近未来忍者的な世界で生き残るためには?   作:スラム街のオーク

3 / 12
3話

 やべー、ヤベーヨ! 嫌な予感してたらふうまの頭領と鉢合わせっちまったよ!? 

 

 まぁ、動揺を感じ取られたらまずいので、眠たげに不機嫌の体で……いやまぁ、明日は確かにオフだからはよ帰りたい寝たい。 そんで、オンラインゲームに没頭するんだ! 

 

 まぁ、光学迷彩と認識阻害の魔術に不備はなかった。 が、流石にというか、彼の従える執事。 ふうま時子の邪眼〈千里眼〉で偶然に捕捉されたと推測する。 まぁー光学迷彩っつても、完璧じゃないからな。

 

 ふうまの頭領さんの言い分も確かだ。 揺れ動く気配を察知できれば、私のことも捕捉できるだろうさ。

 

「ふうまの頭領と言えばわかるか?」

「あー……なるほど。 かなり厄介な殿方と認識してるけど……?」

「物分かりがいいな。 では早速、俺と一緒に来てもらう」

 

 いや、お茶の誘いでもあんたと一緒は嫌だよ。 と拒否の意思を込めながら辛辣に返す。

 

「ごーいんな誘いにはのらないんですよ、私は。 たとえ、あんたみたいな美丈夫でも、初対面の男にホイホイとホテルまでついて行く娼婦やビッチと一緒くたにされるのは流石に不愉快です」

 

 と、言っては見たが意味ないだろーなー……

 

「拒否権はない、と言った方がわかりやすいか?」

 

 だろうな、と思ってたよ! 相手さんの本拠地に拉致られる事案発生は私としても回避したい、本当切実に! と言うわけでにげるんだよぉぉぉおぉぉぉっ!! 

 

「だとしても、ですよ!」

 

 私はバックラウンドで構築していた魔術発動の隙を埋めるために試作品の日用品型閃光手榴弾(スタングレネード)(懐中時計型)を白衣から引っ張り出して相手の足元に投げる。

 

 魔導信管に遠隔で魔力を通して起爆、音なしで閃光をまき散らした。 そして視界が灼けたふうまの頭領から離れながら彼を中心に起点指定、タイミングを私が彼らから離れた時に設定した遅延魔術陣を敷いた。

 

 この魔術陣は暗号に暗号を重ね、秘匿に秘匿を重ねた〈対魔粒子キャンセラー〉の術式を含む忍術に干渉する魔術陣だ。

 

 これは今のところ私だけが使える固有魔法で、仮にこの術式真理を解析できたとしても普通の魔導師が実践レベルで使えるようになるには、そこからさらなる探求と研究を重ねないと使えないほどに難解で小難しい魔術式になっている。

 

 そして音なしの閃光手榴弾も目下開発中の試作品だ。

 

 ふうま一門は邪眼の持ち主。 お館様……ふうま現頭領の能力は触れた相手の最も得意な能力を奪い、再現できる能力だったはず……もし錬金術の一部でも奪われたら大変なことになる。

 

 ので、とにかく忍術禁止の半球状ドーム陣結界型で出力して眼を使えなくしてやった。 もちろん、視界も灼けているだろうからあとはトンズラこくだけだ。

 

 戦術的撤退! ていうか身体のスペックの差的に挑みかかっても組み伏せられて結果この小汚い裏通りで星空を見ながら青姦陵◯からのアヘ顔ダブルピースルートだ……そんなのは死んでも御免だ! 

 

 ちなみにこの結界は視界が回復しても距離を掴めなくする効果も付与しておいた。 向こうとの距離が無限になる。 虚数空間と呼ばれる亜空間を結界の周りに展開しているので私との距離がわからなくなっている状態。

 

 まぁ、この土壇場で組み上げた術檻だからすぐに効果が切れるだろうけどね。 私は頭領さんが動かなくなったところにフォローに回ろうとした時子さんを巻き込んで術式を展開、それに乗じて走って加速しながらフックショットを目の前のビル屋上に撃ち込んでトリガーを引き牽引。

 

 そそくさとその場を離れる私だった。

 

 なお、彼がそう簡単に諦めてくれるとは思っていない……もう諦めるしかないが、勧誘は蹴り続けるしかあるまい……殺されるか陵辱、屈服コンボを極められるこの幸づらい世の中を呪いたくなるよ、ホントにね! まぁ〈たいまにん〉は頭領がアレだから余計にネ! 是非もないヨネ! 

 

 ☆

 

 ふうまの頭領から逃げおおせた私はその晩、シャワーを浴びてすぐにベットにダイブする羽目になった。 まぁ、それくらいに精神的に疲れた。

 

 とりあえず、定期連絡というか、「纏」の任務に就いた2人から連絡があった。 凛子さんに渡しておいた指輪型の魔導通信機で連絡してきたのだよなぁ、私に。

 

 うん、処女で娼婦になりきれるわけがなかろう。 まぁ処女喪失と感度改造は対魔忍の様式美だから仕方ないよね! (白目

 まぁ抗魔力の薬で改造された彼女と凛子さんの感度を抑える事が出来たらしい……渡しといてよかった……。 近々、本隊の強襲が予定されているので、それまで耐え抜くとのこと。

 

 達郎くんが哀れになるから、寝取られオチだけは回避させてあげたいなぁ。 まぁ、戦闘系ではなく後方支援しかできない私が戦地に赴くなんてないな、HAHAHA! ……戦地に赴くなんて、ないヨネ? 

 

 ☆

 

「そっちはどう? 素直に連絡して来てくれて嬉しいのは嬉しいけど……」

『身体に今のところ影響はありません。 貴女の薬のおかげだと思うわ』

『感謝してもしきれないってこういうことなのね……』

「いや、とにかく。 指輪を通してスクロール(携帯倉庫)を送るから、支援物資を役立ててちょうだい。 形態を変えればピアスになるようになっているから」

『ありがとう、それじゃあ……』

「頭領には一応貴女達の状況は伝えておきます。 すぐに救出部隊が組まれると思うわ……シラヌイさんの情報見つかればいいわね」

『見つけて見せる……なんとしても! じゃあ、通信を切るわね』

 

 通信を終えた私は羊皮紙に術文字を書き記し、追加の抗魔力剤の瓶とクナイ、拳銃の武器にも術式を書き記す。 そして亜空間にそれらを接続して収納すると、スクロールと呼ばれる魔導アイテムの完成だ。

 

 スクロールは言うなれば持ち歩けるストレージ。 RPGとかに出てくるかばん的なものだ。 術式さえ書き込めば収納できないはずのものを収納できる魔導式四次元ポケットとも言えるかな? 

 

 指輪を起点に指定して、時空の歪みにショートジャンプさせる。 そしてユキカゼさん、凛子さん達の監禁されている娼館にスクロールをワープさせた。

 

「これで時間は稼げるかな……あとは」

 

 私は必要部署に連絡を取り継ぎ、アサギさんにも任務の状況を報告。 急ぎ彼女らの救出と娼館の急襲部隊が組まれた。

 

「抗魔力剤の効きは今週まで。 残された時間は少ないですよ?」

『私自ら陣頭指揮を執る。 なに、心配はな──』

「いや、待ってください……貴女に任せるとろくなことないですって!? どうせ真正面から突入する脳筋作戦でしょう!? ユキカゼさんたちが人質に取られたとかで貴女まで捕まったらシャレになりませんから、じっとしててください!」

『そ、そこまで言わなくても……』

「だまらっしゃい! 〈知能たいまにん〉が!」

『アグッ!? そ、それはそのあだ名はやめてくれぇぇぇ!?』

「……ハッ!? 失礼しました!? オフなのに仕事させられるストレスのせいで頭領に暴言吐いちゃいました!?」

 

 とまぁ、アサギさんともやりとりして打ち合わせ。 結局私が救出チームの指揮を取ることになった……あぁ、もう。 やればいいんでしょ、やれば! 

 

 ☆

 

 作戦当日。 いつもの格好(光学迷彩白衣)でヨミハラに来た私は対物ライフルをスクロールから取り出し、伏射姿勢で地に伏しながらスコープを調整してレティクルの誤差を修正した。

 

「こちらツクヨ。 目視で対象、リーアルを確認」

『指揮官。 突入のタイミング教えてもらえませんか?』

「改めて作戦の内容を。 強襲部隊並びに救出部隊は土遁使いを中心に地下施設から内部に侵入、そこから分かれて救出部隊は対象のユキカゼ、凛子を回収されたし。 強襲部隊は破壊工作並びに娼館内のノマドと、その関係者の殺害もしくは捕縛。 なお、矢崎宗一については、生死を問わない(・・・・・・、)です。 各員、気を引き締めて作戦に臨むように!」

『『『了解ッ!』』』

「……作戦開始まで、30秒前」

 

 スコープを覗くと、私の殺害対象、リーアルはソファーに身を任せて呑気に大型テレビの前で寛いでいる。 呼吸を整えて引き金を引くタイミングを計る。

 

 心音すら置き去りにするほどの集中。 そしてトリガーを引いた。 音速で飛翔した弾丸はリーアルの頭を木っ端微塵にした。

 

 あの男は、女の敵は、痛みも感じないままにこの世を去ったのだ。 私は優しいのだ。 組んでいた足を吹き飛ばし、弾丸で肩をもぎ取り、最後に頭を吹き飛ばしすような無駄な真似はしない。

 

「汚い花火だ」

 

 私のこの声とともに作戦が決行された。

 

 作戦の概要、顛末をまとめておくと、矢崎宗一並びにリーアルこと矢崎利二はこの世から姿を消し、アンダーエデンは娼婦並びに無関係の職員達を避難させたのちに、ノマドとその関係者、矢崎兄弟ごと爆破解体された。

 これぞまさに、《地に咲いた汚い花火》である。

 

 ☆

 

「桐生の手術も成功、私の診察でも経過良好です。 ユキカゼ並びに凛子は任務に復帰できますね」

「あの子達に関しては謹慎、自主訓練に臨んでもらうわ……生存性を高めるための、貴様の個人授業だったか?」

「まぁ、そんな感じです。 最近の対魔忍は忍びとしての役割とか無視してる感がひどいですからね……プライドを捻じ曲げて救援の通信をして来たし、あの2人についてはある程度のラインで妥協できるようになってくれたんでしょうねぇ……」

 

 アサギさんと会話しつつ、しみじみと思う。 若手対魔忍の成長の実感だった。 ゲームだと頭の弱いアホガールなユキカゼだった気がするが。 とりあえず、処女を喪失したのは仕方ないとして、達郎くんにとってのバットエンドにはならなくてホッと一安心である。

 

 四肢欠損の契約を錬金術製抗魔力でレジストできたのが今回の救出成功のキーポイントだった。 まぁ契約そのものは私にかかればその場で解呪できるものだったから楽なお仕事だった。

 

 普通の魔術師なら一月はかける解呪だけどね。

 

 とりあえず、ユキカゼ達の闇落ちエンドは回避。 うん、文句なしだろう。 そして、ついに愚者の石を〈賢者の石〉に再錬成できるようになりました。

 

 その仕組みは、オークとかの魔族に愚者の石を埋め込んだ上で生きたまま(…………)再錬成、再構築、その上で大量の聖水で浄化の工程を1週間かける事だった。

 

 まだ手元にある賢者の石は爪の先ひとかけら程度だが、強力な魔力を秘めてるのは間違いない。 さて、これをどう使おうかな? さらなる高みに飛躍できる日は近い。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。