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またネタバレを多大に含みます。以上のことをご了承ください。
バスは乗客(探偵3人と他1人)を揺らしながら山道を対向車も見ずに進んでいる。そして、やがて地蔵坂駐車場の看板の隣に建てられたバス停にて停車する。
そして4人を降ろすとバスはここで折り返し近くの村に戻って行った。
「ん〜、やっと着いた」
「あの鵺野さん1ついいですか?」
「何かな阪西さん?」
「もしかして貴女も時給1650円のアルバイトに来たんですか?あっ、いや変なこと聞いてすいません。貴女の様な美人で頭の良い方がこんな所までアルバイトしに来ませんよね。」
「アハハハ、褒めても何も出ないよ。それに残念ながら私はそのアルバイトに来たんだよ」
阪西はそれを聞くと少し意外そうな顔をしてこう応答する。
「いや〜、僕は貴女ならミスユニバースに出場できると思うんですけどね」
「いやいや、流石にないよ。それに評価内容的に私はすぐ落とされるだろうね」
「そんな事ありませんよ。貴女は自信に満ち溢れていますし、僕の話に付き合ってくれる優しさがあるじゃないですか」
「そ、そうかなぁ。「ワッ!」ヒャ!」
「ウワッ!何だあんたは!」
突然?至近で大声を出された鵺野は情けない悲鳴をあげる。そしてそれに反応した阪西がそちらをに意識を向けるとそこにはタンクトップ姿の逞しい大男が立っていた。
「何だじゃないぞ。こっちはさっきから話しかけているのに中々反応さえしてもらえなくて結構心にきたんだぞ」
「それは失礼しました。ところで貴方は?」
「俺か?君たちのバイト先の屋久だ。それであの2人から聞いたけど君達もバイトの子なんだろ?後ろになりな」
大男、屋久はそう言って指で背後のマイクロバスのような乗用車を指す。そこには既に内亜、二階堂のほか1人の男が乗っていた。
「……行こっか阪西さん」
「はいそうですね」
2人が乗り込むと乗用車は出発する。その時後部座席に乗っていたもう1人の男が鵺野に話しかけようとしたがそれをしなかった。何故なら内亜に凄まじい形相で睨まれたのだから。
4人が乗り込むと、乗用車は山の上の方へ向かって出発する。大型車は通られない対向車線のない細い一本道だ。周りには人の手を離れて自然な状態に帰りつつある森が広がっている。
このような森は一部の者が思っているほど良い世界では無い。むしろ人の手が入っている里山よりも本当の自然は往々しにして厳しいものなのだ。
…………………………
〈乗用車・車内〉
「改めて自己紹介するよ。俺は屋久だ。若いのがたくさん来てくれて助かるよ。なにせ人手が足りなくてな」
運転手であるたくましい腕の彼は簡易的ではあるが、改めてそう自己紹介をする。タンクトップを着ているため露出しているその腕には大型の獣の牙や爪で付けられたような傷跡が目につく。
「これはどうもご丁寧に。先ほどは見苦しい見せて申し訳ありませんでした。鵺野京です。そしてこちらは私の友人の……」
「二階堂薫です。見ての通り力仕事には自信があります。期待してください」
そう言って彼は自らの力こぶを手で叩いた。因みにではあるが彼のベンチプレスな記録は92kgである。
「そうかい。そいつは頼りになるな。んでさっきから不機嫌そうな兄ちゃんはなんて言うんだい?」
「内亜千弥です。一応鵺野の彼女をやっています」
「ヒュー、こいつは驚いた。こんな美人の彼氏さんだったのか。慣れ始めたか聞いていいか?どっちから申し込んだんだ?」
鵺野との恋愛関係について尋ねてくる屋久に内亜は正直ダジタジというべき状態にあった。彼は恋愛関係になるとかなりシャイになる一面があるのだ。更に言えばそれと鵺野の気質が関係して大学卒業後はあまり恋人らしいことが出来ないでいた。鵺野は大して気にはしていないが……
そんな彼に助け舟を出したのは二階堂だ。
「こいつにはそんな度胸ありませんよ。鵺野さんの方から告白したんですよ。しかもかなり手の込んだ方法でね。」
「その通り!いつまでもぐずぐずしているもんだから、見るに見かねて私の方から告白したんですよ」
「ほーお、草食系ってやつか。んでさっきのでショックを受けている君は?」
「阪西……正雄……です」
その声に力はなく。その目には目にはこの世への絶望が映っているかのようだった。平たく言うと言うと自分に好意的に接してくれた美人に彼氏がいたことにショックを受けたのだ。
「ククククク、ヒヒヒ、アヒャヒャヒャ!告白する前から負けてやんの!クク、初対面の美人がお前なんかにいきなり好意を抱くわけないだろーが。ヒヒ」
そこでまだ自己紹介を済ませていなかったいかにもと言った感じでチャラけた格好の男が笑い出した。突然笑い出した。どうやら阪西の反応が彼のツボにはまったようだ。
「なんだと、テメェ!」
当然阪西は怒りを露わにする。しかし……
「やめないか薦野!すまない。俺が変な聴き方をしたのが悪かった。」
「い、いえ確かに僕も浮かれていましたし。」
「そうか、ありがとう。彼は薦野、君達より前から雇われているアルバイトだ。まあ、あんな感じのやつだが、根はそこまで悪いやつじゃないんだ。まあ……出来るだけでいいから仲良くしてやってくれ。」
やがて車は鬱蒼とした山奥の舗装されていない道に入り、ガタガタと揺れ始める。そして五分ほどだった時森の中の開けた場所に木造の小屋とシャッターの閉まったコンクリート製の平屋が現れた。
そして、小屋からはスーツにヒールと、この山奥では不釣り合いな格好をした女性が姿をあらわす。
大変遅くなってしまって申し訳ありません。実生活の方で色々とあって投稿が遅れておりました。今後ともよろしくお願いします。