち着くんだステラ。ここは医務室だよ」

 

イッキが落ち着いた声で教えてくれたが益々混乱した。

 

「ちょ…ちょっと待ってよ。試合……試合は………」

 

アタシの質問にイッキは口を紡ぐ。

 

「……………あ……………」

 

思い出した。アタシはアイツに負けたんだ。アタシはイッキとの約束を……

 

「…………ご、………ゴメンなさい……」

 

この言葉しか出てこない。悔しさ、情けなさで涙が溢れてくる。約束を果たすことが出来なかったのだ。

 

「落ち着いた?」

 

「……うん」

 

アタシが泣き終わるまで何も言わず待っていたイッキはアタシに声を掛け、アタシも落ち着いた声で返事を返した。

 

「ステラに聞きたい事があるんだ。岩鎚さんからお金を渡されたときなんだけどどうしてあそこまで怒ったんだい?」

 

アタシが八百長に対してあそこまでキレたのかイッキは疑問に感じたようだ。

 

「アタシがイッキに自分の国から出た理由はあそこにいたら強くなれないって言ったこと覚えてる?」

 

「うん、覚えているよ」

 

アタシは一呼吸し、口を開いた。

 

「アタシね、一度だけヴァーミリオン皇国で一番強い人と戦いたいってお父様に我儘を言って勝負させて貰ったの。それでね、その試合に勝ったのよ。アタシは大喜びしたわ。お父様に褒めて貰いたくてお父親の部屋に向かったの。部屋の前まで行った時に声が聞こえてね。その時に気付いたの。さっきの試合は八百長だったって事をね」

 

アタシはその当時の記憶を思い返すとお父様への怒りが蘇った。

 

「アタシはお父様に問いただしたわ。そんな事しなくても勝てるって。お父様はアタシを笑って言ったわ。『だったらこんな事はしない』って。お父様は王族であるアタシが国内で負けては示しが付かない、ヴァーミリオンの血筋は国内最強でなくてはならないって過去に何度か同じ事をしてたの!お金でアタシの勝利を買ってた!だからアタシはお金で勝利を買う人が大っキライなのよ!!」

 

思い出して悔しさで涙が滲む。

 

「お父様の手が届かない所へ行きたい。だから強い人がいる日本へ来たの。ここなら八百長なんてする人がいないと思ったから……」

 

「でも岩鎚さんが八百長を持ち掛けた」

 

イッキがアタシの言いたいことを言ってくれた。

アタシはあの試合で思った事をイッキに話す為、口を開いた。

 

「頭にきたのはそれだけじゃないの。試合前の挑発にはイラってきた。あそこまで堂々と言われたの珠雫ぐらいだったからね。足を踏まれた時だって振り解けなかった。初めてよ……力比べで負けたのは。

力だけなら誰にも負けない…そんな自信を打ち砕かれてそれを認められなかった。そして何より……

 

 

 

 

手加減どころか遊ばれてたこと」

 

 

アタシは言い終えた後にイッキの方を見ると彼は拳を握り締めていた。彼も気付いていたのだろう。イワツチさんが全力は勿論のこと、手加減すら出してない事に。

 

「一度も、一度たりともを避けるそぶりを見せなかった。……完敗よ」

 

先程の試合でイワツチさんはアタシの攻撃を全て拳ではたき落としていた。最後に至っては三千度を超える熱を帯びる《妃竜の罪剣 レーヴァティン》を掴み、砕かれたのだ。あそこまで舐められた状態で負けたのは初めてで情けなく感じる。

そう思いにふけていると突然イッキが椅子から立ち上がり、アタシの手を取る。

 

「ステラ、僕と一緒に代表になって彼を見返してやろう。自分達は弱くなんかないって証明してやるんだ」

 

手を握られ顔が熱くなっていたアタシは何とかして声を出す。

 

「え!?でも、アタシ負けちゃったのよ…」

 

「大丈夫!これから負けなければチャンスはある。折木先生の話によるとこの選抜戦はこのまま進めば代表枠三名は無敗が埋めることになる。一敗だけの人達と残り三枠をかけて総当たりで決めるんだ。ステラの代表入りの道はまだ終わってない」

 

「一回でも負けたらダメなんでしょ?アタシ……勝ち続けれるかな……」

 

「弱気なんてステラらしくないよ。僕が認めたライバルはそんなんじゃない筈だ」

 

イッキの言葉にアタシは元気づけられた。

 

「そうよね。アタシらしくないよね!よしっ!もう負けないわ!やってやるわよぉおおおおっ!!」

 

もう弱気になったりしない。今日よりも強くなってイワツチさんを見返してやるんだから!

 

 

 

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ーーーーーーーー

 

 

「くーちゃん、今年の選抜戦やけに気合い入ってるじゃん?」

 

「当たり前だ。今年の優勝がどれ程の価値があると思う?」

 

破軍学園理事長室に黒乃と寧音が話していた。この二人は今年の七星剣武祭の重要性を話していた。

 

「鬼山秀虎、奴が今なんて言われているか知ってるか?」

 

「歴代七星剣王最強だっけ?」

 

「そうだ。その影響か、今年の武曲学園は新入生の数が歴代最高だ。他の学園は歴代最低でな。これ以上武曲学園に遅れを取るわけにはいかん」

 

「来年から優勝したらいいじゃん?そいつ卒業していなくなるし」

 

「阿呆、だからこそ今年しかチャンスは無いのだ」

 

「? どゆこと?」

 

「奴が最強の称号を持ったまま卒業されたら、武曲学園は歴代最強の七星剣王を輩出した箔がつく。武曲学園は他の学園より優れている学園と今後見られていくことになるだろう。歴代最強の称号はそれ程価値あるものなのだ。今年はその称号を奪う最後のチャンスなんだ」

 

「成る程、積み上げてきたモノを根こそぎ奪う訳だ。いやらしい〜」

 

「なんとでも言え」

 

 

そう言いながら黒乃は煙草に火を付け一服する。歴代最強を名乗れる道はただ勝つだけでは名乗れない。どんな能力だろうが勝てないと思わせる圧倒的実力と無敗の経歴そして、過去に歴代最強と言われた七星剣王への勝利がなければ学生の内に最強など名乗る事が出来ないのだ。本来なら卒業し、KOKで結果を残して最強と呼ばれるのであって学生時代で呼ばれるのは鬼山が初めてである。

 

「鬼山に勝つ為に、どの学園も能力値選抜制を今年は取り止め、実力トーナメント制に切り替えた。切り替える気が無かったのは前破軍理事長ぐらいだ」

 

そんな男に一勝を納めるだけで全てが手に入る。どの学園理事長も本気で鬼山に勝ちに行くつもりなのだ。

 

 

黒乃同様、岩槌のような切り札を持っている可能性が高い。

 

 

彼女を含めた全理事長はあくまで切り札が鬼山に勝つ事が本命で残りの選手は他学園の切り札を倒してくれたら儲けぐらいにしか思っていない。他の生徒には悪いと思っているが今年はそれ程の価値がある。

 

 

 

「今年だけは勝たなければならんのだ」

 

 

黒乃は小さくなった煙草を灰皿に投げ捨てた。

 

 




現実逃避してる時に指が進む

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