近未来忍者的な世界で生き残るためには?   作:スラム街のオーク

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今回は少し短いです。


11話

 リディーナとキリンに任務を任せて私は今……キシリアさんと木刀で打ち合っていた。

 

「太刀筋が甘い。 そこだ」

「フッ! うりゃっ!」

「む、返せるようになって来たか!」

 

 甘い軌道で剣の筋を描き相手を誘う。 当然のごとく木刀は空を切り、キシリアさんの鋭い反撃が私に迫る。

 

 駄菓子菓子! 私は加速して一回転。 小回り利かせて一閃、切り結んで鍔迫り合い。

 

「この短期間でよく仕上げたな……私相手にここまで渡り合えるようになったか」

「スパルタは効きますからねぇ!」

「ぬぅっん! 所詮、まだまだ児戯の剣だがな!」

 

 魔族特有の怪力に押し潰されかけるが、私は重心をずらして力を流す。 そして、半身になって完全に受け流す。

 下段から上段に切り上げ、隙を晒したキシリアさんの顔に木刀が迫る。

 

「舐められては困るなぁ……!」

 

 しかし、無理な体勢から咄嗟に木刀の鋒で、床に突き立てて支点とし、逆立ち状態で切り上げを躱す……って雑技団かよ!? 

 

 その体勢から縦に一回転。 上段からの振り下ろしを流すように構えた木刀で受け止める。

 曲面に滑らせて逃がそうとしたが……ベキィッと木刀が折れた……! 

 

「ま、参りました」

「フッ、私の勝ちだ。 約束通り、武器を打ってもらうぞ」

「あいさー。 いい経験になりましたよ、今回も」

 

 キシリアさんに実戦訓練の相手をしてもらうことが最近は多くなったきた。 キリンも近接戦が本領で強いのだが、擬音で説明される。 「ここで、シュバッとドーンやで!」と言われてもわかるはずがない。

 

「ご要望とかありますか? 剛性、柔軟性、切れ味や反りの癖とか」

「一番いい刀を頼む」

「りょーかいです。 そんじゃ……オルハリコンとミスリルを4:6錬金で混ぜた……《超金属 オルファル》を芯鉄に、外鉄に玉鋼を使うかな。 そんじゃ、鍛錬を開始しますね」

 

 私は錬金術によるシェルター式核融合炉を生み出してオルファルを加工、オルハリコンとミスリルの合金精製は手間がかかる分オルファルの性能はお墨付きである。

 

 なにせ、オルファルの芯鉄は戦車(50t)に轢かれても折れない柔軟性と剛性持ち。 それに合わせて玉鋼の外金に魔術による超耐熱性強化と核融合の熱量による焼き入れなどで強度はマシマシである。

 

「ちょっと時間かかりますが……堪えてくだ──」

「こ、こんな風に造るのか! 見ててもいいな、いいよな!」

「え、ええ。 ご自由に……」

 

 お目々キラキラさせて製造工程に釘付けになっているキシリアさん……可愛い。 クールビューティーにしてこういう以外な子供っぽいところ……可愛い! いいよ、ツクヨさん頑張っちゃう! 

 

「そんじゃ、気張っていくよォォォ!」

 

 テンション爆上げの私は普段なら3時間はかける錬成をたったの1時間ほどで仕上げてしまった……深夜テンションはやばい。

 

 漆黒の中に紫を含む刀身に、刃は白磁のごとくの白。 打ち上げた刀に名前はまだつけてない。 無銘、だ。

 

「銘はキシリアさんの感性に任せます」

「ならば……光穿つ牙。 《光穿牙》でどうだろうか?」

「魔族の人が思いつきそうな銘ですね……では、光穿牙(コウセンガ)っと」

 

 茎に銘を刻み、さらに闇の魔力付与で「凶刃(ヴォーバル)」の効果を付与した。

 

「凶刃の力も備えておきましたから、緊急時は魔力開放で切れ味、剛性増加。 身体倍加強化の付与も発生するから……通常時と比べて120%の身体能力開放できますよ」

「な、そんなに機能を盛って大丈夫なのか?」

「大丈夫だ、問題ない」

「死亡フラグはヤメルンダ!!」

 

 とまぁ打ち上がった刀にご満悦のキシリアさんと別れて、リディとキリンからの任務の首尾報告があったので把握する。

 

「なるほど……米連の独立部隊が動いてるわけか」

『せやで。 ご主人の気にしてる甲河アスカの目撃情報もあるしなぁ』

『現状の情報はこれだけですわ。 ご主人様(マスター)、ご指示を』

「そんじゃ2人は帰還するように。 先に言っておくけど、お疲れ様。 労いも込めて2人には新しい装備開発しておいたから支給部からあとで受け取っておいてね」

『『了解やで(ですわ)』』

 

 2人と通信を切った後、守秘回線から通信が入る。

 

「守秘回線……? はい、ツクヨです」

『繋がった……! 時子です! お力添えをお願いいたします!』

「と、時子さん? 何かあっ」

『米連勢力に攻められているのです! お館様不在の折に攻め込まれました!』

「んな!?」

 

 とんでも無い知らせに一瞬硬直する……ふうま襲撃イベントか!? 

 

「はぁく! 現在は攻め込まれているの!?」

『まだ保つ範囲内です! しかし、このままでは物資の都合ですり潰されかねません……!』

「わかった。 今すぐにと言いたいけど、一日は保たせて! 人員を確保した上で敵勢力を急襲します」

『承知! 申し訳ありません……今、頼れるのはツクヨ様だけでしたので……失礼いたします!』

 

 ふうま急襲……イベントとしては、なんだったか。 連続イベントでふうま勢力壊滅の危機の中でお館様と分断されて行方不明に。

 

 その途中で時子さんが拐われて貞操の危機に陥る……と。 そこから体勢を立て直したお館様の逆襲により、父親たる弾正を斃して邪眼「真・魔門」の覚醒に至る……だったかな? まぁこっちは同盟関係だし、頼られたからには手を抜かない……ってわけで。

 

 とにかく、私たち個人で動きましょうかね。 対魔忍勢力とは言えど、部下たちは私個人の私兵扱いですし(彼女たちの給料、経費等々は対魔忍持ちですが)、問題はないはず。

 

『ふうまの救援に行くのだな?』

「ええ、しばらく私は米連側に遊撃、急襲で被害を与えて勢力を削るようにします」

『わかった。 が、無茶はしてくれるなよ?』

「御意、です」

 

 アサギさんにも許可をもらいましたので、下準備のためにも彼女の協力も取り付けましょうか。 私は、テレポートジェムを砕いて自室より転移しました。

 

 ☆

 

 東京キングダムに、その中心区画にあるお洒落なバーに私は転移した。 木製のドアを開けると、ドアベルが鳴る。 中に犇めく魔の気配、魔族の先客たちがチラリと私を見ていたが、すぐに視線を外して談笑に戻る。

 

「やっほー、ベル」

「いらっしゃぁい。 ツクヨちゃん! 何呑む? カクテル? チュウハイ?」

「そんじゃ、カルーア・ミルクでお願い」

「あいよー」

 

 落ち着いた内装、せわしなく行ったり来たりをしているウエイトレスやボーイに指示を出していた手を止めてお客である私に手を振るのは店主。 顔に傷跡のある美人さんな魔族のベルこと、ベルベットです。

 

 手早くカクテルを作るとカウンターに座った私にグラスを出してくれます。

 

 え? 未成年ですが何か? 書類上死んだことになってる私に年齢なんてあってないようもの、些細なことです。

 

「お待たせ。 御注文戴いたカルーア・ミルクだよ」

「どうも。 ベルのカクテルは私の癒しになりつつあるよ……」

「褒めても何も出ないわよ~だ。 で、今日はどんな情報をお望み?」

 

 ベルのお店には多種多様な人種、魔族やらが訪れて情報を交換し合う場所となっています。 情報交換の場として人気があるわけなのですお寿司。

 

「即戦力となってくれそうな傭兵か用心棒の情報をくださいな。 できれば私の眷属となってくれそうな方がいいですけど」

「キシリアちゃんとは知り合ってるのよねぇ……アイナちゃんはどう?」

「アイナ・ウィンチェスター氏……その手腕は聞いています。 敏腕の傭兵《二丁拳銃》の異名も」

「あらま、私の情報いらない子じゃない?」

「コンタクトを取るための仲介の依頼をさせて貰います」

「かしこまっ! ……と言うわけで、アイナさんをご紹介いたします!」

 

 思わず、は? という顔をしてしまいます。

 

「偶然とはいえ、飲みに来てたんだよ。 アイナ・ウィンチェスターだ。 俺はレアだぜ?」

「これはご丁寧に、私はツクヨ。 加持谷ツクヨです」

 

 銀髪に眼帯、タバコをくわえてニヤリと自信たっぷりに微笑む美女がそこにいた……胸のお山私以上ですよね? まりやん(篠原まり……対魔忍で私の部下の一人)といい勝負な気がします。

 

「と言う具合です」

「俺は米連崩れの傭兵、いいぜ。 そっちの提示報酬も気に入った」

 

 私はアイナさんに依頼内容を伝えました。 遊撃に徹して突き崩して貰う予定です。

 

「前金は今、払えるか?」

「ええ、もちろん。 あなたを買わせてもらえるならいくらでも払いますよ?」

「あん? 俺を買うだぁ?」

「私はいたって本気です。 これが前金です」

 

 亜空間ストレージからジュラルミンのアタッシュケースを引き出して、カウンターに置きます。 アイナさんに開けるように促しそれを開けて中身を見た彼女は硬直した。 パタンとケースを閉じて一瞬呆けるアイナさん。

 

「お前、正気か?」

「こっちはエドウィン・ブラック氏に狙われてるんです。 過剰防衛くらいがちょうどいいのですよ」

「あーもう、わかったよ。 あんたに買われてやる……なんか、ほっとけねぇしな」

「ありがとうございます! 《憤怒》はキシリアさんにあげたから……《傲慢》を貴女に差し上げましょう」

 

《強欲》は敵の生命力を奪う特異性。 《嫉妬》は主を想えば想う程身体機能が3ランク向上する。 《怠惰》は無制限に刹那の時間をズラし続けることが可能。 《憤怒》は総てを捻じ伏せる重圧のフィールドでアドバンテージを得る。 《傲慢》は条件反射能力の促進、並行思考を可能とする頭脳向上。

 

 まぁ、七罪の影響でその方向に思考が偏るようになってしまうがね。

 

「さてと、メンバー全員と合流して、ふうまの救援に向かますか」

「気を付けてねー」

 

 カウンターに私とアイナさんの呑み代をおいて、仲介の謝礼を払う。

 

「その実力を示してもらいますからね、アイナさん」

「へッ、俺の頭も冴えてやがる……今日は気分がいいから、見せてやんよ……俺の銃捌きをな!」

 

 私は彼女の底の知れない自信を信じます。 主人となるなら、それくらいの度量はねぇ? 

 

 残りの《原罪》は二つ。 《色欲》と《暴食》……誰に渡すかは一応決めていますけどね! 

 

 新装備に身を包むキリン、レベッカ、リディ、キシリアさんと合流して、簡単な自己紹介を交してから私たちは急襲した米連に奇襲を仕掛けるべく出発するのでした。




http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=167229&uid=30075

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