近未来忍者的な世界で生き残るためには? 作:スラム街のオーク
ツクヨがエドウィン・ブラックと闘う少し前に時を戻す。 レベッカ、キリン、リティーナの三名はアサギの囚われているビルの捜索に当たっていた。
錬金蟲の履歴を元に進む、と。 喘ぎ声が聞こえてきた……紛れもなくアサギの声だった。 ぐちゅぐちゅと淫靡な水音やら何やらが聞こえてきたのである。
「ホンマ、うちの校長の性癖は理解できひんでぇ……触手の何がええんや……」
「人には長所も短所もありますわ……異種姦が好きな淑女もいますわよ。 私? 流石に御免こうむりますわ」
「フォローしとんのかしてへんのかわからんやっちゃな、リディ。 まぁ、ええ。 レベッカはん、とっととアサギはん回収してトンズラこきましょか」
「ええ、そうね…… じゃあ、20秒後に突入するわ。 準備なさい」
キリンとリティーナは指示に従い、遅延信管タイプの閃光手榴弾からピンを抜く。 そしてきっかり20秒後に投擲した。 一拍子置いてレベッカは煙幕筒を部屋に放り込む。 三名はそれを合図に突入。 そして油断して武器も持っていなかった丸腰のオークたちにカービン弾のプレゼントをばら撒いた。
さらには、アサギを捕えている淫獣のコア部を撃ち抜いて殺処分すると同時に彼女を確保した。
「私がわかりますか、アサギ様?」
「ん……あぁ、わかるぞ。 レベッカだな?」
白濁液に、自らの愛液やらに塗れてヌメる全裸のアサギは凛とした態度でレベッカに詳細を聞いて、彼女も情報を交換する。 しかし、色々な液体に滴る為か、全裸のアサギは照明セットの光を浴びてテカる。 全身テカりながらも真剣な表情で話を聞くその絵面はなかなかにシュールな光景だった。
「そうですか。 教え子を盾にされて捕まった訳ですか……その子たちは?」
「このビルに囚われているはずだ。 図々しいことも承知なのだが、捜索を手伝ってくれないか?」
「もちろんですとも。 私たちの任務は裏の裏まで遂行することですから」
アサギはそうか、と相槌を返して取り戻したペンダントの赤い水晶に触れてストレージより忍刀を引き出した。 それはツクヨの創り出したアサギ専用の忍刀。 データを集めるのにもちょうどいいかとアサギは刀を振るった。
光陣華の反動にも耐え、光陣懺華による斬殺ラッシュにも耐えたその出来にアサギは満足していた。
その後、ビルの一室に監禁されていた五車学園の生徒2名を加えて6名はビルを脱出した。 教え子たちは性的調教から免れていたようでアサギも胸を撫で下ろしたという……道中にて拾った襤褸を身に纏って。
☆
「おかえりなさいませ、ブラック様」
「ああ、ただいま。 イングリッド……やけに嬉しそうだな」
「久方ぶりに高揚する戦いができましたが故に……あ、いえ、その……。 ブラック様、目的の者との戯れは愉しまれましたか?」
「フフ、あぁ。 私の目に狂いはなかったようだ。 今世紀はふうまの小僧、アサギやツクヨといい……私を殺せそうなヒトが多い豊作だ」
黄金錬成……あれには少しばかりか肝を冷やしたとは言わないでおこう。 イングリッドの忠誠心は簡単に人を殺す。 私の愉しみを奪うマネをしないとおもうが、念の為に釘を刺しておこう。
あぁ、ツクヨよ……あがき、足掻け。 そしてもっと強くなれ、強くあれ。 そしていつか、私を滅ぼしてみよ。 それが叶わなくとも私を愉しませてくれ。 その聖杯の寵愛を得た人の子風情だが、私の目は、
この先も、私の愉しみは……まだまだ尽きることはないようだ。
☆
「ぶえっきしっ……なんか悪寒が。 私のウワサ? 気のせいかな……気のせいだよね?」
エドウィン氏をなんとか撃退して、テレポートジェムを砕いて自室に私は転移した。 灼けた服を錬成し直して、復元してから「箱庭」に潜り込んで胎内……私の身体に埋めてあった、術式状に分解していた聖杯を復元。 箱庭に設置した儀礼祭壇に安置する。
溢した霊力はそこまでなかったから、8時間もすれは快復するだろう。
「ちょっと仮眠とろう。 8時間寝ても、現実時間的には8分だし」
私はベッドに身を預けてすぐに意識を離した。
で、結果的に私は現実時間換算で丸一日眠ってしまった……実際には24分だけどさ。
外回りの任務は無駄に疲れるというか、そもそもエドウィン氏の相手なんて想定してない……一応、この次元がパラレル次元だと思うから、実際にアサギさんが囚われるイベントって3回しかないはずなんだよね。
あとはサマーバケーションの下級魔族に遅れを取った外伝とか?
オリジナルのアサギさんと違う別次元の人故に、性格のズレがあるのかもなぁ……うちのアサギさん、あの人絶対異種姦を気に入ってるケがあるから始末に負えん。
「っと、帰還報告しとかないと」
名残惜しくもあるけど、箱庭のベッドから起き上がり私は仕事を再開することにした……眠いケドネ?
☆
お天道様が登って燦々と輝く昼下がり。 私は校長室にてアサギさんの治療。手術を行った。 まぁ、10分で終わったけど……そこ、手馴れすぎワロタとか、慣れたとか言うな。
「今回の作戦、顛末はエドウィン・ブラックの撃退で終わったか……お前でも奴を倒せないのか?」
「黄金錬成の錬金術的核融合でもあの不死の概念を焼き尽くすのは無理かもしれないですねぇ……。 私には対魔粒子の素養がないので別なものを模索してるわけですし」
「なんだ、その。 アレだ、ラピスなんとかのアレか?」
「《ラピス・フィロソフィカスの輝き》です。 賢者の石のプラス性質の高エネルギーで不浄の穢れ……魔族の穢れごと焼き尽くす理論です」
報告と手術がてらにアサギさんの治療を終えて、各々の得た情報の交換を行った。 アサギさんに造った忍刀の使い心地等々のデータを解析したりと、収穫も多かった。
「前回の改造と比べてあんまり変わってないですね……魔界医学の改変はそこまで進んでないようですね」
「ならもう、私が捕まる意味もなくなるわけか……」
「手間増やすのはやめてください、マジで。 そのせいで私がエドウィン氏に目をつけられることになったのは一生恨みますからね?」
「本当にすみませんでした」
手術の後、なのでアサギさんはほぼ全裸だ。 綺麗な、流れるような土下座で頭を下げられた。
「さっさと服を着てください」
「おい、放置プレイか? 私はそっちもイケるクチだぞ?」
「やかましいわ! とっとと服着ろ痴女が!」
「痴女扱いはひどくないか!?」
椅子にかけてあったクリーニングから帰ってきたての、アサギさんのレディスーツを一応シワにならないように気を遣いながらつかんで彼女にぶん投げた。
まぁ、当たり前のようにハンガー部分つかんでアサギさんは着替えだしたけどさ……
「とりあえず、今回の作戦に関して。 アサギさんの救出作戦ではなく、囚われていた生徒を優先していたと言うことにしておきます。 いい加減山本部長の胃に
「善処するとしよう」
嘆息一つ、私は踵を返してとりあえず校長室を後にした。
☆
五車学園内に引き篭もって居たかったが、魔導師で錬金術師、鍛治師で科学者、いろいろな学会に所属している私は各地の定例会等々に出席する義務があったりする。
「足運んでもらって申し訳ないですね、男爵殿」
「よそよそしいぞ、ツクヨくん。 名前で呼んでくれたまえ」
「さすがにそれは烏滸がましいと言うか、図々しいと言うか……貴方は西の「男爵」様ですよ?」
「このバルド・バルドが赦す……これでいいかな?」
「ハァ、わかりましたよ。 バルドの小父様」
遠い西、アミダハラからわざわざ足を運んで会いに来る魔術師もいるため、私は外に出向く必要があるのだ。 バルド・バルド氏……悪逆非道の「男爵」の異名を持つアミダハラ第三の魔術師と呼ばれる殿方である。
接触の目的は大方賢者の石についてだろう。
「悪魔を触媒に門を開くのは悪手……だと?」
《鋼鉄の魔女》のストーリーを知っている私はそれとなく彼の願望を否定する。 あの時は運良く魔界に行けたようだが、本来はどうなるかが未知数。
ちなみにバルド・バルド氏。 俺が魔界を統べる! なんてよくある頭悪いエロゲーの住人らしい野望をお持ちである。
「淫魔の王とかエドウィン・ブラック氏の故郷ですよ? アッチは。 ヒトを玩具みたいな扱いするような奴らの驕りはその絶対的な力から来てますからねぇ……エドウィン氏と対峙した私が言うなら信ぴょう性はあるでしょう?」
「それも確かにそうだな……」
「どこに繋がるかもわからないなら、正規のルートもしくは悪魔、淫魔と契約、取引持ちかけるほうが建設的ですよ」
「賢者の石でゲートを開くのは安定しない……か。 真正面から否定されるとは思ってもいなかったな。 有意義な意見だ、参考にさせてもらおうか」
納得してくれたバルド・バルド氏……よかった。
「《鋼鉄の魔女》《紅女王》に手を出さないのが一番でしょうよ……互いに魔導の深淵を探求する同志。 無理なさらず深淵を探究なさってください……これはこちらに出向いてくださったささやかなお礼です」
「……賢者の石か」
「ご明察の通り。 人差し指大のモノしか手持ちがありませんからね……サンプルとしてお納めください」
「ふ、どうやら私は君を見くびっていたようだ……」
「へ?」
「若い魔導師ほど自らの力を過信する。 そして魔族にいいように利用される者が多くてな……そんな彼らに比べて君は真逆のようだ。 力に溺れることなく、それでいて延々と魔導の深淵を追い求める君の姿勢は素晴らしい」
いや、探究者は永遠に追い求める者だ。 知的探究心を満たすことに悦楽を感じる変態とも言うけど。
私は常に何かを頭の片隅で考えるのが癖になっている。 最近では賢者の石のプラスエネルギーの利用法、ラピスの輝き。 エネルギーの物理定着理論等々の事を常にシュミレート、トライ&エラーを繰り返している。
「私に世辞は不要ですよ、驕りを抱えるつもりはないありません。 世知辛い世の中ですし、バルドの小父様も無理しない程度に探究なさってください」
「そちらにも言える事だ……対魔忍に愛想をつかした時、アミダハラに来るといい。 君ならば私と対等に魔導組合も歓迎するだろう」
「ハハハ……私が対魔忍から愛想尽かす時は組織そのものが瓦解してますよ……きっと、ね」
握手して私はバルド氏の宿泊する都内ホテルから退出した。 私の否定は実を結び、バルド氏は魔界に進出。 のちに異名の「男爵」から魔界のリアル「大公」にのし上がるのはまた別なお話。
☆
ハァ、なんだってこうなるかな
「ノマドに本格的に目をつけられたかぁ……鬱陶しいな、全く」
私は追加の魔弾を琥珀色の結晶に打ち込んで、黒尽くめの者達に安寧と永遠を呼ぶ。 彼らを結晶ごと分解して星の息吹、龍脈に魂を還した。 肉体は高レベルの生命エネルギーに転換して私の手元に集まる。 そのエネルギーを私は胎内に取り込んだ。
「まだ足りない……もっと、もっと生命エネルギーが必要かなぁ……」
これで通算200人を殺したことになる。 敵故に情け無用と殺すわけだけどね。 私は「完全なる肉体」の錬成のために膨大な生命エネルギーをこの身に取り込み、再錬成を目論んでいる。
自身を「不老超越」するために、魂の劣化を防ぐために魂そのものも弄る必要がある。
まぁ、下地と術式の雛形は作り出しているからあとは生命エネルギーを取り込むだけなんだよねー……賢者の石もソコソコの在庫があるからそっちを媒体にすることも考えるかぁ……
バチャッと私の光学迷彩白衣のフードに何か液体が落ちてきた。 びっくりして認識阻害の魔術に綻びが生まれる。
そして上から首のない男の体が落ちてきたのでさらに驚愕、魔術の効果が完全に霧散した。
トッという着地音とともに閃く銀の輝きをとっさに物理遅延障壁の魔術を行使して受け止める。
「お、私の一刀を防ぐか……お前、強いな?」
「たんま、ちょっとたんま。 いきなり切りつけるって酷くないですか? 私じゃなきゃ死んでましたよ?」
「ぬ? 奴らの仲間ではないのか?」
白い髪をポニーテールに結い上げ、褐色の肌に最低限の胸を隠す露出の高い衣服……金色の目の魔族と思われる美女が私に切り掛かってきた。
「仲間? 私は今日単独行動で連れの人は居ないんですが……」
「は? ……す、すまん! 奴らとは無関係な者だったか……怪我はないか?」
「ええ、完全に防がせてもらいましたから」
「ぬう、それはそれで……いや、なんでもない。 私はキシリア。 キシリア・オズワルドだ」
「ご丁寧にどうも。 私は加地谷ツクヨです、よろしくです……ところで何と戦っておいでで?」
頭にかかった血糊を錬金術で水に錬成して風の魔術でぬれた場所を乾かす。
「ちょっとばかし昔に諍いがあってな……その時、その組織の諸共皆殺しにしたはずだったのだが……生き残りに攻撃されてな。 少しばかりか気が立っていたのだ」
「なるほど……ん、かなりの強者とお見受けします。 私にその身元、預けて見ませんか?」
「申し訳ないが断る。 私の矜持は強き者との闘争にある。 一つの組織に属して動く気はな「私、エドウィン・ブラックに身元を狙われてるんですけど……なら仕方ないですね、かの「魔界騎士」と立合える機会を自ら手放されるのであれば仕方ない」……今なんといった?」
マジか、ダメ元の話に食い付いた……この人武官向きだな……
「エドウィン氏に狙われてるんですけど?」
「魔界騎士と立合えると……本当なのか?」
「機会はありますね……どうですか?」
「わかった、お前さんに手を貸そう」
……ちょろい、ちょろすぎるよキシリアさん!?
とまぁこんな幕間もあった一日でした。
あとで気がついたけど、私の勢力下にネームドキャラが所属しましたとさ……。
キシリアさん、こんなキャラだったかなぁと思いながら書いてます。 指摘されたら直しますので