甘城ブリリアント・パニック!   作:nkno
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第九話ふも!

執務室のソファーで寝ていたかなめは、重たそうな瞼を上げげつつ目覚めた。目をこすりながらもそういえばとスマートフォンを立ち上げ、おそるおそる例の告知動画のヒット数を確認する。


「うそでしょ・・・・・・」


驚嘆の声をあげるかなめ。なんとあのテロリストの犯行声明のような動画が、たった一日で10万ものヒット数をこえていたのだ。不思議に思ったかなめはコメント欄を閲覧する。

『面白いキャラ設定だよなー。てか銃本物みてぇだ』

『逮捕動画のリンクからきたけど、この動きみるにガチの軍人なんじゃねーの、中の人』

『マスコットのやべーやつ』

色々なコメントがあるが、そのどれもがボン太くんに対して好意的?なものだった。『これ脅迫じゃね?』などという批判的な(もっともな)意見もあったがそれもごくわずかな数にとどまっている。それにしてもどうしてここまで再生数がと思ったが、昨日の逮捕動画のリンク先としてこの告知動画が一番先頭にはりつけてあった。そのサムネイルがボン太くんがこちらに向かってサブマシンガンを突きつけているので余計に目立つ。


「ま、ソースケのやつがここまで見越してこの動画つくったとは思えないしラッキーだったわ」


告知動画が反響を呼んでいることは確認できたので、スマホをしまい執務室の窓をあけ『グ~』と背伸びをする。


「いっちょ頑張りますか!」


すでに愛着がわきつつあるテーマパークを窓から眺めながら、朝九時からのミーティングに備えるかなめであった。





朝九時からの責任者たちが集うミーティング。そこで怒り心頭といった様子の者が一人。


「ぼくは絶対にいやだふも!」


『バン』と会議室の机を叩くモッフル。事のいきさつはこうだ。昨日の騒動によってボン太くんを見に来ようとするゲストが増えることは間違いない。だが新マスコットであるボン太くんをかなめ達はどこに配属させるか決めあぐねていた。そこへトリケンがキャラクターの設定としてモッフルの弟ということになっているのだから、『モッフルのお菓子ハウス』でいいのではないかと言い出したのだ。


「困ったわね。ねぇ、ソースケ。あの着ぐるみって他のひとは使えないの?」
「生体認証システムのようなものがある、不可能だろう」

首を横に振る宗介。

「だ、そうなのよ。お願い、モッフル」
「いくらかなめの頼みでもそれだけは聞けないふも。第一ボン太くんなんてどうみてもぼくのパクリだし、弟とか意味不明だふも!」


勝手に弟などという設定にされ心外だと訴えるモッフル。


「僻みか」
「なんだと!?」
「おおかた一夜にして人気を博したボン太くんにお前は僻んでいるのだろう?」
「ばかなこといってんじゃねーふも!」


挑発してくる宗介にキレたモッフルが飛びかかる。
だがしかし、そこには既に散弾銃をかまえた宗介がいた。



ドォォォォォォォォン!!



轟音。またかと思ったかなめ達だったが、なんとモッフルは咄嗟に身をひねり宗介が放った銃弾を紙一重のところで回避していた。


「なに!?」
「甘いふも、宗介。あの時は頭に血がのぼっていたけど、本気を出せば銃弾をよけるぐらい造作もないふもよ」


不敵に笑いながら『くいくい』と手招きするモッフル。宗介も本気を出すしかないようだな、などと呟きながら足元に隠していたマグナムを抜き標的へと狙いをさだめる。世にも恐ろしい戦いがいまにも始まろうとしたところ―


「やめんか!!! バトル漫画じゃあるまいし! なんでそうあんたたちは仲が悪いの!」


宗介達のやりとりに我慢の限界がきたかなめが制止する。


「「それはこいつが―」」
「ええい、うるさい!! とにかくボン太くんはモッフルのところに配属で決まり!ソースケ、ちゃんとモッフルの指示に従って行動するのよ、喧嘩なんてしてたら支配人代行権限で二人とも給料ぬきだから。わかった!?」
「・・・了解した」
「・・・しかたないふもね」


返事をしつつも顔を背け合う宗介とモッフル。だめだ、この二人にかまっていたらそれだけで一日がくれてしまう。


「とりあえず今日からが本番ね! みんな気を引き締めて仕事に励んでちょうだい! 10万人、必ず達成させるわよ!!!」
『おー!!!』

二人を無視し責任者たちに発破をかけるかなめ。気合いをいれたキャスト達の顔つきは、空中庭園でみたようなどんよりしたものではなく、目標をやり遂げようとする強い意思をかんじさせるものだった。


「イスズにはちょっと案内して欲しいところがあるから後で付き合ってね! じゃあ解散!!」





『モッフルのお菓子ハウス』。その舞台裏では開園を前に、モッフルがボン太くんに対して今日一日の仕事を割り当てていた。小型の無線機とイヤホンをつけモッフルは言う。


「お前にはこのアトラクションを遊ぶゲストのサポートをしてもらうふも。助っ人を頼んだゲストに寄り添うようにして、色々と手助けしたり教えてくれるマスコットという形で登場するふもよ」
「ふもっ!(教官というわけだな)」
「そうふも。・・・・・・あと『ふも』はぼくの個性だから使うんじゃないふも、このパクリ野郎」


その言葉をきいたボン太くんは、腕の袖から取り出したショットガンをモッフルへとむけ鋭い眼光を放つ。


「ふもも、ふもっふも・・・(やはりお前とは相容れないようだ・・・)」
「こっちのセリフふも」


またしても険悪なムードが流れるが、バイトの開園という言葉にボン太くんとモッフルは我に返った。二人は急いで自らの持ち場へと向かいゲストがくるのをじっと待つ。しばらくして10歳くらいの少年を連れた仲の良さそうな若い夫婦がやってきた。彼らは受付をすましアトラクションの説明をうけ、助っ人としてボン太くんが必要かどうか問われ少し悩んでいる。


「いる!ボン太くんと一緒にやる!」


無邪気に笑う少年。夫婦は助っ人は要りますと受付のバイトに答え、レーザー銃を受け取り件のマスコットがくるのを待っている。


(いまだな)


「ふもっ!(またせたな)」


機を見計らったようにボン太くんに身を包んだ宗介が三人家族の前に現れる。その身にはタクティカルベストに軍用ヘルメット、手にはレーザー銃を持ち完全装備となっている。その出で立ちに圧倒される夫婦だったが、子供は一躍有名人となったボン太くんが現れたので喜びのあまり抱きついてきた。抱きつかれながらもボン太くんは夫婦へと自己紹介をする。


「ふもっふもふ! ふももっふ、ふもっ!ふもっふも!(自分はこれよりこの射撃場での指導員を担当するボン太くんという者だ。お前達を立派な戦士へと育てるべく少々厳しめに接するだろうがそれに耐えてこそ訓練の価値がある、期待しているぞ」


右手を額の横にもっていき敬礼のポーズをとるボン太くん。その動作があまりにも堂にはいっているので夫婦や子供もつられて敬礼をしてしまう。


「ふもっ!ふもっふ!!!(では始める! 陣形をくめ!!!)」


そう言い残し身を屈めながら先頭を歩くボン太くんと子供。その後に続こうと夫婦はあるきだそうとするが


「ふもふ! ふもふふも、もっふ!(なにをしている! 戦場で頭を上げたまま移動するなど自殺行為に等しい! 身を伏せろ!)」


凄い剣幕でかたりかけてくるボン太くんにたいして、夫婦は一体何をしゃべっているのか全く理解できなった。とりあえず同じように身をふせればいいのかと思いつつその後ろをついてきながら、四人は厨房を模したような場所へと出る。一斉に現れるネズミ達をレーザー銃でたおしていくボン太くん。その姿に驚嘆の声を上げながら夫婦達もネズミを狙い打つ。改修され難易度が下げられたのか、宗介達が来たときよりもネズミ達の動きは理不尽なものではい。さらにおくへ進むと食料庫と思われるドアの前に来た。ボン太くんはそのドアの横に身を隠し、夫婦達も同じようにするよう指示を出す。


「ふもふもふ・・・・・・ ふも!(室内戦闘を想定するならば・・・・・・そうだな、これを使え)」


ボン太くんが父親にピンのついたスプレー缶のようなものを手渡す。事態を飲み込めない父親はあたふたとしてどうすればいいのかわからない様子だったが、ボン太くんが投げるジャスチャーをしているのを見て理解し食料庫へと投げ入れボン太くんがドアを閉める。



からんからん      バン!!!!



「ふもっ!ふもふもふも!!!(いまだ! ゴーゴーゴー!!!)」


音が鳴り終わると同時にドアをゆっくりと開け入室するように施す。すると驚いたことに子供が真っ先に飛び出し、またしても現れるネズミ達を次々と撃破していく。制圧が完了し嬉しそうにはしゃぐ子供に語りかけるボン太くん


「ふもっふも、ふもふも!もふもふも、ふもっ!(まさかその年で近接戦闘術(CQB)を理解しているとは。一体何者だ? まさかこの遊園地の重要機密をねらう組織からの潜入工作員か!? 一見無邪気に見えるその姿は敵を油断させるための偽装工作だな。このような子供まで使ってくるとは、下衆どもめ)」
「サバゲー得意なんだ、ぼく! 誉めてボン太くん!」


潜入工作員などと思われているとは露にもおもわず抱きついてくる少年と、そんな光景に微笑む夫婦。そのとき奥の自動扉が開き、このアトラクションの主が姿を表した。ゲストの前では喋らないようにしているのかボン太くんに向かって手招きするモッフル。宗介もそれに従い子供をゆっくりと引き離し、少し待つようジャスチャーをしてモッフルのもとへとむかう。夫婦たちに聞こえないよう小声で話す二人。


「おい、宗介! さっきの音はなんだふも! まさかまた機材こわしたんじゃないふもね?」
「ふもっふも。ふもふ(閃光手榴弾(スタン・グレネード)を使っただけだ。なんの問題もない)」
「それが問題なんだふもっ!」
「ふもふふも、ふももふもふ、もっふ(そんなことより、あの少年に気を付けろ。潜入工作員の可能性がある)」
「なにが潜入工作員だふも!バカなこといってないであのゲストの助っ人を続けるふも! あと手榴弾とかは絶対使わないようにするふもよ!」
「・・・・・・ふも(・・・・・・了解した)」



そういって言い争う二人を心配そうに見つめる家族のもとへ、ボン太くんを送り出すモッフル。その後も似たような様子でゲストへの対応をする二人であったが、アトラクションの評判は以外と良かったという。





ミーティングのあと、かなめは案内地図にのっている南エリア―ほとんどなにもない広い区画―と呼ばれる場所を見に行こうといすずに案内を頼んでいた。その南エリアは都道の向こう側にあるらしく歩道橋か地下道をつかわないといけないらしい。歩道橋は少しわかりづらいところにあった。階段を登り都道を越えて南エリアにむかう。あるいていると背の高い針葉樹の向こうに、なにか大きな建造物がうずくまっているのがぼんやりとみえる。


「これが第二パークを作ろうとした遺産ってわけか・・・・・・」

いすずから渡された資料にはこの南エリアはパークの増設予定地として記されていた。バブル全盛期の頃、潤沢な資金を使って『第二パーク』建設しようとする計画があったそうだが、バブルが弾けたさいにそれも雲散霧消したようだ。どうにかして使えないかと申し訳程度にキャンプ場などを作ったが、それも不人気ですぐに閉鎖、かくして長きにわたり、この南エリアは放置されていた、というわけだ。周りをみれば舗装された道路はあるが、あちこちがひびわれ、枯葉だらけ。蔦におおわれ朽ちかけた看板には、『わくわくキャンプ場』だの『集まれ!わんぱく広場』だのといったもじが残っている。樹木のトンネルを抜けた先に、巨大な建造物があった。ゆるやかな局面。そびえ立つ外壁は、どこまでも遠くに続いている。


「あれは・・・・・・」


いすずがつぶやく。


「スタジアムよね? 完成はしているみたいだけれど。なんであんなものがここに・・・・・・」


巨大な建造物を見上げながら不思議そうに言うかなめ。


「私も詳しくは知らないけどスポーツをテーマに、いまのパークとの差別化をはかろうという考えだったみたいね。そのマイルストーンとして建設されたのがあのスタジアムだった、ということよ」
「へぇ~」


全天候型の屋根はないが、その規模はかなりのものだ。恐らくは関東でも指折りのクラスではないか。


「なんで20年も使わなかったの?」
「甘城市と甘城企画があれこれ理由をつけて、なかなか許可がおりなかったそうよ。消防署のお達しやら、保健所の難癖やら・・・・・・バス停の件と同じ」
「なるほどね」


自治体や大株主の遠回しな妨害で、このスタジアムも真価を発揮できなかったのだろう。


「確かに、交通の便が悪いのは事実よ。いちばん近い駅はバスで10分の甘城駅だし・・・・・・。この収容人数を運ぶには無理があるわね」
「私でもこの立地の悪さはどうかと思うしね」
「甘城企画としては、この南エリアをゴルフ場か宅地にしたかったようね。スタジアム建設は、その計画への抵抗という意味もあったみたいよ」


このパークをめぐる企業・自治体の思惑についてもかなめは資料よんでおおむね把握していた。少々、面倒くさい話になる。『甘城ブリリアントパーク』はいくつかの企業の資金で運営されている。ラティファたちの味方は、『メープル不動産』という会社と、いくつかの、スポンサー。いすずが『敵』だと断言したのは、甘城市と東都電鉄の資金で回っている『甘城企画』だ。『メープル不動産』は、魔法の国メープルランドが出資して成立している。どこかの異世界からの資金といったらいかがわしいが、その『魔法の国』から海外の銀行・企業を経た『きれいな資金』をつかって、メープルランド不動産は回っている。いずれにせよこの『メープル不動産』はパークを存続させる強いいしを持ち、魔法の国の代弁者でもある。一方の敵、『甘城企画』は地上界の人間で作られた『第三セクター企業』だ。東京西部に強い力をもつ東都電鉄やいくつかの企業、そして甘城市の資金で作られた、ごく現実的な管理会社である。甘城ブリリアントパークの歴史はこの『メープル不動産』と『甘城企画』との対立の歴史といってもいい。とりわけ、バブルが弾けて資金に難渋するようになってからの20年間は、どんどんその傾向が強くなってきている。パークを生き延びさせようと努める『メープル不動産』と、パークにとどめを刺そうとする『甘城企画』。現状では、契約条項を盾に甘城企画が勝利しようとしている―ということなのだろう。


「ここに用があったの?」


いすずが訊いた。


「まぁね、ちょっと見ておきたくて。さ、仕事に戻りましょ!」


興味深くスタジアムを観察しながら、かなめたちは南エリアを後にした。





パークの閉園間近、かなめは問題行動をおこし続けアトラクションから追い出された宗介と共に、『ソーサラーズ・ヒル』を歩いていた。ぱらぱらと帰り出すゲスト達の中、ふと視界の片隅にリュックを背負った七歳ほどの少女が誰かを探しているのが映った。迷子かと思い、今にも泣きそうになっている少女の元へと駆け寄り声をかける。


「ねぇ、大丈夫? お父さんやお母さんとはぐれちゃったの?」
「ぐす、ママ~!! パパ~!! どこ~!」
「あ、やだ、泣かないで」


いきなり見ず知らずの人物に声をかけられ泣き出してしまう少女に、どうすればいいのかわからず慌てるかなめ。


「ちょっとリュックの中開けるよ?」


何か身分がわかるようなものをリュックの中から探しだそうと手を伸ばすかなめだが、その手を横から掴まれる。


「・・・・・・なによ、ソースケ」
「そのリュックを無闇に触ってはいけない」
「どういうこと?」
「爆弾の可能性がある」
「はぁ?」


懐疑的な声を挙げるかなめ。


「昔こんなことがあった。とある町に国家から派遣された部隊が何日か停泊していたのだが、ある日その部隊の隊長が町を歩いていると、町中で大きめのリュックを背負った少年を目撃した。なんでも町に訪れた観光客だったようだが両親とはぐれ迷子になってしまったのだという。その部隊の隊長は情にあつい男で一日中少年の両親を探したが結局は見つからなかった。仕方なく自分の宿泊先へと連れて帰り次の日まで面倒をみることにしたのだが・・・・・・。なんと翌日には隊長が泊まっていた場所は隊長もろとも木っ端微塵となり、少年は忽然とその姿をけしていた。リュックに入っていたのは着替えなどの日用品ではなく大量の爆弾だったのだ。観光客や迷子などという発言も最初からその隊長を欺く為の偽装工作であり、声明ではその部隊を派遣した国家を憎むテロリストの犯行となっていた。」
「そんなことが・・・・・・」


衝撃的な話に絶句するかなめだったが、一つ気になることがあったので問いかける。


「・・・・・・ちなみにそれはどこでの話?」
「アフガニスタンだが?」
「あんたが今いるここは?」
「日本だな」
「いま言ったようなことが日本で起こると思う?」
「・・・・・・可能性は低いだろう」


少し考え答える宗介。


「わかってるならいちいち言うな!とにかく、この子のことが分かるものを探すわよっ!」
「待て、危険だ! やめ―」



制止の声も聞かず少女のリュックを開け、がさごそと中をまさぐる。思わず地面へと体を伏せた宗介だったが何も起こらないのを見てきょとんとした。


「あったあった! なになに? 寺田千恵ちゃんね」


リュックの中から名札のついたぬいぐるみを発見し、少女の名前が判明する。名を呼ばれた少女は訝しげな視線をおくりつつも次第に落ち着いていき、正常に受け答え出来るようになった。


「千恵ちゃん、お姉さんたちと一緒にパパとママを探そ?」
「ぐす、うん、わかった」
「よしよし、えらいえらい!」


頭を撫でながら手を繋ぎ両親を探し出そうとするが、千恵がその場から一歩も動かない。


「どうしたの?」


疑問に思い千恵を見てみれば、宗介に向かって空いている手を伸ばしている。


「お兄ちゃんも手繋いで!」
「俺か? ・・・・・・いいだろう、暫し待て」


そう言って素早く立ち上がり、地面に伏せたさいについた埃をおとしながら、かなめと繋いでいる手とは反対の手をにぎる宗介。

(これってなんだか・・・・・・)

傍目には親子のように見えるのではと思い、顔をあかくしつつも宗介をみる。案の定なにを考えているのかわからないムッツリ顔だった、


「なにか面白い話して~」
「ふむ、ならばベトナム帰りの知人から聞いた韓国海兵隊の凄まじい拷問テクニックなどはどうだ?」
「やめなさい!! トラウマになるでしょ!」


このようなやり取りを何度か交えつつ両親を探すことに集中する三人であった。



その後無事『ソーサラーズ・ヒル』で千恵の両親は見つかり、かなめと宗介はお礼の言葉をうけながら千恵と別れた。遠くから笑顔で手を振る千恵を見ながら宗介はつぶやく。


「この国は平和だな。子供がいつも笑っている」
「どしたの急に?」
「俺は子供が笑っているところをあまり見たことがない」


どういうことかと不思議に思ったが、宗介が紛争地帯を転々としていたことを思いだしその意味を理解する。


「・・・・・・あんな小さな子でも戦争に使われるってこと?」
「そうだ。ジュネーブ諸条約やアフリカ憲章などで18歳未満の強制徴兵は禁じられているにも関わらず、少年兵というものは今もなお確かに存在する。男であれば死亡率の高い危険な最前線へと送られ、逃げようとすれば後ろから味方であるはずの者に殺される。女は大人の兵士の身の回りの世話役として扱われ、それに耐えきれず自殺するものが後を絶たない。恐怖から逃れるため、薬物を投与されることも多い。武器として与えられる小銃の弾丸に使われている火薬には、燃焼力強化のためにトルエンという物質が含まれているが、これら少年兵の恐怖心をなくす、あるいは依存症を引き起こさせて脱走を防ぐといった目的から、このトルエンを含む火薬を服用させて、中毒症状に陥らせるのだ。そんな過酷な世界がこの世にはある。」


俯きながらも少年兵のことについて語る宗介。その背中は哀愁を漂わせ、とても小さく見えた。


「簡単よ」
「なに?」


かなめの簡単という言葉に宗介が顔を上げる。


「子供の笑顔を見るなんて簡単なことじゃない。私たちが笑わせればいいのよ。私は支配人代行として、ソースケはボン太くんとして、この甘城ブリリアントパークでね」
「・・・・・・千鳥」
「だから頑張りましょ、この遊園地のためにも、子供達のためにも」
「・・・・・・そうだな、そのとおりだ。俺たちには成すべき目標がある、10万人勧誘という重大な目標がな」
「頼りにしてる!」


『ばしん』と背をたたき宗介に気合いをいれる。すでにパークは閉園時間となっておりゲストの姿はない。二人はがらがらの『ソーサラーズ・ヒル』をあるきながら今日一日の仕事を終えた。





かなめと宗介は帰宅するべくキャスト用の出入り口を通ったときある警備員が話しかけてきた。


「お疲れ様です、千鳥さん」
「そちらこそ、遅くまでありがとうございます」
「いやはや、今日はゲストが多くて大変でした。」
「いい傾向です」
「それにオンステージについている監視カメラで様子をみていたんですけどね・・・・・・」
「?」
「すごく笑顔と笑い声がおおかったですね。お子さんから大人、はてはキャストまで。なんだかこっちも元気をもらっちゃいました。ってどうしたんですか?」


話を聞いて顔をあわせて笑い合うかなめと宗介。そんなふたりに不思議そうな表情をする警備員。


「なんでもないんです 幸先がよかったので笑ってしまって」
「なるほど、あしたもこの調子であってほしいですね」


そんなやり取りをして警備員と別れる二人。その日一日はかなりの重労働だったはずだが以外と体は軽くまた明日も頑張ろうと思えるものだった。



[本日のパーク入場者数 3012名(目標まで94286名)/残り11日]





話が全然進みませんね(笑) どんどん文字数もふえていくし、小説書くのって難しい(-_-;)