インペリアル   作:oki10
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お久しぶりですの


邂逅

自分の頭、胸を狙って放たれる鉛玉を次々とせんべいカスやホコリに変えつつ、徐々に暴漢との距離を詰めていくティトス。

 

彼が弾丸を変えていく度に、パーシヴァルの目の前、ティトスが今までいたところに弾丸が増えていく。

どこからともなく現れる、というよりは、()()()()()()()()ように見えた。

 

 

 

「どうしました?そんなに震えて」

 

気づいた頃には、ティトスは暴漢のすぐ前まで来ていた。

険しい顔に震える手でティトスに銃口を向ける暴漢とは対照的に、ティトスは柔らかく笑う。

 

「マ、大人しくしてれば何もしません。ほら、銃をよこして」

「...わっ、渡せるかよ!一体何モンだてめえ!」

 

暴漢は声を荒げる。それもそうだ。

超能力のことを知ってはいても、見たことのある一般人なんて帝国にはなかなかいない。

暴漢にはティトスのことが、ヒトの皮を被った怪物にしか見えていないのだろう。

 

 

 

「どうしても銃を降ろしてくれないのですね、残念です」

ティトスは肩をすくめ、おもむろに手を前に出した。

「な、何する気だてめえ!」

暴漢の銃を握る手に汗がにじんだ。

 

 

 

 

 

 

「なら、奪うのみです」

ティトスは相変わらず柔らかに言うと、拳銃の銃身を握り締めた。

 

「!?」

暴漢はその行動に驚き、銃を乱暴に振り回した。

案外ティトスの手は簡単に外れた。というより、元々直接奪い取る気など無かったといった風だ。

 

 

 

「な、舐めやがって...ぶっ殺す!」

 

次の瞬間、暴漢は素早く拳銃を構え直し、ティトスの眉間に突きつけた!

 

 

 

 

 

...はずだった。

べちゃ、という音ともにティトスの額にひっついたのは、薄黄色い果肉。

なんと、暴漢の手には拳銃ではなく...食べかけのバナナが握られていた。

 

 

「なっ...!?」

思わず拳銃...もといバナナを引っ込め、まじまじと覗き込んだ。

その直後に

 

「お探しのものは、こちらですかな?」

と、さきほどまで暴漢の持っていたはずの拳銃が、ティトスのベルトから引き抜かれ、暴漢の眉間に突きつけられた。

真っ青になった暴漢のこめかみに、ティトスは痛烈なハイキックを叩き込んだ。

暴漢はその場で膝をつき、倒れ込んだ。

 

 

 

「さて、後は向こうの駅にいるおまわりさんのお仕事ですね」

そう言うと、拳銃をポケットに突っ込み、暴漢に背を向けた。

 

乗客が拍手をし始め、ティトスは両手を広げてそれに応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間のことだった。

昏倒していたはずの暴漢が目を開け、勢いよく起き上がった。

 

ティトスを怒り心頭といった目で見つめる暴漢の手には、サバイバルナイフが握られていた。

 

(しまった!)

ティトスの脇腹にナイフが突き立つ。

 

 

 

 

 

...コンマ数秒前に、ナイフは車外に吹き飛ばされていた。

車両後方からパーシヴァルが目にも留まらぬ速さで礫を飛ばし、見事に命中させたのだった。

 

「とどめくらい...ツメが甘いですよ、少佐」

「はは、すまないねぇ。マ、おあいこってことで!」

心底呆れた、と言いたそうに頭をかくパーシヴァルに、冷や汗を書きながらも笑って返すティトス。

 

「いつ俺が助けてくれなんて言いました?」

それでも動こうとする暴漢の顔面にダイヤの雨を叩き込んで今度こそ確実に昏倒させつつ、ティトスの方へと歩み寄る。

ぐしゃ、という何かがひしゃげる音がした。

 

「...死んでない?」

少々心配そうに暴漢を眺めるティトスを見て、パーシヴァルはさもおかしそうに吹き出した。

「殺してはいないと思います、加減は多少しました」

「多少...ね...まあいいか」

 

ティトスはパーシヴァルの方に向き直り、手を差し出した。

 

 

 

「さて...パーシヴァル大尉。改めて挨拶をしておこう。私はティトス・G・マーティン。見ての通り能力兵で、保有能力は『物体の何かを入れ替える』こと。階級は少佐だ。以後よろしく」

 

そう厳粛に挨拶をした後「マ、ティトスと気軽に呼んでくれたまえ!」と先程までの軽い調子に戻り、ニカっと笑った。

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

パーシヴァルは、差し出されたその手を握り返した。

 

 

 

 

「それはそうと、少佐」

「ティトスでいいって...なんだい?」

「じゃあ、ティトスさん...いつまでおでこにバナナひっつけてるんですか?」

 

ティトスは指摘されて思い出したのか「あっ」と声を上げて、額に付いたままだったバナナの果肉を払い落とした。




[帝国軍]
ティトス・G・マーティン
《物体の『何か』を入れ替える能力》






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