汚い流派の子を拾ったので虐待することにした   作:てっちゃーん

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待たせたなぁ!(3週間ぶり)




経った

さて、突然だが時の流れは早い。

 

熊本から引っ越してから既に"半年"が経過した。

 

しかしながら引っ越し疲れと言うのはなかなか取れないものだ。 まだ仄かにその疲れを残して完全に休まらない。 だがそれを理由に腑抜けた情けない姿を小娘に見せることは出来ない。 弱点を探られる恐れがあるからだ。 その事を警戒してからここ数ヶ月、予想通り小娘から視線を感じて仕方ない。 隙あらばこちらの弱点を探ろうと小娘は努力する。 ほんの数秒でも呆けてしまえば手痛い反撃を受けてしまう事は確定明らかだ。 最近また少し上達してきた腕前で料理をする時も、進んで楽しそうに家事をする時も、夜は子供の延長戦とばかりに寝る前の時間帯で一緒にテレビを眺めてる時も、チラチラチラチラとこちらを眺め、隙あらば弱点を暴こうとする。

 

今まで小娘はいともたやすく行われるえげつない虐待で苦しめられていたため、どうにかして仕返しが出来ないか探っているのだ。 だが毎回視線を感じて仕方ないのだ。 もう少しバレない様にこちらを観察すれば良いものを、まだまだ甘ちゃんな小娘だ。 しかし害は無いとはいえ一方的になすがまま弱点を暴かれるのは気にくわない、だからチラチラと飛ばしてくる視線に対してこちらもその視線を合わせてやる。 ニヤニヤと笑って奴の行動が筒抜けである事を分からせる様に嘲笑ってやるのだ。 この時さりげなく気持ち悪い笑みで相手の目と脳みそにダメージを与えるのだ。 さらにいえば男のゲラゲラとした笑いだ、それは効果覿面だったのか小娘は視線が合うとすぐに他所を向いて顔を逸らした。 気持ち悪くニヤついた顔を向けられたら女性は嫌に決まっている。 油断したな小娘、こちらも反撃しないと思ったら大間違いだ、くっくっく。 しかも小娘はこちらを観察してる事がバレたと思ってすぐさま視線を他所に逸らして誤魔化したかもしれないが顔を伺えばバレバレだ。 何故なら小娘の顔は赤く、怒りに染まっているのが目に見えて分かる。 くっくっく、このニヤニヤが本当に相当憎たらしくてたまらないのだろう。 ポーカーフェイスで突き通せないならこちらの弱点を探るのはまだまだ先の話だな小娘。

 

だがしかし、その反抗心は良し。

 

そのくらいの気持ちでなければ面白くない。

 

引っ越しの移動中に寄った大阪にある大きなテーマパークでは大好物のキャンディーを奪い取り、軽く一泡吹かされたんだ。 あれは今でも忘れない最大の虐待返しだ。 "大好物"を返さず、無慈悲に取り上げればその人間に大きなダメージになることを理解したからこそ小娘が起こした行動だ。 普通なら子供が大人相手にそんな事するとは思わない。 だからこそ隙をつく事が出来た。 そしてそれは効果的だった。 やはり小娘にはセンスがある。 お陰で今後の小娘に対して期待が高まる、溢れる限りだ。 今は大人しいがまたそのうち小娘から虐待返しが来るだろう。

 

 

さて

 

 

そんな小娘は現在小さな部屋で隔離して居るところだ。 いまは一人寂しく、子供が大嫌いなお勉強タイムで苦しんでいるところだろう。 国語、数学、理科、地学、英語、物理、生物、7教科の内の数教科を独学で吸収させる作業だ。 そしてそこに割り入って至近距離で教えるのだ。 ただでさえお勉強が嫌な子供なのに男が隣で座り、アレやコレやを指摘する。 この空間から逃げたい筈だが最低でも4教科のノルマをクリアするまで逃がさず、小娘に知識を叩き込む。 因数分解などあまり必要としない知識すらもねじ込み、数学の存在で苦しませる。 だが一斉に叩き込むのではない。 直ぐに終わらせては勿体無いからな。 一年間じっくりと時間をかけてこの苦痛を脳に詰め込むのだ。 そして難題をクリアすれば頭に触れる事で詰め込んで疲れた脳みそにダメージを与える。 別に人格とか歪むほどの事をするわけでは無いが苦労して終わった後もこうして頭を触られる。 疲れている所に不快な一撃となる事は間違いない。

 

我ながら素晴らしい虐待お勉強だ。

 

だがこの苦痛を逆境に変えたのか知らないが小娘は最低4教科のノルマを越えようともこのお勉強地獄から逃げず離れず、毎日毎日全ての教科を終えるまでお勉強している。 おそらく4教科のお勉強が終わるまで解放されないくらいなら7教科やろうと変わらない、それならトコトン付き合ってこちらの弱点や手札を探ろうと生意気にも考えているのだろうな。 逆に至近距離での接近なら都合良いと開き直った結果か。 やってくれる。

 

だがその精神は素晴らしいの一言に尽きる。

 

ならこちらも特許の虐待技術でトコトントコトンこの状況を使ってやるとしよう。

 

勉強中にこちらを見て笑ってられるのも今のうちだ、まだまだこれからが虐待の楽しいところ。

 

 

 

そう思うと新たな住まいでの生活が楽しく思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊本から逃げて半年が経過した。

 

新しく住まうこの場所も慣れ、荒んでいた私の心も落ち着いてきた。

 

引っ越した先でこんなことを言うのもアレだが、この付近は特にこういったものもない。 だけどその代わりに何も縛られない。

 

 

「あの、ここが分からないです…」

 

「? そこは中学の時に使った方程式で解ける」

 

「……あ、本当だ」

 

「高校の数学は中学で教わった時の数学ができたら半分は簡単だ。 ……念のためだ、あとで中学の教本を買ってこよう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「大丈夫、君は賢い。 だから高卒認定も一、二回受ければ合格できるだろう。 前も言ったが数学と英語は高校1.2年程度のレベル、そう難しいことはしないさ」

 

「はい」

 

 

こんな感じに私は学校に行かず、独学でこれからの知識を蓄えることになった。 彼は『少なくとも高校までの勉強はしっかりやっておこう』と言ったので私は"高卒認定試験"に向けて独学でこれから頑張る事にした。 しかし高卒認定を受けるには戸籍が必要だ。 当然だが、私は元いた場所の戸籍を使うつもりは無い。 だから彼が偽物を作ると言っていま手続き中、あと数ヶ月でそれが届くらしい。 しかし偽の戸籍を作る事が可能でもそれはかなりの額が掛かるらしいが『 川´_ゝ`)なに、気にすることはない』とわたしの意思の有無を問わず勝手に作り始めた。 だが私もその行為が非常に助かるのは確かであり、感謝を述べる。

 

戸籍云々はともかく、学校に行かないことについては察してほしい。 私は世間から姿を眩ませた人間であり、簡単に表舞台へ出る事が出来ない。 だから無闇に外へ出ることは好ましく無い……と、言ってもここは田舎であり、のどかな風景に包まれた住まいです。明かりがチカチカする都会じゃないから監視カメラや沢山の人々の目線に怯えることなく、ただ大きな帽子を被って西住みほである事を隠して普通に外に出て過ごしている。 自然の風を大いに受け止めれるこの場所はいつでも心を健やかにしてくれる。 家や建物であふれていた学園艦なんかよりも、少しずつ緑色を付けてきた茶畑の香りを楽しみながらゆっくりゆっくり歩き回れるこの自然が好きだ。

 

 

「あー、そろそろ時間か?」

 

「はい、そうです」

 

 

私室から農業で使う作業道具を取り出し、草木に対して丈夫で動きやすい格好になったあと、麦わら帽子を被って玄関で一声かける。

 

 

「行ってきます!」

 

「ういー、いってらぁぁ…」

 

 

また軽く夏バテ(弱点発見?)している彼を置いて行き、私は家を飛び出す。 外に出ると胴体をオレンジ色に染めたシオカラトンボと共に目的地まで向かう。 夏の暑さを増幅させる蝉の声を掻き分け、もっと熱くなれるだろう自己主張の激しい太陽はお米食べろぉ、と田んぼの水面を日差しで乱反射させて、よくありげな蜉蝣は鬱陶しく人々の周りを飛び回り、ざまぁ見ろと羽の音を撒き散らす。 実に良くある夏日もそろそろ終わりに近づき、秋に突入するだろう。

 

だが秋に突入する前にココ、八月の上旬ではとある畑の収穫に勤しまなければならない。

 

私は今から行く場所まで歩みを進める。

 

 

「おはようございます!」

 

 

私の足音で池の鯉がちゃぽんと水面から逃げる。 大きな帽子を少し上に傾け、顔が良く見える様にすると玄関の奥から現れた。

 

 

「おお、みほちゃん、おはようさん」

 

「あらあら、みほちゃん、あさからげんきったいねぇ」

 

 

仲良しな農家の老人夫婦に出迎えられる。 このお二人は私がここに引っ越してから数日経った時に出会った人達であり、半年経過した今も大変よくしてくれます。

 

出会い方としてはここら辺を散策してる時、綺麗な茶畑を見かけたのでしばらく眺めていました。 日本人の嗅覚をくすぐるお茶の香りに包まれながらボーっとしていたところ、ひとりの男性の悲鳴が上がる。 私は心配になり、声のした茶畑まで向かうと一人の老人が倒れていました。 私は腰をさすってその人を起こして理由を聞くと、物を運ぶ時に腰を痛めて倒れたようです。 私は放っておけず、代わりに運びました。 ダンボールに詰められた物はなかなか重たいようで、ご老体に響くことはよく分かりました。 因みに私からしたら軽かったです。 戦車道で腕力が鍛えられたからですね……少し複雑です。 それから軽トラック乗っけられていた全てのダンボール箱を家の前まで運んであげると大助かり、と大いに感謝されました。

 

それからこちらに引っ越してきたことを伝えた後その夫婦達と知り合いになり、気づいたら定期的にここまで足を運んで農園や茶畑のお手伝いをしていました。

 

それから戦車道の道を歩んでいた事、そして私があの西住みほである事、あと苦しくなってここまで逃げてきた事、これらの内容を口を滑らせてしまい、私という存在を明かしてしまったが「大変だったねぇ」と同情されて「よく頑張った」と慰められた。 流石に未成年を連れ去る行為については「立派な犯罪だねぇ」と言ったが「でもなかなかやりおる。 昔のこのアホんだらを思い出す」とおじさんの背中を叩いてゲラゲラ元気に笑っていた。 おじさんも何か昔を思い出したように苦笑いしていた。 お二人もどこか私と似たような経験をした事があるらしく、お二人の話を聞けば今の生活を築く前は駆け落ちしたりと若い頃は結構やんちゃしていたようです。

 

 

しかし最後に腰を痛めたおじいさんから真面目な顔で言われました。

 

 

「みほちゃん、確かに彼がやったことは紛れもなく立派な犯罪で法律によって裁かれる。 たとえ死に追い込む様な悪環境から逃げ出すためでも未成年を連れ去る行いは社会的に褒められた事じゃない……でもこれはよくある話だが黙っていればまず犯罪にならない。 だからこの先は死ぬまでその罪を世間に隠しながら賢く生き続けなければならない。 たとえ世間が見てみぬふりをしても、このことを忘れてはならない。 だからココからが重要だ。 彼の罪が重かろうが軽かろうが、犯罪は犯罪で終点を打たれる。 しかし彼が犯罪者だとしてもみほちゃんが信じてこれから付いて往くか往かないかは自由だ。 もし彼の手を掴み続けるなら……しっかりと掴んでいなさい。 それが間違いと言われてもそこがみほちゃんの人生を築く居場所になるから」

 

 

おじいさんは私が連れ去られたことの重要性を今一度聞かせてくれた。

 

 

「でもまぁ若者はそんくれぇがちょうどよか。 あたいらはコノことは何も言わないがその代わり、しっかりとな? あんたの大事な人生、そんでえらいべっぴんさんなんだから幸せつかまんと勿体なかよ?」

 

 

おばあさんはゲラゲラと笑いながら応援してくれた。 人生の先人から言葉を貰い私は頭を下げ、これからよろしくお願いしますと改めて挨拶をした。 それから年老いた仲良し夫婦のお二人さんからはそれ以上のことは問われず、それよりもこの場所での生活や名物、楽しそうな経験が出来そうな話を聞かされた。 偽の戸籍が出来て外を歩き回りやすくなったらうなぎの工場や安倍川餅で食を満喫して、熱川湯の温泉街で湯気に包まれながら歩き回り、体力に自信あるなら世界遺産登録された日本一高い山を登ってもいい。 ここから幾らでもこれからの"西住みほ"を作り上げる。 それが彼に対する最大の恩返しになるだろうとヒントをもらった。

 

 

 

「……」

 

 

 

新地で沢山を築き上げれそうな今、熊本で何が起きてるか知らないが…

 

 

 

もう

 

関係ない。

 

 

 

そのうちテレビにでも報道されるかもしれないが、西住流の次期後継者であった西住みほなんて人間の名前なんてもう知らない。 熊本から逃げ出したその人物とまったく同じ名前を持ってるけどわたしには関係ない話になる。

 

いま大事なのは自分は新たな場所で何をして埋めれるか、引っ越しの際に彼から受けたアドバイス。 まだまだ可能性で溢れてる17歳であり、まだ子供のわたしには時間が沢山ある。

 

時々過去の出来事を引きずる事はあるけど、いつか、そんなこともあったとご老体の仲良し夫婦の様にゲラゲラ笑っていられたら素晴らしいかもしれない。

 

まずはここまで連れ去ってくれた彼に恩返しができるくらいに成長して、私からも彼を支えれるほど立派になりたい。 いまはまだお隣に座ってもらい高卒認定試験のために勉強を教えてもらう立場だけど、いまはまだ沢山甘えていようと考えてる。 これは子供特権です。 しかし引っ越してからもすぐに仕事で家を開けることが多くなり、彼との時間が少なく感じます。 そのため勉強を教えてもらう大事な時間を利用して可能な限り彼をお隣に座らせて拘束しちゃいます。 え? 最低でも4教科? ……倍プッシュだ。 私は彼に最大数の7教科を付き合わせる。 勉強は特別好きなわけじゃないけど、彼から教えてもらうだけで補正が掛けられているのかとても良く進みます。 それは誰かと勉強できる楽しさを覚えたからだと思うけど、その存在が彼かそうじゃないかでハッキリするのは確かです。 あと時折視線が合うと一気に頬が熱くなり、急いで顔を背いてしまうのは仕様です。 私はそれだけ彼に対して好意を抱き……依存してるから。

 

こういうのを白馬の王子と言うのかな?

 

ハッキリはわからないです。

 

でも充実してるのは確かな話。

 

私は幸せなんです。

 

家族を置いて逃げ出した愚か者であるけど…

 

でも反省しなければ、後悔もしてないから…

 

 

今の形で構わない。

 

 

 

 

私の名前は 西住みほ …

 

戦車道の世界から逃げ出した人間です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

四ヶ月近く動かなかった黒森峰の戦車道が再開してから五ヶ月が経過する。 しかし戦車道履修生は激減した。 それもそうだ、あんなことが起これば普通はこうなるのも当たり前だ。

 

唯一救いな事は西住まほさんが隊長格としてまだ率いている事だ。 今は少数になってしまったチームだが残った仲間のために奮闘している。

 

だが半年前のまほさんはとてもじゃないが見ていられなかった。 最愛の妹を失い、母は心を壊しながら"とある"判断を下し、黒森峰を見限った団員は次々と去る。 毎年出場していた高校戦車道大会も今年は出場せず、隊長のまわり半分以上が崩壊したと言っても良い。 ありとあらゆるものが崩れ去り、その現実に耐えれなくなった隊長も崩れ落ち、一番酷い時は妹の跡を追ってしまおうと毒薬を飲もうとしていた。 それだけ妹を愛していた。 毒薬による自害は菊代さんと言う西住家の家政婦に止められたらしい。

 

まほさんは戦車道から去った私にそう笑いながら話していた。 笑い事じゃないと思うけど……しかしそれほど気力を取り戻したことに喜びを持つ方が良いのか、私には分からない。

 

 

 

だから私は気になった。

まほさんはなぜ戦車道を続けれたのか?

 

 

それはある日の格納庫での会話だった。

 

 

 

私はもう踏み込む事は無いと思う戦車の収納庫に足を運び、パンターの上で窓の外を眺めていた本人に聞いた。

 

 

 

 

「黒森峰を変えたい、もう二度と妹の様な事を起こさない様にするため。 そしてココを卒業したら私は西住流を根本から変えたい。 そのためには今いるこの黒森峰からだ。 それがいま私が……いや、私にしか出来ないことだから」

 

「……」

 

「母は正常では無くなった。 みほを失い、母親としての心でいることに耐えれなくなり、師範代の姿勢を持つ事でその苦しさから逃げれている。 嫌なことにそれが精神的に保てている。 お陰で母は自分が分からなくなり、この半年で自分を壊してしまった」

 

「西住さん……」

 

「小梅は聞いてるよな? みほの失踪宣言が速いことを。 アレは母……いや、師範代がそう下した。 娘を愛してたはずの母は"行方不明"の言葉に日々心を痛めた。 しかし師範代としてはそれが邪魔で仕方なかった。 この九ヶ月で行方は掴めず生存は絶望的なのに、まだ生きてるかもしれないという淡い希望を"母"は持っていた。 だがこれから黒森峰と地に堕ちた西住流の立て直し、更にプロリーグの関係者として"師範代"はやる事が多い。 そうなると愚行を犯した西住流の面汚しの事なんか切り捨て、今後重要な仕事に手を付けなければならない。 そう判断すると行動は早かった」

 

「そして一年も経たずに……」

 

「……あまりにもイレギュラーな宣告だった。 普通なら7年、または特殊な宣告であっても1年。 だが死亡断定は9カ月……この数字は、この数字はな、小梅…」

 

 

そして西住まほさんは、手のひらから血が流れるほど爪を食い込ませて堪えていた。

 

 

「母親が師範代としての立場に抗えた、とてつもなく短すぎる時間なんだ!」

 

 

彼女は叫ぶ。

今はこの場にいない肉親に対して。

 

 

「何故だ、何故!お母様は何故みほを救わない! 何が秘密捜索だ!! 何が西住流だ!! 娘が、愛する娘が苦しんだのに何故!全てを投げ捨てる覚悟を持って助けない!!」

 

 

私は何も言えない。

私は何も言う事が出来ないから。

 

 

「小梅!あいつは!あの母親はなぁ!!娘よりも西住の地位を取ったんだ!!師範代としての方針を曲げれないとくだらない理由で血の繋がってる娘を斬り捨てた! メディアやマスコミに嗅ぎ付けられる事に恐れていたから!小範囲で探す気もない秘密捜索で済ませたんだ!! あいつは!あの軟弱者はそうやって!そうやって娘をッッ!!」

 

「…」

 

「はぁ…はぁ…………結局は…西住流に絶望したエリカは怒り狂って、みほの失踪と西住流の失態をあちらこちらに広めたから慎重に進めた捜索も意味をなさなかった。 結果的に母は世間に無様な姿を晒し、西住流は本当の意味で堕ちた。 それが皮肉にも戦車道協会はみほの失踪に繋がったあの大会から、安全性についても厳重な組み直しが計画された。 ……ははは…行動が遅すぎるじゃないか」

 

 

怒りに染まっていたまほさんは落ち着きを取り戻すと力なく笑い始める。

 

 

「もうこれだけ言ったらあとは述べずとも分かると思うが、黒森峰の戦車道からはスポンサーも半数が去り、当然だが資金は急激に減った。 お陰で戦車道を続けるのも苦しくなった。 状況は荒れに荒れてしまい、メンバーもあの大会前の八割を失い、もうあの頃の黒森峰は無くなった」

 

 

私、赤星小梅も黒森峰の戦車道から去ったメンバーの中の一人だ。

 

あの大会で私が川に落ちなければこんな事にはならなかった。 親友を死に追いやった、そう思って私もまともな生活が送れなかった。 時に死のうかと思ったが、そんな私を逸見エリカさんが殴り飛ばし、私は止められた。

 

 

『友人の死を辿らないで。 そんなことしたら……あの子が助けた意味が無くなるでしょう?』

 

私はこの命を大事にしたいと思った。

だからそのまま"危険な戦車道"からも去った。

 

これについては戦車道を続ける逸見さんは何も言わなかった。 ただ「そう」とだけ言った。

 

 

 

「小梅、あの頃盛んに行われた戦車道は失われ、黒森峰戦車道は何もかも無くなった。 だがな? 無くなったからこそ、一からやり直せると考えた。 小梅、最初に言ったよな? 私は黒森峰を変えたいと。 もう高校生としての学生生活は残り半分だが、それでも、少しでも良いから黒森峰をやり直させるんだ。 そして西住流の跡を継いだら根本から全て何もかも塗り替える。 放ってはいけない、見て見ぬ振りはしてはならない。 その出来事に直面して苦しんだからこそ、母親として死んでしまった母の代わりに、私が動かないとならない」

 

 

グッと握りしめ、遠くを見つめる。

愛車であるパンターの装甲の上で決心する。

 

 

「血の繋がりを亡くした家族の一人として。 次期西住流の後継として、 "西住みほ"を『心から愛した』姉である"西住まほ"として、やらなければならない事なんだ」

 

 

先ほど怒りに染まり、苦しみに嘆いていた彼女の表情は無かった。 こちらにふわりと笑んで伝えた。

 

 

「それが戦車道を続けている理由だよ、赤星小梅」

 

 

 

 

 

混じりっけの無い彼女の決心を私は受け止めた。 その心はとても力強い、でも過酷なことには変わりない。 この先、いくつもの苦難が待ち受けているのは確かだ。

 

 

でも西住まほと言う人間は止まらなかった。

 

望む先にたどり着くまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一年後。

 

あの頃の騒動は落ち着き始めた。

 

その片隅で少しずつ建て直された黒森峰戦車道。

 

そこには堅実な姿勢を持つ『隊長』の姿……と思いきや、去年まで副隊長だった亡き人が兼ね備えていた柔軟な姿勢も持ち合わせながら黒森峰が全盛期だった頃の3割程度のチームメンバーを率いていた。

 

そんな黒森峰女学院は一年ぶりに戦車道大会に出場する。

 

不安の渦が巻き起こる中、黒森峰は戦いに身を投じた。

 

 

しかし

 

 

黒森峰はあの西住流の破綻を掲げず、仲間と共に助け合い戦った。 昔の黒森峰とは思えないほどの変貌に人々は目を疑う。

 

 

その結果、黒森峰は『準優勝』を飾る。

 

 

それは西住まほと呼ばれる人間の奔走によって得た大きな功績だった。

 

 

決勝戦を見に行った私、赤星小梅は思う。

 

 

西住まほが望む先が少し見えたのでは?

 

 

ただ、この準優勝が何のためになるかはわからない。 でも、西住まほの決心は行動に現れていた。 それがしっかりと結果に示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、見ているか? もう戦車道なんか見たくないかもしれないが、私はこの戦車道を……そして西住流を変えるぞ。 まぁこんな事してもなんとも思わないかもしれないけど、姉として二度とあんなことが起こらない様に頑張ってるぞ。 エリカも跡を継ぐように副隊長として頑張っている。

 

だから、ほんの少しだけで良い。

 

私の行く先を見守ってほしい………みほ」

 

 

 

 

 

 

ひとりの少女は妹の姿を胸に込め

 

闇深きこの世界に向かって戦い続ける。

 

 

 

たとえ

それが自己満足であっても

 

それが無意味であっても

 

それが間違いであっても

 

 

 

 

 

彼女は鉄と油の香りを被り続けて行く…

 

それが妹を救えなかった償いだと思いながら…

 

 

 




リアル疲れめう…

さてお久しぶりです。 てか久しぶりなので何書いたら良いか頭から吹っ飛んでましたら。 ちゃんと前回の話から繋がれたかな? 上手く書けてるだろうか…心配です。

さて、ガルパンの世界だから一年満たない死亡宣告とか有りかなと軽い気持ちでやらかした前話から今回の話では、熊本から引っ越して半年が経過したが元気過ごしていたみほのお話でした。
大きな麦わら帽子を被って軍手で汗を拭いながらやり甲斐を感じる元気な表情と、農業しやすいように布一枚の長袖を着るが世界遺産の山とはまた違う膨よかな山二つが布を分けていやらしく変えて盛り上がり、清んだ空気を肺いっぱいに貯めながら強い日差しで健康に日焼けながら、お気に入りのボコの鼻歌を歌いながらチョンチョンと鋏を片手に茶葉を剪定するみぽりん……滅茶滅茶可愛いなぁオイ!? って、感じにそんな妄想しながら今回の話を仕上げてました。


まほさんについては最後は少しだけ救った感じです。 黒森峰を立て直すために奮闘した空白期は当然酷く苦しみましたが、そこは文にはしませんでした。 準優勝だけどこんなご都合主義もええでしょう。

しほについては色んな意味で壊れました。 『師範代』が『母親』を喰らって『しほ』は死んだけど『西住』は生き残りました。 それだけです。 西住家の大黒柱である父親については書いたからキリがないのでノータッチ。 てか情報が少ない……

エリカは当然、西住のやり方に怒り狂って、みほを追い詰めて行方不明にした事を世間に知らせました。 黒森峰自体の首を締めることになりましたが、そうしなければエリカは友達が消えたことに耐えれなかったでしょう。 みほはこんなにも友達に思われてある意味幸せなんでしょうかね…



さて、あとがきダラダラはこのくらいにしまして。


次で終わりになるかもしれません(詐欺かもしれない)

期待されてるだろう作品が長く続くのは喜ばしいかもしれませんが、それでもスパッとケリをつけて終わらすのも良いと思ってます。


あと長い間待たせて本当に申し訳ありません。
久しぶりの筆記でクオリティ下がっていたのなら私の力不足です。
それほど高い実力あるわけじゃないので、悩ましいところです。


それと『評価の際の20文字設定』は取っ払いました。
いろんな真面目な声が聞けて大変うれしかったです。


あと、誤字脱字報告、ありがとうございます!!
クッソ情けない作者ですが、まだしばらくよろしくおねがいします。

ではまた

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