近未来忍者的な世界で生き残るためには?   作:スラム街のオーク

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2話

 私が対魔忍側に下ってから数ヶ月の時が流れた。

 

 ちなみにアサギさんに歳を聞いたら刺すような視線とともに、30代と答えてくれた……ハイ、すいません、野暮なこと聞きました。

 

 まぁ、これで時間軸は〈対魔忍アサギ3〉の時間軸で確定したと思われる。 でも、その割にはノマドは壊滅してないっぽいのが現状。

 

 アサギさんを孕ませたはずの男もいないとなり、どうなってんのさ……と思っていたら、別方面のパラレル次元があることを思い出した。

 

 〈対魔忍アサギ 決戦アリーナ〉だ。

 

 あっちの次元はパラレルワールドで、ノマドの首魁、パンツ脱がない吸血鬼こと、エドウィン・ブラック氏がアサギさんでなく、ふうま現頭領に興味を持った世界線だったからか……五車学園は無事だった気がする。

 

 まぁ、無事なら無事で越したことはないと思う。 私ももう自重せず、物理的要塞化と魔術的要塞化をこの本部に施しておいた。

 

 高度な変化の術であれなんであれ、対魔粒子に依存する現行忍術の結合を邪魔する《対魔粒子キャンセル》の術式を作り出せたので、味方側……対魔忍を抜けて襲いかかってくるあの「なんとか旅団」の方々にも睨みを効かせることができると思う……まぁ保険でしかないけどね。

 

 もはや原作知識なんてあてにできない状態だし、取れる対策は取るようにしようと思う。私は研究者側だけど、攻められて拉致られたら生オ◯ホにされて、「ンホォ」案件の危険性がないわけじゃないのだから。

 

 対策は講じたほうがいいよね! 感度3000倍とかイキ狂って死ぬわ! ……一般人の私はだけど。

 

 ちなみにどうして私に行き着いたのかをアサギさんの妹さんたるさくらさんに聞いてみたところ、どうやらノマドが私を狙っているのがわかったそうだ。

 

 何故だろうか、魔力を封印して生きて来たのに……と思っていたら、術式を構築できるようになり、封魔のアミュレットを錬成したのが10歳超えたあたりだったな……それ以前はアミュレットの封印がない状態だったから魔力垂れ流しで、そりゃ魔族側にはバレるか。

 

 まぁ、水面下で私を狙って対魔忍の縄張りを刺激して起こる闘争で部下の消耗を抑えたのか、それとも私の覚醒を待ったのかが全くわからないからどうとも言えなくなってしまった。

 

 魔族からも情報を集めているふうまの頭領にも目をつけられている恐れももう否定できなくなったな……決戦アリーナでは、彼が陵◯で籠絡するのを画面越しに(ナニしながらとは言わん)眺めていだが、自分がされる側になるのは御免被る。 あんな精力絶倫な、性技マスターみたいな奴にめちゃくちゃにされたらとうていパンピー出身でしかないまだまだ弱っちい私の理性が持つとは思えないからね……。

 

 ちなみに我らが頭領、アサギさんは今日も敵に捕まってンホォ案件を発生させていた。 オークどもの欲望詰まる白濁液まみれでアヘ顔ダブルピースを晒したビデオレターはマジでやめてください。

 

 後方支援の私のメンタルにダメージが来ますから……特に私に対して職場の男どもの獣欲がギラついた目に晒されて、SAN値直葬待った無しですから。

 

 ていうか、何でビデオが本部(ウチ)に送られてくるんだよ!? 実はノマドと仲良いだろ、本部。

 

 まぁ、どうせ敵を殲滅して帰ってくるから放っておくけどさ……戻って来た際、いつもと比べて妙に肌がツヤツヤしてるアサギさんの気が知れない。

 

 と言うか、いい加減往年の宿敵、朧女史(マダム)を殲滅しろよと言いたくなるのを我慢しつつ。 ご満悦な雰囲気で戻って来た、いつものごとく感度を異常にされたアサギさんを錬金術を用いて治療する私であったまる。

 

 ☆

 

「しっかし、こんな感度にされてよく生きてられますね」

「慣れれば良いものだぞ? 日常的な書類仕事とかに差し支えるから治療してもらうけどな」

「オークとかの下衆にファックされるのはのぞみではありません。 私なら犯される前に自害します」

「お堅いこと。 ふぅ、これで体は良くなったのか?」

 

 私は体細胞の異常を特定したあと、アサギさんの体の治療に取り掛かる。彼女の体内に潜む魔術式を解呪して、寄生している魔術生物、触手の芽に干渉して切除。 同時に切除した体組織を錬成して治療は終了である。

 

 治療が終わると、処置内容と今回のデータをとっとと報告書にまとめた。 魔界医学が改訂、改造派生されつつある昨今、アサギさんは敵勢力殲滅しつつ、ノマドのデータ、資料、取引の裏取りを集めるついでに敵に捕まってわざとその処置施術されて帰ってくる。

 

 おかげさまで治療のデータを集められるのはありがたいのだけど、彼女の身を案じる妹さんや部下たちの気持ちを汲んで欲しいと切実に思うわけで。

 

「さてと報告等あるから失礼するぞ」

「はい、ご自愛下さいよほんとに」

「善処しよう。 では、あとは任せる」

 

 ナニが善処するだ……という無言の視線をアサギさんはさらりと流して私の拠点兼診察室を出て行った。 知能対魔忍とはよく言ったものだと思う。 そんなことを考えながら今日も今日とて対魔忍の装備開発です。

 

 加持谷の本家、父方の実家は武器製造の技術を代々受け継いで来ていた。 もちろん、その技術というか、才能は私にも受け上がれている。

 

 そのため、装備作成な依頼や錬金術による魔合金の精製、今日みたいな治療までを何でもこなすことから私は「万能の錬金術師」と呼ばれるようになっていた。

 

 ちなみに、《聖杯》術式もまた発展した。 その力は時間がかかる代わりに霊体(イメージ)を物質に置換できると言うトンデモナイものだった。

 

 例えばだが、鉛筆を聖杯の術式で魔力を霊体に変換して創り出すとしよう。 魔力を(のり)にして霊体を必要な物質に精製、そこから化学反応なり、なんなりの必要な工程を聖杯術式の中で執り行う。 その工程にかかる時間は魔力の必要量と霊体の加工量から逆算すれば割り出せるので、1ヶ月ほどだと推測できる。

 

 まぁ簡単に言おう。 俺が生きている限りは、オルハリコン、ミスリル銀となんでもござれと創りたい放題というわけだ。 うん、まじで狙われる理由が増えたと思う。 まじで恨むぞ、ご先祖様……。

 

 とまぁ、錬金術を使うたびに体に溜まる摂理を捻じ曲げる際に出る矛盾(澱み)が心臓付近で黒く結晶化する〈愚者の石〉をどうするかも対策練らないとな……生憎、錬るのは得意なのでなんとかできる気もするが。

 

 この愚者の石は私の寿命を縮める作用があるので定期的に体から切除しなくてはならない。 その度に殺されても死なない、桐生の変態医者が私の体に触れるのが嫌で仕方がない。

 

 しかも、愚者の石は穢れた魔力の結晶故に魔族が持つだけで凶悪な力を得ることもできるそうだ……愚者の石を反転させれるだけの魔力……聖杯を穢すのは嫌なので、研究を進めるしかないね。

 

 ☆

 

 五車学園の敷地内森の奥。 そこに対魔忍の本部があり、私の住む家でもある。 公では死んだことになっている私は陽の光を浴びるのはまずいので基本的に本部に引きこもりっぱなし……ということはない。

 

 常に人材不足に喘ぐ、政府が設立した五車学園(対魔忍養成所)敷地内から、対魔忍分隊のセーフハウス出張まで色々とやることはあるのだ。

 

 今日も任務中の対魔忍に武器を納入しに外に出た。 行く場所はもちろん東京キングダム近郊だ……気乗りしねぇ! まぁ、仕事は仕事。 対策練ってるからなんとかなるさ……そう言い聞かせて私は五車学園を後にした。

 

 光学迷彩搭載の特性フード付き白衣と認識阻害の魔術を使い、物質的、魔術的ステルス状態で街中を避けてスラム街を進む。 ちなみにスラム街はオークとかの魔族も住んでるから、人が寄り付くことが少ない。

 

 フックショットを寂れたビル屋上、縁にある手すりに撃ち込んでリールを巻く。 そして、屋上にたどり着いた。 そこからまた少し高いビルにフックショットを撃ち込んで某蜘蛛男みたいに街中を跳びまわった。 目的地まではもちろん迂回しながらだけどね。

 

 遠回り、遠回りしながら目的地にたどり着き、娼館に潜入任務に就く対魔忍の少女に合わせて造った2対の拳銃と、抗魔力の薬を渡す。

 

「とりあえず、対魔忍ってバレたらこっちに帰ってこられないと思うことだよ、ユキカゼさん」

「自分で志願したのだから、後悔はないわ」

「そう……きちんと帰って来なさいよ? 救出任務にまで駆り出されるのは御免だから」

「わかってるわよ!?」

 

 水城ユキカゼ……対魔忍ユキカゼのヒロインで、貴重なロリ体型対魔忍だ。 まぁ、今回は「纏」の任務に就くと言うことを自分から志願したらしい。

 

 危険な任務に良く就けるなとほとほと思う。

 

 で、道中で凛子さんにも武器を納入したその帰還途中で……嫌な予感はしてたけど彼と出会うことになってしまった。

 

 ☆

 

「光学迷彩を着ていても揺れ動く気配は掴めるというわけだ……高い授業料だったかな?」

「っ……どちら様かな? 私は本部に帰って最近働き詰めだったからすぐにでも自堕落な休日を過ごす予定なんだ……邪魔しないでくれるかな?」

 

 眠そうな目をしている目の前の女は、自分の置かれている立場をわかっているのだろうか? 俺のことなど至極どうでもいいと言わんばかりの剣呑な雰囲気。

 

 青く、背中までの長さの髪。 翡翠色の瞳に気怠げな垂れ気味の目の輪郭。 鼻はツンと高く、薄く小さな唇は桜の花びらのような色合い。 間違いない、外観が一致するこの女こそが、万能の錬金術師、加持谷月夜だろう。

 

 赤いチューブトップに青のジーンズをはいて白のスニーカーに白衣と言うなんとも言えない服装だが、見た目に騙される俺ではない。

 

「ふうまの頭領と言えばわかるか?」

「あー……なるほど。 かなり厄介な殿方と認識してるけど……?」

「物分かりがいいな。 では早速、俺と一緒に来てもらう」

「ごーいんな誘いにはならないんですよ、私は。 たとえ、あんた見たいな美丈夫でも、初対面の男にホイホイとホテルまでついて行く娼婦やビッチと一緒くたにされるのは流石に不愉快です」

「拒否権はない、と言った方がわかりやすいか?」

「だとしても、ですよ!」

 

 女は、白衣のポケットから懐中時計を取り出して俺の足元に投げる。 何を企んでいるのかわからんが……!? 刹那にまばゆい閃光。 閃光手榴弾(スタングレネード)か……してやられたな。

 

 視界が灼かれた俺は数十秒ほど身動きが取れなかったが、走り去って行く足音が途切れ、機械音が聞こえた頃に視界が回復。 よく見るとその手にはワイヤーを巻く銃のような何かが握られていた。

 

「逃したか……まぁいい。 奇妙なものを使う女だな。 このまま追えるか? 時子」

 

 いつのまにか隣に控えていた俺の執事、瞑目している時子に尋ねる。

 

「ダメです、この辺りに陣結界が組まれていて、私の千里眼でも追えません……申し訳ありません、お館様」

「構わん。 一応この術式をメモにとっておけ……俺たちが門外漢なら専門の奴らに任せるぞ」

 

 逃げられたのであれば出直すまでだ……諦めずに何度でも手を伸ばす、そう、何度でもだ。




主人公の外見をお館様が語ってくださいました。
まぁ、巨乳系なのは確かです。
主人公視点は次の更新で。

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