猫耳拾いました   作:青山菊
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こんにちは青山菊です
久しぶりの投稿でうまく書けるか不安ですが頑張って行けたらと思います。
今回は司の友人が登場する予定です、彼とリンがどう絡んでいくのか。生あったかい目で見守っていただけると幸いです。


第4話:ラブコメか⁉

―――――全く、いつまでそうしている気なんだ。

――――はぁ、ため息が漏れる。

俺は電源の付いたパソコンの上に顔をべったりと付けるリンを呆れた様な眼だ。見ているだけなら可愛らしいものだ、第三者として俯瞰しているだけならだが、現時点俺は当事者なのである。現時点パソコンを使用したい俺からすると、この愛らしい障害物はとんだ邪魔者だ。

「――――――むふぅ、ぬくぃ、、、」

気持ちよさそうに目を細めてリンが呟く。ネットの動画で猫がパソコンのキーボードに寝転がって飼い主の仕事を妨害するのを見たことがあるが、あれは飼い主の気を惹こうとしているのではなかったのか?それともリンが俺の気を惹こうとしているのか?少し考えたが否だ、おそらくパソコンの熱が心地よいのだろう。とても幸せそうな顔をして居るが、俺もパソコンを使いたいのだ、悪いがどいてもらう。

「おいリン、パソコンを使いたいんだが。」

「んー?」

とりあえず交渉による説得を試みたが意味をなさなかったので強行突破に出る事にした。

俺はリンの頭を掴みパソコンから引きはがす。

「あぅ」

リンの額を手で押して強引にパソコンの椅子に座った。

ふわっと漂う汗の香り、不快な感じではなく別の何かを刺激してしまいそうな脳をくすぐる匂いだ。だがそんなことよりこいつ、、、、

「風呂、入ってないなお前」

リンはわざとらしく目をそらし、オフロ?ナニソレ?、と言ってきた。

こいつ、人間の姿になってから一度も入ってないな。恐らく風呂の存在を知っていて入っていないのだろう、そしてしらを切って乗り切る気だな。

人間の代謝だと毎日風呂に入らないとまずい、すごくまずい。主に衛生的に。

「入ってこい」

小さな声で宣告する。

「嫌、水、怖い、、、」

いきなり片言になった。リンの日本人離れした容姿のも相まって日本語を覚えたての外国人の様なイメージを彷彿とさせた。

猫は水嫌いと言うが、人間の姿になってもダメなのか。そもそも猫の個体によって違うらしいがこいつは元々ダメなタイプだったようだな。だがそんなことは関係無い。あまりやりたくない手ではあるが、無理やり入れるしかないな。

ちなみに俺は軽い潔癖症だ、いくらリンの様な美少女だったとしても汗を掻いたまま、と言うか約二日風呂に入っていない人間を家の中に入れておくわけにはいかない、絶対にだ。他の奴なら追い出すところだが、相手は女の子だ、こんな夜更けに外に放り出すわけにもいかない、ならばいまするべき事は一つ、こいつをいち早く洗浄することだ!

「行くぞ、、、」

俺は慈悲無き瞳でリンに告げた。リンの腕を掴み脱衣所へと無理やり連れて行く。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!放して!死ぬ!水は死ぬの!」

「大丈夫だ、水被ったぐらいじゃ死なない、それよりお前を洗浄しないと俺が死ぬ。」

「司の鬼!悪魔!」

「うるさい」

必死に抵抗するリン、どうやら猫の敏捷性は薄れているよう、それに加えリンは女の子だ、力はさほど強くないのであまり手こずらず脱衣所に押し込めた。

恐らく言っても自分から服は脱ぎそうに無いだろうから無理に服をはぎ取って風呂場に押し込める。幸い俺も入ろうと思っていたため湯舟には温かいお湯が張られていた。心を落ち着ける入浴剤の香りが充満している。風呂の暖かな湿気と相まって心地いい。リンは落ち着くどころか平静を失っているが。

「出して!死ぬ!」

「大丈夫死なない」

俺は出口にしがみつくリンの肩を掴んで無理に風呂用の椅子に座らせた。

左手でリンの体を抑えつつ右手で桶の取手を掴み湯舟からお湯を組み、乱暴にリンの頭にお湯をかける。

「む、」

俺は眉を潜めた。髪の短い俺ならこの水量で完全に髪を濡らすことが可能なのだが、こいつの髪は長くこの水量だと完全に水気が髪にいきわたらないらしい。

作戦変更、俺は蛇口を捻りシャワーからお湯を出しそれをリンに頭から注いだ。

「ギャァァァァァァァァァァァァ!水が溢れる機誡だあ!いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

俺はリンの叫びを完全にシャットアウトしシャンプーを頭に付けワシワシと髪を洗う。リンの髪を泡だらけにしたところで再びシャワーを流す。

「ギャァァァァァァァァァァァァ!」

水を出すたび叫ぶなこいつは。

シャワーから溢れでるお湯でリンの頭の泡を流す。次に俺の友人が“お前もモテるに髪のケアぐらいしとけと”とよこしてきたリンスの封を雑に開ける。ちなみにモテたいなどみじんも思っていないので使ったことは無い。リンの髪はさらさらしているのでこれは必須だろうと勝手に思ったのだ。俺自身使ったことが無いので良いリンスの付け方などは知らないため適当に伸ばして流す。

完全にリンスを流し終わり俺がシャワーのお湯を止める。

「司、激しすぎるぅ、、、」

涙目でこちらに視線を向けるリン。犯罪臭がする、何も悪いことはしてないのに。

特に悪いことをしているつもりは無いので俺は悪くねぇの精神で行くことにした。

次に洗浄すべきは体だ。

「体洗うぞ、」

淡々とリンに告げる。

「うん、、、、」

もう抵抗する気が残っていないのか、はたまた水になれたのか、リンは大人しくそう言った。

「今度は、優しくしてね、、、、」

ムスッとした顔で俺にそう言った、少しドキッとしたが、それをリンに悟られまいと平然を装って泡を付けたスポンジでリンの体を洗う。すらっとして細い、それなのにふわっと柔らかく本当は骨が入っていないんじゃないかと錯覚させた。先ほどとは一変してリンが大人しくしていたため体を洗うのはスムーズに終わった。そのおかげで俺のライドブッカーはソードモードにならずに済んだ。

俺はリンに後は湯舟に漬かるように促し風呂場を出た。このまま同じ空間にいたら正気を保てなさそうだ。

 

しばらくすると全裸のリンが風呂場から出てきた、タオルの存在は知っていたようで体は拭いてあったが髪はタオルで雑に拭いたためぼさぼさで心なしか湿っていた。

「さっぱりしたぁ」

リンは満足した様に俺の隣へ座った。

それはそうと全裸でうろつかないで欲しいのだが。男として気が持たない。

「リン、そこに座ってろ」

俺はそう言い残して洗面所へと向かった。

洗面所へ着くと俺は洗面所の下の収納スペースを開けた。確か母さんが使ってたドライヤーがあったはずだ。少し探すとドライヤーは簡単に見つかった。確か母さんが病気で入院してから一度も使ってなかったな。ふと過去を振り返る。悲しんだりはしないさ、母さんには一生分の愛情を貰ったし。

俺はドライヤーを片手にリビングへと向かった。

ソファーのに座りながらスマホを充電するために置かれた延長コードにドライヤーのコードを差し込み、電源を入れる。

ウォーン、とドライヤーは温かい風を吐き出し始める。それをリンの美しい銀色の髪に充てる。ドライヤーの風でリンの髪をふわっと宙を舞った。それはまるで風になびく糸の様に美しく、気が付くと見とれてしまっていた。

面倒なことは多いが俺のことを好きと言ってくれた少女は、とても綺麗で魅力的だと思った。

リリリリリリリリリリリリリリリ!

耳に突き刺さる様な目覚まし時計の音が俺も目を覚ました。

天国の様な連休は終わりを告げ、地獄の様な平日が始まる。学校には中のいい友人もいるし、さして校則に不満があるわけでも無い。だが学校と言う場所に行くこと事態が億劫なのだ。

はぁ、と小さなため息をつき俺は体を起こす。手早く制服へと着替え空の鞄を持って部屋の外へと向かう。リンは気持ちよく寝ていたし、起こさない方がいいだろう。

「司、どこ行くの?、、、」

部屋のドアノブに手を掛けようとした時、リンが眠そうな声でそう言ってきた。起こしてしまったようだ。

「学校だけど」

「そっか、学校か、てっきりまた捨てられちゃうかと思った」

リンは今まで見せたことが無い、さみし気な表情をしてそう言った。そうか、こいつは捨て猫だったのか。一度人間に裏切られている、それなら人間に恨みの感情を持っていても納得だ。

もし、ここでリンが起きてこなかったら、俺がいない時に目を覚ましたら。リンはきっとまた捨てられた、また裏切られた、と思うだろう。リンの事を思っていたとはいえリンを傷つけてしまいそうになった。

何かリンを安心させてやれないだろうか、そう考えた。

“そうだ、あれがあったな”

俺は机の引き出しからタブレット端末を取り出し、それをリンに渡した。

「何かあったらこれで連絡してこい、家の中にいれば連絡できるから。」

俺はそう言って、リンにメッセージアプリの起動の仕方と、基本的な操作法を教えた。

「あとそれお前にやるから好きに使っていいぞ。」

「あ、うん、ありがと」

連絡が取れれば俺も安心だ。

俺はリンにそう言って部屋の外へと出た。

長い午前中の授業が終わり、俺は友人と席を囲み昼食を取っていた。

「えぇぇぇぇぇ!拾った猫が女になった?、君は頭がどうかしたのかい?」

そう言ってきたこの男は火野リンク、小学校からの友人で腐れ縁と言うやつ。

アメリカ人と日本人のハーフで陸上部に所属する俺と違って活発的な少年だ。

成績優秀、運動もでき表向きには気配りもできる、こちらも捻くれた俺と違ってよくモテる。

「それが、本当なんだよ。しかもかなりの美少女」

俺は昼飯のブロック菓子をかじりながら言った。リンクは美少女、と聞いた瞬間。

「その子、紹介してくれないかな司君!」

「断る」

「即答かよ!」

絶対言うと思っていた。こいつの姉は言うなればシスコンだ、しかもかなり重度の。そのせいでこいつは姉嫌いでまるで姉から逃れるかの如く異性を求めているのだ。そんな奴にリンは渡さん、絶対に。

「だが、にわかには信じられねぇな」

ついさっき紹介してくれと言っていたくせにすがすがしいくらいの手のひら返し。こいつのデザートのブドウを握りつぶしたくなる。

「じゃあ見に来るか?、今日部活もバイトもないだろ」

「おう!やっぱりなんだかんだで紹介してくれる司はやっぱツンデレだな」

バンバンと俺の肩を叩くリンク。ちなみに紹介する気などさらさらない、百聞は一見に如かず、実際に合わせてリンにこいつは危険だと教えるためだ。手を出しそうになったら全力で潰す。

「いや、実際に合わせてお前の危険性を伝えるだけだ」

「何を言ってるんだい、こんな人畜無害を絵にかいたような少年に向かって」

リンクは舞台役者の様に両手を真横に大きく広げて言った。

「何を言うんだこの腹黒、」

世間的に見ても内面的に見ても害ありありだ、こいつはこのあたりの地域でも名の知れた悪ガキである、上記でも書いた通り確かにモテる、モテるのだが、裏でこいつは何回も警察のご厄介になっている、主にスピード違反やヘルメット無し運転など。ここで害一つ、二つ目はこいつの腹の黒さ、こちらも世間一般的には気の優しい好青年だろう、だが長い付き合いの俺だからわかる。こいつは心底性格が悪い。クラスメイトの大半からは人畜無害だろうが、俺から見れば害ありありなのだ。

「ん?何か言ったかい?」

「いや、何も」

俺はややとぼけるような口調で言って俺は目を逸らした。

これから一緒に暮らす以上リンクのとの接触は絶対に避けられない、リンにはこいつの悪性をリンにはきっちり知らしめておく必要がある。

今回も俺が不在の時に接触されるよりは数倍マシだ、上記でも書いたが何かしでかすようなら潰せることだ。

「あ~、終わった終わったぁ!」

帰り道、リンクは一日中座っていたことですっかり固くなってしまった体を伸ばす様に体を伸ばした。

「久しぶりだな、お前の家に行くの~」

「つい先週来たばかりだろ、と言うかお前の姉から3日間かくまってやったの忘れたか?」

「ん?忘れた」

なんて恩知らず、昔からこう言うところがあるなこいつは。

そんな話をしながら約20分。

周りをコンクリートで囲まれた箱のような建物の前に立った。俺の自宅である集合住宅(マンション)。立地が良くそこそこ広いのだが建物自体がそこそこ古く、マンションというのにはいささか小さめの建物。1フロアに部屋が五つずつの五階建て。もとは白かったであろう外壁は煤がへばりつき灰色の空に茶色い雷を撃ったような姿になっていた。俺の自宅は104号室。不思議なことにこの集合住宅は一階が地面から少し高い位置に設けられている。4段くらいの短い階段を上り、小部屋の並ぶ通路へと歩いてゆく。ドアが一つ二つ三つ、四つ目で表札を見ずに足を止める。数年間住んでいると部屋の場所も体で覚えるものだ。

「数年間通ってると部屋も場所も体で覚えるもんだね~」

「今俺が思ったことだ、」

「やっぱり僕達なかよしだね~」

「そうだな」

「なんだい、そっけないな」

「空けるぞ」

俺はドアノブに鍵を差し込んで鍵を開ける、次にドアノブを捻りドアを開いた。

「お帰り、司」

ドアを開くとリンが膝を抱えた状態で座っていた。待っていてくれたのだろうか。こう見ると少し猫と言うよりは犬っぽいか?とも思ったがネットで飼い主を迎える猫の動画を見たことがある。

ちなみに俺はネットの動物の動画を見て癒される系の人←なので、その手の動画はよく見るのだ。だがそんなことを望んでリンを拾ってきたわけではない、そもそも俺が猫、否、動物を拾ってくるなんてほぼ考えられないことなんだ、何故か、俺は動物の毛が死ぬほど苦手だ、なので毛が落ちる動物は極力家には入れたくないのが本音なのだが、リンを拾った時には自然と嫌な気はしなかったのだ。これが不思議だ。上記の事が頭に無かったわけではない、それを踏まえても“許容できる”と思ったからこそ連れてきた。俺は命を半端な気持ちで預かったりはしない。

リンは隣にいたリンクに目もくれずに俺の胸にふわりと倒れこむように身を寄せてきた。

そこそこ厚いフリルの付いたドレスの様な服の上からでもはっきりと、ふわっとした柔らかさを感じ取れた。

俺は隣に友人がいるのを一瞬のうちに忘却してしまう。心臓の鼓動が速くなる。

こんなに異性に対してドキドキしたのって、生まれて初めてかもしれない。

「さみしかった」

俺の胸に顔を埋めてリンは俺に聞こえるギリギリの声で呟いた。

顔が埋もれていたので表情は見えなかった。

「ああ、すまない」

俺は動揺していたのか、反射的に謝罪をした。

「ぅん」

リンの布に擦れた声。

リンは気が済んだのか俺の体からそっと離れた。そして俺の横に一瞬目を向け俺の眼を真っ直ぐに見つめ眼で何かを訴える様に様なじっとりとした視線を送ってきた。例えるなら、遅くに帰ってきた夫から香水の匂いがした挙句首にキスマーク及び桃色や薄紫系統の色にひらがななんかのミミズの這うような字で女の名前の書かれた名刺を発見した妻。

浮気などした覚えはないし、そんな誤解を招きそうな物は持っていないはずだが。

「そいつ、誰?」

リンは踵を上げて、ずぃ、と顔を近づけてきた。

“そいつ、誰?”だと?、一瞬戸惑ったが我に返ってつい数十秒前まで会話をしていた友人の事を思い出した。いきなりリンが抱き着いてきたせいで完全に視界から、否、意識から消えていた。

隣に目線を向けると、これまたリンとは違った方向で表情を怒りの色で染めたリンクの姿。

リンが不機嫌そうな表情をしている理由は大体察しがついた。

リンクに対して嫉妬心を抱いているのだろう、多分、同性であるリンクに対して嫉妬心を抱いているのか疑問に思うが、、、、それ以外考え付かない。

対してリンク、こっちに関してはまるで分らん、何を怒っているんだ。リンの行動によりリンクを意識から完全に抹消していたことは悟られてないハズだ。ならどうして。

「おい、、、、司くんよぉ、」

リンクが口を開いた。大きく息を吐くように怨念や恨み、呪いでも込める様に俺の名を呼んだ。なんだか怖い。

「おう、リンク、、、どうしt」

「っざけんなよ!なんだ?俺を誘ったのは、恋人(かのじょ)をいちゃいちゃしてるところを見せつけるつもりかよえぇ!」

いきなり胸倉をつかんで俺を怒鳴りつけてきた。どれだけ異性に飢えてんだこいつは、そもそも俺はお前が姉をいちゃちゃしてるところを何度も見せつけられてるっつの。そう思ったが話がややこしくなることを避けるため敢えて沈黙。しばらく叫んだら落ち着くだろう、それまではこいつの罵声を右耳から左耳へと聞き流そう。

「ちょっと、司に触らないでよ」

リンが間に入ってきた、怒鳴っている男に食って掛かるとは、なかなかの度胸だ。

「司を傷付けるならボク怒るよ」

なんかかわいらしい言い方だな。怒りの感情と俺を守ろうとしてくれる様は感じ取れるのだが言葉の使い方から伝わるどことない子供っぽさがその感情と反して可愛らしい。

俺を庇ってくれるのはいいのだが、話がややこしくなると困る、とても困る。

「いくら君みたいな美少女に頼まれようとこいつには制裁を咥えなくちゃならない!お前はおとこの純情をもてあそんだ!」

何を言うかこいつは。

少し呆れた。時々こんな感じに暴走するがこれまためんどくさい。

「さあ司、お前の嫌いなナマコを食わせてやろう!」

リンクはそう言って鞄に手を突っ込むとタッパーに詰められたナマコ料理を取り出した。なんでこんなもの持ってるんだ。

ちなみに俺はナマコが嫌いだ、あの不気味な物はどうも食べる気にはなれない。

リンクはタッパーの中身を一つ摘まみ上げ全力の力で俺の口に押しこもうとしてくる。

「なんて奴だ、俺へに嫌がらせの為にでも携帯してんのかよ!」

「当たり前だ!お前はいt」

“糞、こんなしょうもないことを!”俺は玄関の傘立ての中に見えにくいように刺してある木刀へと手を伸ばす。これで一突きすれば大人しくなるだろう。リンクの体はそう脆くはないだろうから手加減すれば怪我もしまい。俺が傘立てに手をかけた次の瞬間、リンの堪忍袋の緒が切れた。リンは拳をグーに握りしめリンクの顔面に叩きつけた。

今分かった、リンの堪忍袋の緒は途轍もなく脆い、そして怒らせるといち早く手を出してくると言う事。

リンは極力怒らせないようにしよう。

後ろに吹き飛び壁に激突しスルスルと糸を離した操り人形の様に座り込んだ。鼻からは鼻血が垂れていた。これなら俺が木刀を使った方が被害が少なくて済んだだろうに。

「、、、、ねこ、、、パンチ」

そう言ってリンクの意識はどこかへ飛んで行った。

「こいつ摘まみだそう」

リンがリンクを指さし俺にそう言ってきた、俺もそうしたいところだがここまでやった手前こいつの姉が怖いので介抱してやることにした。

俺はリンクの両足を掴み居間まで引きずっていく。

「こいつは頭がおかしい所があるが友人なんだ、名前は火野リンクだ」

リンクを引きずりながらリンにこいつの事について説明をしておく

「司の友達だったの、ごめん、ボク悪いことしちゃった」

リンは申し訳なさそうに俺に謝罪をしてきた、耳もペタンと垂れている。

「いや、さっきのはいい判断だ」

俺はリンをフォローするわけでも無く、完全なる本心を告げた。リンが手を出さずとも俺が殺っていた。

誤解を招かないように言って置くがこれんなのは日常茶飯事だ。俺はイラっとすると人にすぐに手を出す癖がある。自分では自制する様に心掛けてはいるがこいつは別なのだ。こいつの場合はさっきもそうだが嫌がらせの度が過ぎている、ので俺も容赦しないようにしている。

俺もバカではないので怪我をしない様に加減はするようにしている。

俺はリンクの体をリビングまで引きずって行きソファーの上に寝かせる。ムカつくほどに整った顔にべっとりとこびり付いた血をウェットティッシュで乱暴にぬぐい取る。血は完全に止まっているようだ、流石にバイクにヘルメット無しで登場するだけはあって丈夫な体だ。

しばらく寝かせておけば起きるだろう。

殺気の状況から心配は要らないとは思うが俺はとりあえずリンにこいつの危険さについて教えておくことにした。

「いや~リンちゃんって言うのか」

リンの猫パンチを食らってからものの数分後の事だ。リンクは先ほどの事はまるでなかったかのようにケロッとした態度を取っていた。

対してリンは警戒心むき出しでリンクを睨みつけている。リンクの危険性に関しては話したが余計な吹込みはしていないので俺のせいではない。

リンクは今さっき殴られた少女に対してめげずに話を振っては会話を試みていた。リンの方は完全に沈黙しリンクに強い敵意の視線を向けるだけだ。

ジリジリと重たい空気がテーブルをはさんだ境界に充満していた。

「ボク、君が嫌い、」

今まで沈黙を決め込んでいたリンが口を開いた。

「でも、、、、さっきは殴って、、、ごめんなさい」

少し恥ずかしそうにもじもじとリンは謝罪の言葉を綴った。たとえ嫌いな相手でも自身に火があれば謝罪する、人間の大半がプライドと言う余計な物が邪魔をして行えない行為。自分が悪いと思っていても謝れない。思えば子供ですらそうだ。もともと猫だからなのかリンにはそれが感じられなかった。それが俺にとっては心地よく思える。

ちなみに俺の場合は上記で述べたプライドなどは持ち合わせていないのだが、こいつを殴っても悪かったなどとはみじんも思わないため謝罪などしないため、さらにたちが悪い。

俺は彼らを嫌うくせに自分はもっとたちが悪いときた。自分はどうしようもない人間だと自負している。直す気はさらさらないのだが。

「別にいいって、こっちもこっちで司に酷い嫌がらせしたし、殴られるのは慣れっこだし」

リンクは優し気な笑みを浮かべてそう言った。こいつが学校生活で見せる作り笑顔ではない本物の自然体の笑み。

思えばこいつもそんなプライドがないな、だからこいつといると不思議と苦痛を感じないのだと改めて思った。

リンは不愛想でリンクは愛想がいい。表面から見たら全然違って見えるこの二人だが。

自身が悪かった時に素直に謝れるところ。

余計なプライドがないところ。

どこか似ている。

俺はテーブルをはさんで対峙するこの似て無いようでよく似た二人を眺めて普段は石膏像の様に動かない口元を少し緩めた。

なんだかんだでこいつともうまくやっていけるだろう。

俺は自分勝手にそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださった方ありがとうございました。
これからテスト期間に入ることもありまた投稿が遅れると思いますがゆっくりと待っていただけたらなと思っております。
次回はリンクの姉を登場させようと思っているので、そちらも生暖かい目で見守っていただけると幸いです。






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